2006年6月12日月曜日

派遣です!

  おおた綾乃という人は、実に独特の雰囲気を醸しだす人であると思うのです。明るく朗らかで、はじけるように元気で、そしてあたたかでにぎやかな、祝祭的彩りに満ちた漫画を描かれる人です。それは、どの漫画を見ても同様なのですが、やはり私には『派遣です!』が一番しっくりときて、きっとこの漫画が私にとってのおおた綾乃入門となった漫画だったからでしょう。

けど、実をいうとですよ、私はこの漫画を最初、それほど好きではなかったのです。明るさを能天気すぎるとでもとったのか、なにしろ私は陰性の男でありますから、ヒロインあかりのほがらかさがあまりにコントラストを持って遠く感じられたのかも知れません。けど、能天気、いいじゃんかね。辞書で調べたら、happy-go-luckyだそうですよ。ハッピーでラッキーでなにが問題があるんかと思います。

さてさて、一応おさらい。ヒロイン星野あかりは派遣戦士、じゃないや、有能な派遣OLで、それはそれは有能で、仕事も速く完璧なのですが、その実体は食べることが大好きのちょっととぼけた天然系お嬢さんなのであります。

あ、そうか、だから最初私はそれほどこの漫画にひかれなかったんだ。やっぱり私には氷の女王様とか、そういう要素がないと駄目なんだと思います。

閑話休題。最初はなんかイージーだと感じたんですよね。そりゃ有能ならいいよね、ふーん、みたいな意地悪な気持ちがあったかも知れない。私は実は、そんな風に頑なところを持っているんですが、この漫画を読んでいるうちに、いつしか馬鹿馬鹿しい頑なさは溶けて消え去ってしまっていました。読んでれば楽しくて、肩の力も抜けて、すごく穏やかな気持ちにさえなれたりする漫画なのに、なんで私はそんなに肩肘はって読もうだなんて思っていたのでしょう。本当に馬鹿な態度をとっていたものだと、振り返っては恥ずかしくなります。

そう。そんな風に華やかでけれど穏やかなこの漫画は、巻を重ねるごとにどんどん登場人物を増やして、その人の増えたことがなおいっそうお祭り的な感じをもり立てて、常に花が咲いて光の照っているようなそんな様子なのです。第5巻ではあかりの秘密を探る新人篠原も大活躍で、どことなくずれた人たちがずれたままに受け入れあって、楽しそうにやっている。ああ、見てるだけで嬉しくなるなあ。

力を抜きたいとき、ちょっと仕合せな気持ちになりたいときにいい漫画だと思います。ゆったりとリラックス気分になれて、夜もよく眠れそうな感じです。

  • おおた綾乃『派遣です!』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2001年。
  • おおた綾乃『派遣です!』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2002年。
  • おおた綾乃『派遣です!』第3巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2003年。
  • おおた綾乃『派遣です!』第4巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2004年。
  • おおた綾乃『派遣です!』第5巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 以下続刊

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