2021年4月25日日曜日

『まんがタイムきららフォワード』2021年6月号

 『まんがタイムきららフォワード』2021年6月号、一昨日の続きです。

『観音寺睡蓮の苦悩』

見事赤点をとってしまった紫陽花。かくして睡蓮に泣きついて勉強を教えてもらおうというのですが、勉強する場所はどこにしようという段で、睡蓮の天敵である紫陽花の妹、林檎との遭遇を怖れて紫陽花宅を却下。睡蓮の住まいに紫陽花、椿のふたりを呼ぶことになるというのですが、睡蓮、どれだけ林檎のことを苦手にしてるんでしょうね。

しかしですよ、睡蓮の部屋、ヤバいんか。百合蔵書にあじつば上映に百合プロファイリングって、あんた、そんな部屋で寝起きしとるんですか。しかもあまりにこれが当たり前になりすぎていた? 紫陽花椿が実際訪れるまで忘れてしまっていたというんですけど、いやいや、別に自室に通す必要ないじゃん! こんだけ広い家なんだから部屋くらいなんぼでもありますでしょう。でもあえて自室に通す。というか、有能なメイドたちが既にその前提で動いていて、蔵書他コレクションは隣室に退避。というか、最初から隣室を使おうよ!

今回は睡蓮が自室で繰り広げられる紫陽花と椿のイチャイチャと、いや、それイチャイチャなのか? 視覚情報が脳に達する前に書き換えられとるんじゃないか? それから椿が自分も推す百合漫画の読者だったことを知って暴走する、そのくだりが見せ場で面白く描かれていたんですが、私としてはメイドのレルの受難が印象深かった。あまりのことに退職が脳裏によぎってる彼女ですが、睡蓮からの特別賞与、こいつが考えを改めさせるのかな? しかし、レル、完全に労災ですよね。本当にお気の毒でした。

『スローループ』

今回は狩猟編ですね。楓の狩猟にひよりが付き添います。鳥打ちですね。銃は散弾ではなくエアライフル。肉へのダメージを最小限にできることと、恋の店に羽を卸す関係から、コンプリートスキンっていうんですね、首の羽毛を使うから極力ヘッドショットで仕留めてほしい。なるほど、冒頭で見学ずみの小春と恋が話していたヘッドショット、こうした事情からあえて狙っているんですね。

今回の猟の描写。雉を見付けて、車の窓からライフルで狙い撃つ。その一連の様子を見て、なんだか可哀そうという気持ちがわいてしまって、それと同時に、普段の魚を釣ってさばいて食べる、それとどう違うというのか、自問自答する瞬間があったのが自分のことながら印象的でした。

また楓の周到さ。狩猟の様子をなるたけ人に見られないようにしたい。違法ではないけれど、銃を持ってる人間を不審に思われてひとたび問題化すれば、猟禁止区域になってしまうかも知れない。釣りとはまた違う、よりマイナーな狩猟の事情というものも見えてきて、なるほどと学ぶところの多い話でした。

『球詠』

新越谷と深谷東方の試合です。深東のピッチャーはノビのいい球を投げてきて、その攻略はちょっと大変そう。プロのスカウトが注目してるピッチャーなんですか。なるほど強敵なわけですね。

この漫画の面白みは、そうした相手選手のいろいろについて、様々な目から見た分析的な評価がわかりやすく示されるところでしょう。今回は光が打席で感じたこと、相手投手の配球のパターンからストレートとカーブの特徴など、端的に解説されて、それがあるからこその後の展開が納得を持って飲み込める。ええ、野球に明るいといえない私のような読者にもやさしく、だからこそ面白く読めるというんですね。

一巡目、ゴロを打てたのは息吹だけだった。その理由が芳乃から説明されて、そこから導かれる白菊の優位性ですよ。さらにここから左打席に転向した稜に繋がっていく。相手方のエラーは予想外ではあるものの、それでもこれまで彼女らが取り組んできたことが、実際に点に結びついていくというこの流れは、ずっと読んできたからこそぐっと胸に迫って感動的でした。ほんと面白いんですよ。

『ちょっといっぱい!』

もみじと凪を訪ねて学校までやってきたエリカ。ちゆりのお疲れさまパーティをサプライズで開きたい。その相談にやってきたというのですが、これがですね、もみじたちがこれまでちゆりと共に経験したこと、それを思い返させるきっかけとなって、さらにはもみじにとってちゆりがどういう存在であったか、それを改めて意識させることになって、素晴しい。

ああ、もみじをこはる屋に引き入れたのはちゆりの勘違いがもとでしたね。もみじの、ひいては彼女たち皆の物語の最初のページを開かせたのがちゆりであった。そのちゆりが卒業するの、感慨深いですね。そうか、この卒業はちゆりにとってもひとつの区切りであるかも知れないけれど、もみじたちにとっても、そしてこの漫画、物語にとってもひとつの区切りとなる出来事であるのかも知れません。

エリカがちゆりのためにパーティを開いて送り出そうと思ったその気持ち、ちゆりとの入れ替わりになってしまう自分が、少しでもちゆりとの思い出を作りたい、そんな思いを口にしたところ、それがまたよかったのですよ。ちゆりのための会である。けれど、ちゆりのためだけじゃない、自分のためでもあるのだということで、もみじや凪に気を使わせたくなかったのかな? いや、そうじゃないな、きっとこの子の本心でもあるんだろうな。

そしてこんなエリカを見て思うもみじの胸中、それもまたこの子のこれまで、積み重ねてきたことの先に生じる思いなのだと思うと、それもまた感慨でありました。ほんと、ちゆりの卒業が引き起こすいろいろ、その折々につのる感慨。読者である私にとってもひとつの区切りであるようです。

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