えー、ファンと一口にいいましてもいろいろございまして、作品につくファンがいるかと思えば、作者につくファンというのもございます。で、私はといいますと後者のたちでありまして、前々から申しておりますとおり、これだと思うところがあらば、その作者の既刊を集めて集めて集め倒してしまう。そういう類いの、作家からしたら非常にありがたい金づ……、げふんげふん、けど一歩まかり間違うと頭にスのつく困ったちゃんにもなりかねない、ありがたかったり迷惑だったりという、微妙なタイプなのですね。
さて、『ちびでびっ!』という漫画。これが私にとっての寺本薫初遭遇でありまして、おおっ、なんだかいいじゃんと、なかなかにくるものがあったのです。で、私の困った習性から、全部集めちまおうという意欲が出たのですが、その時点で刊行されていたものはなし。で、後に出た『ふるーつメイド』ですが、なぜかこれには手が出ませんでした。なにがいけなかったんだろう……。メイド? あるいは主人公に尽くす女性というのがいかんとでもいうんでしょうか?
その点、『ちびでびっ!』は尽くすというような要素が少なくて、だから私もはまりやすかったのかも知れないですね。基本的に気ままな母、姉、同居人、友人ばかりが出てくる漫画で、そうした人たちに振り回されるヒロインの悲哀たるやいかなるものであるか。そう、この漫画の主人公は女性なんですね。凛々しいタイプのヒロインで、女の子からモテモテでという、最近はやりの百合ものとまではいかないものの、けどどことなしにそうした空気をまとわりつかせているのはうまいところであると思います。
私は寺本薫という人に詳しいわけではないのでいいきることはできないのですが、多分、この人は基本的なお約束を守ろうとするタイプの漫画家なのだと思います。例えば『ふるーつメイド』では、メイドとご主人様という定型を使い、そこにツンデレであるとかどじっ娘であるとかを配置する。こうした約束ごとがはまれば強い訴求力を持つのではないかと思いますが、残念ながら私にはこの定型が決まらなかったのです。対して『ちびでびっ!』はどうかというと、軽度の百合っぽさというのはすでにいいましたが、これに加えてツンデレ要素を多分に加えて、基本的に私はツンデレとやらには興味がないのですが、けれどなんでか『ちびでびっ!』に関してはこれが効きました。いや、ツンデレじゃないか。ちょっといびつな恋愛模様に、かわいい嫉妬を加えましたって感じなんだと思うのですが、こうしたラブコメであってラブコメでなく、けどやっぱりラブコメというようなところがとてもよかったのだと思います。
さて、『ちびでびっ!』第1巻には販促用小冊子が付けられていまして、それには凛子とラキの小エピソードが入っていて、このちょっといつもより百合色強めというのは非常にいい感じでした(けど、私にはあと三段くらい突っ込んでくれてもよかったかなあなんて思います。直球というより微百合ですよね?)。
小冊子は、私のいつもいっている書店、グランドビル30階の紀伊国屋書店にて入手。まだ残っていましたので、例によって例のごとくお知らせまで。
蛇足
残念ながら、いつものような蛇足って感じじゃないので、はてどうしたものか。特定のキャラクターが、というよりも、登場人物全体の関係が醸し出す空気が好きって感じです。
- 寺本薫『ちびでびっ!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
- 以下続刊
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