2021年8月19日木曜日

『まんがタイムきららMAX』2021年10月号

 『まんがタイムきららMAX』2021年10月号、発売されました。表紙は『ご注文はうさぎですか?』。チノとリゼがふたり水着姿で表紙に登場。手にしたソーダ水、はじける炭酸、勢いよく吹き出す水の清冽さに、涼しさ感じさせる素敵な表紙であります。しかしふたり、レモンあしらった水着、いつにない雰囲気、とりわけリゼがそうかな? ちょっと意外で、けれどとてもよく似合って魅力的であります。

今月は新規ゲストが3本です。

『お金に釣られるっ!市子ちゃん』

白岡市子はお金が欲しい女子高生。夜更かししてバイト先を探したのはいいけれど、睡眠不足がたたって通学の電車で寝過ごしてしまった! って、次の電車2時間後なの? ハードすぎる。これ、そうそう簡単にいいバイト先の見つかるような立地じゃないよね? でも、この寝過ごしからの散策がさいわいしたんですね。古くてボロい、いわくもついてる、そんな微妙な物件だけれど、時給1500円を提示してくる漫画喫茶と出会えたのですね。

この漫画喫茶、両親から受け継いだという現店長、蓮田ワタルの身から出た錆で霊障に見舞われるというのですね。ポルターガイスト、ひとりでに揺れる書棚、次々落下する本。鏡に写る女の霊と、それはそれは怪奇現象てんこ盛りなんだけど、市子、この子は強いな! 幽霊とかまるで怖くないのな。それどころか、金になる、儲け話に繋げよう、とにかく金に貪欲前向きで、女の霊も躊躇なく一緒に自撮りしはじめた市子にビビってますやんか!

怖さよりも面白さ、市子のバイタリティの光る漫画。この前向きさ、アグレッシブさ、怖いものなし、金となればどんどん突き進む蛮勇は魅力的。こうしたカラッと明るく気持ちいいキャラクター、いいですね。

『はねのね』

バドミントンの漫画なんですね。先輩柊蓮花の策略でバドミントン部の活動を見学することとなった柏木真乃。蓮花は蓮花で、姉の唯花の誘いで顔を出すことになって、けどあんまり乗り気でない? 真乃を自分の身代わりに姉に差し出すようにして、活動する気はないみたい。このちょっと強引でけど面倒ごとは避けたい感じ。ドライなのかな? どこか冷めてるといったほうがらしいかな。

唯花がたったひとりの部員、松田海と真乃の軽く続けるラリーを制止し、本当のバドミントン、楽しさ重視から熱い部活への転換を宣言するくだりから、一気に雰囲気が変わるのが印象的でとてもよかったです。スポコンなんて冗談じゃない、抗議する蓮花だけど、姉の提示した夕飯当番の交代、それを賭けた勝負に熱くなるところね、ただ冷めてるってわけじゃないんだ! やってみれば、実際に打ちあってみれば、負けたくないって気持ちも湧いてくるし、それになにより楽しいという、そんな蓮花の様子は、スポーツの面白さ、楽しさ、魅力をよくよく描き出していたと思います。

勝負には負けてしまったけれど、タオルを差し出す真乃に微笑みかけた蓮花の表情、それが実に効果的。ふたりのやりとりについつい引き込まれてしまいました。

『死にたくても死ねない私と死んでも死なないあなた』

イジメを苦にして自殺をはかろうとした生久米スイの前に現れたのは、なんら躊躇することなく高所から飛び降り自殺を敢行する非時カグヤ。けれどカグヤ、特殊な能力というか、不死者であるというのですね。落ちて潰れたかと思いきや、普通に原形留めて生きているし、というかすごい勢いで再生してる?

生まれはBC29年。それを聞いて即座に2050歳!? と返すスイ。これ、この時点でスイの回転の速さをほのめかしていたわけですね。ええ、イジメだけでなく家族関係にも悩みを抱えているスイ。その子が、不死者ゆえの孤独に人生の空虚を抱えているカグヤの友達になるという。

カグヤを研究して自分も不老不死になれば問題ない。そう啖呵を切ってみせたスイのその後が描かれるくだりは、時の流れにしたがい刻々と変わっていくスイと、その流れにひとり取り残されるカグヤを鮮烈に対比して見せて、そのやりとりに見せる親密さとはうらはらに、むしろカグヤの感じる寂しさを裏打ちするかのようでありました。

けれど、これ、カグヤではないけど、やられたなあ! そう思わされたのは、この一連の描写でもって、ある種典型的な不死者とモータルの関係、抗えない別れの切なさ、その悲劇を描きたかったのだなと思わせておいて、終盤で思いっ切り引っくり返してくるそのやり口ですよ。作者の、どうだ! って笑う顔が目に浮かぶようで、いやもう、全然切ない系の話じゃないじゃんよ! ともあれスイの有言実行! してやったりのドヤ顔に続いて見せたスイの笑顔には、カグヤの寂しさをなんとかしたいと願ったこの子のシンプルにして真摯な願いが溢れて、これはたまらんですね。カグヤならずとも胸にくるものありました。

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