2007年4月10日火曜日

リカってば!

  かつて私の愛した雑誌『まんがタイムポップ』にて連載されていた『リカってば!』は『まんがタイムジャンボ』に引っ越して好評連載中。というか、今は絶賛休載中であるんですが……、でももう少ししたら連載再開されるらしいといいますから、ああ嬉しいな。私はこの漫画が好きで、それはもう『ポップ』に連載されていた頃から。四コマ誌『まんがタイム』系列誌に連載されるストーリー形式の漫画であるのですが、四コマ誌に載っている漫画としては実に異色。らしからぬ絵柄、内容。むしろこれは女性誌、少女誌とかではなくて二十代中盤くらいをターゲットにした女性向け漫画誌に載っていてもおかしくないような漫画である、そんな雰囲気を持っています。あっけらかんとして大ざっぱな女性と、小柄でナイーブな男性を巡る恋の模様が描かれる、そうですね、ラブコメなんだと思います。

そしてこの度、『リカってば!』の第2巻が発売されまして、わあ、嬉しいな。これ、まんがタイムコミックスとして出ているのだけれど、四コマとは紙質も判型も違っていて、普通のコミックス(というのも変な表現ですが)みたいな感じです。一時この判型でストーリーものが立て続けに出て、けれどその後が続かなかったから、もしかしたら売れなかったのじゃないかなんて心配していたのですが、こうして2巻が出て、よかった、『リカってば!』は売れていたんですね。こうして続きをまとめて読むことができて、雑誌で連載を追っていた時とはまた違った感慨が、といいたいところですが、この巻に収録されてる話って一年以上前の掲載じゃないですか。参ったな、そんなになるんだ。ほんと、驚いてしまいました。

かなり長いスパンをかけて展開している話ですが、驚くほどに進展はなく、以前、1巻が出たときにいってた状況からまだ抜け出せていない。そんな感じです。ヒロインのリカ、そして主人公の塚田がお互いにひかれながら、けれどそれぞれ別に気になる男性女性があって、その間で揺れ動きながら、近づき、離れ、その連続。まあ、私ら読者からしたら、両者の思うところはもう明白であるわけですから、ああ、もう、やきもきするなあ、お前らもう結婚でもなんでもしちゃえよ、みたいな風にもなるんですが、けどこの漫画に関してはそのやきもき感が面白いんだと思うんです。無駄に引き伸ばしてるのかも知れない、けどそこには無理な感じというのはなくて、リカとリカの今つきあってる羽鳥君との関係、塚田と塚田を思う可憐な女性安曇さんとの思いのやり取りに、おそらくはこの漫画の本筋からすれば壊れてしまう恋、かなわぬ恋になるだろう彼彼女らの心の行く末を思い、なんかしんみりと泣き笑いな感じなんですね。とりわけ私は男だからか安曇さんに肩入れしてしまうわけですが、彼女自身自分の思いのかなわぬ可能性、報われないことを知りながら、それでも塚田への思いを捨てられない。ああ、わかるわ、わかる。そうなんだよ。と、私自身はもうすっかり忘れてしまったような感覚感情を思わず掘り起こされて揺さぶられて、もう安曇さんを応援しちゃうね、みたいな感じになっちゃう。でも、この漫画の本筋からすると報われないんだよなあ。ああ、恋って素晴らしいけど悲しいねえ。

でもって、塚田もいい。安曇の思いを知って、揺らぎながらも決然と身を引き離すその潔さはリカという思い人のあらばこそで、人というのは恋してるとなんか潔癖になるよな。そんで、後で後悔するんだ。ああ、なんであの千載一遇のチャンスを、わたくしのバカ! バカバカバカ! みたいな感じで後悔するんだけど、けどぐだぐだぐちぐちと堂々巡りしてる塚田の情けなさ、嫌いじゃないです。人間くさいじゃないですか。なんでもかんでも割り切って動けるなんて、やっぱ無理ですよ。そういう、人間の駄目さ、浮かれてみたり揺らいでみたり、メランコリーだったりちょっと浸ってしまったり、ほんで妄想の中でかっこつけてみたり! 誰でもやるよな。私もやるよ、てかやったよ。そんな感じで、塚田はいい。

深刻だったり煮え切らなかったりする人たちの話だけど、それでも湿っぽい一辺倒だったりしないのは、どこかにあっけらかんとしたところが感じられるのは、この作者のいいところだと思います。基本的に笑いがある。シリアスでナイーブなところを見せながら、同時に明け透けな思惑も描かれたりするところ、人間の潔癖でありたいという思いとどろどろとした欲求の狭間の揺れ動きったら言葉が大げさすぎるよね。けど、そんな感じ。私たちは理想的な生き方をしたいと思いながら、時に劣情に近く胸を焦がすのさ。そのさじ加減がすごくいい。

というわけで、私は連載再開を心待ち。2巻では塚田の妹ミツルの出番までいかなかったので、ちょっと残念かなーと思っているから、是非3巻の出ることを楽しみに、そして彼ら彼女らの恋愛模様の動きなんかも楽しみにしたいところです。

  • 長谷川スズ『リカってば!』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 長谷川スズ『リカってば!』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 以下続刊

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