『まんがタイムきららキャラット』2021年6月号、一昨日の続きです。
『紡ぐ乙女と大正の月』
唯月から紡を引き離すべく、舞踏会の相手に紡を指名する雪佳。一度は引き止めようとしたものの、雪佳から邪魔をする気かといわれて、手を引いてしまった唯月。はたしてこれはどう着地するのか。そう思ったら、ああ、唯月、ついに自分の気持ちをはっきりとさせましたね。
私のことも紡のこともどうでもいいと思っているんでしょう。雪佳の言葉に、違うとはっきり言葉にして伝えた唯月の思いがいっぱいになってしまっている様。雪佳とも、そしてもちろん紡とも、一緒にいたり、友達でありたいという気持ちがまっすぐに出て、ああ、そうですよ、どちらかを選ぶ必要なんてなにもなかったんです。かつて父のいいなりになった唯月はもうここにはいない。自分の気持ちを押し通していい、欲張りになってもいいんだということを、今の唯月はもう知っている。それをこうして見せられて、ええ、紡ではないけれど、見事に貰い泣きでありましたよ。
かつてのことに傷ついてしまっていた雪佳も、ずっと胸中にあったわだかまりを、その涙でもってそそぐことができたようですね。唯月の思いを受けて、紡が動いたところもとてもよかった。唯月とともにあって、そしてここしばらくは、たとえ仮初めの姉妹関係であっても、雪佳の姉であった紡の、どちらもにその手を差し延べられるポジション、それがよく生きていた、そう思わされる瞬間でした。
舞踏会の様子がしあわせそうで、実によかったのですよ。紡とともに踊る唯月。そして唯月は雪佳を踊りに誘って、ああ、旭が砂になって散ろうとしている! いや、いやいや、よかった! 唯月からのお声がかかって、旭、息を吹き返しましたよ。よかった、こうして皆が楽しくしているところ、本当に嬉しい気持ちで読みました。
『ニチアサ以外はやってます!』
ニチアサでなくても部活動休みの日があるんだ! タイトルに偽りありと苦情申し立てるあかねですけど、そうか、あかねと苺の歓迎会やるから部活休みなのか。博見にそう告げられて、しれっと苦情を返上するあかね、手のひらドリルかとつっこまれていますが、いいねえ、特撮研にドリル腕はいい塩梅ではありませんか。無骨に回転するドリルの威力、いつか目にしたいものです。
さて、まずはカラオケに繰り出そうというその待ち合わせの場面。博見と唯が制服で登場しました。学校服とか学校着という響きが地域色感じさせる? なんかとてもいい感じ。で、苺にえらいこと煽られるのな! ここでですね、オシャレに価値を感じない博見がですよ、オシャレって女子の強化フォーム、うまいことあかねにいわれてね俄然乗り気になっちゃうのがね、なんか可愛くってよかったんです。
カラオケ店でのやりとりも面白かった。そうか、あかね以外はひとりカラオケが普通なのか。あかねのカルチャーショックから、陽キャについての話に移って、でもあかねは陽キャとか知らない! 半年ROMれ、ggrks、これらが昔のことわざ扱いされてるのもおかしくって、だよなあ、今どきの人は使わんよなあ。とか思ってたら、誰も歌ってるの気にしてくれなくて、博見が冷めていっちゃうの。ちょっとかわいそう、でもめちゃくちゃ面白かったです。
その出自が違いすぎるといえばいいのか、生きるスタンスそのものが違うのか、最初は目立ったあかねと唯、苺ペアのギャップがですね、なんだかんだで楽しく過ごしているうちにきれいに埋まって、打ち解けてというのもすごくよかった。ええ、異なるバックグラウンド、文化を背負いながらも、こうして知りあって、仲良くなって、近しくなっていく様子。なにかピュアなもの感じさせて、ほんとよかったです。
『魔王の娘からは逃れられない』
ああ、最終回! でも、いい終わり方をしましたよね。自身の中二病設定で魔王の娘ルルとその周辺を騙し続けていたショーコ。でも魔王には見抜かれてしまった? なぜただの人間が強者を装っているのか。重ねて嘘でうやむやにしようとしたショーコを制する魔王の言葉。ああ、万事休す、ショーコの運命やいかに。ここからの流れ、ショーコ自身が試されることとなった状況に、ハラハラとさせられながらもきっと大丈夫という信頼をともに読み進めて、ええ、ほんといい最終回になりましたよ。
この漫画、ザルハレが本当に頼もしくって、ショーコに、ルルによかれと動いてくれる。今回も魔王に進言しようとしてくれた。騙されていたと激昂する魔物たちからショーコをかばってくれた。その献身もまた涙ですよ。そしてショーコとルル、ふたりに対話のチャンスをくれた。きっとこの時点で、ザルハレにはふたりの話しあいが悪い結果にはならないだろうという確信があったんだろうなあ。かくしてショーコは、死にたくないから皆を騙していたという最初の本音だけでなく、最初は大変だったけど一緒にいると楽しくてかわいく思えるところもたくさんあって、ルルのことを好きになれた、今の気持ちをきちんとルルに伝えられたのですね。
いい最終回でした。話しあいを終えたふたりのともにある姿は、これまで以上に強固な関係を感じさせるもので、そしてぶちかまされるルルの大威力! やっぱりこの漫画にはこれがないといけませんなあ! 感動させられながらも、なにか嬉しく、楽しくなる、そんな勢いが見られて素晴しかった。でもって、ザルハレ、どんだけ頑丈なの!? 続くショーコと魔王のやりとり、その果てに魔王がルルに吹っ飛ばされてたじゃないですか。もしかしたらフィジカル、というか防御力、魔王を抜いてザルハレが魔界一だったりするのではないか? そんなこと思わされたりしてね、いやもう、なにもかもが面白かった。
この漫画、好きでした。キャラクターが生き生きとして、楽しくて、読んでると気持ちがぐいぐいと引っ張られて、楽しい方向に向かわせてくれる。元気に、明るい気持ちになる。そんなよさに満ちていました。それはひとえに、ルルの豪快さに加えて、なんだかんだ皆と仲良くなってしまうショーコのその伸びやかな性格、その気持ちのよさのためだったと思います。いい漫画でした。もっと読みたい、そんな気持ちもあるけれど、これだけきれいに終わってくれたらもうしかたないですね。この漫画の載っていないキャラットはきっとちょっと寂しくなるけれど、ここは笑顔でお別れしたいと思います。
- 『まんがタイムきららキャラット』第17巻第6号(2021年6月号)