『まんがタイムスペシャル』2010年2月号、発売ですね。表紙は、ちまき先生羽子板持ったちるみさん、破魔矢持った外村さん。酒飲んでるたまちゃん、そして新連載『あんちょこ』の杏、千代子のふたりです。と、そこに目立つ大きな文字で新連載5連発!
ええ、ゲストからの連載昇格がふたつ、そして新連載がみっつありまして、なかなかにわくわくとさせてくれる、そんな号であります。
連載昇格ひとつ目は『ミニパトっ!』です。婦警さんと、お酒も扱うコンビニの息子がなんか楽しそうなことしてる漫画なんですが、今回はB級グルメ特集? 牛丼にあんこやバナナをのっけて食べるとおいしいよ! って話なんですが、これほんとなんでしょうか。バナナは、意外にエスニックな感じでいけそうな気もしますが、あんこはなあ。無茶な思い付きでもどーんと実行してしまう、そんなヒロイン水原さんがとても魅力的な漫画です。結構好きなので、連載は嬉しいです。
『早乙女寮別館ものがたり』、新連載ひとつ目です。女学校もの。5月に転校してきたお嬢さんが、女子寮に住まうことになる。はたして少女を待つのは、どんな生活なのでしょうか。という振りが正統派女学校ものを期待させたというのに、なんと満室、よって別館に住むことになった。ということで、ボロアパートものになってしまいました。変わりものの大家兼理事長とのアパート暮らし。ちょっと期待してもよさそうだぞって感じであります。
『キミ待ち!』、新連載ふたつ目です。口八丁ぐりぐらの新作でもあります。頑固な親父のいる蕎麦屋が舞台。そこに関西からやってきたお嬢さん、陽菜が住み込みで働くことになるという話なんですが、この陽菜って娘、ちょっとわけありっぽい。恩人を探しています。お金を借りています。身寄りはありません。という、ちょっとヘビー、けどテンポはよく、雰囲気も明るく、しんみりするというようなこともなく、で、これ、どういう展開を見せるのだろう。またこれも先の楽しみな漫画です。
『おすすめ!看板娘あんちょこ』、新連載みっつ目です。おおた綾乃の新作でもあります。和菓子屋の娘、杏と、洋菓子屋の娘、千代子がヒロインです。ちょっとおっちょこちょいで、けれど穏かで気立てのよさそうな杏と、派手目の美人で気も強そうな千代子、小学校時代の友人が街でばったり再会して、再び仲良くなるのか、あるいはライバルになるのか? いずれにしてもコメディタッチ、安心して身をゆだねて読んで、きっと面白いだろうという予感がしています。で、十五年を指摘されて目を背ける千代子がちょっと可愛い。目元涼しい美人っていいですね。自分ちの菓子が一番と譲らない不穏な表情もまた素敵でありました。
『なないろレシピ』、最終回です。菜々先生の両親が帰ってくるというので、なんだかてんてこまい。内容はといえば、あくまでもいつもの雰囲気を保って、そして最後に笑顔で両親を迎えるという、その表情、とてもよかったです。
『蝴蝶酒店奇譚』は人魚譚。オカルト雑誌のライターが人魚を探しにやってきてという話なんですが、この漫画のいいところは、オカルトな方向に進むか、あるいは反転してみせるのか、それがちっともわからないってところです。オーナーは、伝聞ながらも平気で人魚の存在を口にして、そしてライははなから相手にしていない。こうした状況の中、くるかこないのか、じりじりと状況が進んでいくのはちょっとスリリングで面白かったです。そしてラストのライの言葉。ああ、こういうのはとてもいいと思う。そんな話あるわけないとわかっていながら、けれどあったら面白いよねと、そういうさじ加減でもって楽しむっていうのはすごくいい。このバランス感覚が、じりじりと焦らすサスペンドされた面白さを支え、そしてミザリーのロマンと感傷に味わいを添えたのだと思います。
『ものかき倶楽部』、ゲストです。小説をノートに書き溜めているヒロインもえみが、文芸部ならぬものかき倶楽部に顔を出すという話。素直になれないもえみもいいんだけど、文具愛を確かなものとするべくものを書くという、その目的と手段がごちゃごちゃになってるような部、なかなかに面白いです。まるで、万年筆使いたいがためにペン習字やることにした私みたいじゃないですか。自己弁護みたいになっちゃうけど、道具に憧れて、その道具をちゃんと使いたい、使えるようになりたい、その一心で取り組むってのはありだと思うんです。ギターが好き、だから飾る、じゃなくて、弾く。筆記用具が好き、だから手にして眺める、じゃなくて、書く。ちょっと入り口は違うかも知れないけれど、道具が好き、からはじまるものがあってもいいと思います。うん、好きってだけからはじまるものがあってもいいと思ったのです。
でも、やっぱり、ちょっとマニアックよね。うん、自分でもわかってます。
『アトリエB』、ゲストです。海外から美術留学してきた女の子。今回は、海外からのというギミックは弱くなってたけれど、でも全体に生きがよくなって面白かったです。で、私は知らないことを知ると喜ぶわけですが、塩の効果。へー、知らんかった。試してみたいな。なんて感じに、とても面白かったです。
『丸の内!』、ゲストです。いや、新連載? どっち? わかんない。ずいぶん偉そうな新入社員、丸の内れいが傍若無人ながらがんばるという話です。食えないOL。その一筋縄ではいかないというキャラクターが、ナンセンスに場をひっかきまわすという漫画でありました。
『笑って!外村さん』、連載になりました、って連載になったの先月か。じゃあ、昇格ふたつじゃなくて、昇格ひとつで、新連載よっつだったのか? よくわかんなくなってきました。
外村さん、あいかわらず誤解されているという、その徹底ぶりには惚れ惚れとしますが、あの前屈みで凄むような仕草、あれにちゃんと理由がついて、ああもう、なんだ、可愛い娘さんじゃないか。というギャップがとてもいい感じ。あの、春野さんが絶望に色を失うところなんて、待ってましたという感じに楽しかったです。
『おんたま娘』、ゲストです。温泉旅館の看板娘? しっかりものの先輩と、まだまだいたらない新人ふたりが、常連さんたちとわいわいやるという漫画みたいなのですが、雰囲気はとてもいい、これはちょっといいなと思いました。一癖二癖ありそうな常連、小説家の内海文吾、どう考えても執筆さぼってゲームで遊んでたとしか思えない描写がさりげなくあったり、こういう個性の目立つキャラクターが、その存在感を主張するところなんて、実にいいと思ったのでした。期待します。
『スーパー探偵!』、ゲストです。スーパーで働いている青木さくらが、警察官の姉と一緒に、スーパーで起こる事件を解決するという漫画のようです。事件といっても、血なまぐさかったりはない。ちょっとなまぐさかっただけ。穏当に、バタバタとして、解決して、その勢いあるところなど、よかったです。推理ものみたいになるのかどうかはわからないけれど、トリックうんぬんより、空騒ぎといった様子の方が楽しそうであります。
『ココロノミカタ』、ココロさんが出なくてちょっと驚きました。ミカタさんだけが登場して、これはなにか状況の変化が期待されるのかな。いや、ちょっと最終回間近なんだろうななんて思ったりするんですが。独特の雰囲気のある漫画、結構好きなんです。終わるとしたら残念だけれど、終わりを用意している感じは以前からもあったから、ちょっと覚悟しようと思います。
『MISHIMAデパートメンズ館』、最終回です。最終回は、なんかうまくまとめた感じで、ちょっと残念といったら残念。無茶やってる若社長が好きだったんですね。最後の最後で、Wデパートのスパイ、ハットリのポジションがすごく面白い。なんの役にもたってなかったのに、なんか責任感じちゃってたり、なんのかんのいって溶け込んでたり、そんな勘違いぶりが若社長を食ってしまっていました。そして結局は若社長返り咲きという話ですが、最後の社長の思い付き。あれがくるのかどうか、これから数年、情勢を見守りたいと思います。きたら、社長すげー! ってなものですよ。ちょっとわくわくさせてくれるラストになりました。
『白黒つけましょ!』、ゲストです。碁を打つ女の子の話。ネット碁しかやったことなかったけど、学校の囲碁部に入部してがんばろうという前向きさが魅力的です。正直なところ、漫画から碁というゲームの面白さは感じとれなかったものの、他人事と思っていたら巻き込まれた部長の本音とごまかしなど、面白かったです。よく見られる紋切り型展開をうまくあしらって、そういう見せ方は好きじゃないっていう人もあろうかと思いますが、私には面白かったです。
- 『まんがタイムスペシャル』第19巻第2号(2010年2月号)
引用
- 『まんがタイムスペシャル』第19巻第2号(2010年2月号),1頁。