頼んでいたマイクを受け出しに楽器屋にいくついでに、向かいの書店にも寄ったのでした。最初は、なんとなく買わずにいた『ひだまりスケッチブック』を買っておこうと思って、それでついでになんか評判いいらしい九州男児の『ネコ侍』も買おうかなと思って。で、久々の表紙買い。タイトルは『かよちゃんの荷物』。聞いたことのないタイトルに知らない作者の漫画だったのですが、四コマのコーナーに平積みされていたその表紙の雰囲気がどうにも気になったのでした。ちょっと昔っぽい、昭和臭さといっていいのか、そういうあかぬけない感じの絵柄になんだかひかれるものを感じたんですね。どうしようかな、ちょっと迷ったけど結局買ってしまいました。
竹書房のバンブー・コミックス。てっきり四コマだと思ってページを開いたらストーリーもので驚きました。あちゃあ、やっちゃったかなと最初は思って、オープニングの二ページ読んでちょっと微妙かなと思って、というのは、なんだかヒロインのかよちゃんが可愛くない。ちょっとだらしなくて、いいかげんで、人のよさそうなかよちゃん。けど、そんなことよりももっと気になるところがあって……、あの目が飛び出る表現ってのは今どきどうかと思う。いや、ほんまに。申し訳ないけど、かなり脱力するものを感じた、正直な話です。
と、のっけからネガティブトークですが、けどこのかよちゃん、本編に入れば、なんだかわりといい感じよね。漫画としては、ええと、どういうジャンルなんだろう。女性が友達同士、とりとめもないことしゃべったり、けどそのわりに遠慮なく気になるところをずけずけ突いてみたり、そんな感じの女三人友情もの。ヒロインが味があっていいなあと思うんです。ちょっとぐうたらでむら気があるというか、熱しやすく冷めやすい感じかね? 今の状態は駄目だと反省したかと思うと、いややっぱり今の感じがいいやみたいに落ち着いてしまうし、なんか開き直ったみたいに呑気かと思ったら、妙に焦りだしてみたりもするってところ。多分、男はこういう女性を好かないよね。けど、私はかよちゃんみたいな人なら、友達に加えてもらいたいなんて風に思って、だって楽しそうじゃないですか。つきあうとかつきあわないとかじゃなく、一緒になんか馬鹿なことしゃべったり、たまには厳しいこといったりいわれたり、他人には伝わりにくい妄想トークを聞いたり聞かせたり、そんな関係はすごく楽しそうだ。けど、私は男だから、女友達のそういう輪には、かたち加わることができても、本質的に入り込むことはできないんですよね。私はそれが寂しい。だから、時にこういう女同士のフランクな、本音も出ちゃうというかむしろだだ漏れというか、そういう雰囲気を伝えてくれるこういう漫画が好きなんでしょう。なんか、憧れてるんだと思います。
ああ、男になんて生まれるんじゃなかった。
まあ、それでもかよちゃんはかなり個性的なほう、有り体にいうと変わった人だと思う。普通の人なら漫画にならんという気もしますが、けど私は変わり者の方が好きだから、人に迷惑かけないタイプの、普通の領域からこぼれ落ちる人が大好きだから。そういう点では、この漫画は非常に私向けだった。変わり者に優しく、けどそれはエキセントリックなんじゃなくて、誰もが内面に普通から逸脱する自分をもっているから、誰もに優しいってことなんだと思う。ぎょっとするようなシビアな、シリアスな話が裏に隠れていたとしても、取り返しのつかなくなる前にそっと手を差し伸べるような、そういうやさしさがあるんだったらきっと世の中というのはいいよねと、そんな風に感じる漫画でした。
- 雁須磨子『かよちゃんの荷物』第1巻 (バンブー・コミックス) 東京:竹書房,2007年。
- 以下続刊
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