私が山田まりおという漫画家を知ったのは、『まんがタイムラブリー』に彗星のごとく出現した『スーパーOLバカ女の祭典』がはじめであったのですが、しかしこの漫画、すごかったです。こんなの一体誰が求めているんだろうって疑問に思うほどのハイテンション。絵は、よくいえば勢いがあり、悪くいえば荒っぽかった。そんな漫画が気付けば結構なお気に入りになっていて、どこが好きかといえば、その狂気をはらんだテンションでしょうね。最初はすっかり引いてしまっていたのが、慣れというのは怖いですね、いつしかそのテンションでないと満足できない体にされてしまっていたのです。その後、山田まりおは漫画家としての腕を上げて、絵もしっかりとしてきたし、話の構成もちゃんとしてきたのですが、その反面、当初のテンションは失われているから、あの頃を知る人間としてはちょっと寂しいなあ。そんな風に思っています。
(画像は『スーパーOLバカ女の祭典』第4巻)
『三色だんご』は、そんな山田まりおが双葉社の『まんがタウン』に連載する漫画です。登場人物は主に三名。ヒロインは多分長女なでしこ、女優です。微妙ですが。山田まりおヒロインらしく、無駄に元気で、無駄に自信家で、必要以上に自己中心的で、常識に欠けています。そんな彼女の脇を固めるのが、あまりにマイペース過ぎるママはこべと、妹のよもぎ。この二人、なでしこに比べると印象に薄く、普通なのですが、けどママはあれだわ。マイペースというか空気読まないタイプのいい人で、悪気なく迷惑をふりまくタイプ。思ったことを即実行、のんびりとして憎めないタイプだけど、身内にいたらいやだなあ。まあ、なでしことどちらを選ぶかといわれたら、はこべで即答なんですが、なんといってもなでしこは別格です。
この漫画、漫画という虚構に秩序や常識を持ち込みたい人は読んではいけないと思います。だって、そういう人には山田まりおは絶対に向かない。非常識でむやみにアクティブな主人公が、まわりに迷惑かけながら大暴れするというのが基本形ですからね。『スーパーOLバカ女の祭典』だってそうだもの。ひとりいる常識派が振り回されて、突っ込んでというのがパターンなんですが、『スーパーOL』なら川上さん、『三色だんご』ならよもぎがその役割を担ってて、実に大変そうなんだけど、その二人が常識派に見えるのはあくまでもまわりが非常識すぎるからというのが深い。川上さんは最初確かに普通の人だったはずなのに、本当の普通の人の中に置かれる(異動したんです)と突っ込みすぎる人になってしまってるし、よもぎはよもぎでマイペースの上、ちょっとピントがはずれてるしで、そうした微妙なズレもネタにしてしまうところはうまいところだと思います。
と、ここまで書いて、実は私『三色だんご』は買わなかったんです。というのはね、やっぱり初期の山田まりおに比べたら落ちるかなあって思ったもので、ちょっと外してみようかと思ったんです。そうしたら、なんと双葉社が送ってくれた! いや、読者プレゼントに当たったってだけの話なんですけど、その月のプレゼントに『三色だんご』が出てて、買わなかったとはいえ未練があったみたいですね、希望のプレゼントにこれを選んでみたら、なんと当たってしまいました。もちろんサイン入り。よもぎがスイカ割りしてるイラスト入りです。
正直、ありがたいと思いました。今回、これ書くために頭から読んでみて、何度も笑いをこらえ切れなくて困ったりもして、やっぱ面白いですよ。初期の勢いがどうたらこうたらいってるの、関係ない。今は今の面白さがあって、それもかなりの水準を保ってるのは間違いないと思います。だから、2巻が出たら必ず買いますね。
ところで、この漫画に出てくる姉妹、なんだか妙にリアルですよね。私は女男の姉弟であるわけですが、女同士の姉妹だとあんな感じなのかも知れませんね。姉ちゃん、やめときなよ、みたいな感じで突っ込み入れてるよもぎの感じ、実にありそうな感じで、すごく好きな描写です。
- 山田まりお『三色だんご』第1巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2007年。
- 以下続刊
2 件のコメント:
私も、最近になって山田まりおには注目し始めたのですが、まだ単行本を買うには至っていなかったのですが、なんか欲しくなりました。
山田まりお、非常に独特な人ですよね。くらオリの「ママさん」も面白いので、チェックしても損は無いですよ。
山田まりおは、一般受けよりもカルト的な人気を博しそうな漫画家だと思っていたのですが、それが意外にも一般そうからも人気がある? みたいなのが面白いところだと思います。
くらオリは講読していないので『ママさん』というのは知りませんでした。ちょっと気にしてみようと思います。
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