iTunes StoreにDRMフリーのコンテンツが追加される。
PC系ニュースサイトのみならず一般のニュースサイトにおいても報道されたこの情報。その扱われ方を見れば、どれほどの驚きをもって受け入れられたかがわかるような気がします。
今回、DRMフリーのコンテンツを提供するのはEMI Music。日本においては東芝EMIになるのかな。だから、これは欧米のみでのサービスになる可能性があるけれど、もしかしたら日本でも同様の展開があるのではないかと期待してしまいます。
コンテンツがDRMなしで頒布されるというのは、ここにきて大きな意味を持っているのではないかと思います。それは、少し前にジョブズもいっていたことにも関わるんだけれど、DRMというものが音楽の著作権侵害を防ぐために、うまく機能していたとはいえないし、これからもしないだろう
ということを、音楽産業の一方の当事者であるレーベルが認めはじめているということです。音楽レーベルはこれまでDRMや著作権法をもって、自社のコンテンツをコントロールすることに情熱を傾けてきました。それは海賊行為を働く無法者から自らの利益を守ろうとする当然の反応のようにも見えましたが、ですが実質は他方の当事者である私たち消費者をコントロール下に置くということに他ならず、そしてそれは私たち消費者にとって不利益をもたらす要因ともなっていました。
例えばiTunes Store本国においては182アルバム購入できるYo-Yo Maが、iTunes Store日本だと3アルバムしか見つけられません(182曲じゃないよ、アルバムだよ)。こういう状況を見るにつけ、私なんかは人間が愚劣にできているものですから、グループ企業の展開する楽曲ダウンロードサイトを優遇させんとすべくレーベルが提供制限をしているんじゃないかなんて陰謀論を巡らせてしまっていけないのですが、けれどこれは冗談やなんかではなく、独占禁止法において禁止されている事業者による私的独占・不当な取引制限・不公正な取引方法・事業者団体による競争制限行為に該当すると思ってるんですが、なんでこんなあからさまな不当競争に日本の公正取引委員会は動かないんだろうとずっと以前から疑問に思っています。
ともあれ、今回のDRMに対するEMIの動きを見て、ちょっと希望が見えてきたように思います。この動きが他のレーベル、他の楽曲ダウンロード販売サイトに波及したら、これまでiTunes Storeにおいて購入できなかったGlenn Gouldを私のiPodに転送して聴くこともできるかも知れない。いや、あんた、グールドなら全集で持ってるじゃんかっていわれそうですが、全集で持ってるからこそ全集発売後に発掘されたようなものが買いにくいってこともあるわけで、追加トラックのために同じアルバムをいくつも買うようなのはもういやなんです(そう。私は『シルヴァー・ジュビリー・アルバム』をふたつ持っています)。
ジョブズの公開書簡を見たときには、こうなったらいいなあと思っただけでしたが、今回のEMIの英断は、ともすれば圧倒的な強者となりうる一方の当事者のコントロールから逃れられるかも知れないという希望を見せてくれました。非iPodユーザーも、iTunes Store限定でリリースされる楽曲を見て悔しさにもだえる必要はなくなるかも知れません。また、DRMがあるためのバックアップのとりにくさに煩悶し、それがためにコンピュータのクラッシュに必要以上に怯えるようなこともなくなりそうに思います。ともあれ、法的にはまったくの白であるというのに、不当に制限されてきた行為に対する自由(それは例えばポータブルプレーヤーの乗り換えの自由なども含まれる!)が再びユーザーの手に戻ってくるということに素直に喜びを表明したいと思います。
そんなわけで、近々、EMI祭と称して、EMIのリリースするナイスな楽曲を紹介したいと思います。もし紹介されなかったら、ごめんなさい。ネタがなかったんだと哀れんでください。だって、フルトヴェングラーの第九もカザルスのチェロ組曲も、もう書いちまってるからなあ。けどEMIにはナイスな音盤はまだまだあるはずだから、きっと大丈夫です。
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