ロストロポーヴィチが亡くなりました。享年八十歳。まあ、お歳だもんなあとは思ったのですが、けれどショックはショック。私が昔聴いて親しんでいた名前がこうして一人一人鬼籍に入っていくというのは、ただただ寂しく悲しいことであろうかと思います。これが世の理りとはわかっていながらも、やっぱりね。悲しさとか痛ましさというようなものは、そこにたとえどういう理由や理屈があったとしても、消えるものではないと思いますから。ロストロポーヴィチといえば、私、ずっと欲しかったものがありまして、それはLDであったのですが、J. S. バッハの『無伴奏チェロ組曲』を収録したもの。演奏があり解説がありという、その解説に興味があったのです。けど、私はこのLDは結局買うにいたらず、DVDになってくれたらなあと思っていた頃にはDVD化せず、私がDVDから離れている間にDVD化して、今はもう入手困難になっているという、一体なんなんでしょうねこの縁のなさは。
私が大学にはいって、サクソフォンの授業、最初に渡された曲というのがバッハの『無伴奏チェロ組曲』だったのです。もちろん編曲もの。それも、結構編曲者による手が入っていたから、私は図書館に行ってチェロの楽譜を借りだし、変更部分を可能なかぎり原曲に沿うように書き直し、さらにアーティキュレーション(スラーとかそういうの)も全部書き換えた。こうして、できるだけオリジナルっぽくしてから練習して、その時参考に聴いていたというのはカザルスの演奏でありました。
この時期は、とにかくバッハに一生懸命に取り組んでいましたね。CDとかばんばん買えるほど裕福ではなかったから、図書館は視聴室に入っていろいろ聴いては参考にして、けどこの時点ではロストロポーヴィチのLDは参考にしていませんでした。これが出たのっていつごろなんでしょう。私が覚えているのは、上新電機のCD専門店ディスクピアにそれがあるっていうのだったのですが、当時上新電機はポイントの累進制をとっていましたから、いつか最高の1ポイント=5円まで上り詰めて、ロストロポーヴィチのLDを貰うんだと心に決めていたのです。けどうまくはいかんもんで、3円くらいにまでランクアップした時点で、このポイント制度は廃止されたのでした。ロストロポーヴィチのLDを貰えるまでにはいたらず、そうなんです、当時はまだLDは高かったのです。
なのでやっぱり大学の図書館で見たのです。もう十年も前のことだから記憶もさだかではないのですが、この和声の使い方はショパンの葬送に同じなのだといってピアノでそこをなぞるというような、そういうシーンがあったように記憶しているのですが、けど本当にうろ覚えになってしまいました。あの独特の雰囲気、その感じしか覚えておらず、だからできることならまたみたい。そんな風に思います。
ロストロポーヴィチのアプローチは、当時の流行だった作曲家の意図に限りなく沿おうとする態度とは違って、やはりロマン派志向であったのですが、けれどどのように音楽を捉えようとしているかが説明され、その結果が演奏で示されるというのは、学生にとってはためになる、そして音楽ファンとしても面白い、非常にスリリングなものであったと思います。
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