その頃はテレビで『世にも奇妙な物語』というのが放送されていて、ちょっとした怪奇ものとか、ホラー、スリラー、ミステリーが人気を博していた時代でした。とはいっても、怪奇ものというのは古今東西常に人気のある題材ですから、この時代が特別だったというわけでもないんですけど。テレビで観る怖い話といえば、古典的色合いの強かった『あなたの知らない世界』が優勢だった時代が先にあって、ここに比較的ドライでおしゃれ色の追加された『世にも奇妙な物語』が登場してきたのですから、実に新鮮で、本当に大人気でした。私も見ました。当時は高校生だったか、とにかく毎週のように見ていたものでした。
さて、『ニュースおじさん』というのはなにかというと、『世にも奇妙な物語』においてドラマ化された怪奇短編でありまして、発端は妻がテレビのニュースにいつも出ているおじさんを見つけたというものでした。ニュースの関係者じゃないのか? などの夫の疑惑は、偶然でないとそこに居合わせないような現場であっても出ているなどなどの反証により次々クリアされていって、そしてその夫婦がドライブの途中、ニュースおじさんを見つけてしまったところからドラマは急転直下。きゃーっ、どうなるのーっ。
ごめん、この先はネタバレになるからちょっと書けない。
実をいうと、私、この原作になった短編をすでに読んでいたのでした。それは『奇妙劇場』というオムニバスに収録されていて、タイトルも同じ『ニュースおじさん』。しっかり覚えています。
で、それがドラマになるということで楽しみに見たんですね。それでその翌日、仲のよかった図書館司書さんとぶーぶー文句をいった。ラストは原作の方が断然よかった! 『世にも奇妙な』はなんでわざわざああいったいらん演出を加えるのか! ドラマの評判は散々でした。
ニュースおじさんというちょっと不思議な存在を登場させ、そしてそのおじさんに出会った夫婦の感じた心理的圧迫の描写、そしてあのぱっと世界が転倒するかのような見事なラスト。あれは面白かったです。全部通して読んだはずの『奇妙劇場』ですが、中身を思い出せるものは今や『ニュースおじさん』くらいしかなく、それくらい印象的であったと思っていただければありがたい。面白かったですね。また読んでみたい好短編であると思います。
- 『奇妙劇場 — 十一の物語』第1巻 (OHTA NOVELS) 東京:太田出版.1991年。
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