『まんがタイムきららキャラット』2021年10月号、昨日の続きです。
『恋する小惑星』
今回はナナと一緒に地学オリンピックを受けるチカにスポットライトが当たります。
この子、姉の影響で石に、地学に興味を持つにいたったわけですが、その自分の気持ちは本当なのか、そういう迷いを胸中に抱えている。そんなこと気にしなくってもいいのに。好きなら好きで、楽しいなら楽しいでいいんだよ、と思うのは当事者ではないからでしょうね。自分の「好き」は自ら見つけた気持ちではなく、姉にくっついていった先にあっただけじゃないのか。いうならば姉の好きという気持ちを真似しただけ。そうした疑問を持ってしまっているみたいなんですね。
でも、地学オリンピックの試験対策すべくイノ先輩に相談し、そうしたら昨年予選で知り合った冴木を紹介してもらえて、こうしてだんだん広がっていく人間関係? さらには試験を受けている時に感じたこと、苦手と思っていた気象分野も、ナナからいろいろ教わるうちに面白いと思えるようになってきている。
ああ、この話はチカの巣立ちなんだ。姉の影響下にいた自分を肯定しながらも、さらに広い世界に視野を広げていく。そこにはナナからの影響があり、地学部の先輩たちの影響があり、さらには冴木から得たものもあるんだろう。広がる人間関係、広がる知識や興味、そしてそれはこの子の世界そのものの広がりであるのでしょう。
試験の帰り道、桜御影、万成石を見つけたチカ。そこでの冴木との対話、それが弾みましてね、ああ、チカ、いい感じに吹っ切れたみたいですね。ええ、なんだか勇ましくもある、そんな足取り。ちんまりしたこの子の、そのうちに息衝く情熱、衝動、その片鱗が見えてわくわくです。
『あやしびと』
びっくりした! もう人間界なのか。組織での研修を終え、ふぶきとともに人間界にやってきたアヤ。正直、研修であるとかの状況をじっくり描いてくるのかと思っていたから、あまりのスピーディな展開に戸惑いを覚えるレベルであります。
さて、展開のはやさ、まだまだ序の口でしたよ。引率のメメを薬物で昏倒させるふぶき! いったいなにごと!? 離反なの!? 謀反なの!? ビビりたおしていたら、ああ、これ、アヤのためなんだ。外出、自由行動が制限されている。なら引率者を無力化するほかない。
ふぶき、アヤのためにここまでやってくれるんですね。これ、それだけの恩義を感じている、その現れなのかも知れませんね。
向かう先はアヤの実家。アヤの友人を名乗り、アヤの母からいろいろ聞き出すふぶきの頼もしさ。しかし、これでアヤも知らなかった事実を引き出して、アヤ生存! 事故以来ずっと眠り続けている。ああ、中身が向こうの世界にいってしまったから……。
あまりのことに動揺を隠せないアヤを抑えるふぶき。しかしアヤ、これはたまらないよなあ。やっとこさ、死んでしまったことを受けていれて、妖人たちの世界で生きていくことを受けいれたんじゃないか。なのにまだ生きている。自分の世界に戻れる日もくるかも知れない。
これは、なにかつらい選択をしなければならない未来が待ってたりするんじゃないか。生きていた、それは希望なのだと思う。ただし、その希望を掴めばみぞれたちとの生活、皆と育んできた友情を手放すことに? 両方のいいとこ取りをできればいいのに。したたかに欲張っていってほしい、本当にそう思います。
- 『まんがタイムきららキャラット』第17巻第10号(2021年10月号)