盆も明けて、街の機能も通常どおりになろうとしていて、こういうときにですね、新刊が出てるんだ、そう思って寄った書店にて『パティスリーMON』の第4巻を見付けました。もちろん購入して、一番に読んで、物語が動いているなあと、そんな思いをひしひし強めて楽しんでいます。しかし動いているといっても、一般の恋愛ものに比べればすごくスローな展開だと思います。4巻時点においても、まだヒロイン音女の恋心には決着がつかない。高校生の頃の憧れの人に、君が好きだ、君の恋人になりたいなんていわれているにも関わらず、まだ態度を決めかねている。これはうじうじしてるとかじゃないんです。優柔不断というわけでもない。いや、ちょっとはそうかな? けど、音女が迷う根底にはパティスリーでの仕事への思いがある。思いがけず働くことになった製菓の現場において、根性見せてくれるんですね。甘っちょろいこといわず、やれることを精一杯やろうという態度がなによりきっぱりとしていてしゃんとして、そこがいいよねと。だから、私はこの恋愛を前に決めあぐねる音女の態度には、むしろ応援したい気持ちさえあるくらいなんですよ。
以上、ちょっとかっこつけた意見。これからは馬鹿な話になるので覚悟が必要です。
かつての憧れの人、イケメンで優しく細やかでそしてなによりも自分のことを思っていてくれる。こんな完璧とでもいわないでなんといおうかという理想的男をじらしてしまう音女を私は応援しているわけですが、なぜか? それは多分私はこの男があんま好かんからだと思います。だってさ、どんだけオトメちゃんのこと好きか知らんが、甘やかすのもいいかげんにしろ!てなもんですよ。いうことやること、そりゃ別段問題ないというか、むしろちゃんとしてるんだけど、その一見ちゃんとしていろいろやってみせる根底に、オトメちゃんのためなんだよ、オトメちゃんが一番なんだよ、みたいなのがちらほら見えるのは一体どうかと思うってな話ですよ。あんた、あんたは仕事をしとるんだ。仕事をしにここへきとるんだ、それを一人の女の子のために浮ついてどうする(というかありゃ戦略だと思うけどさ)。てな風なことを思う私は実は、どんだけ大門のこと好きか知らんが、肩入れするのもいいかげんにしろ!てなもんで、ええと、つまり、私、大の大門好きなんです。
大門、ケーキに馬鹿のつくほど入れ込んでいる男。製菓に対しては全力投球で、自分のポリシーを曲げるのは大嫌いという男。部下に一喝入れるのも、店への、いやおそらくは理想の製菓への情熱が後押ししているんだと思う。普段は情熱をあらわになんてしない、クールというよりも不器用で無愛想な男が、おりに見せる情熱、熱さにしびれてしまいます。そして、思いがけず露呈させるうかつさ、これが可愛いんだ。ほんと、いい男だと思います。自分に非があると思えば、部下に対し即座にわび入れるような素直さがある。わかりにくい男に思えるけど、その本質はすごく純真でシンプルなんですよ。なさねばならないことに妥協はしないというまっすぐさがある、一旦決めればぶれない確かさがある。これは、本当にいい男ですよ。ストイックだけどストイックすぎず、やわらかだけど軟弱じゃない。ほんと、音女のような娘には大門の方がお似合いだと思います。
てな具合に、あんまりに大門をひいきにするものだから、ちょっとツッチーが割り食わされてる感じでさすがに申し訳ない。けどツッチーもいい男であることには変わらないんですよね。女の人は、ツッチーのするみたいな愛し方を求めているのかも知れないなあと、細やかで、他のなによりもあなたが大切なんですよということを面倒くさがらずはっきりという。押しつけがましくないけれど、ときには押さえられない思いをあふれさせる。はっきりいって戦略だよななんて思うんですが(ごめん、私はやっぱり大門ファンなのだ)、けどツッチーが人気あるのは私にだってわかるくらいに素敵です。
とはいえやっぱり大門だわ。ほら、梅ちゃんの話で大門が見せた憤りの爆発。けんかの売り方にしてもかっこいい。確かにあの対処は間違ってるんだけどさ、そのことに大門自身も気付いて、だから後で肩落としてるんだろうけどさ、けれどそれでも抑えられないんだ。理不尽に対して黙ってるなんてこと、この人には無理なんですよ。確かにツッチーのいうのが正しい。それは私もわかるし、ああいう状況にあれば私もツッチーのいうような対処をすると思う。けどそれでも大門にはああいうやり方しかできなくて、ああその不器用でストレートなところに俄然ときめいちゃうじゃないですか!
きらという人の描く男性はまさしく絶品だなあと、男である私にしてもそう思います。凛々しくて清廉で、手管に長けた男であっても、情熱がまっすぐ吹き上がるような男であっても、卑劣さがない、粗暴さがない。ほんとかっこいい男たちだなあと思ってしまって、だから私はきらの本読むときは、こうした男たちに釘付けです。
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