2007年4月18日水曜日

暁色の潜伏魔女

 九州男児『ネコ侍』を求めての行脚、二店目は噴水近くの書店でした。ぐるり店内を見て回って、どうにも見当たらないようだからレジのお姉さんに問い合わせたのですが、その時、新刊の平積みに赤い表紙のぱっと目を引く漫画を発見。実は、この漫画には見覚えがありまして、いつもいく書店書店で見てはいたのですが、あんまりに手を広げるのも危険と思いあえて気にしないようにしていたのです。ですが、この漫画、袴田めらじゃありませんか。おいおい、ちょっと待ってよ。知らなかったよ。袴田めらと知ってたら見た瞬間に買うってば。こんな具合に、危うく気付かず見過ごしてしまうところをぎりぎり回避することができました。ありがとう九州男児さん!

まったくの予備知識なしで読みはじめた『暁色の潜伏魔女』ですが、読んでみて、非常に袴田めららしいよさのある漫画、一目で気に入りました。掲載誌(『コミックハイ!』)の意向を反映させたか、舞台は学園。ただその学校というのがちょっと普通ではなくて、魔法を使える人間を収容するという目的で作られた、そういういわく付きの設定です。そこへ転校してきた桜田暁を巡る人間模様、心模様がなんだかふんわりとして、けど時にしんみりと伝わってくる。このへんが袴田めららしいなあというところなんですが、いや、本当にいい感じ。過去に袴田めらを読んだことがあって、結構好きという人があったら、きっとこの漫画も気に入るんじゃないかと思います。

けど、欠点もないわけではないのです。ビジュアル面での弱さ。女の子は可愛いし、充分にその内面や情感を伝える絵ではあるのですが、けれどことアクション面の描写、盛り上がりを演出するということにかけてはぱっとしない感が拭えないのです。ほら、やっぱり魔法学園ものですから、魔法がどんとメインに出たりするのかと思ったら、そのへんが地味な感じになっちゃうから、ちょっともったいないと思った。まあ、出てくる魔法というのも地味なものが多く、またその地味さがいい味を出していると思うので(望月先輩の「抱きつくことによって自分の妄想を相手に見せる」魔法は最高だと思う)、これをもってことさらに欠点というつもりもないんですが、けどやっぱりちょっともったいないかなと思うんですね。

でも、派手さがない反面、静かに、内面を告げるような描写には長けていると思うのです。ナイーブな、そっと触れることによって伝わるようなやさしい温度の感じられる漫画。この長所があるから、他のいろいろは気にならなくなる。展開も波乱含みのまま長く引き伸ばされるかと思ったところが意外にあっさりと語られたりして驚いたのだけれど、その一見あっさりとした中に深く共感させるシーンが続いたりするから侮れなくて、そして私はこの人の漫画のそういうところに参っているのだと思います。漫画の素直さ、登場人物の飾らない感じが多くを伝えてくれるから、受け入れる感性のチャンネルさえあれば、この人の漫画のすごく豊かであるということが、きっとわかると思います。

  • 袴田めら『暁色の潜伏魔女』第1巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2007年。
  • 以下続刊

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