2009年5月31日日曜日

GENERATION XTH CODE-REALIZE

「ジェネレーション エクス」応援バナー アイリスGENERATION XTH三部作の最後を飾るGENERATION XTH CODE-REALIZEは本日リリースであります。Wizardryの流れを汲む、迷宮探索型RPGであるXTHシリーズは、まずWizardry XTHとして展開され、その後、制作チームが独立、GENERATION XTHがリリースされたのでした。まずは、CODE HAZARD、次いでCODE BREAKER、そして本作CODE-REALIZEが出て、いやあ、待ちましたね。

さてさて、先日、5月21日のこと、体験版の配布が開始されるとともに予約受け付けも開始となって、いや、予約受け付けは22日からか、ともあれ、日付けが変わるのを待って予約は完了。その時、体験版はダウンロード中だったのですが、前作も前々作も問題なく動作したからうちは大丈夫だろうと高を括っていたら、いや、もう。掲示板でブルースクリーンが出る不具合が報告されていたんですが、まさしくそれ。報告を読みながら、世の中には運の悪い人もいるんだなあ、なんてひとごとみたいに考えてた自分も運の悪い組であったというんですね。もう、どうしようかと思いました。

BSOD

けど、きっとパッチが出るさ。そうしたらちゃんと動くようになるさ。そう信じて待っていたら、スタートパッチがリリース。修正内容を見れば、私の環境で発生した問題がクリアされているようで、よかった。ほどなくして、スタートパッチがバージョンアップして、そして今日、ソフトが到着して、インストール、パッチを当てて、無事プレイできております。

プレイにあたっての確認事項ですが、まずノーリセットが前提です。死んでも、全滅しても、泣かない、諦めない。救出部隊を編成して助けにいくさ。ロストしたら、また一から育てるさ。そして、ゲーム難易度はベテランを選択。けど、思ったほど厳しくない。現在、パーティの平均レベルは4、序盤の山とでもいったらいいんでしょうか、ちょっとしたボスありイベントをクリアしたところなのですが、スペルが尽きて、もうあかんかもー! と思ったりもしたのだけれど、なんとか勝つことができて、その後も逃げながらなんとか帰ることができて、うん、ベテランでもなんとかなるよ。レベル2になるまでは、1戦するごとに拠点に戻って回復させてたけど、それはむしろWizardryの基本だと思う。だから、G-XTHはベテランでプレイすることをおすすめします。

CODE-REALIZEでは、サブブラッドという新要素が追加されて、キャラクターを育てるにあたっては、多様なバリエーション、組み合わせの中から、メリット、デメリットを考慮して、自分にとってのベストと思えるものを選択していく。その作業はきっと楽しいだろう、そう思うから、キャラクターがある程度育つのを待って、チャレンジしてみようと思います。第一パーティはオーソドックスなもの、つまらないといいかえてもいいかも知れませんけど、そんなだったから、第二パーティでちょっと冒険して、そしてサブブラッドで色付けを工夫してみようかななんて思います。で、こんな風にパーティを並列で育てるから、とにかく進行が遅いんですね。

CODE-REALIZEもまだはじまったばかり。急いで慌ててプレイするのもなんだから、これが完結編、じっくり、しっかりプレイしていきたいと思います。

「ジェネレーション エクス」応援バナー アイリス

2009年5月30日土曜日

マコちゃん絵日記

 『マコちゃん絵日記』、これ、すごい、ものすごい。この漫画の存在を知ったのは、先日、掲載誌の表紙裏表紙の仕掛けが凝っている、らしいというのを聞いて、けれど裏表紙がどうなってるかはネットの情報ではわからなかったので、出版者からバックナンバーを取り寄せてみたんです。で、裏表紙見て、違法アップロードについて言及している次回予告を見て、それで漫画を読んでいって、そうしたら巻末掲載の漫画、『マコちゃん絵日記』がめちゃくちゃ面白くて、もう飽きた…っ 電卓いじってた方がマシだ!! こんなもん!!、台詞のセンスとかがすごいの。テンションもまたすごくて、笑わずにすますなんてことは私にはできない。ちょっと、これまとめて読みたいんだけど!? って思ったら、マコちゃん絵日記、単行本出しますよ。わお、そいつは嬉しいや、買った。で、いつ? 2009年初頭? 小さい文字で3月〜4月頃…とあって、待ちましたよ。そして、この5月の末に発売されているのを知った。いやもうたまらず買いましたよ。

 先日、まんがタイムKRコミックスを買いにいった書店、地下迷宮からアクセスするとらのあなですけど、そこにですね、Tシャツ付きの『マコちゃん絵日記』が積まれていまして、買おうかと手にとって、ちょっと値段がはるので躊躇して、しかしTシャツ付きの限定版はあるのに、なんで通常版がないのだろう。店内三周くらいして、はっと気付いた。そうか、通常版は出版協定があるから発売日厳守なんだ。限定版はそうじゃないから前日に並んでるのか。なので、出直して買ったのでした。

しかし、これまとめて読んだら、もう凶悪以外にいいようがない、それくらい面白くて、もう、腹がよじれるなんていいますが、まさにそんな感じで、なにが面白いかというと、例えばギャグ、とにかく元気なマコちゃんがばたばたばたばたして、その騒動が引き起こすもろもろ、そのテンションの高さもすさまじければ、台詞のインパクトも最高で、これ、笑わないなんて無理。マコちゃんは両親と兄と暮らしてるんだけど、お母さんも半端じゃないよね。パートを辞めたって話に、クビじゃないの、自分から辞めたのって。それ、自滅してますから。どんだけクビきられてきたんですか。

一応断わっておきますけど、掲載誌は成年向け雑誌で、年齢制限が付いています。けど、『マコちゃん絵日記』はアンリミテッド、制限なしです。なので、安心してお求めください。っていうのもなんだけど、もう本当に面白くて、今までうさくんの漫画にはそれほど引かれるところがなかったんだけど、これだけは違った。これは度外れてると思う。ギャグ漫画はたくさんあるけれど、こんなに面白いギャグ漫画はそんなにないよ。これは、センスなんだろうなあ。

面白いといいました。ええ、確かに面白い。そして、ちょっと心があたたまるような、そんな話も多くて、これはよい、本当によい。親子や家族の物語がある。兄弟、友人と喧嘩したりね、それで反省したり仲直りしたりとか、そういうの。1巻最後の話なんかもよかったですよ。「多美ちゃんの内緒」なんかも素晴しかった。あのお母さん、なんかとんでもない人だけどさ、でもちゃんとした大人なんだなって思った。ああして、みんなで子供を育てていくんだなって、子供の輪と、そこから広がっていく大人も含めた人の輪。そうした共同体が描かれている、そのすべてが素晴しいなって思ったのでした。

ジャンルとしてはホームコメディだと思います。これは、ほんと、広く読まれて欲しい。それだけの力や可能性を持った漫画であります。

  • うさくん『マコちゃん絵日記』第1巻 (FLOW COMICS) 東京:茜新社,2009年。
  • うさくん『マコちゃん絵日記』第1巻 (FLOW COMICS) 東京:茜新社,初回限定版,2009年。
  • 以下続刊

引用

  • うさくん「マコちゃん絵日記」,『コミックLO』第7巻第3号(2009年3月号),333頁。
  • 前掲,345頁。

2009年5月29日金曜日

『まんがタイムきららキャラット』2009年7月号

『まんがタイムきららキャラット』が発売されて、いよいよ5月も終盤。初夏といってもいいんじゃないか、そんな時期を反映してか、衣替え、もうした? との問い掛け。ええ、まだしてません。もういいかげん、上着でもなんでも、冬のものから夏ものに替えてもいいんじゃないかとは思うのだけれども、基本的にものぐさなんでしょうね、ぎりぎりになるまで替えない癖があって、それは実は夏だけでなく冬でも一緒で、なんというのか、季節の変化に対して鈍いんですよね。もう暑いと思って薄着にしたら体調崩して、まだ寒いと思って厚着でいたら体調崩して、なんともいえない時期であります。ああ、でも、もうじき夏かあ。いやな季節だなあ。

『キャラット』7月号巻頭は、チェルシーの面々による『GA — 芸術科アートデザインクラス』アニメ制作現場潜入レポート。私は、『チェルシー』の人の絵は好きだから、ちょっと嬉しかったりして。レポートの内容も、のりがよくって面白かったです。なんというか、アニメの紹介記事であるのだけれども、ちょっとピントをはずした社会見学みたいな面白さもあって、このテイストは『チェルシー』の漫画のものなんだろうなと思います。潜入先は、アニメの制作会社、でいいのかな? それともスタジオ? AIC PLUS+であります。とりあえずこのレポートでわかったことは、AIC PLUS+にはオフィスグリコが入ってる! あのポリの引き出し、黄色の天板に緑の半球状のもの。あれは、カエルの貯金箱だ!

しかし、オフィスグリコってすごいのよ、治安がいいということは社会的コストを格段に下げられるということなんだね、って脱線したら帰ってこれなくなるので、やめときます。

アニメに関する現場の声というものを取材して、それを紹介するのに、チェルシーのにぎやかな娘さんをばたばたと元気に動かすことで、興味深いだけでなく、読んで楽しい、面白いものになっているのだからさすがです。特に、あのマイクのくだり、へんな振りだなあとは思ったんだけど、本当にネタの振りだったのか、ベタだけど面白くて、それにグシャーとか、もうね。コメントをとる際の話の流れに、この娘さんたちの興味津々といった雰囲気が勢いをつけてくれるから、自然、読んでいる私も興味津々な感じとなって、これは次のアフレコ取材も楽しみにしたいぞ、そんな気持ちになっているのでした。

しまった。のっけから書きすぎた!

『ノンのんっ!』、警察ものであるのですが、田舎の交番に勤務する三人のお嬢さんがヒロイン、基本に忠実な感じです。初回はキャラクター紹介といったところでした。交番と書かずに公番としてるのは、日本の警察に対する配慮なのかな? 村の人たちとの交流も描くけれど、基本的には三人のやりとりで進めていくみたいと感じました。峰打ちはよかったです。

『チェルシー』は、このいきいきとどたばたとしてるのがなによりだなあ、そんな風に思える漫画です。天真爛漫、あるいは好き放題。ちょっと迷惑そうだけど、悪い子じゃないからいいよね、なんて思ってたら、しっかり怒られてて、そこがよかった、面白かった。この人の絵が好きと、絵ばっかりいうのも失礼なような気がするんですが、手足が伸びやかに描かれるからか、いきいきとはつらつとした感じが、コマに収まらないような勢いで感じられて、それが推進力を生んでとてもいいと思っています。そしてロッキン雅との関係。これ、もうシリーズになっちゃってるけど、こういうのが重ねられていくともっと面白くなるんだろうなあ。ところで、ウタさん、マタニティみたいです。

ひだまりスケッチ』は、わーい、小樽だ! 北海道は大好きです。『キルミーベイベー』は、やっぱりやすなが面白いんだろうなあ。自分で自分を危機におとしいれているみたいな、基本お調子者なんだけれど、突然普通の対応に変わる、その落差、素に戻るそこが可愛いのだと思います。しかし、ソーニャちゃんはきびしい人だな。でも、そのきびしさが魅力だと思います。

『ツバサとらいある』、「おどるチョウ」と名づけよう三か月も苦心して工夫を続けた新作あやとり「ギャラクシー」が、ついに完成したぞ!! 懐かしいねえ。それはさておき、凛々しいお嬢さん、ツバサの頑張りは見ててすがすがしいものがあります。こういう、かっこうよくって、なんでもできそうだけど、実はいろいろ苦手というのは、そのギャップがあるほど親しみやすさを感じさせるものかも知れません。あるいは、ほっとけないという感情を呼ぶのかな?

『かんぱけ』、ちょっと声優ものというメインストリームからは外れたけれど、こういうのもよいものだと思います。掃除片付けでがぜん張り切って仕切ってしまう、そんな上岡菊がよかったです。眼鏡だからじゃないよ、本当に。キャラクターそれぞれの個性が見えてきて、面白くなってきている、そんな風に思える回でした。静の個性がよいなと思います。しっかりしてそうで、わりとそうでもないところ。深刻かと思わせて、全然そんなことないところ。

とらぶるクリック!!』は、のっけから海賊に心を強奪されてしまいました……。馬鹿なこといってないで、最初は固かったなつメロがすっかり暴走キャラになってしまって、その成長ぶりには感動すら覚えます。しかし、今回はまさしく全員参加で宝探しといったのりで、こういうみんなでなにかやろうっていうようなの、いいですね。知らないふりして同行している部長ってのが、読み返してみればなにかいいなと思われて、こうして世代を越えた交流があるっていうの、すごくよいです。

それはそうと、iBookが故障? パワーアップするの? それとも新メカに交代? とりあえずバックアップはしておかないとな、そんな気分になる次回への引きであります。

『Aチャンネル』、扉ゴマのナギ、その見下したような目がドキドキとさせて素敵です。いや、ほんと、魅力的。眼鏡だからじゃないよ。しかし、1ページ目の、ちょっと停滞したような状況が、ページめくれば一変する、あのインパクトはよかった、またその絵の凶悪さもよかった、なにより落ちがとてもよかった。その貰って困ったぬいぐるみが、最後にはなんだかいいものと思えるようになってしまうっていう、その心理の動き、よくある話で身につまされたりもするんだけど、それよりも、友だちから贈られたものを、義理とかなんかではなく、本当に大切と思えるようになったっていう、そういうのはすごくいいと思うんだ。それはそうと、ズルイ…! そういって震えているトオル、可愛いなあ。その一言、その反応で豹変したナギ、彼女の表情もまたいいなあ。

『来たれ!ヒーロー研究同好会』、ちょい百合、交流もの? ヒーロー研究とか特撮同好会とか、そういう設定はあるけれど、それをだしにわいわいとやる女の子ふたりの関係を楽しむ漫画と思っていいのかな? 悪くないと思います。けど、私にはもう一味欲しいところだと思います。けど、あの足がドリルのロボット、あいつはいいなあ。ちょっと可愛いぞ。

『ひよぴよえにっき。』。赤は伝統的に毒性の強い色だけど、まあ子供用のクレヨンなら大丈夫よ。うちにあるクレヨンは蜜蝋のクレヨンなので、食べても平気だそうです。しかし、もう、本当に微笑ましい漫画。髪をさわると、不器用でぐしゃぐしゃになるとかね、もうそれだけで面白いというか、微笑ましい。罪がない感じ、毒もない感じ、その素直さがいいです。

『空の下屋根の中』、携帯、すごいな。私からは出ない発想です。『ふら・ふろ』、このあいだ雨が続いたとき、私も変な緊張感を味わいました。それはいいんだけど、裾の長いワンピースみたいなのだったら、平気じゃないの? しかし、新聞屋さん、いい人でした。『のんびりマスタリー』の、のんびりという所以、これがいいと感じるのは、まもる視点で見守っている、そんな気分を感じるからでしょうか。あるいは、スローダウンしたい気持ちをどこかに抱えてるからかも知れません。

うらバン!』は、先生が素晴しいな。日本酒、それでパックビール? あんなの本当にあるの? できあがってしまった、その描写、そのふにゃふにゃな感じ、もう最高だと思います。でも、楽器忘れてきて、なにしにきたんだろう、本当に。メトロノームから卓球へのなだれ込みはいい流れでした。しかし、合宿といっても少しは遊んじゃいますよね。そうした、レクリエーションを通してより親しくなるっていうのは、アンサンブルをよくするのにもいいと思います。と、理論武装する。

『ねこみみぴんぐす』はやっぱり穂咲さん出てきて、いいキャラクターだなと思います。わりと真面目に卓球。頑張る様を見るのはいいものだと思います。それにつけても、穂咲さんはいいキャラです。『ゆかひめ!』、平、いいじゃないか! 『エンドロール』は中途半端に過去が判明して、しかし逃げている理由はわからない。ここまできたら、もうがつんと続けて欲しいな、なんて思っています。実は、コーティーという名前が好きだったりします。

うらがアルっ!』って、関西舞台? 兵庫県? 神戸? 意外と近かったりした? なんか、それだけで嬉しかったりして。言えーっは面白かった。先生には誰も太刀打ちできんみたいですね。そいでもって、りあのんの母、あの人もいいです。先生といいお母さんといい、大人が自由というか大らかというか、それが幸いです。玉子焼、明石焼ですが、食べたくなりました。つゆにつけて食べるの、おいしいんですよね。たこ焼ともまた違ってよいものがあります。

アットホーム・ロマンス』は、竜太朗が蒔いてきた種、その実りが収穫される段階にきたっていうことなのでしょうか。以前いってた、友人をも包み込むくらいに大きなアットホーム、それがあらためて実感されるような話であったように思います。そして、なっちゃん。この人もいい人だなあ。弱さとともに強さを知ってる、そんな感じがよいと思います。そういえば、余談ですけど、最初のころは、柴田さんがこうした位置に進むのかなって思ってたんです。でも、そうしたらあの娘溺愛父に訴えられてバッドエンドだったんだろうか。

どうでもいいことばかり考えてしまうのは、きっと疲れてるからだな。といったわけで、お休みなさいーい。

  • 『まんがタイムきららキャラット』第5巻第7号(2009年7月号)

引用

2009年5月28日木曜日

『まんがタイムオリジナル』2009年7月号

『まんがタイムオリジナル』が出て、『まんがタイムKRコミックス』が出て、そして『まんがタイムきららキャラット』の出る月末は、私にとってはかなり嬉しい、そんな数日です。単行本に関しては、月によって出るのが違うから、毎月仕合せ! というわけにもいかないのですが、いや、結構毎月仕合せっぽいですけどね、ともかく雑誌です。『オリジナル』も『キャラット』も、どちらもかなり面白い、好きな連載がある、というわけで、月末は漫画読んで嬉しいなあなんて思っていることが多いのでありました。

ラディカル・ホスピタル』は、女性職場における男性の位置付けみたいなことがテーマになっていて、男性職場における女性の位置が難しいように、その逆もまた難しくて、ちょっと昔の職場のことを思い出しました。私の立ち位置は榊先生的であったように思うのですが、けどあんなにオープンではなかったな。派閥のようなものがあったりすると、どっちの味方になっても損になるから、中立のちょっと外れた位置にいたように思います。というか、私はいつも外れてるけど。そう考えれば、この大ちゃんの描写というのは、外れることもなく、かといって中央にでんと立つわけでもなく、理想的なポジショニングでありますね。それはそうと、男装マッキーの可愛いこと。それだけに、扉ゴマは残念でありました。

ただいま勉強中』が『オリジナル』に移籍してきて、けれど芳文社全誌を買ってる私には、あんまり移籍どうこうという印象はなかったり。そもそも、どこから移籍してきたんだっけ? てなもので、まあ『ラブリー』からというのはちゃんと覚えてますけど、これでなおさら『オリジナル』のバリューが高くなったように感じています。

さて、漫画の内容はバス酔い、だけじゃないけど、ともあれ、バス酔いは私にとっても人ごとではなくて、最近はもう大丈夫なんですけど、それでもバスに乗る、車に乗るのは避けたいと思う気持ちが残っています。いや、ほんと、大変なんですよ。子供のころは、酔い止めを飲んで、これで大丈夫、これで大丈夫と暗示をかけるようなことしてましたっけね。これもひとつのプラシーボみたいなものだったと思うんですけど、薬飲んだり民間療法でやりすごそうっていうね、そうした人の大半は不安に思いながら、以前はこれで大丈夫だったんだから、今回も大丈夫なだ、って思い込もうと努力してるんですよね。だから、エース藤堂の気持ちはよくわかります。プラシーボについて理解しても、それでもなんとか暗示でやりすごそうとするのが我々です。

『あかるい夫婦計画』の箸とパジャマの話。私もまんまそんな感じです。箸はそろってないといやだけど、パジャマはもう上下一緒のものがありません(ズボンが先に駄目になるの)。でも、やっぱりパジャマも上下そろいのほうが気持ちいいかも知れませんね。『ヤング松島喜久治』は、松島さん、いくらなんでもそいつは駄目です。

『先生のたまご』のクーラーの話、そうかあ、今は学校でもクーラーがはいるんですね。クーラー苦手な私には辛いな、って、学校なんてもういくことないと思うけど。しかし、数木先生のワナだけれども、みんなそれに従うってのが素直だなあと。私だったら絶対従わないなあ。協調性がないのであります。『ハッピーエンドではじめよう』は、やっぱり死人が出るんだけど、同僚が猫になって帰ってきているのに、そいつを疑問に感じながらも自分だけの幻覚だと思ってそのままにしてしまうっていう描写、ちょっといかすなあ。というか、ゲームやって号泣してる神さまっていうのもいかします。私は、この漫画の転生を重ねて魂は成長していくというくだり、あんまり好きじゃないんだけど、それでも種としての我々は知識や経験を継承していくことで成長してきたわけだから、種としての人は、この漫画にあるように、次代に成長を期待していくのだろうと思います。

『今日から寺バイト』の仕事イコール不幸というところ、そういえば以前いってた袈裟着てた先輩っていうの、あれも急な不幸に対応できるように袈裟を常備してたからって話でした。いつ呼び出しがかかるかわからない仕事っていうのは大変だと思います。『ささきまみれ』の年収4千万でイケメンのUFOマニアっていうの、実際にいたとして、けどそれってちょっと躊躇するタイプのように思います。いや、マニアったって、その傾向次第だとは思いますけど。「突然連れてこられて」は、ちょっとむごいネタなんだけれど、そういう光景はテレビで見たことあるような気がします。まあ、それは突然連れてこられたわけじゃないですけど。

『恋は地獄車』、困った、結構面白い。でも、共感はできないし、ああいう男はいやだなあ。まあ、当人同士がよければいいんだろうけど、そういう相性もあることは理解できても、あんまりよい相性だという気はしないです。需給の一致といったら、まあそうかなとは思うんですけど。

『ミラクル書店』は、西田くんが戸張さんにおつきあいを!? いや、ごめんなさい、ちゃんとわかっていってます。なんとなく近付きながらも、なんとなくくっつかない微妙な関係でひっぱるもんだと思っていたら、こういう方面からの後押しがあるとは、ちょっと意外でした。やるじゃん、西田くん! とは思うけれど、彼が仕合せになることはなさそうだから、ちょっとかわいそう。でも、いいや。君は君の役割りを頑張った! 動きがあったといえば、『マルビプリンセス園華サマ』もそうで、修二と伊達さんの展開が落ち着いて、こちらでも落ち着かせて、それで一段落ということなんでしょうか。次号待ちですね。

『恋するマロン』は、喫茶店もの。絵は素直で可愛くてわかりやすくて、話や雰囲気も落ち着いて、悪くないと思います。オーソドックスというか、来月にはもう継続して載ってる漫画なんじゃないかって思うくらいには馴染んでそうな予感がします。対して『おかまん研』は対照的、岡山県舞台、高校もの、岡山弁で三者三様の妄想を語る女子たち、って、ちょっといきなり突き抜けてるな。初回から振り落された人も多いんじゃないだろうか。正直なところ、私も度肝を抜かれる思いをした口なんですけど、けどそれでも、モデルが動くなよ、困ったことに面白いと思ってしまいました。うまいこと落ち着いて、残ってくれたら、これはこれでいいなと思っています。

『おたママ♥』の扉は『けいおん!』EDのコスプレ? そりゃいいんだけど、なんでギター? しかもなんでガットギター? ものすごく中途半端じゃん! と一応突っ込みはいれましたけど、これは、ベースを、それもできればレフティを調達したいと思いながらも、手近にあるそれっぽい楽器で妥協せざるを得なかったコスプレイヤーというネタなんだろうと思うんです。いや、ほんと、うまいと思います。こういう、惜しい! もうちょっとで完璧なのに! といって、もにょる感覚をうまく引き出してくれて、その、なんといったらいいのかな、やっぱりもにょもにょするっていうのでいいのかな、大好き。作者のクレジットに隠れて見えないけど、遥が持ってるのは鍵盤ハーモニカなのかな。こういう、頑張ってるんだけど最後まで詰め切れないという現実性をあえて持ち込んでくるところ、最高だなと思います。

本編の実質同じCDを複数枚買わせるっていうの、友人がやられてます。ジャケット違い、ご丁寧にボーナストラックがついていて、その違う一曲のために複数枚買って、しかもそれがツアー限定版と通常版で違ったりもするとかいう話ですか? 客の足元見るっていいますけど、こういうやり口ってアニメ業界特有なのかと思ってたら、もっとえげつないところもあるって知ったあのとき、もう本当に驚きました。そうした策略に乗るのは馬鹿らしいってわかってても、それでも買っちゃうのがオタク、マニアの性なんでしょうね。もう、堕ちるところまで堕ちてやる……、そんな気持ちになりますな。

漫画本編も面白かったけど、次にいきます。

そこぬけRPG』は、もしかしたら普通に藤崎さんの成長エピソードみたいに読めたりする? だとしたらそれも楽しみですが、それ以前に、こういう女子の欲望ふくめてもろもろ大暴露的な話は大好きなので、楽しくてしかたありません。腐臭のする! いいね、素晴しいよ。格闘で奪い合いはちょっと萌えるかもな! しかし、こうした動きのある会議、というかブレインストーミング、楽しそうだなあ。オブザーバーとして立合いたいような場であります。

ところで、さっきの『おかまん研』が登場してくる土壌というのは、『おたママ♥』や『そこぬけRPG』、それから『あなたが主役になった時』のような漫画が整備したりしたんでしょうか。私は好きですが、それにしても思い切ったものだと思います。

『花の委員長』は、なんだか少女漫画誌に載ってそうな漫画、特に絵柄がそうかなって思いました。内容は割と普通。やっぱりちょっと一般誌っぽい? 昔、少女誌読んでた時のこと思い出しました。いや、そんなに少女誌っぽいってわけでもないんですけど。少女誌っぽいって感じるのは、女の子を可愛くは描くんだけど、男から見ての可愛さではないってところかなと思います。でも、さばさばした女の子は魅力的です。

『うっちゃれ!!乙女組』と『田舎Days』が終了です。『乙女組』は早かったなあという印象。『田舎Days』は、これが潮時だったのかな。結構地味ながらも好きだったんですが、というかその地味さが好きだったんですが、やっぱり地味はだめなのかな。

『アサヒ! — 動物園に行こう』が巻末で2色。私はパンダがとにかく好き。ひょうひょうとしたパンダ竹之介、そしてコアラの三郎のシンプルにして的確なつっこみ。「あさひの秘密」は意外な落ち、そのナンセンスさもよかったです。

  • 『まんがタイムオリジナル』第28巻第7号(2009年7月号)
  • 引用
    • 小坂俊史「ささきまみれ」,『まんがタイムオリジナル』第28巻第7号(2009年7月号),84頁。
    • 山吹あらら「おかまん研」,同前,118頁。

    2009年5月27日水曜日

    nonote — 野々原ちき作品集

     野々原ちきの短編集が出るって聞いた時には、本当? マジで!? わお、夢みたいだ! 喜んだものでしたよ。『nonote — 野々原ちき作品集』。芳文社の雑誌に掲載された野々原ちきの漫画、そうざらいですよ。収録作は『ファミレス☆スマイル』、『もんぺガール小梅』、そして『君がボク/僕がキミ』。これ、待ってた人、多かったんじゃないだろうか。けれど、出ることなんてきっとない。そう思ってあきらめていたんですよ。そうしたら、全部まとめて出しますって、もうほんと夢みたいだ! こんな日がくるだなんて、想像したことさえありませんでした。世の中とはなにがおこるかわからないなあ。もう、本当に嬉しくて嬉しくて、しかたがないのであります。

    野々原ちきの漫画との初遭遇は『もんぺガール小梅』でした。『まんがタイムスペシャル』に連載されていたんでしたっけね。最初はあんまりいい印象じゃなかったんですよ。非常識なキャラクターが無茶をするっていう、そういうの、ただただ非常識で迷惑なキャラクターが好きにあばれているだけじゃないのか、なんて思ってたんですが、じわじわと浸透してきて、今では大好きです。決め手は、今も忘れない、鍋にぶち込むだけの手間だべでした。このあまりに酷い台詞、これがなんかどすんときて、すごく面白くて、それまでただ可愛いキャラクターがばたばたするだけじゃねえか、と思って見ていた、その見方が違ってたんだって気付かせてくれたんですね。

    そう、私も偏見にまみれているんです。漫画はネタがよくなくっちゃいけねえ。絵の綺麗さ、可愛さだけを売りにしてる漫画なんて駄目だ、中身の薄さをそうした見栄えで誤魔化しているのなんて論外だ、なんていうようなことを思っていたんですね。ところがそれは、そう思いたがることで、その漫画から目を反らしていただけなんです。絵の綺麗さ、可愛さが目につくものは内容が薄いに決まっている、そう思いたかっただけなのでした。件の小梅の台詞は、私の薄っぺらい偏見を見事に打破しました。そして私は、ああ、偏見とは世界を狭く、つまらなくする! 反省したのでした。

    思い返せば、このころが私にとって最初の四コマ漫画豊穣の時であったと思います。それまでは『まんがタイムラブリー』くらいしか読んでいなかったのが、だんだんと系列他誌にまで手を広げはじめて、そして『まんがタイムポップ』が面白くて。この雑誌と『ナチュラル』が消えた時には、なんだか大騒ぎしましたね。それで、やけになったんでしょうかね、芳文社の四コマ誌、実話系を除いて全部買うようになったのでした。その『ナチュラル』に掲載されていたのが、『君がボク/僕がキミ』でした。これ、『ナチュラル』は最後の方しか読んでなかったので、はじまったころを知らなかったんですよね。『ナチュラル』廃刊を受けて、『きららキャラット』に移ってきて、途中から読むようになって、先生と生徒が入れ替わるという、漫画ではさしてめずらしくもないギミックの漫画なのだけれど、面白かったのですよ。酷い看護師がいまして、もうミザリーばりのやばさを持っていて、そうしたところ、大好きで、そして先生、体は生徒、諒太になってるから諒太の家で暮らしているんだけど、まだ若い諒太の母にめろめろになっていて、しかもその諒太の母っていうのが可愛くて可愛くて健気で、このふたりの関係が本当に好きで好きでしかたありませんでした。

    『君がボク/僕がキミ』は、野々原ちきらしさが満載だったと思っています。可愛いキャラクター、けど内面にはかなりのエゴやなにかが渦巻いている。この漫画では、看護師とその妹がそうしたキャラクターでしたが、そのギャップは強烈なんだけれど嫌味ではなくて、むしろ看護師のそれは歪んでいるとはいえ愛情ゆえだったのだから、むしろ可愛さを補強するくらいのもので、可愛くて怖い、怖くて可愛いという、そういうところ。いいなと思う。そして、先生なんかがそうなんだけれど、この人も少々歪んでたりしないでもない。けれど諒太のことを心配する、そうした気持ちは伝わってくるし、そして諒太の母親に対する気持ち、それも。なんだか人の思いというのがこもってるなって感じることがあるんです。そうしたところが本当にいいなと思っていたから、今回の作品集の描き下ろし、急ぎ足だったけれどちゃんと完結を見た。ひとりを除いてみんな仕合せになった、特に先生と諒太のお母さんですね、よかったなあと素直に思って、心残りが晴れたように感じたのですね。

    『ファミレス☆スマイル』について書けなかったのは心残りだけど、もちろんこの漫画も好きなんだけど、やっぱりこの判型で読むといいですね、紙もいいし! だから、今日は『ファミレス☆スマイル』読んで、続けて『とりねこ』を読もう。いやあ、本当に嬉しいなあ、仕合せだなあ。この多幸感はちょっと危険なくらいです。

    引用

    2009年5月26日火曜日

    ツレがうつになりまして。

     書店の新刊文庫コーナーに、細川貂々の『ツレがうつになりまして。』が並んでいまして、以前から気になっていた本ですから、これを機会と思って買いました。気になっていたというのは、この本が出て話題になる前に、この作者の漫画を知っていたからです。集英社のレディーズコミック『You』に連載されていた生活エッセイ漫画。『てん・ブック』。イグアナとともに暮らしている、なんだか呑気な夫婦もの。世の中にはいろんな暮らしがあるなあ、こういうスローな暮らしもいいかもなあ、みたいに読んでいたら、もう、いろいろととんでもない。あのひょうひょうとした人、ツレさん、鬱だったんだ。それもかなり酷い……。それを知ったときは、本当にショックでした。

    『You』の連載で読んだエピソードに、水槽を買ってくるというのがあったように思います。だから、あの連載に描かれた時期は『ツレがうつになりまして。』にそのまま重なっているのだと思います。楽しそうなお気楽生活と見せて、実はそうではなかった。ひとつのできごとに、多様な側面があるということを思わないではおられませんでした。きっとつらくしんどいこともたくさんあったはず。けれどそれを『てん・ブック』においては少しももらさず、悠々自適の生活のように感じさせてくれて、それが楽しそうだった。本当に楽しそうだと思ったから、後に知ることとなった現実のもうひとつの側面にショックをうけたのです。

    『ツレがうつになりまして。』は、文庫になる前にもずいぶん話題になったから、どうしようか、買おうか、けれどなんだかおそろしくて手にできず、いずれ買おう、きっと買おうと思いながら、ぐずぐずと今まで引っぱってきてしまったんですね。そこまで引っぱってしまったのは、ほら、元気だと思っていた人が実は辛い状況にありました、苦しんでましたっていうのを後から知るのってこわかったりしませんか? そうか、こんなに大変だったんだって思いたくなかったのだと思います。自分の見ていた、しあわせそうな側面にとどまりたかったのかも知れません。

    けれど、別の漫画だとかインタビューとかで、より現実に即した、つまりはハードな実際の状況を読んだりはしていたんです。それは、もう、本当に大変だったらしい。生活がなりたつかどうか。漫画やイラストの仕事だけで生活できるか。そんな自信なんてないのに、ツレさんがこのまま仕事を続けていたらきっと取り返しがつかなくなるからと、生活を全部背負いこむ覚悟を決めて、退職するようにといって。そうした話を読んでいたから、なおさら『ツレがうつになりまして。』は手にしにくくなって、けど、実際に読んでみたら、『てん・ブック』で感じたしあわせな暮らしと、現実の大変だった状況、その中間あたりに位置する、大変じゃないなんて決していえないけれど、大変なときにも、苦しいときにも、日常はかわらずあり続けていて、そこには大変ばかりでないなにかがあるんだ、そうした感触のある、そんな漫画であって、もっと早くに手にしていたらよかったと思ったのでした。

    しかし、細川貂々という人はフェアな人だと思いました。鬱が大変な病気だということは、漫画に描かれているツレさん見ていたらわかります。そして、そうした人をささえるということは大変だろう、そう思うのですが、実際にそうだと思うんですが、声高に大変だ大変だというようなことはしないのですね。むしろ自分をこそ客観的に突き放して見ているところがあって、自分のやっていることを褒めない。それどころか、やってしまった失敗を、かなり酷く描いたりもしていて、それ読んで、なんて酷いことを! なんて思ったんだけど、隠そうと思えば隠せるそうしたこともはっきりと描いている。自分をよく見せようとしていない。そうしたフェアな態度にむしろ感心することのほうが多かったです。

    この漫画がするすると読めるのは、作者がひたっていないところ。楽観的とも思える、そんな雰囲気が、現実のつらさをやわらげてくれているところ。あったできごとを淡々と、あったように、そして思ったこと感じたことをありのままに話してくれている、そんな風に感じさせてくれるところ。静かだから、押し付けがましさなんてちっともないから、すーっと入っていける、すーっと入ってくる。そんな気がするんです。そして、途中途中にツレさんのつぶやきがあるんですが、それが大きなアクセントとなって、いいメリハリができて、その硬軟がなおさらよかったのだと思います。

    これ以上はちょっと書けません。そしてドラマはきっと見ません。

    2009年5月25日月曜日

    『月刊アフタヌーン』2009年7月号

     関西では、たいてい雑誌は当日売りなんだと思っていたのですが、『月刊アフタヌーン』に関しては、数日前に入手可能です。公式の発売日は25日のはずなんですが、そこは余裕を持って配本しているのかも知れません。ところで、発売日を何日ごろとかいっていたのは『IKKI』でしたっけ? あれ? 単行本だけだったかな? まあどっちでもいいや。その、ごろという曖昧な表現が面白いなと思ったことがあったのでした。なので、私にとって『アフタヌーン』は毎月25日ごろ発売で、けれどこうしてBlogに書くとなるとちゃんと25日以降になるようにしないといけません。そのへんはちゃんと守っていきたいと思います。

    さて、『アフタヌーン』7月号は、剣道着つけて竹刀構えた男女ふたりが表紙。凛々しい眼鏡男子ときれいなお嬢さんかあ、と思ってたら、うわ、なんてこった、ふたりともお嬢さんだよ。『武士道シックスティーン』。剣道に命懸けてるような眼鏡女子、とにかく勝ちに固執している磯山香織と、なんだかマイペースで覇気にかける西荻早苗。ふたりが出会って、そして早苗が一本を取って、そこで第1話はおわり。これ、すごく面白そうです。もとは小説みたいですね。まったく違った対照的な個性をぶつける、そこにいったいどういうドラマが生じるんだろうか。お互いを鏡とすることで、互いに足りていなかったものを見付けていく、そんな話になるんだろうか。先のことはわかんないけど、なんだか面白そうです。

    『アストライアの天秤』は、裁判員制度を扱った漫画で、これ二回目です。以前は役者の話。今回は、主人公こそは前回と同じですが舞台を沖縄にして、米軍と沖縄との関わりをまじえながら、話が進んでいきます。その流れの中に確執をいくつか投げ込んで伏線としているのですが、そのまだ明かされていないこと、それがすごく興味をそそりまして、結構読ませるんですね。前回、「さばき、さばかれ」もよかったんですが、今回のもなかなかによさそうです。次号で完結、7月には単行本だそうですが、これは買ってもいいな、そんな風に思っています。

    『友だち100人できるかな』、キュートな堅物眼鏡が出てきたかと思ったら、なんとこれはライバル出現か!? っていっても、よくよく考えたら、別のパラレルからきている相手なんだから、共闘はあっても、競争する必要はないんだよな。と、それは置いておいて、今回の友だち候補は(未来の妻を除いては)はじめての女子となって、そこにはなんというか、前青春時代の素朴な感情があって、未熟だったり、それゆえに不器用だったりする様が描かれて、それで決着は直球勝負だからたまらんものがあります。この漫画は、大人になるとごちゃごちゃいろいろ考えてしまうようなことを、もっと直球に、素直に、真っ直ぐに、体当りでやってみようよ、そんなことをいっているようで、その朴訥さと朴訥であるがゆえの強さが魅力だなあと思うのですよ。正論をぶつけてるように見えるところがあっても、杓子定規や型にはまった言説ではなくて、もっとプリミティブななにかが、素直に飛び込んでくるような、そんな気持ちよさがあるから、ああこれは正論じゃないんだ。理屈やなにかじゃないんだ、そんな風に思うんですね。

    百舌谷さん逆上する』。夏休みがあけて、新学期。しかし、揚介は兄貴に恵まれてねえなあ。揚介の兄貴はアキバ系のキモオタのロリコンのバーチャル世代で、Tシャツはどう見ても『けいおん!』の秋山澪。壁のポスターもそうだ。この兄貴、恋に悩む弟を面白がって振り回そうとするけど、どう見ても自滅してるよな。しかし、兄貴にアドバイスされるまでもなく、女心のわからない弟は自爆を続けるわけで、その滑稽なことったら。前回までものすごくシリアスだったのに、今回からは竜田揚介の自爆を楽しむ漫画になりました。しかし、こいつは話の流れにうまく重みをつけていくのに、それもわりかしかっこよかったりするというのに、なんでここぞというところでああも見事に引っくり返してしまうのだろう。その素晴しい自滅。あっぱれだな。惚れ惚れするな。きっと、竜田はずっとこの調子なんだろうなと思います。そして、その背後にちょっと影の薄くなった百舌谷さん、彼女の決意が潜伏しているわけで、だからいつまでもこの馬鹿馬鹿しい流れは続かない。思いがけないところで、百舌谷さんの動きが明らかになるに違いない、そう思うからこそ、今のこのコメディの気安さに安心しきって読むような、そんな気分にはなれないんですね。きっと、いつかくる揺り動かし、それを怖れながら、またその時のくるのを待ちながら、わくわくと、うずうずとしながら読む。その時に感情を総動員させられるよう、気持ちをいっぱいに待機させて読んでいます。

    無限の住人』。グッバイ尸良さん! けれど、あんなにいやなやつだった尸良だけど、こうして死んでいく、それも最低な死に方をする、そうしたざまを見れば、爽快なんて感情は微塵もなくて、やつはあれで最低なりに魅力的なキャラクターであったのかも知れないなあなどと思うのでした。でも尸良さんの活躍する巻は今でも読みたくないよ!

    『いもうとデイズ』。オーナーさんがほわほわとなっているのを見て、なにかよからぬことを考えてしまった私をお許しください。しかし、オーナーさんもおっしゃいますが、この漫画の魅力は、ディアナの純粋さというか、素直さというか、その可愛さ、いじらしさだと思う。そして、兄貴のなんのかんのいってディアナ思いのところかな。うん、この兄さんはいい兄さんです。自分を必死で弁護してくれるディアナに、はいはいといってちょっと微笑むような、諦めのような、その表情はとてもよかった。いい兄さんです。

    そして『もっけ』が終了。御機嫌よう。好きな漫画でした。ここに描かれている世界、それが好きでした。終わっちゃうのは残念だけど、御機嫌よう。またお会いできる機会などありましたらよいなと思っています。

    引用

    • 篠房六郎「百舌谷さん逆上する」,『月刊アフタヌーン』第23巻第9号(2009年7月号),509頁。

    2009年5月24日日曜日

    Small river crab, taken with GR DIGITAL

    Morning月末が近づくと、GR Blogトラックバック企画に応募する写真、どうしようかと思うのですが、どうしようもなにも、もとから選択できるほどのストックがないので、結果やっつけみたいになってしまうというのが私の常であります。さて、今月のトラックバック企画のお題はアニマルであります。けれど、但し書きがあって、犬・猫を除く。おーまい、犬や猫以外で動物って、なにか撮ってたかなあ……。鳥もオッケー、けど鳩ばっかりだ。動物を連想させるものでもオッケー、とはいっても、なにがあったかなあ。という感じに迷ってもしかたがないので、ここは直球でトラックバック企画 アニマル に参加したく思います。

    かくして選ばれたものは、蟹です、蟹。沢蟹ってやつですね。なんでかしらんけど、うちにいた。といっても、勝手に迷い込んできたのではなく、うちのものがどこかからとってきたのでしょう。バケツに入ってもぞもぞしていたのですが、それを玄関に放してやると、瓶の下に潜り込もうとしたものだから、そこを写真に収めました。昔、私が子供のころは、沢にいって山ほどとって、晩のおかずにしたりもしたっけかなあ。けど、今はあえて沢蟹を食べようというようなことって、なくなったように思います。

    Small river crab

    おまけ

    Weasel

    前の職場にあらわれた、イタチの仔です。その後、ようとして行方は知れず。

    2009年5月23日土曜日

    『まんがタイムきららフォワード』2009年7月号

     『まんがタイムきららフォワード』発売です。表紙は里好の『トランジスタティーセット — 電気街路図』。初夏を感じさせるさわやかさが大変によい感じです。ページをめくったところ、読者プレゼントの図書カードを見れば、人物と背景の重ねかたが違うことが確認されて、文字やロゴに対し配慮する必要の少ない図書カードの方がずっと人物を押し出した構図になっているとわかります。背景にある建物は、なにがモデルなんだろう。オメデンと読めますが、なにかのもじりだとしても、私にはちょっとわかりません。あの高架からして、秋葉原の代表的なスポットだと思うんですが、なんせ秋葉原には一度しかいったことないからなあ、わからんとです。で、ちょっともやもやするんです。

    S線上のテナ』が、いったん落ち着いて、これから日常に回帰していくのかなと思っていたら、いやいやとんでもない。まだこれから大きな山がありますよ、それこそこれまで以上のことをやりますよ、そんな雰囲気でありまして、これはちょっと楽しみにしたいところです。しかし、この漫画は意外に恋愛が大きな位置を占めていて、いや、意外でもなんでもないか。あちこちにそういう動きがあって、しかし成就したりしなかったり、最後のピースが足りないからあえて動かなかったり。そうした多様な恋愛模様も見どころなんだなあと思ったのでした。

    『トランジスタティーセット — 電気街路図』、面白いなあ。今回は、ロボコン編といってもいいのかな? それともそれがメインストリームになるのかな? わかりませんけど、その導入といった具合で、なんだかそれがすごく面白そうだぞ。それも、ただロボコンにチャレンジしますっていうだけでなく、ヒロインすずのもやもやを押し流して、そして一歩を進ませるような、そんな流れになりそうで、それも今のありかたを捨てさせるというようなことにはならないんじゃないか、そういう期待がされるから、なおさら楽しみにしたく思うのだと思います。それはそうと、背の高い女子、エミ太くんですが、大変に魅力的。ハンサムな女子ってやつですね。素晴しいです。

    『執事少女とお嬢様』は、どちらが執事になるのかなと思ったら、やっぱり順当にヒロインが執事でした。なんか、四コマ描くときとタッチを変えてるのでしょうか、輪郭含めて線が強くて、印象が変わったように思います。

    『少女素数』の裏表の激しい家ってやつですが、ああいうの初めて見たとき、すごく衝撃でしたよ。うわあ、すごくモダンな建物かと思ってたのに、実態は日本家屋なんだ! そのギャップ。建物の見端ってのは、なんとでもできるものなんだなと感心したものでした。さて、漫画のキャラクターにおいても、見端というものはなんとでもなるわけですが、この漫画に関しては、描かれている特徴はそのままその人の外観を捉えてるみたいですね。ヒロインふたり、金髪茶色の目のあんずと、黒髪青い目のすみれ。ドウナガニンゲンモドキ。けど、そうだからこその魅力というものもあるから、もうなんともかんとも、これ以上はあぶなくなるのでしゃべらない。

    金髪や碧眼という設定においては、遺伝の劣性だとか優性だとかいう議論があるみたいだけど、この作者に関しては知らずにやっちゃってるってことはまずありえないと思う。だから、そのへんにつっこむのは危険なように思えます。色素に関しては単純に優性絶対といいきれるのか、これ私は自信を持って、絶対そうなる、このふたりのようなケースは絶対に生じないといい切れるほどに詳しくありません。というか、調べれば調べるほどにわからなくなるといった感じ、だって現実にそうでないというケースがあるみたいなんですもの。やーい、知ったかぶりして間違ってるじゃないか、この頭でっかち野郎めといわれかねない。そして、それ以上に、あえてやっている設定にしたり顔でつっこむという無粋をやらかしてしまうという危険性、こっちのほうが深刻かも知れません。

    雨の中でのふたりの探しもの、その所在は176ページで明らかにされているのですが、それがいつぱっクンの袋に入ったのだろう。それはちょっとさだかではない。しかし、今はまだ人物や設定を少しずつ紹介しながらの導入部と感じるのだけれど、この後、こうしたものがどう発展していくんだろう。ただ、この少女らのいる日常が描写される、その表現を楽しむ漫画として落ち着くんだろうか。先のことはわからないけど、どう転んでも自分には問題ないなという気がします。

    『温泉惑星』は、温泉で眼鏡を外さなかったら、フレームやレンズが傷む……。などというのは無粋というものです。というか、あえて眼鏡というのがよいのだと思う。というのはさておいて、サンタモニカスタージュースが3箱しかできないのなら、それでこそ幻のジュースとして売りにできるんじゃないか、なんて思ったのだけれど、相当の価格を付けないと労力に対してペイしないのか……。商売って難しいな。そう考えると、今、世界に向けて出荷されているものというのは、すごいのだな。いや、サンタモニカスターの効率が悪いだけなのかな。真面目に考えるというのは、時に面白いけど、たいていは無粋です。

    天秤は花と遊ぶ』は、愁が頭に猫をのせていて、あんなマスコットキャラ、いたっけ? と思ったけど、ああ、猫かぶってるんだよ。これまでにも何度も出てたじゃないか。自分の察しの悪さに絶望です。女学校ものらしいイベント、花愛会のおしらせがあって、みんなでお菓子を作って持ち寄って食べる。いや、メインは花と親睦だそうですが、どうしてもお菓子で親睦がメインになるよな。え、ならない? 意外に作れる謡子と、反対に意外や駄目な愁。その愁が、会に出ざるを得なくなるというその流れ、秘密がばれてという、そこの見せ方、花瓶に花が生けられていないというところなど、そのひっぱりはよかったです。愛華もよかったです。椿を背負って、その自信満々の美しさ。けど、すっかりギャグキャラ。でもいいや。ゼリエースでも問題なしです。

    それはそうと、この漫画の制服の、スカートの表現がカラーを思わせて、とにもかくにも素敵だなと。カラーというのはこういう花です。

    Calla

    『メガミのカゴ』の、漫画的展開に持ち込む、そうした仕掛けを排除するとこうなるというのが表現されて、漫画的誇張と対比される、そうした構図、面白かったです。でもってCD! 『空色スクエア』、この漫画、とてもいいな。記憶喪失のヒロイン、深雪の不安や心痛と、彼女に与えられた回答の素敵であること。人は、今が不安であればこそ、それを受け入れて、肯定して欲しいと思うものなんだろう。変えることのできる今ならともかく、そうでないからなおさら、なのだろうと思いました。うん、いい漫画です。主人公がいいやつだなあ。

    『乙女王子 — 女子高漫研ホストクラブ』は、今、なんでか知らんけど、ものすごく期待しながら読んでいる漫画で、しかし山は次回、今回はその振りだ。ああ、次号が楽しみです。『銘高祭!』は、問題もとりあえずかたづき、銘高祭のテーマも決まって、一段落ついたという感じ。悪くないです。波乱があって、落ち着いて、そしてまた波乱があるのかな? コミックスは6月12日発売。もちろん買うつもりです。

    『ダンナ様と呼ばれても』は、『ろりーた絶対王政』の三嶋くるみの読み切り。この人の短編は面白いなあ。短編集、出してくれないかなあ。なんて思う。以前、『フォワード』に載ったのがよかったんですよね。今回のは、16歳女子高生で妻というのもファンタジーなら、その妻に対して手を出せない夫というのもまたファンタジーで、でもそのファンタジーがいいじゃないか! ええ、この人の、ちょっとファンシーな漫画、それが好きなんだと思っているんですね。

    2009年5月22日金曜日

    『まんがタイムスペシャル』2009年7月号

    そろそろ、ネタばれ緩衝地帯に書くネタも枯渇してきましたよ! いや、本当に。書くんだったら、ある程度、意味のあることも書きたい。できれば、その日あつかうものに関係したことを書きたい。けれどそうそうなにか気の利いたことがあるわけでもないし、だからといって無理矢理になにかひねり出すというのもおかしいし。といったような、それこそどうでもいいことを書いて、字数稼ぎして、ネタばれ緩衝地帯のできあがりです。今日買ったのは『まんがタイムスペシャル』。ちるみさんが表紙をつとめている四コマ誌です。

    『スーパーメイドちるみさん』は、佐々木先生がフィーチャーされて、しかしろくでもない大人です。出てて下さいと放り出されるその無重力感は、小ネタなんだけど、無闇に面白くて、いいキャラクターだなあという思いを新たにしました。『たまのこしかけ』はタロット占いを扱って、けれど占いなんてものは、結果を気にせず、思ったままに突き進むのが吉です。実際、あの係長はそうしてきたんだと思う。占いの結果も意味も、自分の思うところにしたがい、自在に動かしうるという、そういう自由な気風が感じられるのはいいなと思います。

    『幼稚園ぼうえい組』は、絵本について。絵本は、実にあなどれないものがあって、大人になった今でも、ふと見入ってしまう、そんなものもたくさんあるんですね。今、うちには小さな子供がいるから、その子をだしにして絵本を買ったりするんですけど、半分以上は自分のためだろうと思います。子供のころに読んだものを選んだり、うん、まさしく、世代がバラバラでも心に残ってて話しあうことができるってやつです。そしてまったく知らないものを選んだりもして、出会いを楽しみにする。絵本の豊かであるということは、すばらしいことであると思います。

    『ポンチョ。』は、徹底してカレシと彼女が会えない漫画になっています。これは、漫画に描かれないところでは会えているのか、それとも本当にいつも会えないのか。けれど、こうして会いたいという気持ちが双方にあって、そして実際に会おうとしている、そうしたところがあるから、おかしなすれ違いも楽しく読めるんでしょうね。で、今回はホットケーキ。ちょっと食べたくなりました。今日、健康診断で朝食抜きだったんですよね。酷な漫画でした。しかし、カレシはエプロンがよくお似合いだ!

    花の湯へようこそ』は、新常連さんの登場でしょうか? 一癖ある新婚カップル。しかし、こうした人たちが自然に新常連として参加できる銭湯は、漫画の舞台としても、また町内の社交場としても、開かれた場所なのでしょう。

    『ココロ君色サクラ色』は、隔月連載。双子の男の子、女の子を扱って、『ふたご最前線』とはまた違った味わい。絵が可愛いのがいいよ。空、太陽の兄弟も、このみ、くるみの姉妹も、それぞれに、ひとりひとりが違った個性。違った個性が、みんなよく、そしてなにげない日常を背景に、素直な交流をしている。そのささやかで気持ちのいい光景がよいなと思う漫画であります。

    『ベツ×バラ』、モノ買いまくる時って、愛が枯渇してるんだそーっスよー。げにまっことそのとおり。反省はしない。『ふたご最前線』。新一年生になった子らの、一生懸命に通うんだけど、がんばりきれないっていう、そうしたところ、可愛いなあと思って、うちのちびすけはあと何年で新一年生だろう。こうして、子供の時々の成長の様子を見られるというのは、人の仕合せのうちでも、かなり大きな部類にはいるものであるように感じます。『えすぴー都見参!』は、意外にハイスペックだったSPふたり。すいません、あなどってたわけじゃないんです。しかし、このふたり、味わいのあるキャラクター。あまり目立たない、サブを固める人たちも印象にしっかりと残って好ましいというの、とてもいいと思っています。

    『ゆたんぽのとなり』は、今のインフルエンザ渦を前提としてる? けれど、いつもは非常識で楽しませるゆたんぽさんが、今回は思いがけぬ常識的なふるまいをして、その意外性が面白く、そして祐二の回想がちょっとしんみりとして、しかしあの人お母さんですね。最初、お父さんかと思いましたですよ。しかし、祐二さんは果報もの。

    『レイさんのお局日和』は、新人がレイさんに負けてないというか、すっかり主役が引き立て役になっているという、不思議な状況。けど、レイさんのような人には、こうした超ストレートで手強い人があっているような気がします。しかし、レイさんは困った人だな。身近にいたら、きっと大変です。

    白衣の男子』は、前回の伊達の迷いの続きかと思ったら、意外やそうではなく、スポットライトは花畑に当たって、そして花畑の迷いや悩みが、前回の話、伊達の物語に合流していくんですね。思えば、看護学校時代から、新人看護師になり、そして経験を積んで、少しずつ彼らもステップアップしてきたのでした。そうした時々の節目に思い悩むことがある。そうしたことが描かれるとは予想もしていなかっただけに、意外で、そしてなんだか重みを感じさせて、悪くないです。

    『ハニーtheバンドガール』、高校時代の、龍樹の結成のころが描かれて、こうして時間の過ぎてきたことが振り返られるの、面白い。特に、埴谷の、ちょっとあなどってるところ、生意気だったりするところ、今ではそんな表情見せないわけで、意外でした。面白いです。『カンヅメコーポのチリー』は、チリーが帰ってきて、一件落着。前回の時点で、こういう展開になることは予想できたけれど、予想どおりで、それがいい。次回からは、以前どおりなのかな? そんなにドラマチックでなくても、猫のいる日常がこの人独特の筆致で描かれる、それだけで充分に魅力があると思っています。

    『おおつぶこつぶ』。いい扉ゴマ。動きがあって、おおつぶとこつぶの個性の違いというのが見てとれて、すごくいい絵だと思います。はじめて見た人には、これが同級生とは思われまい。落ち着きのないこつぶと、落ち着きすぎのおおつぶ、たいていこういうふたりだと、おおつぶがこつぶの世話を焼くのだろうと思いきや、実はこつぶがおおつぶのことをよく見ていたりして、おおつぶはすぐに猫背っぽくなるからなー、さりげなくフォローしている、そうしたところが光っています。ところで、雨ポンチョのふたり、齢800歳の不老不死OLビクニさんを思い出したりしましたよ。

    『そこに愛がある限り』。超ドライな彼女は、こういうタイプの方が、結果的に愛が長続きするんじゃないだろうかと思ったり。愛というよりか、そこそこでも好きという感情が、夫婦や家族の情として深まるのかも知れない。いや、どうかなあ。これはきっと、情として深まって欲しいと思っている、そうした願望が書かせた文章ですね。そうあって欲しいんです。愛も情も、なにもかも、枯れ果てちまったんです。

    • 『まんがタイムスペシャル』第18巻第7号(2009年7月号)

    引用

    • 師走冬子「スーパーメイドちるみさん」,『まんがタイムスペシャル』第18巻第7号(2009年7月号),6頁。
    • テンヤ「幼稚園ぼうえい組」,同前,21頁。
    • 曙はる「ベツ×バラ」,同前,78頁。
    • ワカマツアツト「おおつぶこつぶ」,同前,165頁。

    2009年5月21日木曜日

    Stand!

     この間、テレビを買ったなんていっていましたが、うちに大きな画面のテレビがあるというのは実にはじめての経験で、もうなんか舞い上がってしまって、DVDを引っぱり出してきては、見るなんてことをしています。映画なんか見ると違いますよね。今までは、上下に黒い帯が入って、ただでさえ小さな画面をさらに小さくして見ていました。それが、画面いっぱいに見られるようなって、そりゃもう大迫力ですよ。とりわけよかったのが、映画『ウッドストック』でした。全然違うんですよ。以前のテレビでも、その迫力に打たれたものでしたが、映像が大きく映し出されると、その威力もずっと大きくなって、もう、本当にすごいなと、感心するばかりで、それで、またちょっとこの時代の音楽に引き付けられているのでした。ええ、CDを買いました。スライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバムを2枚ほど。ええ、Stand!などを買ってみたのですよ。

    Stand!を買ったのは、『ウッドストック』で演奏されていた曲、 I Want to Take You Higherが収録されていたからでした。やっぱり、聴いて知っている曲があるというのは大きいです。それになにしろ、これを聴いて、スライってすごい! って思ったのですから、そりゃアルバムでもこの曲の入っているものからと考えたのも自然かと思います。

    そして、聴いてみて、アルバムとなるとやっぱりライブよりおとなしくなるのだなあ。なんて思ったのだけど、いやいや、とんでもない、聴いてるうちにどんどん高揚してくるではありませんか。そりゃさすがにライブ映像で見るようなすさまじさはありませんが、荒々しさのとれた端正な演奏から、徐々に熱を帯びていく、そののぼっていく様はなんともいえないものがあります。それは、私の目当ての I Want to Take You Higherもそうだし、そしてほかのどの曲でも同様で、これはいいなあ、こんな風に演奏したいものだなあ、そう思って憧れるアルバムであると思います。

    ところで、この記事を書くために調べてみて知ったのですが、Sony LegacyレーベルからThe Woodstock Experienceと銘打ったアルバムがリリースされるんですね。2009年6月30日発売らしい。スライ&ザ・ファミリー・ストーンのStand!、2枚組で、通常のStand!にウッドストックでのライブ音源を収録した2枚目がセットになっている。他にはサンタナとか、ジャニス・ジョプリンとかジェファーソン・エアプレインとかジョニー・ウィンターが出るらしく、これはちょっと欲しくなるなあ。これで全部なのかな? それともまだまだ出るのかな? 詳しくはわかんないんだけど、この2枚目のためにStand!を重複させてもかまわないかななんて思うくらい。とかいってたら、『ウッドストック』がさらに長くなって、しかもBlu-ray化されて、再リリースされるのか。これはちょっと欲しいかも知れないなあ。

    かくして、ちょっと調べてみただけで、どんどん泥沼にはまっていく私であるのでした。金なんざ、いくらあっても足りないって感じ。本当に危険な状況でありますよ。

    12 inch Analog

    2009年5月20日水曜日

    ふわふわ時間

     『ふわふわ時間』、買ってきました。アニメ『けいおん!』の劇中歌、つい先日私も見たのですが、第6話「学園祭!」で披露された曲であります。放送では短かくカットされて、またコーラスで参加する唯の声がかれているという、いうならば特別編集版であったのが、CDともなればもちろんベストコンディションであります。カップリング曲は、フォークソングの名曲、赤い鳥の『翼をください』。こちらは第1話で使われた、のだけれど、劇中では歌は入っていなかった。それが、CDでは歌も入って、さらには編曲もしっかりしたものになって、いや、これが結構いいんですよ。『翼をください』のカバーはいろいろあるけれど、そうしたものにも負けてないんじゃない? そんな具合にとてもいい。だからこそ、最後の台詞はなかったほうがよかったなあと思ったのさ。

    さてさて、『ふわふわ時間』であります。これは原作においても、またアニメにおいても、秋山澪によるちょっと微妙な作詞が売りという、そんな歌であったはずなのですが、こうしてメロディがついて、そしてアレンジがされて、つまりは曲になるとですね、おかしくなんてないんですよ。キミを見てるといつもハートDOKI☆DOKIなんていう、実にD☆Vセンスに溢れた歌い出しも、うさちゃんだのくまちゃんだのいう狙いすぎな言葉も、もう、たいしたものですよ、ちっともおかしくなんかない。つうか、普通にかっこいいよ。よくできてるなあ。感心するばかりです。

    このシングルの売りのひとつは、マイナスワンが付いてくるってところ。Instrumentalって書いてはあるけど、いわゆるひとつのカラオケですね。それの、ギター抜きのバージョン、キーボード抜きのバージョン、ベース抜き、そしてドラム抜きのバージョンが収録されていて、さあ弾いてみろっていわんばかりなんですよ。まあ、私はきっと弾かないんだろうなあって思うんだけど、けどこれ聴いてるだけでも面白いんですね。昔、MIDI楽器使って、いろいろやっていたときに、サンプルソングをいろいろいじくるのが楽しかった。そんな風な面白さがあります。とりあえず、キーボードはなくても困らないかも、なんて思った私を許してください。

    さて、さっき歌詞をちょこっと引用して、その時のクレジット、作詞者が秋山澪となっておりますが、こんな具合に、可能なかぎり作中の雰囲気を残そうとしているところが凝っています。他には、Photo by 山中さわ子っていうのがあって、作曲者はさすがにCDでは普通に表示されているんだけど、アニメのEDでは琴吹紬ってクレジットされていて、まあこのへんは仕方ないでしょうね。私としては、作曲者が誰かってちゃんとわかる方がありがたい。けど、それでちょっと仕掛けが中途半端になっちゃったのは、残念でもあるかも知れませんね。ジャケットふたつ入れたらよかったのに。

    『ふわふわ時間』の次は、キャラクターシングルですね。もちろん買いますよ、っていうか、その前にサントラか。もちろん買いますよ。まったくもっていいお客さんだ。よく訓練されたオタクってやつはしかたのないものだと思います。

    Blu-ray Disc

    DVD

    原作

    • かきふらい『けいおん!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
    • かきふらい『けいおん!』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
    • 以下続刊

    引用

    2009年5月19日火曜日

    『まんがタイムきららMAX』2009年7月号

    なんだか関西はたいへんなことになっている。そう思われているようでありますが、平日ともなれば仕事にもいくわけで、駅前コンビニでは雑誌を購入、通勤の車内で読んで、帰りにはCDを買って、などなど、平常どおりとはさすがにいえないものの、それでも日常が過ぎていくことには違いありません。そして、今日19日は『まんがタイムきららMAX』が発売されて、当然私はそれを買って、読んで、こうして思ったことを書いたりなどして、やはり変わることのない日常を送ろうとしているのであります。

    表紙をめくってすぐの第2ページ目、きららMAX読者プレゼント、私は中村哲也サイン色紙を狙います。この人の絵、好きなんです。いや、他の色紙もいいと思いますよ。けど、ここはあえて『ぽすから』を狙いにいこうと思います。

    かなめも』、ラストのはるかの叫びは、一般的には、そうだそうだ! となるのかも知れないけれど、この展開、私的にはありだ! 布が多いに越したことはない。というわけで、私は代理さえ可愛ければそれで満足なのです。あの三角の口! 『フィギュ☆モ』は、どこぞの王女様みたいのが出てきて、こういうのがこの人の得意のキャラクターなんでしょうか。どう思う? そう問われれば、面白そう! と答えないではおられない、そんな感じです。しかし、パンツ丸出しのフィギュアが不健全と思われるのは仕方ないとして、女子高生がギーガーばりのフィギュア作ってるってのは健全なのか? と問われたら、健全と答えるしかないんでしょうね。もちろん、パンツ丸出しのフィギュアであっても、健全と強弁しますよ。

    ぐーぱん!』は、ひどい目にあわされる赤城さんが、結局可愛さ総取りかと思われたのだけれど、うわーんっ!! って! 泣く子と地頭には勝てずというがごとし。しかしいつもひどい目にあわされてるのに、それでもこうして付き合ってくれる赤城さんは、なんていいお嬢さんなんだろう。『兄妹はじめました!』は、なんて美しい黒ベタでしょう。真っ黒な髪、真っ黒なロングスカート。黒のシャツに、黒のエプロンドレス。おのずと画面はひきしまり、ハイコントラスト! うっとりします。そして、兄のいつになく神妙な顔付きに、なんだか冗談めかした行動に隠した本心のしっかりと見えるようで、真面目ないい兄さんだなあ。私はこの兄さんが好きです。

    ○本の住人』も若干シリアスを感じさせる話。のりこの子供の頃の話は、切なさがすさまじい。今回も、ほんのわずかであったというのに、その切なさははんぱではなく、妹のりこを安心させるため、それだけで人生における選択肢を狭めた兄さん。いつもはちゃらんぽらんに見せてるけれど、でもやさしいいい兄さんじゃないか。私はこの兄さんが好きです。きっとのりこも好きなんだろうな。そんなことがなんとはなしに伝わってくる回でした。いい話でした。サバインフルについてコメントする兄を見つめる妹の、いつになく不安そうで、けれどそれをどう表現したらよいかわからないという表情。ぐっとくるものがありました。いろんな意味で。それはそうと、サバインフルも渦中数日ともなれば、まあ、日常よ。いうほど怖くないですよ。不安もまた日常でありますよ。あんな妹がいたらなあ。

    『くすりのマジョラム』、鈴城芹の新連載、お姉ちゃんは魔女だったのです、というか134センチ、眼鏡、白衣、薬剤師、26歳、最高じゃないですか! しかしごつい帽子だなあ。あれは、じいやだったりはしないのかしら。魔法の薬を調剤する魔法の薬剤師、なんだけれど、魔法だなんてえらくファンシーなものを持ち出してきたわりに、変に現実主義的で、薬事法やら詐欺やらと、こちらの私らの暮らす地平の常識をしっかり持ち込みながら、この物語世界のルールをしっかりと印象づける、いい第1話であったと思います。ところで、ディドゥーンでしいたけの妹さんも眼鏡ですね。気付いてませんでした。あまりにも自然にとけこんでいたからでしょうか。眼鏡は顔の一部とはよくいったものです。

    『ぽすから』も眼鏡。そして浴衣。積極的になりきれない少年、そして女の子が、すこしずつ距離を縮めながら、そして気持ちの丈を明らかにする。朴訥で、ちょっとぶっきらぼうで、けれどそれが照れ隠しであることは誰もに容易に知れるから、それがもうなんだか見ていて微笑ましいやら、照れ臭いやら。この感触はいいなと思って、すなわち私はこの漫画が好きです。

    はなまるべんと!』は、わあい、近藤副会長の出番が多くて嬉しいなあ! などと馬鹿なこといっちゃいけないんじゃないか、と思うくらいに雰囲気を違えて、それは主にあやめの態度によるもので、ここ数回の流れがいよいよまとまりつつあるのでしょう。あやめは破壊的に元気であってほしいけれど、こうしたしんみりとして、けれど素直な心情を見せてくれたりする、そんなところもよいなと思ったりしたものでした。気になるのはスズがどう関わってくるか、でしょうね。それはまた次回以降の楽しみとして、そうそう、新聞、どこかで見た覚えのある記事でした。

    『つかえて!コハル』は、ちょっと『ひろなex.』を思わせる絵柄。キャラクターの可愛さ、魅力を全面に押し出して、そして唐突なコメディに持ち込んで、これから他の漫画とは違うという、この漫画独自のなにかが強く感じられるようになれば、いけそうだという気がします。ほら、切腹します、とかさ、わりといい感じ。あと、急いでパン買ってこいとかも。と、こうしたことを思って、ふと考えたのですが、今のこうしたキャラクターを全面に押すタイプの漫画は、類型的でさえある愛されそうなキャラクターを用いながら、それでどれだけ差別化を図れるかが勝負であるのでしょうね。スタイルで勝負。そう考えると、大変な仕事だと思います。

    超級龍虎娘』の魅力は、絶対的に可愛くあらねばならないはずのヒロインが、簡単に可愛くない表情をするところかと思って、龍楼しかり鞠虎しかり、しかしその可愛くないはずの表情さえも愛おしい。自覚のないボスなんて最高じゃないですか。必死で体面つくろおうとするボスも最高じゃないですか。なんて可愛い人だろう。可愛くありたいのさ。けれど、そうでばかりもいられないのさ。ちょっとは格好もつけたいのさ。一面的ではない、そんなところがいいじゃありませんか。お出かけにうきうきとして、目的さえも忘れてしまう。そんなところなんて、最高じゃありませんか。しかしダシマキって名前は、やっぱりちょっとはずかしいのか。いい名前だと思うのだけどなあ。もちろん龍楼だっていい名前です。これが、普通に可愛い女の子女の子した名前だったら、こんなには好きになってなかったろうと思います。

    『りくのすてーじ』は、2話連続ゲストなのだそうです。って、最近は3話じゃなくて2話なのか。きびしいなあ。『りくのすてーじ』は、演劇部を舞台とする漫画で、はずかしがりやの自分を変えたいと演劇部に飛び込んだヒロインがどう変わっていくかというのが描かれるのでしょう。彼女がすこしずつ自信を掴んでいくというのが話の中心なら、ちょっとしたことで真っ赤になるヒロインの可愛さというのが、見せ方の肝なのでしょう。なんかふにゃふにゃした絵柄に魅力を感じる人なら、魅力は数倍増になるかも知れません。

    『ストロマロジック』って、やっぱりサブタイトルが違ってるんだ。先月は「炭酸飲料一気飲み部」。今月は「押し売り忍者!」。このふたつの話って、関わりあってるのかな? よくわからないけど、この忍者の話は結構気にいっています。ちょっとバイオレンス。けど、このバイオレンスはいいバイオレンスだと思います。『あぶさーどライフ!』はネギ。もちろんネギといったらあれです。

    ぼくの生徒はヴァンパイア』はチェスが題材で、ところであの扉ゴマの美しいお姉さまは誰ですか!? ずいぶん前のことですが、一時期チェスに凝ってたことがありました。セットも持ってるんですよ。黄楊でできたの。『鏡の国のアリス』がきっかけでチェスをやるようになって、それでルイス・キャロルの写真の本なんかも持ってるんですが、そこにはふたりの婦人が差向いでチェスをさしている写真があって、キャロルのおばですね、ええと、このページの写真です。ええと、こっちの方が大きいな。今回の『ぼくの生徒はヴァンパイア』に出てきたチェス盤というのが、その写真のチェス盤を彷彿とさせて、さすがはハイソサエティだ、さすがは淑女だ、それだけで嬉しかったのでした。

    そして、メイベルの戦略、引き分けに持ち込もうとするあたり、このへんは実にチェスらしいアプローチで、駒はスタントンタイプだし、白のキングは黒のマスにいるし、すごくちゃんとしてる。それでいて話はチェスについて知らなくても楽しめるものになっているのだから、たいへんによかったです。

    そして僕らは家族になる』では、なんだかひとりで先行して、ひとりで完結している咲苗さんが、可愛いというかちょっと迷惑というか。でも、この人の優柔不断あるいは一歩退いてしまうという性格、その考えの根拠のようなものはわかるように思います。けれど、それは一見やさしさに見えて、誰にもやさしくないんだよな。逃げちゃ駄目だよ、踏んばるときにはぐっと踏んばるんだ、苗さん!

    まん研』、ズブぬれでザンゲは、若い人には通じないんじゃないかと心配しながら、実に『まん研』らしい振りだと思います。話題は雨、コミケにおけるくじけない人たち。しかし、雨だろうと雪だろうと嵐だろうと、本当に並んじゃう彼らの情熱というのはすごいものがあると思います。私に足りないものは、その情熱ですよ、実際。そして雷に怯えるしいな。なんて魅力的なんだ。そして香澄の秘密がひとつあきらかになって、なんとそうでしたか。そいつは気付いていませんでした。ただただ、いい後輩であるってだけなんだと思っていました。

    『表色89X系』は、験担ぎをするヒロイン。気にするタイプの人は、際限なく気になるものみたいですね。実際、気にしたところでどうしようもない話ではあるのですが。タロットのやりなおしですが、流派なのか、人なのか、やりなおしをすることはあります。カードがすべて逆位置で出た場合などに、その占いを破棄してやりなおすということもあるそうで、けど私はどんな出方をしても、やりなおしはしなかった。だから占者によるのでしょうね。と、本編はそんな話ではありませんでした。あまりにネガティブであり続ける自分の人生にうちひしがれて、日常にネガティブを探し求めないではいられなくなった、世界一不幸な少女の物語です。でも、ちょっと沈んで、それで安定。いつもにこにこ笑っている。いい娘さんだと思います。

    ワンダフルデイズ』、たきびさんもそういうの気にするんですね。いつも圧倒的に優位に立ってるような人なのに、それがこんなにもやられちゃうっていう、その様は逆にその魅力を引き立てるようで、だからこそでしょうか、この人にならこの先一生ずーっとバイキンあつかいされるのも悪くないな……。だから、小川君、君の反応はしごく普通のものです。しっかりとゆるがずそのまま育っていってください。

    MAX MAIL BOX。載った! 載るんだ、これって! これまでずっと編集の人が考えてるんだと思ってたよ! しかし、これはまずいことになった。なんだかすごくいたたまれません!

    • 『まんがタイムきららMAX』第6巻第7号(2009年7月号)

    引用

    • 中平凱「フィギュ☆モ」,『まんがタイムきららMAX』第6巻第7号(2009年7月号),35頁。
    • 榛名まお「ぐーぱん!」,同前,51頁。
    • ねことうふ「つかえて!コハル」,同前,112頁。
    • 同前,109頁。
    • 荒井チェリー「ワンダフルデイズ」,前掲,215頁。

    2009年5月18日月曜日

    Vandoren Optimum AL3 Alto Saxophone Mouthpiece

     注文しました。アルトサクソフォン用マウスピース。バンドーレンのAL3ですよ。以前、Optimum AL3の選定品が出たら、その瞬間に買うけどな、なんていってましたけど、それがついに出まして、昨年末くらいからじっと待って、ようやくでした。積極的に探そうとしていたのは今年の頭くらいの時期でしたけど、取り扱いがもともと少ないのか、それとも数が出ていないだけなのか、選べるほどに数がなく、だからこれはどこかの店が選定品を売り出すのを待つのがよいだろう。そう考えての数ヶ月でありました。けど、今はRSSリーダーとかがあるから、こういうのチェックするのも楽でいいですね。ショップサイトに日参するだなんて、そんなめんどうくさいこと、私にはようできません。

    AL3を試してみたいと思ったのは、最近出たマウスピースで、どうも評判がよいらしいというからでした。これまでのバンドーレンのマウスピースとは違った音の出がするという話で、そういう話を聞くとなんだか面白そうだなと思うものでして、そしてソプラノサックスを買ったときには、思い切ってSL3を選んでみた。S27とSL3を比べてみて、タイトで硬質な音色が美しいS27と、暖かみないしは膨らみの感じられるSL3、どちらにしようかなと思って、SL3にしたのでした。その後、SL3で吹き続けていますけれど、気に入っています。じゃあ、AL3も気に入るんじゃないかな。ずっとA20を吹いてきたけれど、ちょっとしんどく感じるものだから、違うマウスピースも試してみたいと思った、そういう事情も手伝ってのAL3購入でありました。

    商品は、今日注文したところなので、まだ手元には届いていません。だから届く日が楽しみです。というか、その前に支払いがあるのですが。商品価格に選定料が上乗せされてるのかな? 定価が14,700円のところを15,960円で買うから、選定料は1,200円なのかな? これを高いと見るか安いと見るかですけれど、ちゃんとしたものがこの価格なら、むしろ安いくらいだと思います。

    これにYAMAHA YAS-875、リガチャーはTシリーズを合わせます。それがどういう結果になるかはわからないけれど、きっと変化するだろうという予感があるから楽しみです。楽器はまたちょっと調整に出したほうがよさそうと思っているところですが、楽器の調子を上から下まで確認する意味も含めて、しっかりスケールなどをさらってみようかななどと思っています。

    引用

    2009年5月17日日曜日

    わたしの大切なともだち

     袴田めらの新作、『わたしの大切なともだち』の第1巻が発売されたとのことで買ってきました。この漫画は、双葉社の雑誌『コミックハイ!』の公式サイト、Webコミックハイ!にて連載されておりまして、はじめてそのことを知ったときは、もうそういう時代になったのかと、遅まきながら気付いて、驚いて、そして毎月の掲載を楽しみにしていたのです。で、それがこうして単行本としてまとまって、じゃあ買わないわけにはいかないな。こうしたWeb連載という試み、そしてそこから単行本としてリリースされるというサイクルを応援したいと思ったのでした。もしかしたらあと数年もしたら、雑誌という媒体は縮小して、こうしてWeb上で展開されるものとなって、さらには単行本も電子化される。そんな日がくるのではないか。その先駆けのように感じて、だからちょっと応援したくなったのです。

    『わたしの大切なともだち』は、なんだかちょっと不思議なお話。ヒロイン海老澤笙子は、美術大学の受験に失敗。それで専門学校に進路変更したのですが、そこで出会ったのが、幼馴染みの田中橘。しかし、彼女は記憶を失ってしまっていた、しかも、ついこのあいだ街で出会ったときには、そんなそぶりまったく見せていなかったというのに……。

    笙子が、専門学校で出会う、個性的な友人たち。彼女らと一緒に、自分の夢とはなにであるかを確かめながら進んでいこうというようなプロットは、なんだかすごく健全で、どうしても迷いがちで、同時にあきらめがちである人 — 、私のような人間にとっては、皆おなじように不安を感じながら進んでいくのだという安心感を与えてくれるだろう、そのように思われて、そして自分もくじけずに進んでいこう、そう思わせてくれるものがあるように思います。

    けれど、この漫画は、そうしたデザイン系専門学校にて学ぶ学生たちを描きながら、主には笙子と橘の関係を描いていて、むかし、小学生のころにはあんなになかのよかったふたりであったのに、だんだんに心がはなれていってしまった。大切な友だちと思っていたのは私だけだったのだろうか。そうした思いに苦しみながら、記憶を失ってしまった橘を前に、記憶が戻ってくれなくてもいい、記憶が戻れば私の嘘が明らかになってしまう、揺れている笙子の心の模様が切なくて、はたして橘の記憶は戻るのか。戻ったその時には、笙子と橘の関係はどうなるのだろうか。きっと悪くはならないだろう、そう思いながら、そうなってくれることを期待しながら、そのプロセスがどう描かれるのだろうと、不安をともに、楽しみに思っている漫画であるのでした。

    作者、袴田めらは、ちょっと隙のある、そんな雰囲気をもって話を展開しながら、独特な筆致で感情のゆらめく情景を描写する、そうした作風が魅力で、だから『わたしの大切なともだち』のこの後に期待がたかまります。きっと、私の心をぎゅっと掴んではなさないような、そんな情景が描かれるのだろうと、そうした思いが期待を後押しします。先を急ぎたいとは思わないけれど、結末へ向かうその途中でおこるだろうできごとを思えば、気持ちは少し急いて、そうした気持ちの動いてざわざわとするところもまた、この漫画の力で魅力なのであろうと思います。

    2009年5月16日土曜日

    『まんがタイムファミリー』2009年7月号

    『まんがタイムファミリー』が出て、いよいよ7月。発売日が日曜にかちあったため、一日前倒しされて今日出ました。で、昼過ぎにコンビニにいったら、一冊しか残ってなくて、これは午前で売れてしまったのか、それとも土曜発売の場合は冊数をしぼっているのか。四コマに限らず漫画雑誌は、通勤時の暇潰しみたいにして読む人も多いというから、こういう出荷調整もあるのかも知れません。こと、私のいくコンビニは鉄道会社系の駅前コンビニだから、なおさらそうであるのかも知れません。

    『おかいあげ!』は、先月終了した『派遣です!』のおおた綾乃の新作。けれどまだ連載ではなくて、ゲスト扱いです。百貨店を舞台とした職場もの、OLものでありますが、今回は前作と違いスーパーでスペシャルなヒロインではなく、普通の、あるいは普通よりちょっとどんくさい、そういった感じのヒロインです。新人の大丸百花、先輩の高島やひろがメインにいて、そしてフロアマネージャーの伊丹凛がふたりをしめると。パターンとしてはオーソドックスに感じられるけど、おおた綾乃らしい動きの見せ方、話の運びは、読みやすくそして楽しくて好感触です。

    ちょっと話はそれて。五百円玉貯金は私もやってましたが、ピタパを導入してから五百円玉の貯まる速度が落ちまして、ちょっとさみしい感じになっています。

    ラディカル・ホスピタル』は人の印象について。髭中心で関羽とかダリとかが出るのはすごいけど、ああいう髭は現代ではちょっと見られない感じ。やっぱり機能的でないからでしょうけど、機能的でないからこそのお洒落であるのに。想像と違ってがっかりというのは、ラジオだけでなくアニメ声優なんかもそうでしたが、今は声優さんの露出も増えたし、それに綺麗な人も増えたしで、あんまりがっかりすることってなくなったように思います。

    印象についていえば、私もずいぶん悪印象らしく、どうも暗いとかやばい人とか、そういう評価が最初にあるそうで、いやな話だなあ。でももういいや。もう慣れました。

    『ふーare you!』では、画期的な熱冷ましの方法が紹介されてましたが、そうか、道理で風邪をひいたら長引くわけだ、納得しました。

    『橘さんのトリセツ』。これ、ひょうひょうとしてかなり好きな感じです。エンターキーのくだりは、正直笑いごとでなく現実にはよくある話で、いや、本当。でも、橘さんほど、全方位に機械苦手な人はさすがに現実に出会ったことがありません。だからこそ、魅力的と感じるのでしょうか。田舎においては、皆と立場逆転するってのは面白い。機械ではなく、ああした民具を扱える方が、人間としては魅力的に感じます。もちろん私はからきしだめです。

    『ことりコーラス』は、なんか好感触。合唱部ものであるそうですが、明るくて自信もあって歌もうまい細谷カナと、人見知りで自信もなくて、けどものすごく歌のうまい三浦るりのふたり。カナの勢いにるりが巻き込まれる、そんなタイプの漫画のようだけれども、それは同時に凸凹友人ものという感触もあって、よさそうです。

    『よめヨメかなたさん』、どんどん面白くなってきました。父と息子が、同時期に同名の妻と結婚するというところはちょっとアクロバティックだけど、けれどそれ以外は予想以上の普通さで、けれど特別おかしなことをしているわけでもないのに面白い。特に息子の妻のほうのかなたさんをメインに扱った今回、テンポもいいし、ネタもシンプルで面白いし、たいへんよかったです。

    『東洋に魔女』は、ヒロイン夜子のエキセントリックを楽しむ漫画であると思うのですが、それがただかわりものってだけでなく、「黒板」なんかがそうであるように、思いもしなかったものを見せてくれる、ちょっとワンダーなところ、それがいいのだろうなと思います。

    ネコ式生活』、弁当屋のおやじは、それ、わざとだろう。『一緒にかえろう』は春の横着というか気にしなさすぎというか、そのざっくばらんとした性質は大変に魅力的と感じます。『おはよ♪』は、あの再婚夫婦は、両者ともに大切な家族を失くした人であるのでしょうね。そう思うと、ちょっと深い。大きな喪失感に押し潰されそうだった時に、必死で支えあった、いわば同志としての信頼などもあるのだろう。そう思うと、なんか込み上げてくるものがあります。『おかあさんがいっしょ』、私もあんな風にしてピザを食べたいと思うけど、若いころならともかく、今はもう無理だろうなあ。しかし、たまにはピザを食べたい。とんかつののれんはよかったなあ。ああいうの、売ってるの? 『おこしやす』。かきつばたはうちの近所にも咲いてました。

    Iris

    私のカメラにはズームがついてないから、寄れなくてこんなだけど、季節の花というのはよいものです。ああ、私はそのときひとりでした。でも、別に不仕合せじゃないよ、たぶん。

    『田園トリオ』は、オーソドックスでちょっとベタ。きらいな感じじゃない。だから、なにかぐっとくるポイントがあれば、評価もぐっとあがるように思います。あ、いや、眼鏡を出せっていってるわけじゃないです。もちろん女言葉にしろっていってるわけでもないです。そこは誤解しないでいただきたい。

    『ぐ〜すかうめ実さん』、お父さんが可愛いなあ。愛娘に気にかけてもらえている。それだけできっと父というものは嬉しくなっちゃうんだろうなあ。で、思いもしなかった展開に、なんと反応したらいいかわからなくなってる娘もまたいいじゃないですか。おそらくは、よくある家族の風景、美しい誤解なんだろうなと思います。

    • 『まんがタイムファミリー』第27巻第7号(2009年7月号)

    引用

    • ともち「おはよ♪」,『まんがタイムファミリー』第27巻第7号(2009年7月号),110頁。

    2009年5月15日金曜日

    TOSHIBA REGZA デジタルフルハイビジョン液晶テレビ Z8000

     テレビを買いました。といっても、私個人で買ったんじゃなくて、家族のものなんですが。とりあえず立て替えておいたけど、いずれ返してもらいます。さて、テレビを買ったというのはもう一週間くらい前になりますかね。ゴールデンウィークの前日に電器店にいきまして、価格もろもろを交渉して、そしてゴールデンウィーク明けに注文したら、その翌々日に届いてしまいました。東芝のREGZA Z8000です。新商品。37型は5月の中旬だか下旬だかに出るというから、それくらいのつもりでいたのに、もう出荷ははじまっていたというのでした。しかし、なぜこの時期、このタイミングでテレビを買ったのでしょうか? それは、いずれ出るアニメ『けいおん!』のBlu-ray Discを、最高のコンディションで視聴するためさ! いや、嘘。ほんとに嘘。いかな私でも、そこまで根性座ってません。

    テレビがですね、異音を発するようになってしまっていたんですよ。ブラウン管のテレビだったのですが、ビービーという音がずっと鳴っていて、気になってしかたがなくって、いやな音だなあってずっと思ってて、私はアナログ停波まで買い替えないつもりでいたんだけど、さすがに音を上げたってわけです。また、7月ごろにまとまった金がはいるというので、あ、私がじゃないですけど、テレビ買っちまおうかと。それで調べたら、ちょうどモデルチェンジ時期だ。型落ち品を安く買ってもいいけど、ここは思い切って新型にしよう。というわけで、東芝 Z8000とあいなりました。REGZAにしたのは、外付けハードディスクに録画できるという、その機能性を評価してです。また、映像がぎらぎらと派手な見せ方するんじゃなく、家庭内での視聴に向いたチューニングをしているという話をどこだったかで聞いて、それはいいなあと、そうしたことからREGZAに決めたのでした。

    しかし、テレビがきて、生活変わりましたね。画面が大きくなったというのもさることながら、綺麗です。うちはNHKを見る、それもドキュメンタリーなんかを見ることが多いのですが、ものすごく綺麗。自然の風景がきれい。もううっとりするくらいに綺麗。比較にならないだろうとは思っていたけれど、想像以上で、もう、これは戻れない。そう思うほどでした。

    しかし画質向上の恩恵は、ネイチャーもの、世界遺産ものなんかにももちろん見られたのだけれど、それ以上にアニメがすごかった。いやあ、以前アニメにBlu-rayって、圧倒的にオーバースペックじゃないですか? なんていってましたけど、いやいや、いやいや、とんでもない。線のシャープに表現され、また塗りの綺麗なこと。メリハリがあって、今まで見てたのっていったいなんだったんだっていうくらいにすごい。アニメこそフルハイビジョンだよな。そう思いました。

    今、私の見ているアニメったら、『けいおん!』だけなんですが、『けいおん!』待ちで見る『バスカッシュ』が強烈に綺麗で、また『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』のCMが強烈に綺麗で、赤い文字で表現されるタイトルロゴにはうっとりさせられるくらいで、けどさ、なんか『けいおん!』って画質落としてるの? なんかちょっとぼやけてない? TBS-BSだったらどうだったかなあ。いや、ええねん、どうせBlu-ray Disc買うんだから。けど、いや、ほんとうに、画質が上がるということは、まさに世界が違って見えるってことなんだ、心の底から思いました。

    REGZA Z8000を買って、もちろんハードディスクも繋いで録画可能にしています。それがまた便利で、今はどんなハードディスクレコーダーでも同じだろうとは思うんですが、毎週、番組を探して録画してくれるものだから、昔みたいにちまちま予約設定する必要なんてないし、また予約するにしても、テレビにばっと番組表を映して、そこからちょいちょいと選ぶだけで録画予約が完了して、おそろしく便利です。また、ほかにメディアを必要としないというのが素晴しく、見たくなったらボタンひとつで録画されている番組を一覧できる。テープを引っくり返して探す必要なんてもうないのですね。もう、本当に便利で便利で、ただこれまでケーブルテレビのセットトップボックスに録画した番組をREGZAに移せないというのが残念で、別の機械を買ったらできるんでしょうが、でもまあいいや、人間あきらめも肝心です。

    思いがけず便利だったのは、今すぐニュースでした。局を設定しておいたら、ニュースを自動で録画しておいてくれまして、ボタンを押すと最後に録画したニュースを見ることができるという機能。これがもう意外に便利で、ちょっとニュースを見たいと思ったときに、とりあえず当座の最新ニュースを見ることができる。時間待ちする必要もないし、ニュースやってないかとチャンネル次々切り替えて、なんて手間もいらないし、よくできてるなあと、感心するばかりでした。

    とりあえずの感想はこんなくらいでしょうか。ああ、液晶について。Z8000からノングレア液晶でなくなったので、映り込みがあるんじゃないかと気にしてる方も多いみたいですが、うちの環境においてはまったく気にならない程度です。って、この間までブラウン管だったんだから、あんまり参考にならない意見かも知れませんけど、でも暗い画面であっても想像以上に映り込みは気にならなくて、だから私は光沢液晶でよかったと思っています。

    引用

    2009年5月14日木曜日

    論理少女

     この漫画の存在に気付いたのは、第2巻が発売されて、平積みになっているのを見たからでした。だから、今からふた月ほど前のこととなりますか。平積みにされているだけでなく、ポップも用意されていて、そこにはどことなくとろくさそうな眼鏡女子が! でも、買わなかったよ。ヒロインが眼鏡ってだけで、買うなんてありえないよな! その店で買えばペーパーもついてきたんだけど、それでも買わなかったんだ。しかし、その後別の書店でサイン入り第2巻を発見。おおお、これは買うべきか? と思ったけど、踏み止まった。すごく単純な理由。手持ちがなかったのです。だから、ちょっとした賭けをしたのでした。次、その書店に『コミックエール!』を買いにきたときに、サイン入りの2巻が残っていたら買う、残っていなかったら金輪際あきらめる。そして私は、賭けに負けたのでした。そう、サイン入りの2巻が、1冊だけ、残っていたのでした。

    買って、そして気になる第1話の続きを確認して、いやね、私の買った店では第1巻の第1話、途中まで試し読みできるようにしてましてね、で、若野君のルービックキューブ対決の結果が出るという直前でストップ。おーまい! とは思ったけど、あの結論は私でもわかりました。多分小手調べってことなのでしょう。

    『論理少女』は、論理少女と呼ばれる芝いつき、眼鏡の彼女のふたつ名こそがタイトルとなっていますが、主役は彼女ではありません。主役は、津隠中学校に転校してきた少年、若野祐。どことなくぱっとしない彼は、ここ津隠市ではやっている津隠問答にやられてしまう。その場その場で、即興で問題を出し合うという遊びにまきこまれて、賭け金ふんだくられて、しかしそうした状況を黙って見ている芝いつきではなかった。彼女は生徒会長としての威信をかけて、津隠問答を悪用する連中を成敗する。彼女の武器は論理。設定された条件を頼りに答を導くだけでなく、出題の隙をついて状況を有利に運ぶ、規定されていなければインチキだってオッケーという、津隠問答独特のルールを盾に、連戦連勝を続けるいつきの魅力にまいりながら読むのがよい漫画であります。

    いや、けど、実際、若野君は読者の代理人なんだと思います。シャーロック・ホームズにとってのワトソン君といったらいいでしょうか、彼の凡庸さがあるからこそ、ホームズ、じゃないや、いつきの論理の冴えは光り、またその解説も得られるわけです。論理に自信がある読者なら、いつきによる解決がなる前に、自力でチャレンジするのも一興でありましょうが、私は論理はからきしなので、もう完全にいつき頼りです。で、そのいつきが、なんでそんなに? といぶかしく思ってしまうほどに、若野のことを気にいっている模様で、あれこれと使役する。それはもう夢のようなのではなくって? いつきいわく、若野はそのカンのよさを認められている、という話ですから、主人公がまったくの足手まといになっていないというのはよいところかと思います。ピンチがある。え? いつき、負けちゃうの? そう思わせて、しっかりピンチを切り抜ける。そうした時に、若野のちょっとした気付きであるとかが役立ったりするんですね。ちくしょう、いいポジションだと思います。

    さっき、悪人を成敗する、だなんていってましたが、それだけでなく、いつき以外にもいる天才少女たち、彼女らがライバルとしてかかわってくるところも面白く、第2巻はいつき対7人天才少女、頂上決定戦の様相を見せています。こうした美少女もりだくさんという外連味も面白いなと思ったりなんかして、まあ、ちょっとやりすぎと思わないでもないけど、それで若野がちょっともてちゃったりしてね、で、いつきがちょっとふくれたりしましてね、なんだそりゃ、なんて思わないでもないけど、でもわりかしいい感じに話は動いていきます。論理ゲームばかりじゃうるおいがないでしょう。私はそもそもパズルとか、頭使うのが面倒くさくてやってられないたちなので、だから論理ゲームをベースに置いて、そこに美少女満載、ライバルとの対決、そして勧善懲悪といった味付けがほどこされて、それで楽しく読めるといった風になっているのです。

    しかし、この論理ゲームですが、こういう問題を作るのは大変だろうなと思います。複数解の扱いとかね、許可されるケースもあるけど、条件によっては不可となっていることもあって、しかし通した答に別解があったらどうなる? で、論理に長けた人ってそういうの見付けちゃうもんなんだ。だから、問題作る人は大変だろうなって思うんですね。あんまりに無理無茶強引にならず、けれどありきたりな、いやどうしても完全オリジナルみたいにはいかないだろうとは思いますが、けれどある程度論理ゲームやパズルに興味感心のある人に、なかなかやるじゃんと思わせるような冴えた問題を用意していかないといけない。このあたりは、推理ものと同じような難しさを抱えているように思います。

    でも、私はさっきからいっているように、論理とか理屈とかからっきしだから、問題に不備があっても気付きません。で、その場で指摘されなければ、通るのが津隠問答のルールでありましょうから、だから私はきっと津隠市では生きていかれません。それはそうと、芝いつきが1位でスーパーヒロインというのはかまいませんが、というか当然そうであるべきだと思いますが、ミーナ・センが6位というのはちょっと解せません。まあ、単に好みの問題で、ちっとも裏に論理があるなんてことはないんですが……。まあそうしたことはさておいても、優秀な女性が好きだという私には実に向いた漫画であることは間違いなくて、いやもう、芝いつきは最高です。

    • つじ要『論理少女』第1巻 (シリウスコミックス) 東京:講談社,2008年。
    • つじ要『論理少女』第2巻 (シリウスコミックス) 東京:講談社,2009年。
    • 以下続刊

    2009年5月13日水曜日

    『まんがタイムラブリー』2009年6月号

    13日は『まんがタイムラブリー』の発売日。『ラブリー』は、今なんだか誌面刷新の最中であるようなのですが、今月はさすがに覚悟していたからか、先月ほどに戸惑うようなこともなく、スムーズに読むことができたように思います。けれど、思い返してみれば、はじめて買ったころの『ラブリー』の雰囲気に戻りつつあるような気もしないでもない、そんな気がして、それは多分レディーズコミック誌に掲載されそうな漫画の存在がためかも知れません。

    『夏生ナウプリンティング』は、印刷屋で働く人たちを扱って、わりと面白いです。今回の消しゴムで消す話、紙ヤスリを使うという話、聞いて知ってはいるのですが、あらためてこうして読んでみても面白い。いろいろな仕事の現場にきっと存在するだろう、その仕事に固有の話、そうしたことを知るのはやっぱり面白いものだと思います。だから、こうした情報が出尽くしてからが勝負なのかと思います。

    うさぎのーと』は針羽の可愛いこと! しかし針羽が可愛いのはいいんだ。それよりも、片岡がおそろしく可愛く描かれてるというのは凶悪だなあ。あれは迷うわ。いや、ほんまのはなし。

    『たたかえ!WACちゃん』は、台詞の一部を抜き出してみたら、あやしいやら、あぶないやら。あたしやります(男と)!! とにかくヒロインが自衛隊に入らないでは話が進まないから、なんとかして逆転合格するんだとは思ってたけど、実際ああいうことってあるんだろうかって思ったりもしたんですが、まあいいや気にしない。スーツ大好きの私は、ちょっと今回のヒロインにほだされかけたけれど、やっぱり共感しにくいということは変わらず、けどこういうヒロイン像はレディーズコミックにはわりかしあるように思います。浮き足だったこの人が、今後の訓練でどんな風になっていくんだろうと思うと、ちょっとそれは面白そうかも知れないと期待させます。

    パニクリぐらし☆』は耳が痛い。いやもう、こないだ棚を増やしたところですから。けど、あれでもどうも焼け石に水っぽい。そうやって、大量の物とたたかってみてわかったんだけど、整理されている家、部屋っていうのは、そもそもものをため込まないのよ。捨てるのよ。けど、捨てられるならあんなにはならないわけで、けど兄貴はあれらのものをどうしたのだろう。捨てた? そうでないのなら、片付けの秘訣というものをうかがいたい。いや、ほんと、マジで。とりあえず私は、いつか家を一件、収納目的で買わねばならないのではないかと怯えています。

    『ハルの見えない望遠鏡』は、まだはじまったばかりだからなんともいえないけれど、雪女のお嬢さんと村の人たちとの交流が描かれる? ちょっと期待してみようと思います。

    『ミニっきえにっき』。こういう人情っぽいのを描かせたら、ナントカはすごくよい、そんな風に思ったのは、ミニ様の両親の馴初め話を読んだからなのか。母の日の情景、ミニ様の境遇を知って、素直にやさしくできない少年の不器用さ、あれはよいものがあります。なんで、小学生男子ってああなるんだろう。ツンデレ? 知らんけど、でもなんでああいう風にしかやさしさを表現できないんだろうって思います。今回のインパクトは、サラ、フレッドの親父さんでしょうか。なんで、あの人だけ無闇にリアル志向なの? しかし、ミニ様は本当にいいこだと思います。そりゃサフォークも泣くよ。ミセスコリーも泣くの? いや、本当にいい話だったと思います。

    『いとしのフェルナンド』もよかった。うそつきなのかなんなのか、いったことが思わず本当のようになってしまって、そしてそれが落ちにまでちゃんと繋がって、うまかったなあ。アンナの不安と、不安ゆえの情緒不安定から発せられた嘘と、そしてそれを本当にしてしまうフェルナンドの不思議と、そして解消される不安。面白かったし、それだけではないよさというのが感じられたように思います。

    『ココロノミカタ』は、絵の可愛さ、魅力を抜きにすれば、ミカタ、ええとちいさなお猿、猿? 彼の一生懸命話してるところや、それがちっとも通じてないってところ、あれが面白くて、好きです。さっきの飲み物もっとないのかな ウマかったんだけど…とか、なんともいえない味がありました。

    『縁側ごはん』は、地味に好きだったのが、なおさら好きになったように思います。しかしあのキー坊は学生だったっけ? なにして生活している人なんだ? 雨の日に食べるお弁当はどんなのがいいだろうと、実際にいろいろ作って試してみる、趣味人なんだかマイペースなんだかわからない。けれど、そののんびりとした様子はたいへんによいと思います。ところで、あのお稲荷さんは三角のじゃないんですね。柱のコメントがなかったら、きっとなにかわかりませんでした。

    『三日月すぱいす』は相原さんの可愛いこと! 結構好きな漫画ですが、なんで好きなのかっていわれたら、相原さんが可愛いからだ、それ以外になんと答えたらよいものか。細見くんのむくわれなさというのも面白さだと思いますが、それはまだ相原さんのキャラクターを越えるものではないと思います。

    『蝴蝶酒店へようこそ』はアネモネの可愛いこと! どうにもこうにも食えないオーナーの秘密、人を食ってるという秘密が明かされる!? と見せて、いやあ、やっぱり食えない。人が悪くて、面白いなあ、好きだなあ、この漫画は続いてくれたら嬉しいなあ、そう思います。

    『ヒーロー警報!』は、最後の最後まで、ああした話に持っていくことはないのではないかと思っていたから、思った以上にストレートなラストに逆に驚いて、けどHは友人にめぐまれてるなあ、といっていいかはちょっと自信がありません。しかしラストの、Yどころかかおりちゃんにまでうなずかれてしまっているという、そこがあわれだけど、それはそれだけ理解されているってことだ。本当、いい友人にめぐまれてるなあ、Hは。

    スタミナ天使』、完結。最後まで天河は変態を貫いて、あっぱれ、というか、諭吉様、えらい男前なんですが……。時間は、前回から一気に進められて、高校はとうに卒業、さらに数年が経ちましたというくらいの時期ですね。諭吉は卒業論文のテーマを思案して、緑は警察学校に入っていて、そしてふたりは別れて暮らしていて。こうした状況を説明する中に、天河の酷い仕込みが笑いを誘うのですが、しかしそれよりもふたりはどうなったのだろう、それがずっと気掛りだったものだから、最後のページ、あれには言葉もなかった。いい話だったと思います。あの、貧乏時代の諭吉と緑の関係があって、金持ち復帰後の関係があって、そしてこのラストがあって、この漫画がはじまった当初には思いもしなかったほどの広がりに、すっかりひきこまれてしまいました。描かれなかったことに思いをはせては、涙が出そうになる。本当、いい話だったと思います。

    しかし、天河、意外といいやつだったかも知れません。彼は彼なりの愛情やらなんやらで、ふたりを見守ってたのでしょうね。そして、武内くんは、徹頭徹尾いいやつであり続けたように思います。結構、ひどい目にあわされるポジションではありましたけど。

    エナポゥのコラム、テレビにバンド出演するくらいにまでなっていても、バイト生活は続いてたっていう実際が、現実のきびしさを感じさせます。私も頑張ろう。

    『だんつま』は、シビアに見えるふたりのロマンティストな側面が見えてちょっと面白かったのですが、裸エプロンというのがどういうものなのか、具体的に描いてもらわないことには、ちょっとわからなくて困りました。365日カレーは私にはちょっと辛い、からいじゃなくてつらいね、かも知れないけれど、自分の好物である麺類だとしたらどうだろう。365日うどん、素麺、パスタだとしたら? うん、わりといけそう、というか、嬉しいかも知れません。

    • 『まんがタイムラブリー』第16巻第6号(2009年6月号)

    引用

    • 花津ハナヨ「たたかえ!WACちゃん」,『まんがタイムラブリー』第16巻第6号(2009年6月号),46頁。
    • 乙佳佐明「ココロノミカタ」,同前,112頁。

    2009年5月12日火曜日

    リスランタンプティフルール

     『リスランタンプティフルール』は、『コミックエール!』第1号の誌面を飾った漫画のひとつでした。そう、私が気に入らなかった漫画、つまらないと思った漫画がないといった、そのうちのひとつが『リスランタンプティフルール』であったのですね。実際、いいなと思った漫画でした。女子校もの。当時、大はやりしていましたね。外界と切り離されたかのように清浄で、そして古風なしきたりなんぞが残る、そうした学園を描いて、たおやかな少女たちの交流するその様、関係性に憧れなどを抱きましたか? いや、実は私、はやってたのは知ってるんですけど、ブームにはのっとらんのです。でも、それでも漫画をいろいろ読んでれば、知らず知らずのうちにそうしたものにも触れるわけで、『リスランタンプティフルール』もそうして触れたもののひとつでありました。

    『リスランタンプティフルール』は、第1号の気にいった漫画群においても、なお一層にいいと思った漫画でありました。ですが、それは女学校ものであるからというよりも、その描かれた世界から感じとれる表情がよかったのだと思っています。繊細というより神経質、ナーバスと表現したいような表情、少々気鬱な色もないではない。でも、そうした表情が好きなものだから、この漫画はよかった。晴れた日であっても、どこか霞みのかかったような、そうした風景の持つ美しさだと思います。あるいは、澄みわたる空の高さに悲しくなってしまうといったような、けれど憂えるなかに愛おしいと思える感情もあり続けているというような、悲しいから美しいのか、美しいから悲しいのか、そういった風情があるなと思ったものです。

    都野ナンナの通うお花のお庭の学園のならわしは、お花のお庭、リスガーデンに咲く花を、選ばれた学生たちがお世話するというものでした。選ばれた彼女らはリスランタンと呼ばれ、また自分の世話する花の名前をもって呼ばれます。ライラックをまかされたナンナなら、プティライラックというように。フランス語と英語がまじってるのが気にならんでもないけど、細かいことはいいのよ。プティは英語でも使うしさ。それより、選ばれた存在であるリスランタンたちは学園における憧れの的であり、それはリスランタン同士でも同様で、そしてまた同時に嫉妬を向けられることもあります。そうした感情の交差するところに生じるドラマが大変によいと思ったのです。

    嫌われれば落ち込む、自信をなくすことだってあります。けれど、それが誤解だとわかって、あるいはそうした負の感情も受け入れたうえで乗り越えていける強さを身につけて、そしてふたたび笑えるようになってという、感情の浮き沈みの描かれる、それがこの漫画のよさでした。神経質、ナーバスといったのは、あまりに彼女らが敏感に反応してしまうからで、けれどだからこそ一喜一憂する感情の波立ちは鮮やかと感じられました。読んでいる私の感情にも触れるがように思われたのですね。私に冷たくした先輩の真実、そこには嫌いという感情なんて露ほどもなく、むしろあったのは好意だった。そうした、感じやすい少女たちの胸中に揺れ動く感情がとても魅力的、すごくいいなと感じられる本であるのでした。

    引用

    2009年5月11日月曜日

    32GIRL

    『32GIRL』を買いました。『32GIRL』は、『サーティーガール』のヒロイン、リリコさんの婚家である湯神家の長女加奈子をヒロインとする同人誌であります。描いた人は、原作がカワイシンゴ、漫画が岩崎つばさ、って、オリジナルメンバーじゃないですか! これは買わなくっちゃだわ、というわけで購入しました。同人誌即売会は、ちょっと遠くていかれなかったので、とらのあなの通販にお願いしまして、よかった、なんとか売り切れるまえに入手することがかないました。しかし、本当にありがたいことですよ。自宅にいながらに情報は入手できるし、注文もできるし、いい時代だなあって思います。そしてもうひとつありがたいこと。それは、湯神加奈子の活躍をこうしてまとめて読める機会が得られたという、そのことでありましょう。

    湯神加奈子の活躍が読めて嬉しいというのは、そりゃもう、私は加奈さん大好きですから。しかし、初めて出会った時には、お姉さんと呼んでおかしくないような歳であったこの人が、気付けば私より年下になっているっていう、なんだろう、この理不尽。いいなあ、漫画の登場人物は年をとらなくて……。こういう馬鹿なこといってる自分が一番理不尽であるということは、自分でもよくわかっているので、そっとしておいてください。

    湯神加奈子のなにがいいのか。長身で美人だからか? 32歳の若さで課長に昇進したという、その有能さがよいのか? うん、それらもいい。否定しない。だけれども、この人のよさは、職場においては表に出さない純情であるところ、なのだと思っています。ちょっと甘えんぼう? 寂しがりや? それでものすごくおしゃべり。『30GIRL』では、暴走する義妹リリコがとにかく目立ちまくるので、一歩後ろに退いているって感じ、はしないけど、そんな加奈さんが主役として活躍するってんだから、こりゃ読まないわけにはいきません。

    『32GIRL』は、『30GIRL』がそうであるように、四コマの連続でショートエピソードを描くタイプの漫画です。ちょっとした事件があって、そしてそれを解決する、その顛末がとにかく爽快で面白い。そんな『32GIRL』第壱話は、加奈子が思い人、秀島治久の働く花屋に押し掛けて無給でバイトしているときに持ち込まれた案件、花を届けてほしいというところからはじまって、けどここから先はネタバレになるから書きません。だから感想だけをぽつぽつと。

    リリコに負けず劣らず暴走する加奈子、その様子はやっぱり爽快でした。やってることは、かなり過激で強引で無茶なんだけれど、そうした暴走の原動力、その行動の根っこには、持ち前のおせっかいがあって、これはもう人情ものといってもいいのかも知れませんね。要求されたこと以上のことをやってしまう。それはたしかに勝手な親切心、余計なことだったのかも知れないけれど、でもそれでも、本当にその人たちに必要だったことをやってのけて、いい話でした。無茶な行動ははらはらとさせてスリリング、とても面白くて、そしてその後にじんと心に沁みるシーンが、言葉が、気持ちがやってくる。ああ、加奈子さんはいい人だなあ。友人への好意がにじみ出るようだ。そんな風に思う。けど、いい人なのは加奈子さんだけじゃなくて、あの町内の人みんなだ。今回、『32GIRL』では、そのうちのひとり、加奈子さんにスポットライトが当てられたのだ。そして、スポットライトを当てられたその人は、いわば縁の下の力持ち、狂言回しとして働いて、見せ場には別の人たちのエピソードが光っています。この、活躍のはてに主役が一歩退いて見せ場を譲るという構図、『30GIRL』にもそういうところがあるのですけど、そうしたところがとてもよいなあ。でしゃばってるように見えるんだけど、肝心要ではすっと身をひいて奥床しい。なんだか、かっこいいね、とってもエレガントだ、そう思うんですね。

    メインの話は32GIRL。そしておまけに32-15GIRLが描かれて、そちらは本当に小エピソード。けれど、その小さな物語もほほえましくて、日常におこるささやかな事件。最後にはちょっとした事故になってましたけど、そうした事件を通して気付くことがある。そうした情景が、はっとさせるような印象を残して、素敵でした。

    あと、これはネタバレ。フライングVは女の子に似合うギターの筆頭格だと思っています。けど、間近に見ると意外とごつくて、びっくりするギターでもあります。ちょっと欲しいギターではあるんだけど、そんなにギターばかり増やしてもしかたがないので、我慢しています。って、欲しいものいっぱいだな。

    今、『32GIRL』は品切れしてるみたいだけど、願わくば補充されて、欲しいと思う人の手に渡ればよいなあ。そのように思っています。それが本にも読者にも作者にも、一番いいことだと思うから、そのようになったらいいなと思っています。

    • 岩崎つばさ,カワイシンゴ『32GIRL』32GIRL,2009年。

    2009年5月10日日曜日

    『コミックエール!』Vol. 12

     好きだったのだ、『コミックエール!』。男の子向け少女マンガ誌なる、どうにも評価しづらいキャッチフレーズをひっさげてリリースされた、そんな雑誌であったのですが、買ってみれば、これ結構いいじゃん、というか、本当にいいよ。すっかり気にいってしまったのですが、いかんせん、売っているところが限られていて、漫画に力を入れているような書店くらいでしかお目にかかれません。そうした状況も手伝ったのでしょうか、『コミックエール!』は昨日出たVol. 12をもって休刊となりました。休刊とはあるけれど、おそらくは復活する日はこないでしょう。ああ、さびしいなあ。好きな雑誌でした。いい雑誌でした。アンケートがのどにくるなど、文句もないわけではないけれど、けれど、読んで楽しい、ほろりとくることも多かった、本当、面白い漫画と出会えるいい雑誌でありました。

    だから、感想書く前に、最初にいっておきます。漫画家さんはもちろん、この雑誌に関わられた方たちは、よい仕事をされた、そのように思っています。お疲れさまでした。

    純真ミラクル100%』は、モクソンのツアー終了、打ち上げやって、そして恋愛的感情にも一段落がついて、しかしちょっと不安にさせるような引きがあって、それは以前の親レーベルへのモクソン引き抜きとかの伏線が動き出すってことなんでしょうかね。それはともあれ、影の薄かった二宮さん、微妙に嫌われものですが、この人の、ただ単純に表現のしかたがあれなだけで根は悪い人じゃない、というかむしろいい人っていうところがもう読者にはわかっちゃってるから、なんか不憫というか、けれどなんか可愛いというか、彼には頑張って、モクソンにぐーっと接近しちゃったりして、そして玉砕したりしちゃって欲しい。おそらく、彼の見せ場はこの後に用意されていると思うので、期待したいと思います。

    モクソンは『まんがタイムきららフォワード』に移籍です。なんか、『フォワード』が素敵なことになりそうな予感がします。

    『さんぶんのいち。』、微妙な三角関係になっている柚、葵、楓の恋愛状況を描く漫画であるのですが、微妙というのは女の子葵が女の子柚にただごとではない恋心抱いているって感じで、それで妙に楓を、ああ、楓は男の子なんですが、彼のことを敵視したりしてね、で、そうしたところに昔葵をいじめていた海都が現れて、そして葵は海都に対する恐怖をいまだ拭うことができず……、という話が決着。この決着によって、状況は葵ペースに傾いて、いい感じだ。この、葵の、わりと汚ない手を使ったりするところ、とてもいいと思っていました。なんか意味不明だったり、けれど一途だったり、そういう屈折したところが、まっすぐだったり素直だったり朴訥だったりする人の心に絡みついて、そこにドラマを作るというところ、それがいいんでしょうね。

    『さんぶんのいち。』も『きららフォワード』に移籍です。なんか、『フォワード』がステキなことになりそうな予感がします。

    魔法少女いすずさんフルスロットル』は番外編? 余話って書いてます。志半ばで倒れた放送部員にかわって、いすずさんたちがお昼の放送をやりましたっていう小編で、短い中にキャラクターの個性つめこんで楽しい雰囲気、いい感じでした。

    いすずさんの落ち着き先はまだ決まってないみたいで、また改めてお知らせしますとのことなんですが、いったいどこでそのお知らせを受けたらいいの? まあ、公式サイトでしょうね。

    『あなたにとって、わたしにとって』は仙石寛子らしさに溢れた漫画。なんか散文で語られるような、そんな雰囲気があって、朴訥とした表現は、そのまま登場人物たちの不器用な気持ちをあらわしているようで、結構好きなんですよ。コミックスも買ったんだけど、ここに書きそびれたまま今にいたる。ちょっと陰鬱といえば陰鬱、けど暗くなりすぎることもない。メランコリーが心地いい漫画で、それは今回の観覧車の話も同じで、なんだか愛おしい、そんな気持ちのわいてくるようなところが素敵です。

    恋愛ラボ』は、マキの家族が登場。姉さんが出て、そしてパパ。お前の父ちゃん ランジェリー!!! しかし娘溺愛の父が、あまりにあまりな娘の真実を知って、ショックを受けるという、しかも姉でショック、妹でさらにショック、もうパパがあわれであわれで、けどそのショックを受ける父が抱きしめたくなるほどキュート! そして希望を胸に塾を訪れたマキ、彼女は宿敵ともいえるヤンに再会、そして再び私の初めてを奪われることとなって — !

    ころげまわりそうになるほど面白かったです。取り乱すマキの可愛さ、そしてマキに目を奪われた智史にむっとするリコの可愛さ、そしてヤン! 彼はいいな。彼はいいよ。この勢いで、どんどんひどい目にあうんだろうか。ただでさえ誤解されてたのに、それどころではない状況に陥って、ヤンの明日はどっちだ!? ヤンの明日は、夏頃から『まんがタイムスペシャル』で読めるとのことです。

    『あまだれ!』、完結。なんかちょっと恋愛を勘違いしてる女子、すずと、なんか彼女にふりまわされたすえに好きになっちゃったという野比くん(田中俊平)の恋愛が、不器用ながら不器用なりにとりあえずかたがついて、そしてふたりの合作同人誌が出品される同人誌即売会。クライマックスにおけるすずの大ゴマは見事でした。よかった!

    御伽楼館』。よかった。感動した。以前私は、美しい姿をしている人の本質が、自分にとって望ましいものでなかったとしたら、そのとき愛はどうなるのだろう、継続可能なのだろうか、という話をしたことがありました。『御伽楼館』、「夢見る乙女」は、あたかもその問に対する答でありました。そうなんでしょうね。愛が深まれば、その思いは姿の問題などたやすく超えていってしまうのでしょう。そもそも私の問のたてかたが間違っていたのでした。本質とは、姿かたちではなく、そのうちにあるものであり、あのとき私は本質ということばを使いながら、本質を問題にしていなかった。反省しました。深く反省しました。

    『御伽楼館』、終了です。あえて完結と書かなかったのは、もしかしたらいつかどこかで再び、なんてこともありそうな気がしたからで、そうなればきっと私は嬉しく思うだろうな。期待はしません。けれど、楽しい未来を夢見ることくらいはいいんじゃないかと思います。

    『凛 — COCORO-NAVI Another View』は、アダルトゲーム『こころナビ』を下敷にしたものらしく、ちょっと描かれる状況が錯綜していていまいちわかっていなかったけれど、今回できっぱりしっかりはっきりとわかって、仮想世界で出会った兄妹が、兄妹であることに気付かず恋に落ちて、そして気付いてしまって、その顛末はコミックスを待て! って、うわあ、えーっ! でも、ちょっと『こころナビ』ってゲームには興味も出てきて、まだ入手可能である模様。まだっていうのは、どうも調べてみたら2003年リリースのゲームだそうで、だからちょっとシステムは古くささ感じさせるとか、そんな話なんですが、けれどそれでも好きだという人は多いようで、やばいな、これは私も好きだっていうひとりになれそうな予感がする。どうする? どうする!? いっとくか!?

    ちょっと迷ってみます。けど、この漫画でちょこっとネタバレくらっちゃってるわけだからなあ。それでも大丈夫、いっちゃえ、と自信を持っていえる人がいたら、もう一押しで買っちゃうと思います。つうか、この会社、ものすごく寡作ですけど、大丈夫なのか? あぶない、これはレーベルのファンになる危険もあります。

    『片恋い迷子』は、口裂けさんの恋愛に決着がついて、しかしこの人の漫画の、異形、妖怪、なんでもいいのだけれども、人ならぬものが人と恋愛するというプロットは、自分は愛されないと思っている人の気持ちを、異形を用いることですくいあげようという試みなのでしょうか。今回の口裂けさんの話を読んで、とにかくそのように思われて、ほら、例えば、愛されない理由として、眼鏡で暗くてチビでやせっぽちで、スタイルもよくなくて、だから私は誰からも振り向いてなんてもらえないんだ、とかいうヒロインがいたとしても、世の中にはそういう女子がどストライクというようなやつもあるわけですよ。眼鏡、いいじゃないか、暗い、素敵だよ、チビでやせっぽちって、最高じゃないか! スタイル? 巨乳なんて窓から投げ捨てろ! みたいな。ところがそれがゾンビだったり、口裂け女だったり、あるいは人であっても、辻斬り血塗れ女子みたいな、とにかく、どうだこいつは愛せないだろう、みたいな極端な例をふってきて、しかしそれでも誰かがあなたを愛してくれるよ、あなたの苦しんでいることはわかるけれど、私は、僕は、そんなあなたが好きだよ、そうしたカタルシスを、愛を与える側、受ける側、双方から描こうというのがこの人の漫画なのかなって思ったのでした。

    今回の話は、愛を受ける側の物語でした。このようにしか愛を描けないのだとしたら、それはなんと不器用なことだろう、そのように思うのですが、しかし不器用でもよいと思うのだからしかたがない。いろいろなんか超越しているみたいに見えた口裂けさんの、最後の最後に割り切れなかったこと。その、受け入れることを怖れているのか、意固地に突き放そうとしながら、それでも突き放し切れなかった、そうしたときのこの人は確かに美しかったな。そんな風に思いました。

    『おとうとくんといっしょ。』、先月の『おねえちゃんといっしょ。』の逆バージョンですね。以前は弟視点、今回は姉視点でひとつの出来事を追って、よいですね、こういうの好きです。これはあわせて読みたいなあ。まあ、前号の『エール』を出してきたらいいんだけど、でももっと読みやすかったらいいなあ、って、誰か単行本にまとめてください。きっと喜びます。

    この人は、人の気持ちを丁寧に描いて、いい。そんな作家だと思います。

    『あめのち』。これは読み切り。雨女と雨男の不器用な恋物語。って、『エール』のキーワードってもしかして不器用なんだろうか。それともたまたま私の不器用センサーが過敏になってるだけ!? 松下徹子が雨女になる条件、それがために気持ちが相手に知られてしまう。こういうギミックは、話をコンパクトにまとめて展開させるにはいいと思う。けれど、それよりも気になるあんちくしょーが他の女の子を見てるような気がして、それでもやもやしてみたり、挙句のはてには思うところをぶちまけちゃったり、そのばたばたしちゃってる、そうした徹子さんが魅力的でした。

    『夏のかげろう』は、ロリコンに狙われた中学生の話。ちょっと違うけど、まあ結果的にそんな感じ。気持ちが離れていく、そんな思いがして、寂しかった夏。楽しかったはずのことが、突然に色褪せてしまったように感じられた、そんな夏の終わりのできごと。離れたかと思われた気持ちはふたたび触れ合って、それは変わりゆく季節のまだ変わらずにあろうとする、そんなはざまの頃に生じる気持ちなのかも知れず、そしてその曖昧である季節の光景が胸に訴えてくるのですね。まあ、ゆっくり変わっていくのがよいよ。私にとってはとうに過ぎさってしまった季節に生きる彼女らには、そのようにいってあげたくなる。そんな話でありました。

    『サトリップ』。四コマ漫画ならぬ、一ページ漫画。美術部に所属する女の子三人がヒロイン。いつもは彼女らも、それなりに頑張って描いたりしてるんだけど、今回は鉛筆を削るだけで終わって、このふわふわと地に足がついていないような感覚が好き。続かないのか。残念です。

    『ひみつのはなぞの』。従姉から女の子と思われてた男の子の奮起する話。従姉は、ちょっとした事件から男そのものを怖いと思うようになっていて、可愛い男の子あきらちゃんはいかにそのハードルを越えようとするのか。その越えようとする方法が実にダイナミックで、わお、こんなに大きくしちゃうんだ。そして、そのチャレンジに対するレスポンス、意外なところから返ってきたものだから、やられたって思って、そしてちょっと感動した。いい話じゃん。ギミックも面白かったけど、残った印象は、ギミックのためだけではなかったと思います。

    『赤い糸は見えているか』。これも読み切りです。これもまた不器用枠。その不器用のあらましは、気持ちの一致しそうで一致しなかったことにひっかかって、けれど実はそれでも通じているんだよっていうようなものでありました。悪くない。よかった。チャレンジを打ち負かしてしまうヒロインっていうのがいいです。それも、嫌だからとかではなく、なんかもやもやするものがある、いい加減わりきってもいいかなあって思いながら、それでもわりきらずにきたという気持ちが意地みたいになって、そしてわりきろうかなと思ったそのときに氷解するっていう、そのプロセス。いきつきもひっこみもしない、サスペンドな状態、面白かったです。

    『ホーリー★ホーリー』、修道院にてかくまうこととなった王子様と、彼を助けようと奮闘するシスターの話。ちょっと荒っぽいと思うところもないではなかったけれど、しかしそれは最後には気にならなくなって、なんだかこういうところも、そして話の流れも、正統派少女漫画ってな感じではありませんか。よかった。

    かくして、『コミックエール!』ともお別れ。これがしばしのお別れならよいなと、ここでも嬉しい未来を夢見ておきたいと思います。

    引用

    • 宮原るり「恋愛ラボ」,『コミックエール!』Vol. 12 (『まんがタイムきららキャラット』2009年6月号増刊),101頁。

    2009年5月9日土曜日

    『まんがタイムきらら』2009年6月号

    『まんがタイムきらら』、買ってきました。2009年6月号。表紙は『けいおん!』。アニメも人気で、実にいい感じ。なんか、『けいおん!』効果でギターやベースが売れてるらしいと聞きますけど、実際のところ、私も欲しくなってますからね、ベース。最初はタカミネのPB17(色はNSで)あたりが欲しいと思ってたんだけど、で、いつかうまくなったらフレットレスのPB35にバージョンアップするんだ、なんて思ってたんだけど、今は、具体的には今年の4月に入ったころから、Jazz Bassが欲しい。どうせならAmerican Standardかなあ。色は3-Color SunburstかCandy Colaがいい、なんて思いながら、まあ買えないんですが。『けいおん!』の次は『うらバン!』がアニメにならないかなあ。『うらバン!』だったら、もう楽器はあるから、こんなに心惑うことはないわけで、それに自分もなんか参加できそうじゃないですか。ああ、次は『うらバン!』だ、みたいな風にならないかなって祈っています。

    『けいおん!』は京都に修学旅行。うん、京都ってだけで無駄に盛り上がるな。京都を象徴するスポットとして選ばれたのは金閣寺。あとは楽器店、そして宿、以上で帰宅。まあ、京都は、いつものバンド活動みたいなものと思ってくださったらいい。つまり、あんまり出てこなかったっていうね。ちょっと残念だったけれど、さわちゃんが魅力的だったからよかったです。そして唯からは二年越しのムギへのお礼。ああ、しかし、いいお嬢さんだなあ。

    ゆゆ式』は、なんだかゆずこがえらく可愛いなあ、具体的にいうといつもの300%増しくらいで可愛かったのはなぜだろう。今日の部活テーマは馬でした。あの、イーってするのはフレーメンといって、フェロモンを匂おうとする行動なんだそうです。でふたりがいーっとして、富士山と四国になっているのかいないのか、それが問題です。いや、しかし、あれは可愛かったなあ。

    『天然あるみにゅーむ!』が、ウエストまわりにちょっと肉が余っているのがマニアックでよかったです。でも私はエコ派です。『ふおんコネクト!』はちょっとびっくりしました。この芸風は好きな人はもうたまらんだろうなあ。嫌いな人はとことん嫌いかも知れないけど。しかし、立体装丁はだめだと思うんだ。薄いということがより価値を高めることもあるんですよ、交流さん。でも仮に立体装丁で市場に出たとしても、私はよく訓練されたオタクだからそれくらい屁でもないよ。『PONG PONG PONG!』、いつも以上に余裕をなくしてしまっているリコ、いつも以上に素敵でよかったです。けど、あの大オチ、チェンジってのはないだろう。私は断然リコの方がよいです。だからもっと尊大に、横柄にいってください。

    『ネズ巫女ちゅー』は、世界が変わる話。そう、確かに色がなくなる、っていうか、ものを見ていても、なにも見ていない感じ。全部が素通りみたいな感じがして、それは食べるものも飲むものも、全部一緒ですね。ほんで、表情がなくなって、周囲を心配させちゃいけないと思って表情つくろうとするんだけど、変わってないらしいのね。もう、なんだか、懐かしいなあ。意味もなく泣けてきたりしてね、なにがあったわけでも、なにを思ってるわけでもないのに、涙が流れてくるんだ。いや、もう、懐かしいなあ。『キルミーベイベー』、扉のふたりはなお可愛く、そして内容は面白く、のり弁はひどい。お母さんひどいです。

    『メロ3』の前に、nonoteの情報が入って、収録されるのは『もんぺガール小梅』と『ファミレス☆スマイル』と『君がボク/僕がキミ』の三作みたいです。これはもう楽しみです。そして、『メロ3』。木ノ子の可愛さがどんどんアップしていきます。しかし、あのぶっきらぼうな妹もよいなあ。もちろん家庭科の先生も素晴しいです。この漫画は、主人公ハーレム状態と思わせて、実は彼は主人公というより傍観者で、しかもハーレム状態に気付かないという、なんかむくわれているのかそうでないのかわからないという、そういうところが面白いなあと思えて、なんだか達観してしまっているようにも思える、あの兄さんが大好きです。

    きつねさんに化かされたい!』が最終回ですよ。あああ、さびしい……。変態や駄目な人がとにかくたくさん出てきた漫画でしたけど、そうした人たちも普通に受け入れる、そんな保健室の光景は、変態で駄目人間である私にも心地良かったということなのかも知れません。しかし、先生はなんで自分は除外してらっしゃるのでしょうか。実をいうと、なんだか台無しな感じのするラストがくるんじゃないかと思っていたものですから、思った以上の正統的ラストに驚いて、しかしそれ以上になんか一段落がついたという、そんな感じのほうが強くって、ああ、さびしい……。けれど、それはそれだけこれまでの時間が楽しかったってことだものなあ。しみじみとそう感じながら、お疲れさまでした。好きな漫画でありました。

    こどもすまいる!』は、萌えポーズ、もう萌えでイイよ、その屈辱が君の魅力を下支えするのだと思います。『境界線上のリンボ』はちょっといい話でした。『三者三葉』は、照さん、丸くなられたなあ。張り切る西山さん、その頑張ろうとする姿が尊いじゃありませんか。そして、だんだんに距離が縮まっていく、そんな予感がして、それは照さん、西山もそうだし、そして葉子様、辻妹もそうで、ということは、ちょっと待って、双葉には兄貴が!? なんてことでしょう。それはそうと、妹の呆れ顔は、新たな魅力発見であります。こういう顔、好きです。『二丁目路地裏探偵奇譚』はやっぱりショコラの身内でした。お姉ちゃんと呼ぶ、その呼び方が可愛いな。

    『らぶ、はじめました。』は、やっぱりスカートは短かくないと駄目ですか? 私は長い方がずっといいと思うんですが。昔から、そして今も。鏡に向かって「キレイ」「カワイイ」と唱えるというのは、地味に効果があると思います。で、自信がついたら、それが魅力を下支えするから、実際にちょっと可愛くなったりするんですよね。いい仕事でありました。『SweetHome』は扉がなんて魅力的なのだろう。というのは置いておいて、しかし、お姉さん、可愛いなあ。というか、姉的魅力とはちょっと違うように思いますが。『からめるマフィン』は、正直どんなだったろうと思いながらのリハビリ中なのですが、面白かったです。しかしコースの名前ひどいですね。というか、先生も可愛いなあ。同じ人のことを、知らず知らず話題にして、その見る人が違えば受ける印象も違ってくるという、羅生門的状況、こういうしかけ、好きです。

    『ねこきっさ』、って、あれ? ちょっと待って。今まで、一度も『ねこきっさ』に言及したことなかったっけ? うわあ、意外。好きな漫画なんだけどなあ。けど、ルーシアちゃんがかわいいんだよーとはいってるのか。最低だな。しかし、その可愛いルーシアちゃんは今月いいとこなしでした。でも、その酷い目にあってるところもいいっていうか。そしておやっさんも酷い目にあわされる、その酷い目というのが本当に酷いという。その酷さがよかったです。

    まーぶるインスパイア』は、もうすっかり癖になっています。あのみりきの一連の流れはもはや様式の美といっていいほどだけれども、あれを他人事のようにして笑えない人もあるのではないかと思います。はい、私がそうです。しかし、なんだかやりたい放題な感じになってまして、それでまたそれがいいぞもっとやれってな感じでして、本当、このハイテンションは癖になります。で、パソコン買った暁には、るくはが四面ロ歌の最後の枠を埋めるというのですね。そうかあ、パソコン買ってからが本当の戦いであるのか。その時がきたら一体どんな風になるのか、その日が待ち遠しいけど、けど、きっとものすごく展開遅いんだろうな。でもって、その遅さもまた癖になるんですよ。

    My Private D☆Vは『アットホーム・ロマンス』の風華チルヲさん、っていうか、本当にチルチルって呼んでいいの? 本当に呼んじゃうよ? チ……、チルチル?

    うん、予想はしてました。けど、予想を超えていました。それはイラストもそうなら、文章もそうで、お前がいうな、といわれそうな気がしますが、あえていわせてください。すごく長い! で、高密度。素晴しい畳み掛けにございました。けど、この人は汗と匂いが好きなのか。いや、それは漫画読んでたらわかるような気がします。雨の中[中略]ほほえむ萌え、それもわかるような気がします。私[中略]…は確実にわかります。

    私は残念ながら、スポーツ少女的萌えにはぴんとこないのですが、けれど最近少しずつ変わってきつつあるようで、スポーツしてる人もいいなあって、感じるようになりました。だから、これは経験の量であるとか質の差なんでしょうね。だから、いつかその汗や匂いの魅力というのもわかる日がくるかも知れません。

    それはそうと、その28歳[中略]脇が、体育教師なの? なのに眼鏡!? す、素晴しいな! って、私も対象年齢なら何でもいい奴であるのかも知れません。ああ、この場合は年齢が問題ってわけではないですけどね!

    • 『まんがタイムきらら』第7巻第6号(2009年6月号)

    引用

    • ざら「ふおんコネクト!」,『まんがタイムきらら』第7巻第6号(2009年6月号),53頁。
    • 娘太丸「こどもすまいる!」,同前,121頁。
    • こととねお試しBlog: 0からはじめましょう!
    • 風華チルヲ「My Private D☆V」,前掲,217頁。
    • 同前。
    • 同前。
    • 石見翔子「かなめも」,前掲,37頁。

    2009年5月8日金曜日

    『まんがタイム』2009年6月号

    昨日は『まんがタイム』の発売日でした。連休明けての最初の出勤日。いつもよりちょっと早めに起きて、余裕を持って出発。駅前のコンビニで『まんがタイム』買って、電車乗って、また日常に戻ってきたと実感しながら職場へ向かったのでした。ところで、そのコンビニというのは四コマ誌に関してはちょっと優秀でして、芳文社の四コマ誌は多分全部買える。竹書房は『まんがライフMOMO』が買えないかも。双葉社は『コミックハイ!』が買えない? けどこれって四コマ誌じゃないよね。おそらく日本でも有数の四コマ誌品揃えを誇るコンビニだと思うのです。でも、これ、多分私が買い続けてきたからなんだと思うんです。一度でも違う店で買うと、翌月からは置かれなくなるんじゃないか。そんな心配しながら毎月雑誌を買っています。

    『まんがタイム』2009年6月号は、野暮なおっさんに始まって、粋、粋、飛ばして、粋と続く、そしていちびりに着地するっていう、変則のリズムが面白いというかなんといいますか。ここは野暮には言及せずに、最初の粋は小説家、『だって愛してる』、畑中氏は実際かっこいいのかも知れないな。すれっからしのニヒリストぶっているけれど、その内面にはウェットな感情を隠していて、しかしそれを表にだらだら出したんじゃ粋じゃない。次の粋は『ニッポンのワカ奥さま』、江戸っ子は初鰹に粋を感じたっていうネタがありましたが、そういえば出だしは青葉、あとはほととぎすがあれば完璧でしたね。初鰹にしても青葉にしても、ただそれが初物というだけで珍重したってわけでなく、生活のはしばしに季節を感じて、それを楽しもうという、その心意気が粋だったのでしょう。しかし、ワカさんの焼き鳥屋での一コマ、楽しみに貪欲である、しかし押し付けがましくないっていう、その姿、それが粋だと思います。そして『ラディカル・ホスピタル』、粋っていうのは、大げさでなく、けれど気の利いて、お、これはいいねと思わせる、そうしたセンスであるのかも知れませんね。べたべたとせず、さっぱりとして、所作ふるまいからが身綺麗と感じさせる、そうした見せ方、生き方が粋、ってやつなんでしょう。

    関西では、粋にあたる表現って、どういうんだろう。しゃんとしている? ちょっと思い付きません。けど、その反対はわかる。いちびり、ですな。それこそ『わさんぼん』の主人公、ああいうのがいちびり。なんや、あいついちびりやがって。えらいごんたがきよったもんやで。そういって、京都だといけずする。ゆうか、多分東京でも野暮は嫌われるもんやと思いますが、それは関西でもおんなじで、いちびりは嫌がられます。その点、草太はいちびりでも、まだ愛されてるなあ。主人公補正なのか、ばたばたごちゃごちゃうるさいだけで、阿呆なだけで、悪いやつやあらへんからか。どうかはようわからんけれど、まあ、こういうのんは苦労したらええと思います。

    『はこいり良品』は商店街の将来を憂えてみたりして、しかし本当に商店街とか歩いてみたら、このお店大丈夫なんだろうかと心配してしまうようなことってあります。すごく人のいい奥さんが店番されてたりしましてね、あるいは古書店のおやじさんといろいろしゃべってみたりしましてね、なんかそういう交流が嬉しかったりするんですが、けれどそうした非効率は効率の前に消えていくんでしょうか。スーパーもいいし、大型の郊外店もいいけど、ああした商店がやっていけないという世の中ってちょっといやだと思います。

    天子様が来る!』では、ユキジが哀愁漂わせて、なんかほのかな哀れさがしみじみとした笑いを誘います。あの、いそいそとお茶の用意なんかしちゃってる姿、ささやかなしあわせを感じているんだなあって、あのコマだけでわかります。だからこそ、あの落ちでの落胆は、哀れで哀れで。いつかユキジがうちにくることがあったら、おいしいお菓子を出してあげるよ。

    みそララ』は想像していた以上に正攻法で取り組むことになって、けれどそうした無理矢理にアクロバティックにもっていかないところ、それがこの漫画のよさなんだろうなって思います。すとん、すとん、といちいち納得のいくような、発想と頑張りがあるから、それがどういう結果になろうとも、それでもよかったよねという気分になれるのだと思います。そして、きっと今回は、最後の最後、結果も、ああよかったねというところに落ちるだろうと予想して、それはつまりあの困りものの店長がみごと攻略されればいいと思っているってことです。そして、その攻略されるということは、店長の満足感にも繋がる。誰も損しない、誰もがいいと思える結果が出る。それはもう本当に爽快なことであるなあ。ところで、あの箱の失敗談、わらったけど、多分、これは現実にあったことなんでしょうね。現実だときっと笑えないと思います。笑ったとしても、ひきつり笑いが関の山ってとこでしょう。

    『ウルトラ金ちゃん』は、銀ちゃんがなんだか色っぽくて、でもこういうこというと、なんだかすごい罪悪感があるから、黙っておきたいと思います。ザクロがザクレロに見えたというのも内緒です。

    『プチタマ』は、あのいつも怒っている印象のあるお母さんが、めずらしく失敗したりして、ああやはりたまりの母であるということなのか。あの、溶けたアイスクリームはものすごい甘さでしょうね。一度経験すると、次からアイスクリームを食べるのを躊躇するようになる、そんな強烈さがあります。

    『ハコニワ』は、新しくやってきたお母さんは死神、だから常識をあまり知りません、という設定がよくいきていたと思います。単純だけど、面白いと思うところがあって、うん、四コマ漫画は単純で面白いというのが一番いいと思うんだ。

    『男子のための人生のルール』は、怪獣消しゴムのモデルになってる怪獣が、なんとなくわかるようにできてるところがいいですね。からすやさとしはこの怪獣相撲を平成の、21世紀の今になってもまだやってるそうです。まあそりゃいいんですが、私は賭けごとは嫌いです。あの眼鏡の女の子みたいな人は好きです。

    『それぞれの夏』は、なんかすごい脱力感があるのですが、絵からも、内容からも、けれどそれがよくマッチしていてよかったと思います。野球一本というのは、基本的に野球を見ない、しない私にはちょっときびしかったけれど、それでも面白かったです。ユニフォームに料理の材料が書いてある、あのばかばかしさはよかったです。

    『おかんでGO!!』、おかんもギターです。薔薇柄の、ちょっとそいつは悪趣味じゃないかと思うようなギターですが、けれどおかんには妙にマッチしているように思います。ヘッドの向きが逆、つまりレフティをひっくり返して右用にしてるのは、きっとおかんがジミ・ヘンドリックスファンだからなのでしょう(冗談抜きで、そういうモデルが存在しました)。『放課後のアインシュタイン』で先生が弾いているギターは、多分レス・ポールカスタム。まあ、そんなことはどうでもいいのですが、背水の陣を敷く先生に胸打たれたのは私も同じです。ところで、超恐竜展って、今、国立科学博物館でやってるやつ!? と思ったら、本物は大恐竜展でした。いってみたいなあ。面白そうだなあ。

    『視界良好』は、姉成田秋奈が好きですが、それは眼鏡だからじゃなくて、みつあみだからでも、セーラー服だからでもなくて、そのはきはきとして明るくてはつらつとしている、そうしたキャラクターにひかれているのだと思います。ちょっと凛々しい感じのお姉さんってところがまたいいのだと思います。

    『サーシャはなでしこ』。ベタな話なんだと思う。どこかで見たような、経験したような、そんな感じがする。けどそうしたところがいいと思っているのかも知れません。お弁当の話はよかったです。めりはりがあって、テンポよく、台詞にたよらず、面白さを感じさせてくれて、よかったです。

    『ラブじゃらし!』は、姉妹ふたりで暮らしてるのかと思ってたら、なんとお母さんがいるっていう、そいつはにゃんズでなくとも驚きだ。なんだかちょっと『にこプリトランス』思い出したりしましたよ。

    『安堂友子の生きてます日記』、お母さんの歯が怖いです。あれは、今はやりの肉食系とかいうやつですか? 肉じゃなくて、チョコ食べてますけど。そして『PEACH!!』。ヒラメ食べたくなりました。台湾式広能も可愛いけれど、おさんどんする割烹着広能はもっと可愛いです。しかし、すっかりちっこくなっちまいましたね。

    • 『まんがタイム』第29巻第6号(2009年6月号)

    2009年5月7日木曜日

    もののふことはじめ

     思い返せば、じわじわと面白くなってきたのでありました。神堂あらしの『もののふことはじめ』。新居の庭に行き倒れていた侍一匹。飢えていたところを助けられた恩義に報いんと、殿、奥方様、若君と、慕ってくる仙之丞の可愛さよ。殿様風にいうならば、ういやつじゃ、ってなところでしょうか。しかし、残念ながら時代はまさに現代。テレビは薄型、携帯は女子高生どころか小学生のちびっ子でさえ持ってるような、そんな時代でありますから、仙ちゃんはどうにもこうにも浮いてしまう存在で、そうしたカルチャーギャップを楽しむ漫画といったほうがいいのでしょう。殿は高校の先生、奥方は元生徒の専業主婦。仙之丞の言動にはらはらして、なんせご近所の目もありますから。でも、最初こそは迷惑な押し掛け同居人、いや、押し掛け家来か、であった仙之丞も、だんだんに芝浦のうちになじんできて、そしてその仙ちゃんのなじんでいくテンポで、私もこの漫画を面白いと思うようになっていったのだと思います。

    しかし、最大のターニングポイントは、奥方の妹君、千歳どのと仙の邂逅であったのではないかなと思うのです。ちょっぴりおきゃんな女子高生に仙は一目惚れですよ。この時を境にして、仙は、非常識な言動で周囲を、殿や奥方様を困らす人から、千歳どのという存在に振り回される人にバージョンアップした。ついでに、その可愛さもレベルアップした。実際、それまではオバケのQ太郎的ポジションであった、つまりは家族の一員であった仙が、千歳どのとの組み合わせで躍進したのだろうと思います。『もののふことはじめ』といえば、純情お侍仙之丞が、女子高生千歳に心ひかれるその様を楽しむ微ラブコメ、そんな風に変化したんだと思うんですね。それは表紙に描かれた、仙と千歳どの、そして若君ちあき様、この三人がメインの絵からも感じられるように思います。

    しかし、それでもやっぱり殿、奥方があっての『もののふことはじめ』であります。奔放なお戯れをなさる殿、まったくのいいがかりなんですが、笑っちゃいましたよ。というか、笑わずにはいられません。どんな時代からきたのか、そのへんいまいちわからない仙ですけど、仙の常識、つまり殿は側室を持っても当たり前とかですね、そうした現代では通用しない常識でもって、がつんと誤解をふりまいてくれるような、そういうところが面白くて、しかもその誤解っていうのがわりと致命的というか、その状況でそれは最悪だというね、そういうところを的確に突いてくるものだから、面白くって、よかったなあと思うんです。いや、誤解とは限らないか。あえて黙ってることを暴露したりね、仙としては助けようとしたんだろうっていうんですけど、残念ながら嫉妬深い奥方様には通用しなくって、もっと窮地に陥ってるから、っていう、その塩梅がね、よかったなっていうのです。

    奥方様について少々。まだ奥方様が生徒だったころ、あんまり私の好みじゃない。今のほうがずっと魅力的だな、っていうのはどうでもいいとして、最初従順に見せて、今となっては有無をいわせない、そんな勢いと剣幕で殿を押さえてしまってるってとこね、けどなんのかんのいってラブラブだっていうとこね、そういうところは素敵だなって思いました。というか、『もののふことはじめ』に出てくる女性って、みんな多かれ少なかれそんな感じであるな……。だから、仙の慕う千歳どのも、きっといずれは般若のようになるのでしょうよ。けど、その般若にもさせてしまう情の深さ、それが見えるところがいいんでしょうね。

    引用

    2009年5月6日水曜日

    Let It Be

     連休も今日で終わり。今年の連休は、うちに籠ってのひとり合宿。エレキギターを弾き、サックスを吹き、アコースティックギターを弾き、そして歌う。充実した数日。各楽器ごとに持ち時間二時間、合間に三十分ほどの休憩が入って、けど多分、もっと弾いてたと思う。楽器持ち替えるたびに音階をいちからやりなおすというね。もう、どんだけ音階好きなんだっていうね。メトロノームは58に合わせて、この若干遅めのテンポで、しっかりと意識しながら弾くのがいいんです。音階が終われば、エチュードやって、しかし練習するのはいいんだけど、それを披露する機会はないっていうね。もうがっかりです。なんなんだろうなあ。がっかりですよ。

    連休最終日、ふと思いついて、『イマジン』を歌いたいなって、ジョン・レノンのImagineですね、それで楽譜がなかったかなあと思って探してみたら、なくてですね、かわりにHey JudeLet It Beが見付かった。古い高校の教科書に載っていたもので、こんなことなら中学のも残しておいたらよかったよ。結構気のきいた選曲されてるもんなんですよ、教科書って。そういえば、高校の実習にいったときは教科書買ったけど、中学の実習にいったときってどうだったっけ。忘れました。買ったんじゃなかったかなあ。もう覚えてないなあ。

    Imagineを歌いたかったけど、なかったので、Hey JudeLet It Beを歌ってみて、このどちらもいい歌で、けどHey Judeは最後えんえんリピートしてF. O.なんて書いてある。フェードアウトですね。これ、生身じゃちょっと無理です。だからもっぱらLet It Beを歌って、そしたら本当にいい歌で、歌詞も平明でわかりやすく、それでいてとても深くて、なにか啓示のようなことを歌っています。苦難の状況にあるとき、母メアリーが現れて、それがあるままにしておきなさいという。今置かれている状況をあえて変えようとするのではなく、それを受けいれて、継続しなさいと受け取ったらいいのか、あるいはすべてを神さまに委ねて、あなたはあなたのなすべきことをなしなさい、そう捉えるのがいいのか。おそらく聴く人によってそのとりようは違ってくる、そんな歌だと思います。そして、その感じたことがその人にとっての正しいことなのだと思います。

    私はこの歌を、ビートルズによるものと、それからニック・ケイヴによるものの二種類持っていて、後者は映画『アイ・アム・サム』のアルバムに収録されていたものなのですが、サラ・マクラクランのBlackbird聴きたさに買ったこのアルバム、実によい演奏が多くて、ニック・ケイヴのLet It Beもそうなんですね。語るようにして歌われる、その表現はビートルズのものとはまったく違っていて、静かにしてシンプルな伴奏にのせた歌の表情の豊かなこと、しんみりと思いをつのらせる、美しくて、感動的な名演です。真に力のある歌、歌手は、多くを必要とすることなしに、ただそのありのままで、人の心にはいりこんで、豊かにする。そのように思わせる、そんな歌なのです。

    12 inch Analog

    2009年5月5日火曜日

    みんなのPython 改訂版

     私は、趣味ではプログラムは書かないのですが、仕事では書くことがあって、けれど自分はプログラマですといえるほどのものは書きません。じゃあどんなプログラムを書くのかといえば、Excelに通してしまったために値が変更されてしまったCSVを手当てするプログラムであるとか、CSVファイルを読んでログインIDとパスワードをメールで通知するプログラムであるとか、そういったものを書くんですね。ちょこっと、隙間みたいな時間で書けて、うまく作ってやると、あとあとも便利に使えそうな、つまりは繰り返しやることがわかってる作業を楽にする目的で、あるいは人の目だと見逃しをやらかしてしまいそうな、けれどやること自体は単純な(いいかえればつまらないが量だけはしこたまある)作業を確実にやっつけたいときとかに、プログラムは役立ちます。

    さて、プログラムとひとくちにいいましても、言語が違えば作法も変わってきます。そのため、自分にあった言語を選ぶのが大切です。また、作法が自分にあっているというだけでなく、自分の使っているプラットフォームに対応しているかどうかも重要です。例えばWindowsしか使わないという人だったらなでしこあたりが最適と思われますが、残念ながら私は自宅ではMacintoshを使っているため、なでしこはあきらめざるを得ませんでした。

    職場ではWindowsを使い、自宅ではMacintoshを使う、そんな私にマッチした言語はPythonでした。Pythonの特徴は、プログラムのブロックを表現するのに、タブ(インデント、スペース4つが推奨)を用いることとよくいわれます。Perlなんかでは波括弧({})を使いますが、Pythonはインデントの深さでブロックを表現するから、誰が書いたプログラムであっても、そこがブロックであるとわかる。こんな具合に、言語自体が持っている規約がプログラムを読み易くするのに貢献するから、人の書いたプログラムであっても、また自分が昔書いたプログラムであっても、スムーズに読んでいくことが可能です。まあこのあたりは、Python Japan User's GroupのPythonの紹介あたりを読んでいただくとして、あるいは今日紹介しようとしている本、『みんなのPython』の著者である柴田淳氏のBlogPythonがプログラミングの学習に向いているたった一つの理由を読んでいただくとして、それで面白そうだなと思ったら『みんなのPython』買っていただくとして、いや、本当にPythonはお勧めです。もちろんなでしこでもいいんですけど。

    私がPythonを愛用しているのは、エリック・レイモンドがすすめていたから、ということもあったのですが、他にもいろいろ理由があって、まずは先程のインデント、こうした言語の仕様から適切なプログラミングの作法を学ぶことができるのではないかという期待があって、そしてweb上に公開されているまとまった和訳ドキュメントの存在です。体系的なリファレンスがあるというのは、プログラミング言語に限らず、なにを学ぶにしても重要なことで、自分の手にしている情報が新しいかどうか、信頼できるものであるかどうか、それがはっきりしているだけで学習の効率はあがります。この点、Javaなんかも素晴しい。リファレンスに加えて、Eclipse IDEあたりを使うと、Javaの作法についてもがんがんつっこみ入れてくれて、すごく勉強になります。って、どんどん話がそれていくな。

    Pythonはドキュメントが充実しています。Pythonでわからないこと、調べたいことがあったら、まず標準ドキュメントを読みにいくというのがならいになっています。もう何度アクセスしたかわからない、それくらいであるのですが、しかしこれらをしっかり全部通して読んだこともまたないのですね。いやあ、あれは辞書みたいなものだと思ってまして、わからないことが出るまでは読まない。そんな横着をしているせいで、時にまわり道をするようなこともあって、例えばそれはこんな具合です。

    Excelで開いたため値が変更されたCSVが持ち込まれたときの話です。0埋めで桁がそろえられているデータの0が全部とんでしまった。それに対し私は、0埋めをする関数を書きまして、それはこんな具合。

    def touch_len(s, digit=6):
    if not isinstance(digit, int):
    raise TypeError('need int as digit, got %r' % ¥
    type(digit))
    while len(s) < digit:
    s = '0' + s
    return s

    文字列を渡すと、0を追加して指定の長さ(デフォルトで6桁)にして返してくれる関数です。けど、同様のことをしてくれる関数(正確にはメソッド)はPythonが標準で用意していて、つまり私は書かないですむ関数を書いたってわけなんですね。今回の関数は短いものだったからいいけど、これがもっと長くて複雑でややこしくて面倒なものだったら、どうでしょう。すごい回り道です。やらなくてもいい苦労です。私は面倒は大嫌い、しないといけない苦労も避けたい、そんなタイプです。だから、苦労、面倒を避けるためにも、ちゃんと言語の仕様は知っておいた方がいいなあ。そう思ったのでした。

    『みんなのPython』を買ったのは、ちゃんとPythonを知りたいと思ったからでした。けれど、この旧版を買わなかったのは、その存在を知った時点ですでにちょっと内容が古びはじめていたからでした。だから、今回の改訂はすごくありがたかったです。発行はつい先月の11日。扱われるバージョンは、現在主流である2系の最新版である2.6です。私は常に最新版をと思っているので、ちょっとしたプログラムを書くさいには3.0.1を使っていますが、CGIには2.6.2を使っているから、まだまだ有用です。出ていると知った翌日にはもう買っていました。それでちびちび読んでいる最中です。知らなかったこと、知りたかったことがいっぱい書かれています。それも、わかりやすく、親切に、丁寧に書かれていて、プログラムなんてしたことない、っていう人にもきっとわかる、そんな丁寧さはちょっとまどろっこしいと思わないでもないのだけど、いずれその丁寧さに感謝する日がくるはず。ちゃんと理解できてないようなトピックにぶつかった時に、まどろっこしいなんて思ってごめんなさいと謝るのですね。

    けど、プログラミング言語なんてすすめられても、日常に使うようなことってあるか? そういわれると、人によるかな、というしかないでしょうね。例えばですね、このBlogから四コマ漫画に関係しそうなページを抽出してリストを作るとかね、あるいは自分のサイトのリンク集にデッドリンクがないかチェックするとかね、あるいは更新履歴を残さない、過去ページも残さない、そんな漫画家のサイトを定期的にチェックして、更新されていたら内容をダウンロードするとかね、応用しようはいくらでもあろうかと思います。私はどれもやってませんが。コンピュータに関することで、こんな風にやりたいんだけど、いいソフトがないんだな、と思うようなことってあるかと思います。それがあんまりに高度なことだとお手上げでしょうけど、ちょっとしたことなら、こうしたプログラミング言語を使うことで解決できたり、作業、手順を簡略化できたりするっていうことは結構あるものです。そうしたときに、Pythonが力になってくれるかも知れませんよ。

    2009年5月4日月曜日

    『まんがタウン』2009年6月号

    ゴールデンウィークのおともに四コマ誌。今日の『まんがタウン』で一段落ですね。休みに発売日が重なって前倒しになった三冊、いや二冊か、『ホーム』は発売日どおりでした、一日一冊のペースで読んで、今日で三日目。雑誌感想もとりあえずの打ち止めです。

    『クレヨンしんちゃん』は、正直なところを申しまして、あんまり好きな漫画じゃありません。けど、今回の石の話、とてもよかった。確かにベタで、こうなればこうくるだろうという、そういう予測にきっちりはまる、そんな話であったのですが、あの晴れやかなボーちゃんの笑顔、あれ見たら、そんなことはどうでもいいじゃないか。これは、望まれるまま、望ましいかたちに落ち着いて、よいと感じられる漫画であったと思います。

    うちの大家族』は、あゆむが三バカから一歩リードかと思いきや、結局全然リードできていないという、そんな話。というか、彼らの基本の立ち位置考えると、一歩リードとか最初から思わない。なんつって にゃははははにはやられました。とばしてるなあ、みゆみ。

    『天下無双!恋メガネ』はとってもよい表紙、じゃないや、扉ゴマ。私は、こういう直視する表紙が好きです。これまで誰にも知られてこなかった? 天華のモテないという秘密、それをちょっと共有できるような相手が出たってことなんでしょうか。この人が定着するのなら、それはとてもいい関係なのではないかと思います。それはそうと、最初の柱の煽り、笑ってしまいました。応援します、なにをかわからんけど。

    そんな2人のMyホーム』は、おやじさんがかわいそう。いつになくかわいそうな輝君。妻への愛の深さが偲ばれて、なんかちょっとつらいとさえ感じられる回でした。おやじさん、かわいそう。

    『中華なOLめいみん。』、エレベータの扉をこじ開けるメイミンが、なんていうんだろう、ヤクルトの空き容器とかで作れそうなシンプルさで、可愛かった。『OKAMI — おかみ』は、ふたりの関係性は少し進んで、けれどおかみ退場というわけにはならんのですね。状況を動かしつつ、環境を変えないためには、これくらいがちょうどよかったってことなのかも知れません。

    『70's 愛ライフ』は注釈がふるってます。

    1970年代には、街中で野良犬をしばしば見かけた。また、飼い犬の無駄吠えが現在より格段に多かった。

    たしかに、私の知る昭和もそんなだったように思います。学校帰りに野良犬と遭遇したり、またサイレンや時報のメロディベルに合わせて吠える犬があっちにもこっちにもいて、そうか、あれは昭和の風景だったのか。『三色だんご』は、市川さんの蜜月が終わり。しかし、この人の女運の悪さは惚れ惚れさせるものがあるな。あの人の方が私より素敵? って聞かれて、どう考えてもどっちも素敵じゃないよな。

    ほほかベーカリー』は、店長の可愛い期間が終了です。しかし日本勢が完敗ってのは解せない裁定です。『だめよめにっき』はフルカラーに復帰。扉ゴマはヨメとツマコが衣装を取り替えっこして、なんとヨメが眼鏡だ! けど、ツマコが好きです。本編においてもツマコの魅力はとどまるところを知らず、ほほか店長の可愛い期間は終了したけれど、ツマコの可愛い期間は絶好調開催中である模様です。しかし、レーシックってあらためて説明されると、すごく怖いな。

    『子供失格』に描かれるもろもろは、私の思うところを反映するかのようで、このシニカルさは最高です。けど、萌えないメガネ女子大原さんが萌えないっていうのはおかしい。私、彼女に萌え萌えですが。萌え萌えなんて具体的に言葉にしたの、生まれてはじめてじゃないか? なんかすごくみっともない気分だぞ! 『だらだら毎日のおでかけ日和』は、確かにこうして描かれると、その街に興味が出てきて、自由が丘ですか、ちょっといってみたいかもって気になります。しかし、今回の見どころは、動物苦手といいながら、ちょっとさわれて嬉しくなってるダンナ様でしょう。め、眼鏡だからじゃないよ?

    『龍天寺夫妻の生活』、友人のよっこはいいたい放題だな。あんなオヤジとちゅーとかしたり!! って、あんなオヤジがタイプの人も世の中にはいるかも知れない。まあ私も、あのオヤジとちゅーするなんてごめんでありますが。あ、それは、ロマンスグレーなおじさまならオッケーってことじゃない。私は、直接繁殖につながらない相手とカップルになりたいと思う組ではないはずです。『光の大社員』、すずなサン出現ですっかり鳴りを潜めたと思われた係長のぬううッは、ひとりでいるときに発揮されてるのですね。係長の買い求めた本、『忍術とおもしろ手品』は学研のひみつシリーズ『忍術・手品のひみつ』を彷彿とさせて、ああ、ちょっと懐かしい。

    『よせ☆あげ』、ライバルが継続して登場して、それはかわりものというか、極端な人がまた増えたってことなんですが、けれど嫌いな感じじゃない。というか、結構気にいっています。いや、別に3枚装備だからとか、そういう理由でじゃないよ? 『みねちゃんぷるー』は、今日も雅が可愛かった。というか、どうしても中学生ということを忘れてしまいがちです。さて、だいたい峰は家事とかできるの? いや、それは結婚の必要要件じゃない。どっちか得意なほうがすればいいのよ。って考える私は、かなり男女共同参画論者寄りです。

    かりあげクン』、パンジージャンプは素晴しいな。そして見どころは、きれいなかりあげであります。

    • 『まんがタウン』第10巻第6号(2009年6月号)

    引用

    • 重野なおき「うちの大家族」,『まんがタウン』第10巻第6号(2009年6月号),23頁。
    • 吉田美紀子「70's 愛ライフ」,同前,91頁。
    • 山田まりお「三色だんご」,同前,101頁。
    • たかまつやよい「龍天寺夫妻の生活」,同前,167頁。
    • 松山花子「子供失格」,同前,119頁。
    • 岩崎つばさ「みねちゃんぷるー」,同前,202頁。