2007年8月13日月曜日

ARMORED CORE — TOWER CITY BLADE

 書店での衝動買い、といいたいところですが、実はちょっと迷ったんです。タイトルに『アーマード・コア』。フロム・ソフトウェアの誇るロボット搭乗型の一人称視点シューティング。面白いゲームでしたよ。私は2のラインしかやってないのですが、非常に硬派なゲームでしてね、オートロックオンなんてそもそもはじめから存在しない。レーダー横目に見ながら敵の位置を随時把握し、敵弾回避しつつ敵影を真っ正面に捉え続けないといけない。焦って撃ってもかすりもしない弾丸。だから追尾型のミサイル頼りであったのですが、けど敵も上級になってくればやすやすと回避しやがるんですよね。全然相手にならない。なので、コンテナ射出型のミサイルをコンテナごとぶつけるという一発大逆転狙いで挑みまして、数時間の再チャレンジの末にランカー一位をようやく降して — 、あんときは知恵熱でましたね。

と、こんな具合に恐ろしく熱いゲームなのです。それがコミック化されたと知って、やばいなあ、地雷じゃないかなあって、そんな風に怖れたのですね。

でも怖れながらも買ってみました。以前、AC4だったかなの広告チラシに載っていたノベルっぽいのがちょっと面白かったりしたものでしたからね。だからそういう雰囲気、のりがあればいいかなと思って。けれど不安要素は確かにありました。まず帯:

いつもとはちょっと違った世界でのACになったと思いますが、そのこと自体を楽しんでいただければ、幸いだと思います。

〈株式会社フロム・ソフトウェア/プロデューサー鍋島俊文〉

これ、あんまり強気とは思えないですよね。真っ正直に解釈するなら、ゲームとはとにかく違うけど、漫画は漫画と思って楽しんでくれ、といったような、読者に割り切りを要求してるように読めてしまいます。で、おそらくこの感触は正しかったんじゃないかなあと思って、というのはやっぱりゲーム『アーマード・コア』とは違う雰囲気がする。もっと、こう、なんか、硬派さが欲しかったかななんて思ったりするんですな。

この感じは、昔、JICC系じゃないWizardry小説を読んだときにも持ったもので、まあWizなんてのは冗談も多い、おちゃらけたゲームであったりもするんですが、私が中学高校の時分にはそういう見方は少数派で、あれは濃厚なシリアスファンタジーなんだという、そういう態度で皆いたわけです。そんときに、なんだか妙に気合いの空回りするようなの読んで、駄目だこりゃ、って思った。そんな感じ。もっと、こう、なんか、足りないんだよ。もっと、こう、硬派さというか、重さっていうか、それが感じられないんだよ、物足りないんだよ。実にそんな感じであったのですね。

漫画版『アーマード・コア』は、まず紙数が少なかったと思うのです。限られたページの中で、メカアクションと人間のドラマを展開しようとして、けれど読者は、というか『アーマード・コア』のメインターゲットははっきりいってドラマなんてさほど期待してない、メカががっつりと描かれていればいいというようなタイプだと思うんです。息詰まる戦闘、弾雨を避け、敵に肉薄し、グレネードでもロケットでもぶち込んでやらあというような、そういう男臭いなにかを期待してたんじゃないかというところへ、父の敵だとか、父を超えるだとか、そういうちょいヒューマニズムっぽいストーリーが持ち込まれて、両方に煮え切らない感じが残って、なんだかなあって感じだったように思います。

ストーリー、ちょっとありきたりすぎるうえに、語りきれてないなって感じで、私はわりにベタは嫌いじゃないのですが、それにしてもベタすぎやしなかったかって感じで、けど多分これが『アーマード・コア』じゃなかったら、もしかしたら『フロントミッション』だったりしたら大丈夫だったかも? ちょっとそんな気もします。いや、FMがぬるいっていってるわけじゃないんすよ。FMなら、ベタでくさいドラマも充分内包できたんじゃないかなって。反面、あまりにストイックすぎるACでは水と油みたいな感じ。もっと、それこそ実録戦記物くさい、鉄と油の匂いの充満するような、言葉ではなくドラマでもなく、ドキュメンタリーチックにがつがつとメカの駆動する様を描いていくような、そんなののほうがマッチしたんじゃないかなあ。

でも、多分最大の問題は、アリーナのトップランカーが強そうに見えないところだと思います。トップに上り詰めようとする主人公たちを見ても、これなら勝てそうだなあって思っちゃう。ああいう機体を相手にするならって戦略立てて、頭の中で機体をアッセンブルして……。

ほんま、惜しいなあ。もしこれが『アーマード・コア』でなかったら、普通に読んで、普通に終われたと思います。けど、これが『アーマード・コア』でなかったら、気付かずに見過ごしたろうなあ。ジレンマですね。漫画としては、今の普通の水準だと思います。だから、本当に巡りが悪かったとしか思えません。

  • ARMORED CORE — TOWER CITY BLADE』氷樹一世作画 (株)フロム・ソフトウェア,後藤広幸監修・協力 (角川コミックス ドラゴンJr.) 東京:富士見書房,2007年。

引用

  • ARMORED CORE — TOWER CITY BLADE』氷樹一世作画 (株)フロム・ソフトウェア,後藤広幸監修・協力 (東京:富士見書房,2007年),帯。

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