2007年4月7日土曜日

開運貴婦人マダム・パープル

 今、話題沸騰のスーパー占い師マダム・パープルはすごいぞ! なにがすごいといっても、レミオ○メンの『粉雪』ネタを読んでたら、本当にテレビから『粉雪』が流れてきたんだから。って、これはマダムじゃなくて竜田川さんか。ともあれ、昨今の占いはじめオカルトばやりの世相を反映させたか、四コマ漫画界にも占い師が降臨して、そしてこの占い師というのがすごいのです。当てる、とにかく当てる。相手の素性もなにも聞かないうちからばんばん当てていって、ええと……、マダムは占い師じゃなくて超能力者を名乗るべきだと思います。それくらい当たる。けどこの漫画の一番すごいところは、その当たる占いというのがことごとくギャグとして成立しているというところで、とにかく面白い。『天子てんこ』の時にもいってましたけど、この人、意外性を駆使して日常におかしみを見いだす才能に長けた人だと思います。

この漫画のなにが面白いかといって、千里眼万里眼といっていいくらいの能力なのに、実にくだらないことに使われるってとこなんじゃないかと思うんですが、生活感があるというか、日常感に満ちあふれているというか、漫画読む私たちの生活実感からかけ離れないところで起こるできごとの数々。非現実的で、なによりナンセンスなんだけれど、あったら楽しそうというそんなところがすごくいい。

ネタは占いにとどまらず、呪いの○○や心霊うんぬんなんてのまでフォローされるんだけど、呪いのなんて妙に気合いが入りそうなものなのに、実害はないに等しいしょぼさだし、心霊写真にしても、そっちかよと突っ込み入れたくなるような肩透かしのうまさがあって、やっぱりこれって才能なのかな。これが現実なら大げさにセンセーショナルにもっていきそうなところを捉えて、ちょっと普通なら繋がらないようなできごとに結びつけてしまう。その落差や脱力感がすごいからどうにもこうにも笑わずにはいられなくて、毎回の落ちが本当に楽しみになります。意外性の勝利でしょうね。奇をてらいすぎるでもなく、けど思い切った飛躍で読むものの予測を二転三転裏切って見せる。その見せ方は実にシンプル、必要最低限の情報に切り詰められているから、読んでるこちらもまごまごせずに落ちにすとんと納得できて、いやあ、ネタ作るの大変なんじゃないかなあ。これ、思いつきレベルのネタから最終形に持っていくだけでも、かなりの推敲、練り上げがなされているんじゃないかと思います。

私は実は、占いがらみのなんだかんだって大嫌いで、テレビも見ない、話も聞きたくないっていうような人間なんですが、でもマダムなら別。毎号を楽しみにするくらい好きな漫画で、それはきっとこの人の漫画に通底する、ささやかな仕合せを願う善良な人たちへの信頼っていうのか、まあいうたら庶民的なところが肌に合うのだと思います。加えて、この人特有の常識人っぽさというかが、あまりに大げさに扱われる占いオカルトの類いを茶化して無毒化するようなところもあるから、そういうところも気に入っている理由なんじゃないかと思います。こういう書き方すると、それだけでもうなんか大げさですが、漫画はそんな大げさななんかじゃなくて、すごく身近な感じのする良作です。

蛇足

私のお気に入りのネタは、89-90ページにかけての「小さな発見」、「新しい発見」で、こればっかりは何度見ても見飽きない。何度読んでもそのつど笑える、すごい漫画だと思います。子象も可愛いし!

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