『まんがタイムきららMAX』2021年10月号、昨日の続きです。
『リリカお嬢様に振り回される!』
わがままお嬢、リリカの傍若無人が光る漫画。家政婦の永野はたびたび困らされているわけですが、慣れちゃってる感もありますね。むしろリリカのわがまま放題があってはじめて働いてることを実感する、そんな感じになってる模様。
さて、愛されてることを実感できないがゆえに、満たされない思いを埋めようとして永野を困らせているっぽい、なんてことを前回は感じたわけですが、今回はそのリリカの心情や背景が掘り下げられて、ああ、愛し愛されるということ、それがわからないんだ。リリカの思い出す母との関係、それはどこか希薄で、そして足が不自由なこと、それを負い目にしているところも描かれる。
そうしたことをただ説明するのではなく、飼っている犬、シャルロッテとの関係、その交流を通じて自然に引き出していくところ、とてもよかったと思っています。シャルロッテにどう接したらいいかわからない。ふとしたことに、リリカの思うところがポツリと表に出てきて、そうかあ、決して悪い子じゃないんだな。永野のことも困らせてはいるけれど、嫌ってとかではないんだ。むしろ甘えたい、けど甘え方がわからない、そんな感じだったんですね。
第一話では、困ったお嬢様だな! けど続く第二話でしっかりリリカのこと、嫌な子ではないんだよって伝えてくるところなど、これもうまかった。この子のこと、ちょっと放っておけないな、そんな気持ちにさせてくれる。ええ、悪くなかったです。
『桔香ちゃんは悪役令嬢になりたい!』
桔香の幼馴染みの女の子がやってきました。引っ越しで離れ離れになった彼女とは手紙のやりとりをしていたんだけど、桔香、イトちゃんたちのこと下僕だっていって、ありもしないこと書いて送っちゃって、いやもう、そんな状態で遭遇したもんだからもう大変。幼馴染みのヤエちゃんをがっかりさせたくないからと、嘘にあわせて欲しいって必死でお願いするんだけど、だったら嘘は駄目だよ! でもこの無理難題にしっかりつきあってくれるんだから、お友達のみんな、ほんといい子だよ。桔香、この子たちを手放しちゃあいけないよ!
しかし、アオイにイトには無茶な性格付与しちゃったのに、ツナギについてはいつもどおりっていうの、これツナギの特性がナチュラルにおかしいからだよなあ! ほんとおかしい。
でもね、今回なにがよかったかって、イトちゃんだよね。桔香が場を離れた時に、イトちゃんのこと、桔香がどう思って手紙に書いてきたかって、仲良くなれて嬉しかったって、普段はなかなか口にできないようなこと、ヤエが聞かせてくれて、それでイトちゃんの表情がゆるむとことかね、素晴しかった。
この漫画、ちょっと奇行が目立つけど、そうした中に友達になれて嬉しい気持ちとか、素直にいえない思いとかがちりばめられて、それが時に顔を出すの、すごくいいんですよ。人づきあいの妙、ちょっと調子にのっちゃうのもひとつの表れかも。ほんと、最後反省してる桔香のイトちゃんに向ける感情とかね、それからそんなふたりを笑顔で見守るふたりとかね、とてもよかったです。桔香、いい友達にめぐまれました。自分のことのように嬉しくなります。
『お姉様のVな事情』
2回目にしてきっちり仕上げてきた、そんな感じありますね。普段は皆の憧れ集める素敵なお姉さんである苦楽園ミユキ。しかしその実態は酒飲んでくだ巻いて、その状態で動画配信なんてしちゃったりする、ちょっと困った自堕落お姉さん。小さな頃からミユキに憧れていた逆瀬川マリナも、リアルミユキの実像を知ってショックだったわけですが、なんだかうまいこと引き込まれて、私生活に動画配信にといろいろサポートするようになるのかななんて思っていたんですが、サポートしながらもミユキの長所を再確認していった今回。ああ、ただの駄目なお姉さんじゃないんだよって、マリナのミユキに向けるリスペクトを通じて伝えてくるのは実にうまかったと思います。
ボロ出しそうになりながらなんとかとりつくろっていく私生活を前半にて置いて、そして後半には配信の様子を見せるんですが、最初、この人ほんとに大丈夫かな!? そんな風にも思わせておいて、けどデキるところも見せていくなど、メリハリあっていい感じ。そして後半配信においても、リスナーのこと、そんなに細やかに覚えているものなの!? 他にも前向きポジティブなトークでリスナーの気持ちも引き上げていく、そうした様子も描かれて、この人の人気があるということがしっかり確かさをもって伝わってきたのでした。
こうなると、なるほど面白いなって思いますよね。ええ、納得させられる、そんなところありまして、さらにそこにマリナからミユキに向けたリスペクトだけでなく、ミユキからマリナに向けられる同様の思いも乗せられてくるのですから、ああ、いいですね。いずれマリナの物語もはじまりそう! とてもよかったです。
- 『まんがタイムきららMAX』第18巻第10号(2021年10月号)
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