『まんがタイムきららフォワード』2021年10月号、発売されました。表紙は『がっこうぐらし!〜おたより〜』。大きく完結と書かれて、ああ、ついに終わろうというのですね。人がゾンビ化する感染症がために平穏な暮らしも家族も友達も、みんないっぺんに失ってしまった彼女らの、希望をともに生存を果たす物語があり、そしてその後の復興、失ったものを取り戻そうとする彼女らの物語が続き、そしてそれが完結。あの衝撃の第1話から数えて9年がたったというのですか。それだけの長い時をかけて描かれたこと。まさか今が感染症禍真っ只中とは世の中わからんものですが、いずれ事態が落ち着きを見せたら、彼女らのように失ったものを取り戻す日々を送ろう、そんなこと思った最終回でした。
『先輩を追い出す方法についての研究』
あらまた物騒なタイトルです。いったいなにごと? と思ったら、生物部1年の鈴木くん、生物についての研究、実験、フィールドワークをやるぞと意気込んで入部してきたものの、生物部は2年のべにこ先輩のキノコ趣味に支配されていたのでありました!
いや、でもこれくらいひとつのテーマに没頭する人がいるって、悪いことではなくない!? キノコはべにこ先輩にまかせて、鈴木は自分のテーマを追求すればいいじゃないか! とはいうものの、どうにもこうにも巻き込まれ気味の鈴木少年。キノコの圧に抗えないっぽいところ見えますね。
それで先輩をなんとかして追い出そう、物騒なことを考えて策を練ってみるのですが、大量の虫をプレゼントしても先輩は平気の平左。むしろ寄生キノコの苗床にできると喜んで、当てが外れた鈴木よ、ここで虫を返してもらうところに生き物への愛情が感じられていいですね。
しかしべにこ先輩がヤバいというの。キノコ実験をすること自体はいいのだけど、鈴木を使って人体実験! 恋に落ちるキノコだっていうんですが、だったら落ちてやろうじゃないか、これまで女子からキモがられてきた自分に好かれればべにこ先輩も耐えられないだろう!
って、泣いちゃう、泣いちゃうよ。鈴木、自分のプライドを捨て、自滅技にて撃退をしようとするそのあまりの悲しさに、いやもうこの策は駄目だよ。でもこの技、思いの他効果を奏して、おお先輩、いい反応じゃん! いい感じに好かれてるんじゃないの鈴木ー、と思ったら、ここで君が逃げるのか。いやもう、鈴木の空回り。でも、今後はちょっと先輩との関係も変わっていきそうじゃないですかね。先輩からも、鈴木からも、変化の兆しが見えますよね。
『スローループ』
ひよりの誕生日に手巻き寿司をやりますよ。昨日のニジマスを刺身にしよう。それで張り切った小春が、可愛く装って — 。
ここから回想に入るのが意外でした。中学生の頃。ひよりと出会う前のことですね。父に彼女を作らないのかといってみたりね、そして学校でもいつもニコニコして、自分は充分しあわせという小春の、けれどその内面に触れるかのような土屋さんの発言。これ、中学の頃の友達、土屋との再会など今後あるのかと期待させてくれる。小春のいったこと、嫌われたくないだけ。これ、結構徹底していたのかも知れませんね。自分のやりたいこと、欲しいこと、譲れないこと、そういうのは表に出さずに、譲ることで自分を守っている。誰かといがみあったりしたくない。
そんな小春も今ではひよりにわがままいったりしてますけどさ、これ、ひよりとの暮らしで少しずつ変わってきた。そんな小春の見せた緩く笑った表情。それが本当にしあわせそうで、ええ、かつての自分はしあわせと言い聞かせるようにしていた頃とはずいぶん違っているんですね。
こうした変わった小春のこと、土屋に見せてみたい。土屋がどう思うのか、それを見てみたい。なんて思っちゃったんですね。
『追風のジン』
前回は物語世界のベースとなる情報をしぼって見せていたんですね。忍者がいる。その傍若無人な振舞いで皆から怖れられている。ジンはそんなならず者が許せない。そしてかつての忍者の頭目、叢雲グレンの謎を、残されたグレンの娘とともに追うことになる。
そうした情報を、導入となるストーリーをしっかり押し出しながら、活劇で見せ、人情で見せたわけですが、第2回ではそれをさらに掘り下げて、より明確に言葉にして説明したところがあれば、忍術、忍法についても説明がなされて、なるほど、忍術は後天的に習得される技術、対して忍法は先天的に身につけた超能力。そうした物語における設定やルールを明示していくのですね。
と、こうした説明だけでなく、きっちり物語でもってジンの人となり、彼がなにを大切にしていて、どういう存在になりたいのかを彼の実力とともに示してくるでしょう。こういうのがやっぱりうまくって魅せるなあって思ったのです。
まだ物語は序盤も序盤。大きく動くのはまだ先だと思うのですが、なにか気になる引きが提示されまして、これは気になる。このお嬢さん、ゆくゆくは仲間になるのですかい!? ええ、ええ、やっぱり魅せるなあって思うわけです。
- 『まんがタイムきららフォワード』第15巻第10号(2021年10月号)
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