2009年11月30日月曜日

PONG PONG PONG!

 『PONG PONG PONG!』の単行本が出ましたよ。『まんがタイムきらら』にて連載されている漫画であるのですが、これが面白いんです。主人公は浅子祐太、男子高校生。彼がたまたま見付けたお社に祈ったら、神さまがあらわれましてね、それがなんと狸の神さま。お稲荷さんなんだけど、狐じゃないんですね。しかも、ただの狸ではなくて人の姿してる。ものすごくキュートな女の子。巫女っぽい装束身につけて、胸元には勾玉、頭には狸耳、そして尻尾だ。ものすごくキュート。さて、そんな狸に祐太が頼んだ願い事というのがモテたいというもの。かくして狸の神さまリコが、祐太の願いを叶えるべく奮闘するという感動の物語がはじまります。

いや、奮闘はしていないか。少なくとも第1巻では巻末にいたるまで頑張ってない。願いを叶えるといって祐太にとり憑いたというのに、邪魔にされて家から追い出されたかと思えば、新聞部部室に住むようになってからも堕落して、もうほんとどうしようもない。けど、それでもご利益はあるのか、綾瀬川真由というクラスメートと親しくなったり、それから高坂先輩っていう美人のお姉さまと知り合いになったり、これまでとはまるで違った環境に身を置くこととなって、やったじゃん祐太、といいたいところだけど、モテてるかといったら決してそんな感じでもないっていうのが味噌です。特に高坂先輩、彼女は人物紹介にてヘンタイさんと書かれるような人ですから、もうたいがいです。

この漫画、キャラクターの味わいがいいんだと思います。可愛いかといわれたら、リコも真由もすごく可愛い。けれど、ただ可愛いからいいってわけじゃないんですね。リコの、見習いとはいえ神さまであるというプライドがそうさせるのか、ものすごく尊大に振る舞おうとするのだけど、全然身についてないところとか。それどころかかなりあかんたれであるところとか。見ていてすごく微笑ましい。主人公の祐太にしてもそうで、お前さん、もうちょっと考えて行動したまえよといいたくなるようなところ、よくいえば素直、悪くいえば雑。けど、けっこう感動屋だったり照れ屋だったり、男子高校生相手にこんなこといいたかないけど、可愛いやつだと思うですよ。こうした傾向は真由にもある。すごく素直ないい子。自分の欲求に素直で天真爛漫で、笑顔が最高で、明るくて、やさしくて、世話好きで、人好きのする性格で、過去の自分の行動振り返って反省したりする殊勝さなんかもすごくいい。

こんな具合に、素直であっけらかんとしたいい子たちが、真っ直ぐに向かいあって、わいわいとやっている。折々に協力してことにあたる、その時の楽しそうなところがすごくいい。時折見られる、厳しいつっこみ、駄目出しなども、効果的にアクセントをそえて、小気味よい。もう本当に楽しい。仲いいなあって思いながら読んでいます。あとヘンタイとの誉れも高い高坂先輩。彼女のリコを猫可愛がり、狸可愛がり? するところ、直情がすぎるところ、祐太を粗末に扱うところなどは、この漫画における酷さを一身に引き受けようとするかのようです。しかし、彼女が酷いといってもなんだか心地よい酷さとでもいったらいいのでしょうか、ナチュラルに祐太を袖にしたりするところなどそんな感じで、けどこの人も根は悪くないんですよね。ただリコに対する執着が強すぎるだけ、そのせいで他が目に入らないだけで。

こうした、個性的ないい子たちと、強烈に個性的なひとりの織り成す日常の風景がきらきらと輝くように楽しくて、私は毎号を楽しみに楽しみにして読んでいます。また、最近加わったリコのお師匠様。彼女もまた一癖二癖ありそうで、リコに、祐太に、漫画の展開に、いい刺激を与えてくれています。日々の出来事が描かれたかと思えば、祐太の願い叶えようと無茶するリコの嬉しくない頑張りなど、見せ場はほんとにいろいろあって、それがすごく面白くて、きっと私の今一番に気にいってる漫画って『PONG PONG PONG!』なんじゃないかなってくらいに好きになっています。

  • リサリサ『PONG PONG PONG!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 以下続刊

2009年11月29日日曜日

『まんがタイムきららキャラット』2010年1月号

『まんがタイムきららキャラット』2010年1月号、昨日の続きです。なんだかエネルギー切れをおこしたみたいでして、昼まで寝て、ご飯食べて、『キャラット』読んで、夜まで寝て、どこぞの狸のごとき堕落した生活を送っています。今日もだいたい同じ様子。いや、今日はちゃんと勉強もしたしアンケートも書いたしで、けど練習はできなかったな。こんな日だってあります。

『アイノテ』、ゲスト3回目です。これ、都会からきたお嬢さんが、友人つくって、携帯電話持ってっていう話だったんですね。で、アイノテっていうの、携帯電話の機種名、iNoteってわけだったんですね。この漫画、まだプロローグが終わったって感じですが、ここで終了ではちょっと惜しいなと思ってしまう、そんないい雰囲気があって、続いてくれたら嬉しいななんて思っています。

『Felice』、門瀬粗の新作です。主役は氷室凛。小柄で、男の子っぽくて、ちょっと粗雑? めちゃくちゃ可愛いヒロインです。Feliceってのは、イタリア語でしあわせ、でいいのかな? 喫茶店の名前。幼馴染みなのか、大地という男の子が側にいて、大地はFeliceのオーナー? であるみー姉の弟。で、ここに九条灯里という、ちょっと暴走系の女の子が加わって、凛を素敵な女の子にするんだそうです。作戦コードは「フェリーチェ」。そりゃいいんですが、私はこの粗暴で粗雑な娘が気にいってるんで、素敵な女の子になんてしてもらいたかないんですが……。

とかいいながら、きっと一筋縄ではいかないだろうってわかってるから、この先、すごく楽しみであるんですね。凛は凛らしくきっと突き進んでくれるに違いない。そういう予感に期待をふくらませているところです。

『かためで!』、こいつは驚きました。前回、帯刀は出落ちか一発ネタか、みたいなこといってましたが、今回はばっちり帯刀という文化のある世界をアピールして、ものすごく面白かったです。相変わらずナンセンスではあるのですけど、そのナンセンスをしっかりやろうっていうスタンスはすごくよいと思います。直刃と乱れ刃などという刀ネタがきたかと思えば、網棚置き忘れというよくあるネタもあって、しかしよくあるネタがすごくナンセンス。これは面白いです。まいりました。

『かんぱけ』、最終回です。最終回は、暖めていたプロットをすべて出したというような感じがあって、その力出し尽しましたっていう感じに、ちょっとほろりときた。もっとゆったりと長く見ていたかったといえば、まるでいさぎのよくない発言ですね。憧れの人に出会い、憧れの人に聞いてもらい、そして好きだったって告げることができた。そういった展開、理想といえば理想で、夢といえば夢、まるで甘い展開なのですが、こうしたものも悪くないって思う。まだまだこれからな彼女らですが、それでも終えるにあたって、ひとつの区切りがあったというのは、すごくよかったと思っています。

『アヤシげ?』。またなんか妖しいのが増えた! 見た目が怖くて、誤解されがちなお嬢さん。その子が妖怪、狐と一緒に特訓して、それでようやく人間の友達ができたと思ったところで、まさかの引っくり返し、やられました。この人の絵の雰囲気は、こうした妖怪ものやるには適してるかも知れない。そこに、ドタバタとしたコメディとちょっとほのぼのとした頑張る風景を加えて、いい感じであるなって思います。

  • 『まんがタイムきららキャラット』第6巻第1号(2010年1月号)

2009年11月28日土曜日

『まんがタイムきららキャラット』2010年1月号

『まんがタイムきららキャラット』2010年1月号、発売されました。表紙は『ひだまりスケッチ』、ゆのを中心に下級生ふたり、これは歩いてるところ? なんだか楽しげな雰囲気がいいですね。で、ちょっと思ったんだけど、表紙すみにいつも書かれてる一言、クリスマスが好きな人もキライな人もってあって、ああ、だから背景緑で制服赤なんだ! って、いや、それはないだろう。多分ないと思います。でも、背景がクリスマスイメージなのは間違いないと思います。

ひだまりスケッチ』は小論文がテーマになっていて、ああ、私もやったなあ。受験、推薦とかだと小論文があるからって、その対策でした。語尾をいいきるというのは、小論文、作文だけでなく、論文の作成においても注意されることの多いポイントですが、私はここでは意識的に思ったり考えたりするようにしています。字が人柄を表すというの、大学生の時分、私の字がらしくないと人からずいぶんいわれたものですが、つまり私はひどく猫かぶってたんだろうなあ。ひだまり荘の彼女らが、らしい字といわれるのは、それだけ互いに人間性が開かれているってことなのかもなって、そんなことを思ったりしたのでした。実体験を絡めて書いてみました。

『ラッキー・ブレイク』、実にいい感じです。どういう会社なのかわかってきて、そして入社早々大活躍と思われたヒロインでしたが、今回はそんなに社会は甘くないっていうことを実感させられる、実にいい揺り戻しであったと思います。頑張れる職場、頑張りたいと思える仕事、そういう素地がきちんと描かれて、ヒロインのモチベーションもきっちり伝わってくる。キャラクターも面白いけれど、仕事ものとしての面白さがよいなと思っています。

『チェルシー』。やっぱりこの人の絵は素晴しい。制服だとかっちりと描かれてるけど、先生のセーターとかやわらかそうで、生地風合いの違いもちゃんと伝わってくる。そして、色の鮮かさ。黄葉する銀杏並木。すごくきれい。で、俳句なんだけれど、テングザルの落ち、鼻がじゃま、ですね、あれはちょっと笑ってしまいました。いやね、以前どこだかの高校生がゴリラでこういうの書いて評価されてたよななんて思ったところに鼻がじゃまとくるんです。まったくの不意打ち。やられました。

『ねこみみぴんぐす』、まさか卓球場のあの人が帰ってくるとは思いませんでした。ろくでもない人。非常勤講師でも顧問とかやったりするの? この人の役にたつんだかたたないんだかわからないところが面白そうです。

『ほわほわクエスト』、ゲストです。謎の地図を手に入れた。で、冒険するのかと思ったら、なかなかそんな風にはならない。想像とか途中で出会った猫とか、興味のおもむくままに動いてしまうお嬢さんが、遅刻するまでの話だったわけだけど、このふわふわというかふにゃふにゃな彼女らを愛でる、そうした読み方が期待されるような、そんな漫画だったと思います。

『のんびりマスタリー』ってまだゲストなのか。犬に友人を紹介する、そのために、犬の名前が勘違いされる。このパターン、ちょっと面白かったです。いや、だって私も自然に勘違いしたので。で、まもるくんはその勘違いで、飼い犬に自分の名前がつけられたと思って、どんな感想もったんだろう。ちょっとショック。それとも嬉しかった? 実は犬になりたい? おもしろかったです。

うらバン!』、トロンボーンの娘さん登場。ちょっとセンスが独特の、強気けどどこかとぼけたお嬢さん、大変すばらしいです。しかし、この人が登場して、できることの幅が広がったっていうのは大変にいい感じ。活動予定がしっかりと組まれて、アンコン — 、アンサンブルコンテストも視野に入りました。でもさ、先生のいうボーンが入ったからアンコンいけるかな? って、それ、以前に吹奏楽コンクール出たくらいなんですから楽勝でしょう。そして、先生のひとりに対するコメント、あれ見ると描かれていない昨年の状況、いろいろ思ったりして、すごくいい感じ。顧問ひとり、部員ひとりで頑張ってたのかな。なんて思うんですね。『うらバン!』はこれまでも面白かったけれど、今回は今後への弾みをつける、そんな感じもあって、すごくよかったです。どうなるのだろう。その描かれるだろうこと、楽しみです。

と、ここでいったん中断します。続きはまた明日。

  • 『まんがタイムきららキャラット』第6巻第1号(2010年1月号)

引用

  • まんがタイムきららキャラット』第6巻第1号(2010年1月号),1頁。
  • 都桜和「うらバン! — 浦和泉高等学校吹奏楽部」、同前,115頁。

2009年11月27日金曜日

『まんがタイムオリジナル』2010年1月号

『まんがタイムオリジナル』2010年1月号が発売です。表紙は『ラディカル・ホスピタル』の山下。ぱっと見、白衣かと思ったら実はそうじゃない。ああ、聖歌隊なのか。表紙のイラストは『タマさん』、『らいか・デイズ』、『マチルダ』とありますが、その全員が示し合わせたようにベレー被っていまして、いや、示し合わせたんだろうとは思いますけど、でも聖歌隊で発注したとしても、ベレーまで指定されるものなのかな。誰もの心に、聖歌隊といえばベレーというイメージがあるのかも知れませんね。

『トリセツなカテキョ』、ゲストです。クールな眼鏡美人、井原先輩に17点のテストを見られてしまったのがきっかけで、個人指導を受けることになってしまったラッキー少年、春吉が主人公の漫画。井原先輩いわく、留年者が出たレベルの高校と人から思われたくないかららしい。その動機にいまいち共感できないのだけど、続くのなら馴染めるかな、いやどうだろう。そんな印象でした。

開運貴婦人マダム・パープル』、「不幸な流派」でありますが、足相といっていいかはわかんないんだけど、足で占ってくれるところは実際にあるんですよ。それは、神楽坂治療院。東京は新宿区神楽坂にて開院しているこの足つぼ治療院、足つぼマッサージもさることながら、その足でもって占ってくれるっていうサービス? が好評だったりするのだそうですよ。私も以前いったことがあって、それは確か『ラブリー』で連載されてた浜口乃理子の『のんコレクション』で見て知ってだったと思うのだけど、なかなかに面白い体験でした。などと、懐しいことを思い出しました。

L16』、最終回です。ある意味、思ったとおりの展開。上司同伴はなかったけれど、向こうの社長が出てきて、そして千本姉弟はやっぱり食い込めませんでした。姉妹ふたりで充足している漫画。姉妹ふたりで充足して完結して、このふたりの関係が変わりゆきつつも、変わらぬままであったところが、とりわけよかったなと思っています。

そこぬけRPG』、合コンが成立したのはいいけれど、やっぱりというか案の定というか、酷いことになってますね。そんな中、55cm藤崎さんが可愛くて可愛くて、いや、あの前髪斜めカット、まさか言及がはいるとは思わなかった。あれやっぱり変ですよね。でも、藤崎さんに関しては、とてもキュートだと思う。いや、今回はキュートな藤崎さんを楽しむ回であったと思います。

『アトリエZOOへようこそ!』、扉のホワイトロリータ、素晴しいな。おんなのみりきは三十こえてかららよ? いや、本当素晴しい。あの失笑の表情の美しさ。素晴しいです。しかし、夢や希望を商売にしながら、夢も希望もない会話してるっていうのね、めちゃくちゃ面白くて、ちょっとした開き直り。そう、女性の魅力を決定づけるのは、開き直りの有無だと思います。開き直った女性は素敵だ。だもんだから、あの担当氏を辱める電話トーク、もう最高でした。

『極限ラボ』、ゲストです。落書きみたいなロボットが酷い目にあう漫画です。ちょっとナンセンスな雰囲気。妹ロボの方が出来がいいとか、それで物騒とか、面白いのだけど、意外と個性的ではないとも思いました。あと2回続きますが、それでどんな風になるのかな。期待を超えるものがきたらいいなあと思います。

『マチルダ! — 異文化交流記』。ついに学校へいくことになって、ということはあやとマチルダ以外の登場人物も出るんでしょうか。多分、あやがマチルダに困らされるというパターンは変わらないと思いますが、そこにあや以外の視点、思惑がかかわってくるとどうなるんだろう。ちょっと楽しみです。

『今日から寺バイト』、奥さんが可愛い。奥さんがとろんとして色っぽい。内容はというと、葬儀にかかわる仕事の事情を、きちんきちんと描いていく、そんな感じであるのだけど、キャラクターの雰囲気、そして見せ方が印象を変えてくれるから、読んでいて楽しいのかな、そんな感じです。しかし、奥さんが寺の娘でしっかりしてるというのに、なんで弟はあんなに駄目なんだろう。いや、弟が駄目だから、あの旦那に期待がのっかったわけか。なるほど。がてんがいった感じです。

  • 『まんがタイムオリジナル』第29巻第1号(2010年1月号)

2009年11月26日木曜日

最後のニュース

 デアゴスティーニのCD付きマガジン『青春のうたベスト・コレクション』、第100号が刊行されて、これにて完結しました。隔週で100号。創刊は2006年1月31日、ほぼ4年をかけたわけですね。その4年という時間、思わぬこともありました。このシリーズの監修者加藤和彦氏が亡くなりました。その前には忌野清志郎氏が亡くなって、そして最終号に収録の『最後のニュース』、『筑紫哲也NEWS23』のエンディングテーマ曲。井上陽水にこれを依頼した筑紫哲也氏も亡くなりましたね。この数年、たくさんの人が亡くなって、ああ、鈴木ヒロミツもそうか。すべての人の命には限りがあって、それはわかってる。わかっているけど、こうして偲べば切なさに胸がしめつけられます。

先月だったか、NHKで数日にわたって井上陽水が特集されていたことがあって、そこで歌われた『最後のニュース』。いつ聴いても、なんど聴いても印象的で、胸に切々とうったえるものがあって、そして昨夜、また同様にNHK、Songsで井上陽水が歌っていました。そのうちの一曲が『最後のニュース』。筑紫哲也についても触れられて、そして歌唱。ああ、いい歌だあなって、やっぱりそう思ったのでした。

この歌は、井上陽水の歌い方、彼独特の表現もよいのですが、その歌詞にあらわれる陽水の社会に対する視線が力強く素晴しいのです。歌の生まれた当時の問題意識を如実に反映しつつ、そして同時に事件やできごとを受け止める私たちの意識までも写し取ろうとするかのような歌詞です。この地上におこっているできごとを、ただただ見つめ、しかしその視点に同化していない。一種超然とした位置にあって、できごとに向き合っている自分さえも観察しているような、そうした乾いた感覚があるのに、同時に夢見るような感性を匂わせて、ああ、素敵であるなと思うのです。自分の問題意識の希薄であることに苦しさ覚えながら、この世界の断片を眺めるような、映像が生々しく広がるかのような感覚に酔います。

そして、今あなたにGood-Night、ただあなたにGood-Bye。世界に向けられていた意識が、突然の語り掛けにはっと正気に引き戻されて、ああ私はいつもの現実に生きている — 、深く感じ入って、そして世界の大きさ、そこで起こっていることの遠さを一層強く思わされるのでした。しかし、たとえ遠くとも、それは私の現実に地続きなのだな、そうした感覚をともに思わされるのでした。

DVD

引用

  • 井上陽水『最後のニュース

2009年11月25日水曜日

『月刊アフタヌーン』2010年1月号

 『月刊アフタヌーン』2010年1月号が発売されました。表紙は漆原友紀の新作『水域』がきて、水に漬かった木に腰掛ける少女のイラスト。実は私は『蟲師』を読んだことがないので、この人の作風ってあまりよくわかっていないのですが、『水域』第1話を読んだ感触は悪くないなって。まだ序盤も序盤、1話ラストにいたってようやく物語が動き出したか? あるいは状況がわかるかなというような雰囲気。次回以降、続けて読んで、それでわかっていくのかなあ。好きになれるといいなと思っています。

『ヴィンランド・サガ』、実は結構好みっぽくて、わからないながらも楽しみに読んではいるのですが、なにぶん最初の方を全然読んでないので、ちっとも状況がわかりません。既刊に手を出せばいいんでしょうけど、8巻かあ。どうしようかな、すごく迷いながら、とりあえず連載を読んでいます。いやね、今月なんか、トルフィンがすっかり気力なくしてるかと思っていたのに、用心棒の頭領についと誘われて、本気を出してしまった。あの周囲の驚く様子とか、いいなあって思って読んだわけですよ。わかるわからないを度外視して、まず読むものをよくひきつける。そして楽しませる。うまいなあ、いい漫画だなって思っています。

百舌谷さん逆上する』、なんだか表紙が大変なことに。誰!? と思って、あおりで理解して、今はやりの女装男子!? 一発ネタ? かと思ったら、おおいに本編に関係してきた。素晴しいな。この馬鹿といえば馬鹿、ろくでもないといえばそのとおりなんですが、しかししっかりと見せ場用意して、千鶴が仕掛けた罠が発動しても、それがなんだか充分に予見された演出であるかのような有り様。きりりとして立派、というか、なんでそんなにしてやったりって感じに得意気なんだ竜田は。あれは笑わないではおられません。

と、そうした馬鹿な展開を見せ付けながら、その合間に、竜田と勇次郎が邂逅。竜田が勇次郎のおかれた状況を理解して、助け船を出す。なんだよー、竜田、すげーいいやつじゃんよー。今回は、本当に竜田の見せ場が多かった。そして百舌谷さんにもスポットライトは当たって、韮沢さん、珠ちゃんの妹ですよね、彼女の百舌谷さんを慮った行動、落ち着いたその態度にじんとさせられて、そして本当に嬉しかったのだろう百舌谷さんのその後の行動にまたじんとさせられて、しかしこうした仕合せな光景、見るほどに不安もまたつのるのですね。この吊り下げられた感覚、たまらないです。

いもうとデイズ』は、お母さんがたの衝突が派手に盛り上がって、けど仲悪いのに、険悪になりきらない。そういうところ、ちょっといいなと思って、そしてセーラー服に憧れてるディアナが可愛くて、ほんと、罪のない感じで、すごくいい。罪のないといえば、純情ホスト。彼はとてもいいなと思います。純朴で、人がよくて、すごく真面目。すごくいい。ディアナの成長に戸惑って、きっと兄さんとしては、ずっと小さい可愛い妹でいて欲しかったんだろうなって、そんな感じ。すごくよい。この兄さん、大好きです。それから、石田さんのお母さん、大好きです。

2009年11月24日火曜日

『まんがタイムきららフォワード』2010年1月号

 『まんがタイムきららフォワード』2010年1月号が発売です。表紙は『トランジスタティーセット — 電気街路図』。いや、この表紙、実にいい感じだと思います。いや、別に見上げ構図がいいっていっているわけじゃなくて、メイドさんみどりのちょっと驚いたという表情もよければ、あの、袖やリボンの質感も印象的で、ぱっと目もひけば、動きも感じられる、いいイラストだなあと思える表紙であるのですね。メイドの衣装、布が沢山というのもよいのかも知れません。もともと布のひらめく感じが好きといっている私です。この表紙がよいと思うのも当然なのかも知れません。

『空色スクエア。』、文香の田舎に戻ってきた理由というのがはっきりと明かされました。作りもので取り替え可能な存在としての自分。どんどん本当の自分とかけはなれていく、そうした状況に耐えられなくなって戻ってきたと告げられて、そうか、これでようやくもうひとりのヒロイン深雪との対比がなりました。ふたりともに、本当の自分を失っているっていうのですね。片やふくれあがる虚像がために見失って、片や記憶もろともに失ってしまったという、その自分自身を見付けて欲しいと願う、そうしたところがテーマであるのでしょうか。虚勢やごまかしをとりはらった文香、そのニュートラルな表情、こちらを見つめる素朴な視線はいじらしいと思えて、ああこうしたふたりに修一は挟まれるというのか。

状況がはっきりとしてきて、読み手としても、それでどうなる? とのめり込むような感覚になって、これはいい緊張をはらんだ状況であると思います。でも、正直、私は、あんまり修一くんのこと期待してないよ?

さて、表紙で触れた『トランジスタティーセット — 電気街路図』でありますが、本編、エミ太くんが素晴しいな、というのは置いておいて、アフレコレポートのとりしらべ室って本当なんでしょうか。お疲れさまです……。

『キスメグルセカイ』、新連載です。勇気を出して先輩に告白した女の子、めぐるが平行世界を渡っていくという話のようです。行き着く世界は、めぐるのもともといた世界に近似しつつも確かに違う。けれど、その世界世界にいるめぐるの思い人環先輩が彼女を助けてくれるだろう。ちょっとロマンティック、すこしふしぎ、な話です。

『少女素数』。パパが帰ってくる! で、今回はサイレント展開? と思ったら、途中からトーキーになりました。ちょっと着せ替え風味もあって、パパをお迎えするためにおめかし、そんな様子がなかなかによかったのでした。でも、私の一番気にいったのは、文句いいながらじゃが芋の皮剥きするあんずでした。素朴で、所帯じみてて、とても魅力的だと思います。あの、エプロンの大きな木のボタンがかわいいですよね。でもって、鉈。

据次タカシの憂鬱』がなんだかシリアス展開? いや、いい感じだと思う。いつもは意図しない誤解に振り回されて、結構な酷い目にあってしまうタカシを暖かく見守ろうというこの漫画が、今回はなんか、誤解ではあるものの、結構いい感じに進んで、よかったじゃん、タカシ。むくわれたじゃん。と、思わず拍手喝采です。いや、タカシは憎めないいい奴です。たまにはいい事あってもいいじゃないかって思うんですね。

『わたしたちは皆おっぱい』、ゲストです。っていうか、すごいタイトルだな。ちょっと怖い雰囲気がチャームポイントのヒロイン、鎌上さんの秘密は、おっぱい大好きということだ、そうです。クラスの女子のおっぱいを触りたい、そうした思いはつのるばかり、あまりに思い詰めるものだから、視線は自然するどく研ぎ澄まされて、その雰囲気が周囲に人を寄せ付けないときた。しかし、そんな彼女に転機が訪れます。転校してきた女の子、野原紗彩と親しくなった。しかも、おっぱいの大きな女子ときた。もりあがる鎌上さん。しかし秘密を知られたら、変態と思われるかも知れない。葛藤する彼女。なんかすごいよね。

基本的には、自分の本心が明らかになることで友人が離れるかも知れない、そうしたテーマのバリエーションであるのですが、あまりにおっぱいおっぱいいうもんだから、なんだかなあって思っちゃいまして、けど面白かったです。思い詰める鎌上さん、至福の鎌上さん、そしてハッピーエンドの鎌上さん。それぞれの表情、とてもよかったと思っています。馬鹿馬鹿しいなかに、不安に揺れる気持ちとかうかがえて、そのギャップ込みで面白かったです。

銘高祭!』、終わりました。のっけから桐原の引導わたされるシーンがきて、正直ちょっと驚きました。前回で彼の落胆は語られた、そう思ったのに、駄目押し!? と、その後にみちえとたけるふたりだけの後夜祭とでもいったらよいのでしょうか、祭の終わった後のさみしさと、けれどそれでも確実に残るだろうことの語られるシーン、ああ、やっぱりこれは思い出の物語でもあったのだ。とてもよかった。ノスタルジー感じさせる、味わいのある漫画でした。

2009年11月23日月曜日

CASIO GZ-5

 和声の勉強、がんばってますよ、なんて自分でいうのもおこがましいですけど、いまさらの復習。しかし、これ久しぶりに触れると面白いんですね。今のところ、まだ入り口も入り口、基本も基本ってところをやっているんですが、あまりにも基本すぎて、使用可能な和音が少なすぎ。進行が束縛されて、ああ、ここであれを使いたいのに! みたいに思うのもまたちょっとした楽しさです。そして、進めるごとに思い出される昔のこと。和声を教えてくださった先生のアドバイス、あれは今も役にたつなあ。やっぱり習うっていうことは素晴しい。すごく感謝しています。

でもって、今はただただ課題を実施しているわけですけれど、今はまあ簡単だから音も出さずに、楽譜、五線紙上で視覚的に取り組んでいるわけですけど、でもできれば音を出していきたいなあと思っているんですね。ピアノを使えばいいんだけど、もう長く調律してないし、ものに埋もれてるしで、ちょっと使いにくい。キーボードも持ってるのですが、RolandのPC-180というやつ、しかしこれシンプルな入力用キーボードで単体では音が出ません。音を出そうと思えばMIDI音源、うちにあるのはRoland SC-88VLですが、こいつに繋いで、しかもこれにスピーカーないしはヘッドホンを繋ぐ必要があって、あまりに面倒くさすぎる。もっとね、書き物机のうえにちょんとのせて、課題を実施しつつちょこちょこ確認できるようなのが欲しいなあ。なんて思ったんです。

欲しいのは小型キーボード。小さくて、使い回しのよいものがいい。加えて安いのがいい。この安さに重点を置くと、そう、貧乏人の味方、CASIOですよ。CASIOの出してるキーボードを調べたら、SA-45という32鍵キーボードがありました。しかも三千円程度で買えます。素晴しいな、さすがCASIOだと思ったのですが、これに加えてさらに調べたらGZ-5というさらに小さなキーボードがあることがわかりました。両者ともに4音ポリ発音。もう少し欲しいというのが本音ですが、でも和声の確認なら4音出れば用は足ります。四声体だし。で、小ささでいえばGZ-5。音色はSA-45が100音色、GZ-5が10音色だけど、音が鳴りゃいいんだから、こんなのどっちでもいい。どっちにも素直なオルガンっぽいのはあるだろうし。で、GZ-5にはMIDI端子が付いてるんですね。そうか、MIDI出力も可能なのか。ベロシティには対応してないみたいだけど、しかも結構大味なスイッチらしいけれど、でもなにかのトリガーに使うとかいうような用途なら充分使えるかも。まあ、おまけとしての使い道がありますよという、これは魅力かもなあと思ったりしたんですね。で、値段も安く、だいたい五千円くらい。重量600グラムで、電池でも稼動します。

てなわけで、どうしたものかなと思っています。今はまだ楽勝で実施している和声だけど、いずれ音を確認しながらやりたいと思うこともあるだろう。買っとこうかな、どうしようかな。迷っているわけです。

2009年11月22日日曜日

ヴォイス・トレーニングの全知識

 このあいだ、録音してみたのはいいのだけれど、 その結果に少々落ち込みましてな、なんというんだろう、現実は常に想像している以上に厳しいのであります。てなわけで、ちゃんと基礎をやろうと決意して、友人になんとかならんかねと泣き言いってみたら、自分はこの本を持ってるよと一冊紹介してくれました。それはリットーミュージックから出ている『ヴォイス・トレーニングの全知識』。リットーか、なら大丈夫かな。ギターやるようになってから、リットーミュージックの教本買うことが増えまして、結構信頼できる出版者だなという印象なんですね。というわけで、買ってみました『ヴォイス・トレーニングの全知識』。

いや、しかしですよ、友人の持ってたのが『地獄のボーカル・トレーニング・フレーズ』でなくてよかったです。もし地獄本だったら、私の未来はメタルモンスターでした。デス声でシャウトする。もっとワイルドに! いきつく先は宇宙の真理でした。危ないところでした。

『ヴォイス・トレーニングの全知識』、まだ実践してみるには至っていないのですが、とりあえずざっと見てみたところ、技術を教えたり、トレーニング課題を与えたりするような本ではないという印象です。むしろこの本は、心構えとでもいいましょうか、実践の前に心得ておくべきことが書かれているといった感じです。

よい声というのはどういうものなのか。巷に溢れる声、たとえそれがプロといわれるものであっても、本当によい声といっていいものは少ないのだ。ああしたものを目指してはいけない。ただ高い声が出るだけ、そんなヴォーカリストには意味がない。ならば、どんな声を目指すべきなのか。すなわちよい声とはどういう声であるのか。そうしたことが常に語られているといった印象です。以上のような説明があり、そしてトレーニングは開始されるのですが、そのトレーニングというのはかなりシンプルなものです。だから人によってはこれをただただやっちゃうんじゃないか。けれどただ書いてあることをやればいい、そのとおりに歌えば大丈夫ではないというから難しい。実際、書いてあるとおりに歌うだけなら簡単です。けれど、そのフレーズで学ぶべきことを意識してやるとなると、ちょっと楽じゃないよな。というか、独習でできるものなんだろうか。自分の進めているやり方が間違っていたら? 一度間違った舵取りをしてしまえば、ゆきつく先は大きく目的地からそれてしまうわけで、だとしたら時間を無駄にしてしまうばかりか、修正するのも大変ということにもなりかねない。簡単じゃないな、本だけでどうこうできる問題じゃないな、というのが現時点における素直な感想です。

この本に書かれていること、それを素直にすべて受け止めることもまた難しいなと思えるところがあって、それが極端に現れたのは私にとってはビブラートなんですが、私はビブラートが過剰なのは好きじゃないんです。誰だったかな、ジーグルト・ラッシャーだったかな、がいってたことなんですが、ビブラートは料理に加える塩のようなもので、塩の味を感じさせたらそれは多すぎるということだ、っていうような格言がありましてね、その言葉に従えば、昨今のビブラートは味付けが過剰なんじゃないかって思えてしまうわけです。実際、古楽ではビブラートはかけない、かけたとしても抑制されたものであるわけですけど、じゃあそういった表現は物足りなのかといわれれば、いやいやそんなことはない。とても美しい。そうした美しさに触れてみれば、現代ののべつまくなしにビブラートがオンになってるっていう状況には疑問が一杯になって、だからビブラートはかけない方向でやっていきたいものだと思っているのです。ところが、この著者にとってはビブラートは当然かかっているものであるようで、確かにうまいビブラートは効果的です。でもさ、高音に向かえばピッチの揺らぎが半音くらいにまで達するとくれば、やっぱりそれってやりすぎなんじゃないのかなと思ってしまうわけです。まあ、現実的にはそれくらいになってるよなって思いますけど、すなわち著者もいうとおり、ビブラートもノンビブラート同様程度問題なんだと思うんだけど、だから直に話せば、ああ、そうですねってことになるのかも知れないけれど、本で読んでるかぎりではちょっと納得できない。そういうことがちょくちょくあるのは、習おうという人間としてはちょっと困ることでもあります。

とはいえ、イメージをきちんと持ちなさい。表現したいよう、最初は好きにやってみて、それから楽譜どおりにやってみなさい。自分のイメージと実際の声や音楽の状況を擦り合わせて、イメージどおりにできるようにしなさい、などなど、確かになるほどそうですねと思うことも多いわけで、そしてこれらはわかっているつもりで、けれど実際には忘れがちなことであるんですね。だから、一度意識の総点検をするつもりで読んで、そしてトレーニングの意図をよく理解した上で、取り組んでみるのがよいのではないかなと思っています。

けど、多分、私はこの著者の理想とする方向には向かえないと思う。きっと途中で、違う道に向かってしまうんじゃないかな。なんて予感がしています。

2009年11月21日土曜日

『まんがタイムスペシャル』2010年1月号

『まんがタイムスペシャル』2010年1月号、発売です。1月号とはいうけれど、実際には12月をうかがおうという表紙であります。12月、師走。師走といえば冬子と続けたくなるのが人情かと思われますが、いや、だってね、大そうじの途中でしょうか、ちるみさん、彼女にそうようにして師も走る、師も笑うというコピーが踊って、おお、師走! おお、冬子! だってしょうがないじゃん、思っちゃったんだもの。しかし、年末を前に忙しさの増す、そうした雰囲気があらわれた表紙。なかなかににぎやかで、いきいきとしています。

『21時のシンデレラガール』は、あいかわらずあの親父さんの態度、しめつけに、かなわん親父だなあと渋い顔してしまうんですが、いや、しかし、この親父さん、親父さんなりに娘のことを信頼して、娘のことを応援しようとしているんだなということがわかって、いや、いい親父さんじゃないか。子から嫌われることを怖れて、あたりさわりのないことしかいえない親に比べれば、頑固で価値観押し付けてくるこの親父さんの態度は悪くないものかも知れない。そんなこと思ったものですから、最後がもう不憫で不憫で。でも、まあしかたないよね。

恋愛ラボ』。こちらはこちらでリコの嘘が露呈して、しかしナギ、いい男だなあ。先月株を暴落させたヤンとは違い株を上げた、そんな感じなんですが、そのヤンにしても決して悪いやつじゃないんじゃないか、そんなこと思わせる横顔、言葉、いったい彼の真実はどんなだろう。男子たちの様子も気になります。

『笑って!外村さん』、連載になりました。外見と不器用が災いしている外村さんの話です。基本的なパターンでもって進めるのですが、それがなかなかに悪くなくて、そしていい娘さんである外村さんが気の毒だなって思えてきた頃に、ちょっとほっとできるエピソードがくる。悪くないって思っています。

『秘密告白スペシャル』。乙佳佐明の話、イベントの性質がわからないからなんともいえないんですけど、プログラムの途中でトイレにも立てない、プログラムを進行する側の方が圧倒的にえらいみたいなイベントは、正直私は御免だなあって思って、いやね、演奏会とかいってね、どうしようもなくってトイレいったりすることってあるでしょう。楽しみたくていってるんだから、それはもう残念極まりないんだけど、それをイベント主催側から、出演者に対して失礼なやつだみたいな反応あったりしたら、きっとショックに思うだろうなって思ったりしたのでした。いや、これは漫画として面白おかしくするために、ああした誇張、失敗しちゃったっていうことが強調されたのかも知れないから、どうともいえないことはわかってるんですけど、でもあんまり気にされちゃだめだと思ったのですね。

でもって、安堂友子、友人のIちゃん、なんか面白い人だな。安堂友子だったら、お笑いやっても、それはそれで軌道にのったりしたんじゃないか、みたいなこと思いますけど、そうだったら私はきっと出会えませんでした。だからといって、Iちゃんに感謝とかいっちゃうのはいけないような気もします。ところで香川の人って、よその土地のうどんを完全否定しますよね。いや、香川のうどんがおいしいのは私も力一杯同意するところです。

『ゆたんぽのとなり』、最終回を迎えました。私、吉谷やしよの漫画では、これが一番好きでした。面白かったし、楽しくて、なんだか気持ちがやわらぐような、そういったところが気にいっていたのですが、この最終回などはまさにそんな感覚がいっぱいで、そうかあ、これは非常識お嬢様が成長していく、変わっていくという話だったんだなって、あらためて思わされました。いい話だったと思います。終わりよければすべてよしとかいうけれど、その道のりもよかった、最後もよかった。じゃあそれは、とてもとてもよかったということでいいのだろうと思います。

『アトリエB』、『ジャンボ』でゲスト掲載されていた漫画です。アメリカからやってきたベルが、ななみと一緒に絵を学ぶという漫画です。日本の風物が微妙にわからなかったり、そうしたカルチャーギャップのようなものを押し出しつつ、ななみとベルの関係に楽しみを見出すとよいのかなって思いながら読んでいます。

はっぴぃママレード。』、最終回です。卒業後の進路を真面目に考える時期がやってきた。息子をはじめ、クラスメイトは自分の進む先を決めていこうという中、さなえさんはそうではない。ラストにおいて、さなえさんは今を欲張りたいのかも知れない、そうしたように見せて、けれど本当は、かつて過ごしたくて叶わなかった、掛け替えのない時期、それを取り戻そうとしたさなえさんです、今という時期の貴重であることがわかっているのですね。さなえさんのそうした思いは、今その掛け替えのない時期にある若い人たちに向けられて、ともにありつつ、あたたかく見守ろうという、そうした気持ちに結実しているのかも知れません。いや、それってやっぱり欲張りってことなんでしょうか。そうなのかも知れません。けど、それは悪いことじゃないって思うのでした。

『空に唄えば』、ゲストです。名門合唱部に入部を希望したら、3小節で不合格となったヒロイン。ひばりが、再度合唱部にチャレンジするのではなく、新しく合唱部作っちゃおうと、そういう話みたいです。なんか面白そう。洗礼として一度落とす。そんな恒例は好きじゃない。音楽は楽しいだけじゃない、それは身に沁みてよくわかっているけれど、変に権威ぶるようなもの、そうしたのは大っ嫌いなんです。そうさ、だから、自分の求めるものは自分で作っちゃいなよ。そんな風に思えて、応援したくなるヒロインです。

で、この人、音痴なわけですが、どうも合唱はただ音程正しく上手に歌えればいいっていうものではなく、その前に合唱に溶け込んでいく、そんな能力が必要なんだそうです。ヨーロッパの一部諸国なんかでは、教会はミサに参加して、子供の頃から合唱する機会を持ったりするといいますが、そうした経験が合唱の中で歌う素地を作るんだそうで、だからヨーロッパのコーラスは、日本のコーラスとは随分と違うらしいと聞いたことがあります。音痴でも溶け込んでいく。そういった声も、コーラスの響きに混じっていける。それは、単なる技術とは違うとかなんとか。だから、ひばりもきっと大丈夫だよ! とはいうけれど、それって少人数でも大丈夫なんかな。

『ココロノミカタ』、ずいぶん今に近付いてきて、なんかすごく意外というか、雰囲気もいつもと違ったように思います。ジャージのせいかな? 超可愛いんですが。いや、いつも可愛いんですけど。それはそうとして、ココロさんの目的のようなものが少し語られて、そして物語の核心に踏み込んでいこうという、そんな回なのでしょうか。面白かったです。ギャグというか、そうしたものも面白かった。とてもいい回でした。

『放課後エア部』、ゲストです。ゲストですよね? 女子高生三人組。なんだか楽しそうに、落葉を見立てて遊んでいる。なんだか、一風変わった三人の世界を遠くに見る思いで読み始めたのが、だんだんに身近と思えるようになっていって、面白かった。近付いたと感じられたのではなく、つりこまれたのかも知れませんね。楽しいよ、どう? みたいなノリに、つい覗き込んでしまった。その楽しそうな様、それがよかったんだと思っています。

  • 『まんがタイムスペシャル』第19巻第1号(2010年1月号)

引用

  • まんがタイムスペシャル』第19巻第1号(2010年1月号),1頁。

2009年11月20日金曜日

「押し紙」という新聞のタブー — 販売店に押し込まれた配達されない新聞

 どうも押し紙とかいうのがあるらしいよ。そうした話を知ったのは、いったいいつの頃だったんでしょうね。もう数年も経とうかと思う、それくらい前の話。時はまさにインターネット時代、どこだったかのサイトで、写真だとか含めて紹介というか告発というかされていまして、もしかしたらそのサイトというのは、この本の著者である黒薮哲哉氏のサイトだったのかも知れません。同時に週刊誌だか雑誌の記事のスキャンも見たように思う。そうしたものがくっついてきたから、根も葉もない話というわけではなさそうだ、信じてもよい情報なのだろうという判断をした。そんな覚えがあります。

押し紙というのは、新聞販売店に押しつけられる過剰な部数のことをいうのですが、それがもう尋常じゃないほどの量になるという話。三割とか、場合によっては過半を超えることすらあるらしく、この本に現れる毎日新聞箕面販売所では50%あたりを推移しています。衝撃的なのが同紙蛍ケ池及び豊中販売所の率でしょう。脅威の7割を記録していて、うへえ、そりゃいくらなんでもやりすぎだというのが私の感想。たまたま毎日が続きましたが、他も違いはさしてありません。讀賣の4割に達し5割に迫る例も紹介されていますし、朝日だってだいたいそんなもん。で、この押し紙、新聞販売所に押し付けられるわけですが、もちろん支払いが免除されているわけなんてなく、販売所の負担になります。ただし、そこにはからくりがあって、新聞社からの補助金や、あるいは水増し部数に基づく折込チラシの収入などで押し紙の代金をまかなうようになっているのだそうです。

以前、押し紙について触れたことがありましたが、その時、私は率にして2割に達することもあるらしいとかいっていました。けれど実際の事例を見れば、そんなどころではないという状況があって、しかしなんでこんなことするんだろう。なんていってますが、話は簡単で、そうまでしても部数を増やしたいんでしょうね。部数が増えれば、広告で得られる収入も増える。また、世論に対する影響力も増やせる。そうした効果が期待されているのだろうというのが著者の主張でありました。見掛けの部数が増えたところで、影響力が増えるなんてあるのかといえば、政治への働きかけ、また政治からの働きかけが期待できる。かくして両者もたれあいの癒着関係になれば、はたしてそこにジャーナリズムなんてものは期待できるのか、いやできない。再販制度や新聞特殊指定を維持せんがために、時の政権与党に恩を与え、結果として利益を受けている新聞は、ただのプロパガンダ機関になり下がっているのではないか。

そうした著者の謂には、論拠となる周辺情報こそ多々あれど、絶対確実の証拠といえるようなものは欠けているから、読んでいるこちらとしては多少のもどかしさも感じないではありません。下手をすれば陰謀論めいたものに向かいかねないのではないか、そうした心配もないわけではないけれど、けれど新聞というものが大きな暗部を抱えているっていうことは知っておいた方がいいことであろうと思います。しかも、こうしたメディアの暗部は、新聞は絶対書かないし、テレビも新聞社と関係を持っているわけだから取り上げない。よって週刊誌や、あるいはインターネットといった新規メディアに期待するしかないということなのかも知れません。新聞やテレビが、既得権益を手放さず、新規参入を困難にする構造を堅持し続ける限り、状況を引っくり返すような機会はそうそう訪れないように思いますが、それでも放置しておきたい状況とは決して思いません。なので、まずはこういう本のあること、押し紙というものが存在しているという事実だけでも広く知られるのが肝要かなと。そう思ったので、ここにこうして書きました。

いや、新聞業界にとってはタブーかも知れないけど、私、新聞業界には読むこと以外で関係していないから。こうした立場の人間が、まるでこれは触れちゃいけない秘密のことなんだといわんばかりの態度をとる、そうしたこともまた問題かと思ったことがあったんですよ。だから私はそんな態度は、ポーズであってもとらない。押し紙っていうのがあるらしいぜ。大っぴらにいってしまうのです。

2009年11月19日木曜日

『まんがタイムきららMAX』2010年1月号

『まんがタイムきららMAX』2010年1月号が発売です。おおお、2010年。おそろしい響きであります。表紙は『かなめも』。教室の風景。みかを囲むクラスメイトといった様子は、なんだか青春ものみたい。こちらを見るみなの視線がとてもいい。特にみかの目、凛として、とても素敵。ああ、この人は、ただつんとすましていれば、非の打ちどころのない、それこそ完璧な美少女であるのかも知れないなあ。なんていうのは、本編はじまれば自ずとわかる、ああ、なんか残念なお嬢さんだなあ。でも、その残念なところ、それも魅力的であると思うのですよ。

ひろなex.』、ああ、あのメカメカしい物体、見覚えあります。というか、操作したことがあるような気がします。あれ、なんてったっけ。多分、近所の誰かが持ってたんだと思うんですけど、昔はとにかくガジェット盛り沢山、詰め込んでみましたみたいなおもちゃが多かったように思うんですね。筆箱も、あちこち飛び出したりして物騒でしたが、『ひろなex.』にはそうした昔の風物が混ぜ込まれて、なんだか懐かしさ思わせて、ええ、ほんと、あのトリガーってなんのために使うんだったっけなあ。気になってしかたないです。

『お願い神サマ!』が新連載です。女子校における、女の子同士の、友情よりもちょっと深く踏み込みすぎた関係が描かれて、いや、やっぱりこの人、カラーの雰囲気が素敵です。本編での、名字から名前を呼ぶ関係になりたいという、それだけのやりとりにふたりの可愛さが浮き上がってきます。しかし、本の人物名を置き換えてというの、あれは面白かった。面白さだけでなく、ほのかに照れのようなものも出る。そこもよいのでしょう。

『ラッキーストライク!』、これ、とても好きです。扉のレイ、むやみやたらと可愛いなあ。でもって本編、ボウリングに関する知識が自然に増える。これはとてもいい。でも、ただ情報が詰め込まれただけでない、ちゃんと面白さも意識されていて、読んでいてとても楽しいです。キャラクターの個性を出しつつ、ボウリングにも焦点をあてて、そして舞台、状況が明らかにされていきます。まだ導入だとは思う、けれど今の時点で充分面白い。だから、この先がどうなるんだろう、期待しちゃうんですね。ティーセットも完備です。

『ヒメとトノ』。ずっとふたりで展開するんだと思ってたら、新キャラ登場。おおう、人数増えるんだ。しかも、王様。かなりアクロバティックな命名でしたが、でもこの人加わって、展開に膨らみが出て、これまで優勢だったタイトな感じとは違う、やわらかに華やいだ印象が一色添えて心地よいです。いいですね。

『もー★ぐり』、ゲストです。田舎にやってきたお嬢さん、加奈子がヒロインなのかな。けれど、タイトルはモーニンググローリー、朝顔とあるから、小柄な高校生、朝顔が主役みたいですね。明るく元気で素朴でちょっとやんちゃな女の子と、都会育ちの女の子、ふたりの仲良くしていきましょうというところに見え隠れするギャップみたいなのを楽しもうという話のようです。

『ふたりトラベル』、ゲストです。大学に通うことになった女の子ひな。なんだか弱気? なんだか外が苦手? 独特の雰囲気漂わせて、ああ、こういう人好きだからすごく困ります。そして、ひなが大学へ向かう途中で出会ったあおい。このふたりが旅に出るのかな。ひなの、これまで自分の内に向かっていた意識が、風車の並ぶ風景を思い出したことをきっかけとして外に向かって、最初の目標はその夢見た景色なんでしょうね。なんだか、嫌いでない雰囲気です。ちょっと期待したい、そんな感じ。きっと好きになれる、そんな感じです。

『はる×どり』、後輩が登場。なんかすごくよくできたお嬢さん。素直で、育ちもよさそうで、けどちょっと謎もありそうなところ。そんな彼女が京子と話すところ。変な名前で呼ぶようにいわれて、その時は躊躇してたのに、よりによってそこで呼ばれると恥ずかしいというポイントで呼ぶ。素晴しいな。なんか自分のペースに持っていけなくて悔しそうな京子、とてもいいキャラクターで、やっぱりこの人、好きです。

『ブックセラーズ!』、ゲストです。書店でアルバイトすることになった女子高生ふたり。しっかりしてそうで鈍臭いヒカルと、なんだかのんびりが過ぎるお嬢さんセラのふたり組。なんだか頼りなさそうに思ってしまうところだけど、ちょっとずつ、助けあったりしながら、成長していったりするのでしょうね。そんなふたりを見守る書店さん、その視線もよいなって思います。

超級龍虎娘』、サイレント風味で展開して、お題はこたつをめぐる風景。描かれるのは、なんだか駄目な春希と、やんちゃな毬虎、そして有能な龍楼。シンプルなんだけれど、キャラクターのらしさはばっちりと効いていて、面白かったです。龍楼、可愛いし。そして最後のコマ、ああ暖かい風景だなって思って、とてもよかったです。暖かいのは、こたつがあるからだけじゃないんだっていう、そうしたところ、よかったです。それにしても、龍楼、いい子です。

表色89X系』、私がこの漫画が好きな理由、なんとなくわかった。ちょっと昔風の、学生コミュニティものなんだ、この漫画。誤解を怖れずにいえば、『究極超人あ〜る』的ななにかを感じて、けれどもちろん『あ〜る』のようではないんです。悪ノリというと、ちょっと違うかも知れない。けれど、粗野な男どもの、なんだか変にひねくれて、けれどこじつけてでも楽しむときは楽しむんだ、そうした馬鹿な勢いがあって、そこに女の子たちの華やかさ、穏かさが加わって、それぞれでちょっと楽しみ方が違うのね。今回みたいなノリはイレギュラーではあるんだけど、でもそこにこの漫画の魅力の一端は確かにあると感じられて、ああ、そりゃ好きなはずだわと。ちょっと変わった人たちと、比較的ちゃんとしてる人たちが、一緒の場所でコミュニケーションとってるの。そのおかしみ、楽しさ。そういうのとても好きです。

ワンダフルデイズ』。私は今とても仕合せです。それはこの漫画で一番好きな珠季さんがメインだったからです。そして、あのしっとりとした展開にうっとりです。ああ、鈴吾よ、応援してやる。なんか悔しいが応援するよ。

  • 『まんがタイムきららMAX』第7巻第1号(2010年1月号)

2009年11月18日水曜日

「けいおん!」第5巻

 アニメ『けいおん!』の第5巻が発売されました。第9話「新入部員!」、第10話「また合宿!」を収録して、ああ、いよいよ2年目本格稼動であります。新入部員、すなわち中野梓が加わって、また少しにぎやかさを増した軽音部。とりあえずオープニングがマイナーチェンジ。アニメもそうですが、音楽も変わってるっていうのね。ギターが増えて、アレンジもちょっと違ったものになってという、当時、一部で微妙に話題になったことを思い出します。

話題になったといえば、「新入部員!」の演出が多少物議をかもしたとかいう話もありましたっけ。あの緩い部活の雰囲気に順応できないで、梓が、迷って、悩んで、ついには泣き出してしまうっていう展開に、あんなに重く湿っぽくする必要あったのかという意見があったのでした。私なんかはあれ見て、ええいああ、梓にもらい泣きしちゃってるわけですが、ええ、割と好意的なんですね。そのあたりのことは以前にも書いたので繰り返しませんが、期待を胸に飛び込んでいったのに、そこは理想とはかけはなれた場所だった。その失望と、けれど自分のあの時確かに感じたもの、その合間で悩む梓は魅力的であったと思います。で、そのギャップが埋められていくのが「また合宿!」だったんでしょうね。あの回、あんなにもいろいろ詰め込んで、けれどちっとも息苦しいだなんて思わせないのね。たっぷり遊んだ。その上で、唯と梓ふたりの練習風景。あれがすごく効いていて、そして梓に映っていただろう上級生たちの印象が変わる。少し身近に感じられるようになったといっていいのか、また数歩接近したんだろうなと思う、そんな回だったって思って、ああ、いい話でした。

というわけで、オーディオコメンタリー。キャストコメンタリーは第5巻から梓役の竹達彩奈さんが加わった5人によるトークで、いやあ、前々から短い、2倍欲しいだなんていってましたが、今回は3倍は欲しいと思いましたよ。面白いんだ。スルメからはじまったのは予想外も予想外だったけど、先輩後輩という話、学生時代の部活話なんかが楽しく話されて、そしてあのライブハウスのシーン。はっと静かになって、その様子に私もまた打たれました。演奏のシーンなんかでも、そこで話されたこと、しみるようで、とてもよかったんですね。そしてまた合宿をうけて、合宿やりたいねなんて話になって、意外とインドア派だった佐藤さんとか面白く、で、この回では楽器の話、それが楽しくて、やっぱり自分に割り当てられた楽器だけでなく、他の人の楽器にも興味もったりされてたんですね。豊崎さんのギターを触った日笠さんの、本当に指が切れそうだという感想もあれば、佐藤さんが日笠さんのベースでチョーキングを試そうとしたら怒られたみたいな話もあって、いや、わかる。チョーキングってなんかネックに影響でそうで、それからフレット傷みそうで、最初、躊躇しますよね。まあ、ある程度弾いてたら普通にやっちゃったりするんですけど、新品の楽器でもさ。だって、普通の奏法だし。でも、チョーキングを遠慮するっていうエピソードに、ああ、楽器大切にされてるんだなと思って、ベー子でしたっけ、すごく楽しかった。

スタッフコメンタリーは、10話絵コンテ、演出の坂本一也さん。9話作画監督の秋竹斉一さん。10話動画検査の中野恵美さん。以上の三名によるもので、いや、しかし、面白かった。細かい見どころや遊びについての紹介、そういうのも楽しかったんですけど、梓可愛いですよねから、えらいつっこまれていた秋竹斉一さんの状況。萌えですよね、とか、萌えポイントの詳細説明させられるようなところ、なんだか罰ゲームみたいで、大変なことになってて、申し訳ないけどめちゃくちゃ楽しかったです。細かい見どころっていうのは、作り手の頑張ったところっていっていいのかも知れません。10話、合宿に突如乱入してくるさわ子先生の衝撃的なアップ。あれは撮影の方の頑張りで、予想以上のものに仕上げてくださったとか、こんにゃくの上下にゆらゆらゆれるところとか、そういうのも。少し戻れば、時計の秒針が動いているとか、こういう随所随所に、少しでもいいようにしてやろうという意思が反映されて、結果的に全体の質を上げているんだろうなというのが、本当によくわかる話でした。ほかに印象的だったのは、9話楽器を描く苦労、人物との対比とか膨れあがる動画とか、そしてさわ子先生の瞬獄移動。10話ドリアンバーガーから憂の真似して入ってくる律先輩、いや、あれ、気付いてませんでした。本当に全然。話聞かされて、見直して、うわ、本当だ、これ憂じゃないよ、驚きました。あと、クルーザーの回り込み、可愛いすぎる紬、その背後で見過ごされた唯律、おいしそうなバーベキュー、線香花火の描かれたこと、キャベツ、努力っ子唯、坂本さんは律が好き? ほかにもいっぱいあったんだけど、とりあえず思い付いたもの書き出せばこんな感じ。でも、面白いこと、はっとしたようなことは、もっとたくさんあった。スタッフコメンタリーにも、キャストコメンタリーにも、どちらにもたくさんあって、ああやっぱりコメンタリーは楽しいなあ。そう思わせてくれるのでありました。

Blu-ray Disc

DVD

CD

原作、他

  • かきふらい『けいおん!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • かきふらい『けいおん!』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • かきふらい『けいおん!』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 以下続刊

2009年11月17日火曜日

『まんがタイムファミリー』2010年1月号

『まんがタイムファミリー』発売です。なんと、1月号。一足はやく年あけて、2010年1月号であります。しかし、さすがに来年1月号といっても、現実には今日はまだ11月の中旬です。だから表紙はクリスマス先取りといったところでありまして、サンタクロースの衣装を着た蜂谷が表紙中央に、そのわきにはクラッカーを慣らすアキラが元気にジャンプしている。ええ、まずはクリスマスを楽しもうといったような雰囲気です。

『教師諸君!!』、もう、これ、大好きです。扉には笠地蔵と思いきや、手拭いならぬサンタクロースの帽子かぶせられたりしていて、味があっていいなあと。そして地蔵は本編にもあらわれて、しかし謎です。謎ではあるんだけど、あのクリスマスを待とうという様子、リース、ツリーだけでなく、ジオラマやアドベントカレンダー、そしてクリスマス菓子など。実にオーソドックス、正統的なクリスマスと思わせて、南瓜、柚に落ちる。いや、でも、クリスマスは土着の冬至の祭をキリスト教が吸収したとかいう話ですから、南瓜、柚もまた和洋混交として、ひとつのオーソドックスなんだ。なんていったら、だんだんそう思えてくるから不思議です。うん、地蔵もオーソドックスだ。でもって話題は学期末、深沢先生の前に日本史教えていた先生の情報が少し明らかになって、なんかこの学校は変な先生しかいないのか? で、現在の変な先生代表西名先生の、なぜコスプレするようになったのかが明かされて、いや、それ以前に第1話ぶりの不断着でなくって? 先生。いや、もう素敵すぎ。大好き。ものすごく魅力的だ。最高であります。

『ガクブンッ!』、ゲストです。完璧超人的ヒロインが、実は微妙に変わりもの。小説家志望だけれども、どうやらその才能はなさそうだというようなところを楽しもうというような漫画であるようです。小説家志望の彼女、高屋敷綾乃がボケなら、ツッコミもいて乾麻美子、バレー部のエースなのかな、ファンもいるくらいのかっこいい系の女の子。うまく話が展開して、広がっていったらよさそうかなって感じです。

『きょうも幸あれ』、これとてもいいです。高校生のお兄ちゃんのことが大好きな幸子。この兄のことが好きな同級生なんていうのもいるのだけど、その娘さんにお兄ちゃんがとられてはなるまいと、嫉妬して、妨害してというさっちゃんがかわいいんですね。妨害なんていうけれど、それはもう罪のないような、そんなもので、その一生懸命さは可愛さを際立たせて、もう、ほんと、お兄ちゃんのこと好きなのね、なんて思って、ほのぼのと笑みがこぼれるんですね。

『はなまるドロップス』、ゲストです。双子の姉弟。いや、勝手に姉と弟にしてるけど、実際のところはわからない。まあ双子に上も下もないって私は思うんだけども、表記的な問題として気になりました。さて、女の子のなでしこは人見知り。男の子のやまとは仏頂面。それで、なんだか人付き合いの上手な友人ひまわりに引っ張られて、みたいになるんでしょうか。わりといい感じ。なでしこ、可愛いです。ああ、ふたりあわせて、やまとなでしこなんだ。ええ、なでしこ、可愛いです。

『ひとみとコットン』が、なんだかちょっと着ぐるみさんの昔に触れたような、そんな様子がありまして、意外。彼になんかショックな過去みたいなのがあるってことが意外で、そして山下くん、ひとみと同じ大学だったんだ。職業着ぐるみすとだと思ってました。そうか、学生だったんか。そして、『生着ぐるみさん密着レポ』、着ぐるみの人形劇団の取材風景描かれて、これちょっと面白いなあ。舞台から落ちる話。いや、笑いごとじゃないような気がするんですが。でも、日常なんでしょうね。こういう活動、なんだか楽しそうですね。ちょっと憧れたりしますね。

『うのはな3姉妹』、新連載になったとのこと。これまで、次女桃子が目立ってきましたが、今回は長女梅乃にスポットがあたって、ああこのお姉さんもいい感じだなあ。人の気持ちに気付く、そう思わせて、なんか強引に売ろうとしてるだけなんじゃないかという「エスパー」。美人、若いころは老け顔。でも、落ち着いて魅力的で、そしてちょっと謎。家族ひとりひとりの性格が、こつんこつんと当たって響いて、にぎやか。とても楽しそうと思わせる、とてもいい家族コメディであると思います。

『つれづれいーの』、はじめて見たときには、ヒロインはべらぼうに可愛いけど、どうにもつかみどころがわからない、なんていってた癖に、最近ともなれば結構どころかかなり面白いんじゃなくって? なんて思ったりしております。ほら今日はみんなサンタさんだよ! って、ああ、もう、可愛いなあ。でも、可愛い中に、笑顔の連なるなかに、日常の憂さと、それが晴れる瞬間が描かれていて、不思議な光景、それを受け入れちゃってもいいかなって思わせる心地よさがあるのですね。

続けて読んできて、いいなと思う。雰囲気にほだされて、笑顔にやわらかく気持ちをなごませる。うん、いい漫画。好きです。

おはよ♪』が最終回を迎えました。あの、あかんたれに見えた明ちゃん、やるじゃん。家族に見られまくってっていうのが微妙に残酷ではありましたが、進むわけでなく、けれどとどまり続けるでもないかも知れない、そんなふくみを持って、なんだかわりと悪くない様子でした。完全に決着してしまうよりも、ずっとらしい終わりだったのかなって思って、そしてこれからも続くだろう彼らの生活に思いをはせてしまうのでした。

そして『ばんだい君』も終了です。これ、「福引」みたいなのは結構好きだったりしたんですね。昔の四コマ誌の雰囲気、それがだんだんと薄れていきます。これも時代の変化ってやつなのかと思います。最後の暖かくして眠るおじいさん。あの風景は、おかしみ、面白さよりも、ああ、ゆっくりお休みくださいと、いたわるような気持ちにさせてくれるものでした。ながらくお疲れ様でした。

  • 『まんがタイムファミリー』第28巻第1号(2010年1月号)

引用

  • 井ノ上ふき「つれづれいーの」,『まんがタイムファミリー』第28巻第1号(2010年1月号),149頁。

2009年11月16日月曜日

和声 ― 理論と実習

 ちょっと真面目に音楽に取り組もうだなんていってましたが、その気持ちが薄れないうちに、和声の復習をしようと思い、買ってきました『和声 — 理論と実習』。いやね、最初は学生の頃に使ってた教科書でやろうかと思ったんですけど、作曲を専門にしていらっしゃる方が、やっぱりこれがおすすめといってらしたので、ああ、じゃあ、買うか、芸大和声、と思ったんですね。芸大和声、この本は俗にそう呼ばれているのですが、東京芸術大学で使われている和声の教科書がこいつで、おそらくは日本の音大芸大で作曲を学ぼうという人間は、これを皆、やってるんじゃないかなというくらいにスタンダードな本であったりします。でもって私も、昔、ちょっとやったりしたんですよ。だから書店で手にしたときには、懐かしいなって思ったものでした。

芸大で使われてる和声の教科書っていってましたが、作曲やら楽理やらで受けようという人間は、入学前に一通り終わってるっていうのが普通だったりするのですが、私がこれをやったのは、編入試験対策で、つまり入学後にやりました。和声、音楽理論っていってもいいかと思いますが、それは全専攻で必修でして、けれど作曲専攻でない人間はまた違った教科書でやっていましてね、だから基本はそちらで学んで、そして試験を受けると決まった2年次後半に、駆け足でこの1巻を実習したのでしたっけね。懐かしい。で、やったことがあるっていうのに、なんで今、本買ってるの? いや、借りてやったんだ……。昔は、お金がなくってね。まあ、今もないんだけれどもさ。

私の、芸大和声に対して持ってる印象というのは、とにかく合理的というものです。例えばそれは和音の転回形の表し方がそうで、私の最初に学んだ音楽理論では、ベースに第3音がくる場合は6の和音といって、Iの和音ならI6と書くところを、芸大和声では第1転回、I1というように表記します。同様に第2転回ならI2と書いて、それを私の最初に学んだのでは46(しろく)の和音といって、Iの横に4、6と縦に書くのでした(6が上、4が下)。これ、6とか46というの、なんでそんなわかりにくい書き方するのかといいますと、I、ハ長調ならドミソですね、その第1転回形だったらミソド。ベースとなるミから見て、6度の位置に音がくるからなんですね(ド)。第2転回、46はといいますと、ソドミ。ベースのソから見て、4度上と6度上の音がありますよっていう意味なんです。これ、芸大和声でも触れられてますけど、数字付低音すなわち通奏低音時代の記譜に由来していまして、通奏低音のころは、ベースラインが書かれているのを見て、和声を埋めていったんです。ベースがドで、なにも数字が付いてなかったら、3度と5度を足してドミソにする。ミとあって6とあったら、3度と6度を足してミソド。こんな具合にやってたんですね。ソの音に7が付いてたら、7度を足してソシレファなわけですよ。で、これ属7とかいいますが、この転回形が、第1転回が56(ごろく)、第2転回は34(さんし)、第3転回は2となるわけです。

とまあ、芸大和声をやるような人間は、こういった和音の呼び方も把握してるんでしょうけど、その上で1転2転とやっているわけです。理屈は理解してるから、どっちでもいい。こんな具合の合理性はあちこちに見られて、だからシステマティックにやるには実に適している教材であるという話です。決まりごと、良不良であるとか、禁則であるとか、そうしたものを把握し、そして課題を実施して、和声というシステムへの理解を深めていくというのがこの本であります。

というわけで、これから少しずつでも課題を実施して、和声というものに親しみたく思います。まあ、少しずつなんていわずに一気にやれよ、っていう話でもあります。といった理由から、日常における時間配分、音楽に多く割り振ろうかなって思っている次第です。

2009年11月15日日曜日

Parker 75

Parker 75先日、通販でCD、DVDを買ったのですが、郵便振替、ええと今は払込みっていうんですか? そいつで払うと送料、手数料が安くすむよっていう話だったので、そちらで頼んでみたのです。いやあ、払込みの用紙、通信欄に注文書いてなんて、どれくらいぶりでしょう。ものすごい久しぶり。以前が思い出せないくらいです。さて、手書きで注文するのは久しぶり、汚ない字だったら迷惑になるなと思って、しっかりと黒の出て、しかも細いペンを使おう。そう思って出してきたのがParker 75のFでした。

Parkerの75は、私が叔父から貰ったペンでした。けれどそれはなくしちゃったんですね。それはそれは、今思い出してもくよくよするくらいですが、でもいつまでもくよくよしちゃいられない。そう思ってはみたけれど、やっぱり惜しい。Parker 75、評判のいいペンなんですよ。万年筆に復帰してから、いろいろ見たり聞いたりしていると、どうしても取り戻したくなって、なので質流れ品と思われるものを買ってしまいました。

買ったのは最後期のモデルです。マットブラック。私の記憶が確かなら、定価一万円のペンでした。ペン先は14金で、太さはF、細字ですね。これがMならいいんだけどな、というのは、私のなくしたペンというのが75最後期型のマットブラック、Mだったんですね。

インクは黒、ということで、Parkerペンマンの黒を入れて、それで書いてみて、とりあえず用はすんだのですが、一度インクを入れるとちょこちょこ書いてやらないといけないのが万年筆というもの。なので、ペン習字の稽古に動員してみたら、その書き味やっぱりよくってですね、評判いいのもわかるよと思ったわけですよ。シンプルなペン先、あの丸みの少ない造形があの書き味につながってるんでしょうか。しなやかに反応する、そんな感じで、書きやすいペンだなあってあらためて思いまして、だからFじゃなくてMが欲しいなって、どっかにデッドストックとかないものかな。75で特に人気のあるのは、シズレといわれる銀軸モデルなのですが、そいつは私は別にいいので、最後期ものが欲しいなって、今でもまれに思います。

  • Parker 75

2009年11月14日土曜日

GarageBand

 なんか、このところ、真面目に音楽に取り組みたいなと思っていて、ただ弾いて歌ってるだけじゃなくて、ちゃんと人に聴かせられるようなものを、ちゃんと一から作れるようになりたいなって思って、環境を整えよう、録音できる環境と、それを完パケにまで持っていけるような環境を整えよう、と思ったりしながら、ぐずぐずと日々を送っている毎日です。つまり、なんも動けてないって話なんですが、それでも友人と連絡を取りあっていて、ふたりでDAWを買おう、向こうさんはSONARがいいかCubeseがいいかといって、私はというとLogic一本で考えていて、けどふたりともまだ動いてない。いろいろノウハウを交換したり、刺激うけたりしたいんだけどなあ、だから一緒にはじめたいんだけどなあ、と、こういう他力本願はいけませんね。

さて、私の悪いところは、ちゃんとできるようになってからじゃないとやらない、演奏なら基礎ができるようにならないと先に進まない、録音ならシステムが揃わないとやらない。完璧主義なのか、それともかたちから入るタイプの悪いあらわれなのか、まあどうだっていいんですけど、とにかく今あるもので工夫する、やってみるという気概がないというのはあかんだろうと。そんな意気じゃ、DAW買おうとなに買おうと、持ち腐らせてしまうに違いあるまいよと、それでちょっと発奮しました。

マイクはある、オーディオインターフェイスもある。じゃあ、後は録音のプラットホームだけか。以前は、Audacityを使ったけど、今度は違うのを使おう。といったわけで、GarageBandを使ってみました。AppleのiLifeに入っている、DAWっていっていいの? 簡易DAWです。アマチュア向けのソフトウェアで、簡単に使えるらしいって聞いていたから、じゃあ一度でも使ってみようじゃないか、そう思ったんですね。

使ってみて、確かにこれ使いやすいです。Audacityなど、既に同種のソフトウェアを使ったことがあるからかも知れませんが、ギターと歌、2トラックの録音も簡単にできて、録音した後にエフェクトを加える、エコーとかリバーブとかですね、それも楽。何度でもやりなおして試せるから、それもパネルからマウスでちょいと操作するだけでいいってね、ほんと、すごく簡単です。

今回は実験ということで、コンプレッサーなんかも使ってみたんですが、パラメータをどうするかとか、経験がないから全然わからないんですが、プリセットされているものが何種もあるから、そこから適当に選んで、効果を確認できるというのがありがたいです。その時のパラメータの動き、それを見てると、いつかわかってくるんじゃないかなって思えて、こういういたれりつくせり、とにかくよく使いそうなのを使いやすくしといたから、試して、感じて、覚えてね、といったところは、DAWやエフェクタに詳しくない人にこそよいんだろうなって思いましたよ。

で、私の使ったGarageBandはiMacにプリインストールされていたものだから、現行バージョンより少し古くて、バージョン4です。けど、当座の用には問題なく使えて、実際これの機能を使いつくそうとしたら、結構大変だろうなと思うくらい。全然、全貌が見えていません。で、今のバージョン、5ですね、これにはビデオレッスンとかがあるんですよ。これ、受けてみたい。私、ギターとかほとんど独習だから、全然わからないでやってるところがあるんですよ。ものすごい回り道してるんだと思う。だから、レッスン受けてみたいなって思って、その気持ちが高まったら、iLife '09買っちゃうんだろうなって思います。

さて、なぜDAWなのかいっとこう。今日録音して、やっぱり思い知ることになったのですが、残念ながら、私は正直うまくない。けれど、こうした人間にこそ、今という時代はチャンスなんじゃないかって思うんですよ。ソフトウェアが進歩して、人の能力をずいぶんサポートしてくれるようになりました。いくらでもやりなおしできるし、安価で質の高いものもたくさん出てきています。そりゃ、安く最高のものをというのは無理だけどもさ、けれどDAWに関しては、プロが使うようなのでも買えてしまうわけですよ。まあ、その上にのっける音源が違うとか、いろいろ違いはあるんだろうけど、でもそれは先の話ですよ。

私は、自分がやりたい、っていう気持ちが強くて、エフェクタとか嫌いで使ってこなかったし、補正とか、つぎはぎとか好きじゃないし、やりたくなかったんだけど、でもそういう時代じゃない。私よりはるかにうまい人たちが、エフェクタも補正もつぎはぎも使いまくりなんだ。好き嫌いでどうのこうのいってるような状況じゃないだろう。そう理解して、よし、なんでもやってみよう、そう思ったんですね。

というわけで、これから先どうするかはわからないけど、とりあえずGarageBandは楽しいってことがわかりました。ほんと、いい時代になったなって思います。

2009年11月13日金曜日

『まんがタイムラブリー』2009年12月号

『まんがタイムラブリー』12月号、発売です。表紙は一足はやくクリスマス。赤と緑の背景、クリスマスツリーや煙突も見られるけれど、けれどさすがにちょっと早過ぎるってことなのか、あまりクリスマス色を前面に押し出すようなところはなく、パーティーのドレスが華やか。そんな表紙であります。

うさぎのーと』、本編でもちらほらとクリスマス。うさぎ先生はハイテンションというのが基本になりつつありますが、いや、こうした楽しみを楽しもうというところはいいなと思っていて、そしてこのハイテンションがあるから、「サプライズ」の落ちも生きるんだろうなと。めちゃくちゃ面白かったです。勢いのある振りがあれば、トナカイ着ぐるみ静かな笑いもあって、これはとてもいい。新婚旅行はフィジーの予定だ!!! どんなテンションなんだと思うんだけど、最高に面白かったです。アップダウンがしっかりとあって、アップでもダウンでも笑いを誘う。もう、「ハグ待ち」のいたたまれなさったら! 乗ってるなあ。とてもよかったです。

『ごめんね、委員長!』、とてもいい展開です。いやね、私は、この漫画は、委員長が毎回あれこれと酷い目にあわされる漫画だと思ってたんですが、いやいや、そうじゃない。ついに逆襲のチャンス到来っていうね。一方的じゃないんだ、対等であり、逆転ありなんですよっていう、そういう関係にこそ広がりが生まれるってもんさね。かくして、委員長悪党面。そんなあなたも素敵だ。

ところで、テニスってボールが体に当たるとアウトなの? バドミントンがそうだっていうのは覚えているんだけど、テニスもそうだったのか。けれど、これで点をとれるなら、体を狙うのは戦略としてはありだと思います。少なくともバドミントンに関しては、積極的に体を狙えみたいにいわれた覚えがあるんだけど、どうなんだろう。一般的にはおかしな意見なのかな。テニスにおいては恵理咲がそうだったように、体を狙うことでアウトになりかねないからやらないのかな。どうなんだろう。詳しいことはわからないけど、それでも楽しめた回でした。面白かったです。

『僕は泣く。』、ふじのはるかの短期連載だそうです。気が弱くて、押しの強い女性からのアタックを断れないという主人公。いや、断ろうよ。お断りだ、御免被る! これでいいんだよ。ってなわけで、これはそうした弱気な優柔不断主人公が、人を好きになって変わっていくっていう話になるのかな。ともあれ、昔の憧れの人が次号登場なのだろうと思われます。

『だんつま』。英理子の状況は、あんまり他人事じゃない気がする。全自動掃除機の導入は功を奏さず、ひなよの夫克也はラッダイト運動のようなこと口にして、そして未歩はうまくいいところをせしめていく。そういった流れは、これまでに確立したキャラクターを反映して、すごくらしくて面白く、そして近所づきあいの描かれたりするところもよかったです。片付けは、結局は捨てられるかどうかが鍵なんだなって話でもあったように思います。ものがその人の取り扱える量を超えてしまうと、手のつけようがなくなってしまうんですよね。だから、そのキャパシティをオーバーしないようにするってことが大切なんだろうなと、そんな話でもあったように思います。いや、そうしたことが描かれてたわけじゃありませんけど。

『視界良好』、面白い。今回はヒロイン成田秋奈ではなく、同僚小松の心境こそがおかしくて、いや、わかる、その気持ちはなんでか知らないけど、よくわかる気がするよ。安心してちゃ駄目なんだ。アグレッシブにいかないと駄目なんだ、とはいうけれど、恋だか愛だか好きだかなんだか、そういうのが自覚されないことには無理っすよね。うん、わかる、なんでかよくわからないけど、共感します。それは、あかんたれの、駄目な生き方だってこともわかります。

『白衣とリボン』。人型のロボット。ヒューマノイドを試作中、趣味で。ゲームのキャラクターに恋して、それを現実に触れられる存在として顕現させるべく、奮闘するモリソバの同級生。これ、エロゲとはあるけど、『ラブプラス』あたりが想定されてるのかな。で、女子のサンプルとしてゆりが選ばれて、けど顔はいいのんか? ゲームキャラのでなくていいのんか? さて、こうした代替物で憧れやなにかを埋めてしまうことの是非はさておき、ロボットの発展は馬鹿にできないものがあって、すごく楽しみなんですが、産業技術総合研究所運営費交付金が事業仕分け対象に入っててね、まあ、仕分けって作業も必要なんだろうとは思うんだけど、ちょっとがっかりだね! と、これは関係ない話でございました。夢やロマンでは暮らしていけないけれど、それらがなければ心に潤いがないっていうのもまた人なんだって思うんだ。うん、ロボットってやつはロマンなんだと思うんです。

『ただいま独身中』、面白かったです。前回明らかになった佐藤操の隠れた趣味。それが引き続き話題となって、いや、知っちゃいけない、知られちゃいけない、BL好きっていうことは。でも、実は私はBLやBL好きって人に抵抗がないんだ。自分でも読むからね。で、BLも嫌いじゃないとはいうけれど、実はそうした趣味にはまってしまって、暴走しちゃってるような人を見るのも好きで、だから「何も知らないくせに」なんて最高でした。いや、実際、こんな風にわあって説明受けて、お勧め紹介されて、買って読んだもんな。好きなものに一生懸命になってる人っていうのは魅力的だって話でもあるんですが、だからこの人、佐藤操、かなりよいですね。こういう人、大好きです。いい感じに変わりものなんだものな。

なお、私はリーマンものが好きなようです。学園モノも悪くはないんですけど、やっぱりリーマンものがいいみたいです。

『カフェらった!』、今は気になる人がいたらメールアドレスを交換するのね。私、携帯電話もっとらんからなあ。は、置いておいて、これ望みがちょっと叶って、しあわせ! ってなって、で、それが引っくり返るのか。世の中って切ない! で、しばらく休載なんだそうです。なんだろう、って思うけど、だんだんに面白さが増してきて、このところ、とてもいい感じ、楽しく読めていたから、いつか帰っていらっしゃること、心待ちにしたいと思います。

『ヒーロー警報!』、かおりがYの昔に興味を持ってしまった! しかし、この漫画、元悪の総帥と、彼の率いる組織に戦い挑んでいた元ヒーローと、なんだか仲良く語り合ってる。何度見てもおかしな漫画なんですが、面白くって、今回もそう。みんな味があってね、妙に真面目でちゃんとしてる元悪の総帥Y。今は孫命のいいお爺ちゃん。すごいギャップ。でもそれがすごくはまってて、すごくいいんですね。面白いってこともあるけど、愛せる! って感じがいいんです。というわけで、深夜に及ぶ作戦会議。最高でした。

『どんまいっ。』、ゲストです。OLもの。元気なお嬢さん。ちょっとドジ。典型的とも思うけど、こういうの、嫌いじゃないんですよ。老けて見られる冬子さんとか、結構よかったかなって思って、それからあのカンカンの効用。ああいうのも結構好きなんですね。

『三日月すぱいす』、ちょっと久しぶり、ゲストです。ゴシックロリータのお嬢さん、相原さんのこと好きな細見くんの話なんですが、微妙にむくわれないように見えて、いや、実はそうでもない? って思わせるところ、気にいっています。結構好きな漫画なので、落ち着いて読めるようになったら嬉しいんですが、今はこうしてまた会えたことを喜びたいと思います。

先生はお兄ちゃん。』。兄嫁……、いえ、なんでもありません。純情少年の憧れ。好きになった人には、もう決まった相手があって、うん、切ないですね。そうした気持ちはわかるように思います。こうした時に一番困るのは、決着をつけにくいってことなんだろうなって、いや、私は人妻相手に、好きです、結婚してくださいっていってましたけど。でも、それは結局冗談で、決着なんてつかないってわかってるからこそ、いえたことなのでしょう。だから今回の蒼井少年の玉砕するために踏み出したその一歩は、いじらしくて凛々しくて、素敵でした。

『ミニっきえにっき』、感動の最終回! や、確かによかったけどさ。ちょっとしんみりとさせて、そしてミニ様の成長を皆で喜ぼうという、そうした様子にはじんとして、だってなあ、大変な境遇にある、そんなミニ様の様子、サフォークたちと一緒にずっと見守ってきたようなもんだもんな。そりゃ、感動もするよ。好きな漫画だったんです。この前に連載されていた『新釈ファンタジー絵巻』のころから、いい漫画を描く人だって思いながら読んできて、こうして終わることは寂しい。けれど、いい話でした。好きな漫画でした。好きな作家です。とてもいい作家です。そうした思いを強めた、そんな最終回でありました。

  • 『まんがタイムラブリー』第16巻第12号(2009年12月号)

引用

  • 師走冬子「うさぎのーと」,『まんがタイムラブリー』第16巻第12号(2009年12月号),30頁。

2009年11月12日木曜日

フミコの告白

最近話題になっている自主制作アニメがあるって、昨日だったかな、知りまして、タイトルは『フミコの告白』。甘酸っぱい青春ものなのかな、なんて思いながら、それ以上を調べなかったのですが、っていうのは、Webで見られるそいつが、違法アップロードされたものだと思ってたからで、できることならちゃんとしたルートで見たいなあって思ったら、いや、そのYouTubeに公開されてるの、ちゃんとしたルートだったっていうんですね。やじうまWatchの記事から辿った作者さんのページ、しっかりYouTubeに公開されている動画が埋め込まれていまして、そうか、堂々と見ていいんだ! 喜んで見ることにしたのでした。そして、これ、面白いですね。ええ、とても面白いです。

と、その感想を綴ったtwittetsをちょいと引用。

話題になってる自主制作アニメ『フミコの告白』、見ました。面白い。シンプルな展開なんだけど、転げ落ちるように走るフミコは踏んだり蹴ったり感あふれて、とてつもなくキュート。

フミコは走り、跳び、ついには飛ぶ。現実にはありえない事象を、ありそうに感じさせるのは、アニメーションの技術ってやつなんだと思います。

そしてフミコはパンツ丸出し。後ろから前から、パンチラなんてレベルじゃない、とにかく丸出し。けどいやらしくないのがいいですね!

ええ、とにかく面白かった。告白して、断られて、うわああん、と駆け出したら — 、いや、これ以上はいうまい。見てください。それがきっといいです。

昨日書いたことにも通じるんですが、いい世界をお持ちであるなあと思ったんです。

私が漫画でも小説でも、また他の表現でも、そうしたものを見て、読んで、聴いて、いいなと思うのは、送り手のうちに広がる世界に触れることができるからだと思っています。

ええ、作り手の見ている世界、そのうちに抱きしめている世界、それが『フミコの告白』からは生き生きと溢れ出していて、それは躍動感を持って、まるで飛び出してくるみたいなんですね。描かれているものは、ちょっと昔の実験アニメを思わせる、ある種オーソドックスといっていいものだと思うのですけれど、でもその、やるべきことをきちんとやりましたという仕事の丁寧さが、オーソドックスであることを逆に強みにしているように思います。奇をてらって、派手に作ることもきっと可能なのに、そうではなく、むしろ地味な表現を選択した。下手したら埋もれてしまうかも知れない。けれど、それがこうして話題になったのは、実にアニメらしいアニメを、きっちり作ったからだと思うのですね。

そのきっちり作ったということは、あの転がり落ちるような疾走から飛翔、そして激突にいたるまでの描写が、非現実的であるにもかかわらず、自然さをもって受け入れてしまえるところに現れていたと思います。絵の持つ説得力っていったらいいのでしょうか、まるで自分でもああいうことができそう、こんどすべり台をカタパルトにして飛んでみようかな、なんて思ってしまうくらいにできそう感満載なんです。その非現実を現実みたいに感じるってことがすなわちアニメの楽しさで、面白さなんだなって、あらためて感じいりました次第ですよ。

『フミコの告白』は、フミコがもう抱きしめたくなるくらいにキュートであるし、tweetsにも書いたようにパンツ丸出し、オー・モーレツ! なんですが、けれどそうした見せ場、キャラクターの魅力を超えて、アニメーションの原点的な魅力、絵が動いて面白い、楽しい! というものを感じさせてくれて、素晴しかったです。これはちょっと私の心のページに記しておきたい。好きなものとして記録しておきたい。そんな気持ちであるのですね。いや、本当、大げさでなく、そう思っています。

引用

2009年11月11日水曜日

魔法少女チキチキ

 小池定路の単行本が出るってよ。なんてことを知ったものですから、私はもう楽しみで楽しみで。小池定路という人は、イラストレーターといったらいいのかな? 例えばゲームでいえば『終末の過ごし方』や『対局麻雀ネットでロン!』、挿絵なら最近アニメにもなった『大正野球娘。』。私、この人の絵が好きでして、やわらかではなやかで、しっとりとして、おだやかで。出会うたびに、ああ、いい雰囲気だなって思っていたんです。だから、漫画を描いてらっしゃると知ったときには、ちょっと興奮した。すごく楽しみにしていて、そして単行本。手にしたときには、なんだか嬉しさがこみあげてきたほどでした。

でも、表紙のイラスト、それがちょっと意外でしてね。今まで、私が抱いていたこの人の絵のイメージ、それとちょっと違ったものですから、もし単行本が出るよ、魔法少女ものだよって事前に知らされてなかったら、見過ごしにしてしまったかも知れないなんて思うくらいに意外でした。すごくシンプルな絵。塗り方が違うのかな。これまで見てきたものは、水彩を思わせるような淡いものであったのですが、『魔法少女チキチキ』の表紙に関しては、ペタっとしたアニメっぽい塗りと感じたものだから。それにキャラクターの造形もいつものイラストとは違っていると思ったものですから。そんな理由で、雰囲気が違ってるなんて思ったのかも知れません。

けど、本編にはいってしばらく読めばすぐに馴染んでしまって、やっぱりね小池定路の絵だなって思うわけですよ。これまでにカットや設定イラスト、あるいは下書きに見てきた雰囲気、ちょっとシンプルめにデフォルトされた絵の感触が確かにありまして、そしてまた、これまでに触れてきたこの人のコミカルな表現、それが確かにありまして、しかもそういったものが広がりを持って展開していく。それは面白く、楽しく、諧謔の味を深めながら、時に静かに心に触れて、アンニュイややさしげな感じ、そしてあたたかさを持って、ああ素敵な漫画だなと思わせてくれました。ああいいなあと、そうした思いが自然とわいてきたのです。

この漫画は、主人公、ひとり暮らしする大学生のもとに魔法少女がやってきて、居候する。そうしたものであるのですが、典型的な構図にすっきりさっぱりした描写がマッチして、なんだかすごくおかしいんです。すごくおだやかなふたり。そして、とてもあたたかなふたり。親しみをもって接している、けれど他人である、そんな関係。いい相棒って感じでしょうか。海外のドラマで仲のいい人間が一緒に暮らしているようなコメディってありますが、そんな感じといったらいいのかな。困った時には助けあい、支えになってもらったり、けれどもたれあったりはしないで、ひとりひとりそれぞれにちゃんと独立自立している。ほんと、いい関係だなって思います。

そんなふたりを取り巻く人たちもまたよくて、主人公とお付き合いすることになったお嬢さん、春香。すごく素敵な人。けれど、完璧ではない。うちに抱えているものがあったりする。そしてそれは春香の妹美香や、いとこの真一、主人公良行、その友人小河にとっても同様と思われて、皆がそれぞれに独自の世界を持っているんだなと感じさせるような存在感があるんです。前向きになれる力を持っている。後ろ向きに立ち止まらせる怖れ、弱さを持っている。それはとても自然なこと。そして、その自然でもって皆が関わりあっている。その関係の中から生まれる感情、気持ち、思いが、とても心地良いんですね。時にチキチキが魔法で手助けしたりする。けれど解決はしない。そっと手をさしのべて、応援するかのように魔法で手助けしてくれる。解決は、問題を抱える当人がすることなんだろうなって、そしてきっと彼らは歩きはじめて、私はそうした姿に、ああ彼らもまた生きていると感じる。そうした時に、とても豊かなものを感じるんです。

私が漫画でも小説でも、また他の表現でも、そうしたものを見て、読んで、聴いて、いいなと思うのは、送り手のうちに広がる世界に触れることができるからだと思っています。『魔法少女チキチキ』には、そうした世界の息衝きが確かに感じられて、とてもよかったです。世界がその存在を自ら物語っている。そうした感触が私を嬉しくさせてくれるのでした。

  • 小池定路『魔法少女チキチキ』第1巻 (CR COMICS DX) 東京:ジャイブ,2009年。
  • 以下続刊

2009年11月10日火曜日

RICOH GXR

  全然情報を追っていなかったので、いきなり知って、ちょっと驚いているのですが、RICOHが新しいデジタルカメラをリリースしたんですね。GXR、レンズ交換式であるのですが、面白いのが撮像素子がボディにではなく、レンズについてるっていうところ。レンズが交換できるといえば、一眼にせよ二眼にせよ、ボディに撮像素子が格納されているというのが当然、常識であったのですが、考えればレンズに内蔵してもいいよなあ。フィルムと違って巻き上げ機構いらないんだから。そして、私はちょっとこのカメラに興味を持っています。それはGR DIGITAL出してるRICOHのカメラだから、ということもありますが、けれどそれだけではないのですよ。

レンズユニット交換式というアイデアが面白いからという理由でもありません。このカメラに興味を持っている理由、それは、レンズです。標準レンズ、35mm換算で50mmという画角、それが私に訴えるのです。以前、GR DIGITALを買おうという時に、最後まで迷わせたのが画角でした。

GR DIGITALの画角、28mmというのが私の好みにあわなかったのです。私の好み、それはシンプルであること。操作が簡単でちゃんと写る。ズームは嫌い。歪みが酷いし、面倒くさい。だから単焦点がいい。ここまでならGRでばっちりですよね。でも、私の好きな画角は標準レンズ、50mmなんです。素直な写り、パースペクティブの強調も圧縮もない、見たままに近い絵が撮れる。やっぱ、カメラは50mmだろうよ。といったわけで、銀塩時代は、24-85mmのズームレンズも持ってたのに、もっぱら55mm F1.7のマニュアル古カメラを愛用していて、だってそっちのほうが自然で素直で好きだったんだもの。例えばそれはこんな感じに撮れて、イタリアにいった時の写真。

Duomo di Milano, Italia

ミラノのドゥオモですね。ゴシック建築の、天に向かうかのごとき尖塔。それらがぴしっと真っ直ぐ立っている。この非常に素直に、ありのまま写してくれる、そうした描写が好きなんです。その自然な様が好きなんですね。

とはいうものの、GXR、ちょっと簡単に買ってしまうには高くてですね、ボディが五万円くらい。まあ、それはいいです。問題はレンズかと。50mmは七万五千円といったところで、ああ、やっぱりいい値段するなあ。それだけの価値のあるレンズなんだろうと思いますし、実際高品位なレンズで七万って安いと思うんですけど、けれどそれだけの予算をぱっと工面するというのは難しく、だからやっぱりちょっと迷ってしまうんですね。魅力的なんですけどね。

ところで、GXRのレンズユニットですが、これ、レンズに限らずつくようで、GPSやプロジェクター、ストレージ(HDD)、プリンター、ファイバースコープ、ワイヤレスなどが例として展示されたんだそうです。ファイバースコープユニットは、過去にちょっとなかったと思えるもので、こういうのが出てくるところ、普通のレンズ交換式カメラではありません。可能性を感じさせてくれて、面白いなと思ってしまうんですね。

引用

2009年11月9日月曜日

『まんがタイムきらら』2009年12月号

本来はここに書くことではないのですが、感動が薄れないうちに書いておきたい。ええと、『ふわふわ時間』のハスキー唯バージョンが当たりました。正直なところを申しますと、アニメ『けいおん!』Blu-ray Disc第1巻が初動で3万3千だかを売り上げたと聴いた時に、ああ、これは駄目だ。はずれたなって覚悟した。実際、抽選の様子、会議机にうわっと積み重なっている端書を見て、ああ、こりゃ駄目だと思った人は多いのではないかと思いますが、私もそのひとりでありまして、これは期待しない方がいいと思っていたら、当たった。今日、届いてた。なんということでしょう、神さまに感謝します。といったわけで、『まんがタイムきらら』12月号、本日発売。『けいおん!』、唯と澪のふたりが映える表紙であります。

そして『けいおん!』本編は学園祭に突入して、このあたりの着々と進行するところ、流石ですね。いやね、実はためを作るんじゃないかなって、今回は学園祭の演奏直前で止めて、それで次号ステージの幕が上がる! みたいなのをやるんじゃないかと思ったら、いやいや、普通に進行して、クラスでやる演劇の舞台も描いて、先輩がこないことを心配する梓の心境も描いて、そして恒例の前日泊まり込みからステージ、そして終演までを一回でやってしまった。おおう、すごいな。これ一回でやるなんてもったいないとか思ってしまうのは、私が貧乏性だから? 実際、今回は3年生にとってはこれまでの集大成であり、漫画にとっても堂々のクライマックスであったと思います。

みんな、すごく表情が豊かでね、本当によかったのですよ。いい回だったなあ、と思うのだけど、気を抜くと最終回? みたいに勘違いしてしまいそうです。ほんとう、いい回でした。

ゆゆ式』。タオルを顔にあてて感じる人ん家のにおい。ああ、人の家のにおいってありますね。友達の家にあがるたび、その家のにおいを感じるんだけど、それが気にならなくなったら、親しさも深まった証拠。そんな風に思ったり。いやね、昔の話。そして話は、昔の唯、縁の回想になって、友達をうちに呼ぶ、恥ずかしい、その気持ちわかります。それも、いいとこのお嬢さんだと思っていたならなおのこと。でも、いいとこのお嬢さんは人ん家でタオルケットかぶったりはしないような気が……。こういう子供時代のエピソードみたいなの、なんだかいいですね。実はこういうの大好きです。

ふおんコネクト!』、こいつは驚きました。これ、正規の設定ってことでいいのん? なんだか謎めいた雰囲気もってる夕姉さんでしたけど、こんな設定だったのか。正直驚いて、謎めいたどころの騒ぎじゃない。ほんとにこれなのか。ちょっと錯乱しそうなくらい驚いて、へー、ほー、うーん、話としては面白いけれど、『ふおんコネクト!』は現実と非現実の端境くらいを突く漫画なんだと思ってたら、思いっきり非現実に踏み込んでいく、すこし不思議どころではない、もうまったくもってしっかりと不思議。そんな世界であったのかと、いや、もう、驚きました。でも、その思い切った設定。いや、思い切ったとか、私が思ってるだけなんですけど、これはこれで悪くはないなって感じ。話自体もよくできてたと思います。ただ、驚いた。驚いただけです。

『PONG PONG PONG!』。えらいこと面白かったです。またも暴走するたぬき。後始末する祐太。けど、なかなかに悪くない展開じゃん。いい感じじゃんかとわくわくしました。なんだかこの人の描くお嬢さん、可愛いんですが、荷物運んでた子さん、水ぶちまけられた子さん、コピー機つまらせた子さんに、ポスターボロボロにされた子さんふたり、そして蛍光灯替える子さん。わお、みんな可愛いな。そんな子たちと祐太は自然に知り合っていって、ああこれは下心なんてなしに、無我夢中で、困ってる人、まあ発端は祐太といってもいいんでしょうが、大変なことになってる人を助けようとした、その姿勢がきっとよかったんでしょうな。でもって、好青年度をプラスした祐太、しかしなぜか人をいらつかせるらしい。なんでなんだ。身についてないからなのか? 不憫よな、祐太。しかし、あの状況でモテてるわけじゃないっていう、そのくだりが一番不憫だったと思います。

そうか、ああいうのは便利に使われてるだけなのか。そうか、今、我が身を振り返った気がするよ……。

表紙、図案きてますね。これに色がつくんでしょうか。こうして見ると、たぬき、思ったよりも大きくて、けど可愛いなあ。こんな美少女に手をつないでもらってるだけで、もう充分人生いききったといっていいんじゃないか、祐太よ。それ以上は贅沢ってもんだと思うぜ?

『つかえて!コハル』、MAXからゲストだそうです。そうか、ゲストだったのか。普通に読んでしまってました。しかし、今回面白い。雨の日。忘れられる傘。ずぶぬれ。粗忽もののせいでずぶぬれが伝染して、しかし笑いごとじゃないっすね。この状況が悪化するところ、笑いごとじゃないといいながら、すごく面白かったです。うん、こはるは粗忽もんなんですね。そういう表現がすごくしっくりくる娘だと思います。

三者三葉』は、体育が苦手な葉山先生の話から。いやね、ほんと、運動が苦手なものにとって、体育とかいうのは鬼門も鬼門。実技系ですからね、やりすごせない。無理矢理に参加させられる。もう、嫌いだった。けど、葉山先生ほどではありませんでした。もしあそこまでいったら、とりあえず授業参加拒否するだろうなあ。そして話は葉山と西山の対決、猫写真の可愛さで競おうという、そんな方向に動いて、しかし葉山ちゃんの…しねぇ…、えらい物騒だなって、最初読んだ時、えらいこと驚きました。しかし、ふたり、こんなにも趣味があうのなら、いっそ友達になっちゃえばいいのに。

こどもすまいる!』、きっと、おつかれさまです、で見送ろうと思った最終話。将来の夢はなにという話、こどもたちに聞いて、絵にしてもらっての、そうした流れはまさに王道であるといってもいい、そうしたものであったのだけれど、それゆえに決まるとがつんときますね。登場人物の紹介、毎回のお題、今回はおつかれさま、それ一色で、だんだんに最後に向けて話を持ち上げていって、そこであの絵が開く。ああ、いい話でした。これまで読んできて、楽しいなと思ってきた。それを最後をこう閉じて、ああ、この先生はむくわれているのだな。そう思えて、やっぱりおつかれさまでした、そういいたい。そんな話。ちょっとほろりときちゃいました。

『まいにちアップデート』。これ、好きです。志信が漫画にはまって、それで今回は絵を描いてみせて、そうしたらそれが結構うまかった。ノエリアさんが気にいって、そのいきおいでWebに公開しようということになって、なんだかほうけた娘、そんな印象だった志信の世界がだんだんに変わっていく。ああ、これはよいよ。素晴しいね。そう思いました。そして、志信がこうした世界に踏み込むきっかけとなった兄、彼がちょっと関わってきて、ああ、この展開、ベタといえばベタだろうけど、いいよね。そう思える。なんか、楽しいぞって、そんな感じにわくわくしています。

ところで、どうでもいいけど、サイトやBlogというのは反応を求めてやるものじゃない。これは、真っ暗な井戸の底に向かって叫んでいるのと同じなんだ。ただ井戸なら反響が返ってくるだろうけど、インターネットは底が見えないから、なにも返ってこないのね。それが私のインターネット観。だからこそ反響するなにかに出会えると、嬉しくなっちまうんでしょうね。志信の喜び、すごくよくわかるんですよ。

『境界線上のリンボ』、とてもよかった。アポジーさん、月の人だったのか。しかも、本当に月にいく。その月の描写、静かで、暗くて、ファンタジーと科学的のいりまじる感覚、ちょっとしびれちゃいましたよ。そして帰還。いや、今回、すごく素晴しかったです。これはちょっと、ほんと、いいなあ。この漫画における世界の広がり、それがものすごくて、雄弁でした。

『涼宿チェックイン!』、登場人物が増えて、人見知りの女の子、チカゲ、旅館で働くことになった。その娘さんとうちとけていく、その感触は実際いいなと。こうしてキャラクターの個性が細かく描写されることで、より近付いていくと感じられる。そのだんだんに親密になっていく感覚、チカゲの感じているものを、読者である私も近しく得ている、そんな感じもして、読んでいて悪くなかったです。

『天狗ちゃんとあととり娘』。神社の娘、蛍が神社に祀られている天狗さま、ちっちゃい美少女、ひよを連れて外に遊びに出ていく。それだけのことといえばそれだけのこと。けれど、ただ公園で遊ぶ、そうしたところに面白さ、ひよが感じているだろう楽しさ、わくわく感ですかね、それがあらわれていて、よかったです。そして、真面目な娘、若葉とひよの距離がちょっと近付いて、なんかこの距離感に戸惑いながら近しくありたいと思う、そうした心情の描写、よいなあって思えて、面白かったです。

『ハッピーホームベーカリー』、この漫画もキャラクターが動いてきて、悪くない感じです。パン屋の娘なのに、パン焼くのは苦手、けどカレーなんかは得意っていうアキラ。けっこう皮肉屋だったりする彼女ですが、それをまったく受け付けず、素直に素直に反応するユエ。いい感じじゃんかと思うわけですよ。そして、猫を拾う。ただ拾うだけじゃなくて、ちょっとすっとぼけた落ちもつけて、こういうところもよいなあと思います。ちょっとゲスト、いい感じと思うのが多くて楽しいです。

そしてMy Private D☆V。『おまもりんごさん』のmsの描く、セーラー、カーデ、タイツの女の子。このちょっともったりとした、垢抜けないんだけど、そのほわっとした質感、すごくいいなと思います。実際、スカートは短いよりも膝下くらいのが魅力的。それは本当です。いや、このイラスト、すごくよいですよ。

  • 『まんがタイムきらら』第7巻第12号(2009年12月号)

引用

  • 荒井チェリー「三者三葉」,『まんがタイムきらら』第7巻第12号(2009年12月号),99頁。

2009年11月8日日曜日

BAYONETTA

 発売前から話題になっていた『BAYONETTA』。Xbox 360とPlayStation 3向けのアクションゲームなのですが、眼鏡黒髪長身の美女が敵を華麗に倒す。コンボを繋げ次々と攻撃を叩き込む爽快感を売りにしているのですが、実際プレイしてみれば楽しくて、敵の攻撃を紙一重で避ければ、自分以外の時間がスローに流れるようになるから、止まってるような遅さの敵にコンボ叩き込み、魔力が貯まれば拷問攻撃だ! って、それ拷問じゃなくて処刑だから。ギロチンなんてどう考えても拷問用の器具じゃないから。といった具合に、ちょっと過激な演出も魅力のうちなんですね。というわけで、『BAYONETTA』買っています。それも、ちょっとケチの付いたPlayStation 3版を買ってます。

ケチの付いたってどういうことかといいますと、『BAYONETTA』はもともとXbox 360向けに作られていたのだそうでして、それを移植するというかたちでPlayStation 3版がリリースされた。でも、その出来の具合がちょっと違うという話で、画質においても、また快適性においてもXbox 360版が上回るんですってよ。私は発売前にこの情報を知って、正直どうしようかな、見送ろうかなとも思ったんですが、それでもまあいいかと思って買った。どうせ自分は眼鏡のセクシーお姉さんを見たくて買うんだから、多少の劣化には目をつぶろう。まあ、ちょっとした賭けをしましてね、発売前日に予約して、予約特典を入手できるようなら買おうと。そうしたら、普通に買えちゃったっていうね。なんだ、熱狂してたのはネット上だけなのか。

プレイしてみて、面白かったですよ。事前にデモ版もプレイしていて、ベヨネッタがあんまりにイカしてたものだから、これは欲しいなって思ったわけで、だからベヨネッタの魅力に関してはオッケー、ノープロブレムです。けど問題は別のところにあって、いやあ、ロードが長いね。デモ版はハードディスクにインストールしているわけですが、それでも若干ロード時間をとります。それが、製品版はハードディスクへのインストール機能がなくってですね、そのせいで長い長い。武器やアイテムの切り替えにサブ画面に切り替えようとしたら結構ロードする。面倒くさいので、よほどのことがない限り力押しするかって感じになる。ステージ途中にアイテム買えるショップの入り口が出現。体力回復アイテムを買えるだけ買って、店から出て、回復後、アイテム補充のためにまた店に入る。その出入りがめちゃくちゃ長い。せめて店の中でアイテムが使えたら。そう思ったんだけど、どうもそれは無理みたい。だから、その後の展開を有利にしよう、つまり体力を全快しつつ、アイテムも確保したいなら、2回にわたる出入り、長いロードを我慢するしかない。

ロード時間さえ短縮されれば、きっともっと遊びやすいのに。本当に残念と思われます。

と、これはPlayStation 3版の話です。Xbox 360版はインストール可能なんだそうでして、だからロードも短いらしいですよ。そうかあ、両機種持ってるって人は、迷わずXbox 360版を選ぶべきだと思う。実際、逆はありえないらしい。聞いた話によれば、Xbox 360版のロード時間は1/2から1/3くらいに短かくて、稼ぎにおいても差が出るらしく、70万以上の差が出たそうで。それから、もっさり感がないんだって。その人は、買いなおすっていってました。そうかあ、ゲームを十全に楽しみたいというなら、買いなおしも選択肢に入るかあ。それほどに違うとその人はいっていたんですね。

そう、買いなおしてでも快適にプレイしたいと思わせるくらいに、面白いんです。巷では、ボリュームがないとかいう話も出ています。実プレイ時間は3時間ほどだとか、そういう話もありますが、それはその人が上手いだけですから。私は、ノーマルのクリアに、発売日購入で、今日までかかりましたよ。もちろんムービー見てる時間もあるんだけど、ひとつ章をクリアするのに三十分から四十分くらいかかるんです。死んでコンティニューした場合、巻き戻される分の時間が消えるから、記録はちょっと短くなるのかな? へたしたら一時間以上やってようやくクリアとかかも知れません。で、もういい加減いやになったって思いながらようやくクリアして、けれどそうした大変さはプレイを繰り返すごとになくなっていって、慣れれば章あたり十分くらいでクリアできるようになったりする。ネットに繋がる環境があればランキングの参照もできるんですが、6分台の人とかいますもんね。どうやったらそんな速度が出るんだ。はじめて見た時にはたまげましたが、破壊可能オブジェクトを無視して、敵の殲滅に集中すれば不可能な時間ではないなという感じ。こんな具合に、タイムアタックしてみたり、あるいはコンボを繋いで高ポイントを叩き出す、スコアアタックしてみたり、クリア後にこそ楽しみはあると思えるゲームであるのです。だから、実際、繰り返し繰り返し遊んで、敵の動きが、なにもしないでも止まって見えるようになってからが勝負なのかも。そうなれば、もうめちゃくちゃ面白いだろうなあ。攻撃を回避しつつコンボを途切れさせないで、敵をばんばん始末していく。私はまだまだですね。まだまだそこまでには至っていません。

繰り返しプレイして、最短解が見えるようになってきたら、ショップも利用する必要なくなるし、アイテム使えばポイント減りますからね。こんな具合ですから、ロードが長い、コンティニューする時にもあんなに待たされるなんて、というような文句も出なくなるんじゃないかと思います。死んだら、ポイント減らされますからね。

とりあえずハードをプレイしてみて、自分の至らなさを思いっきり自覚させられて、だからまだまだ修行ですね。でも、あんまり遊んでる時間ないんだけどな。ほんと、贅沢な悩みですよ。

Xbox 360

PLAYSTATION 3

CD

2009年11月7日土曜日

『まんがタイム』2009年12月号

『まんがタイム』12月号が発売です。表紙中央には温泉卓球するおとぼけ課長が大きくあって、やっぱり冬は温泉というのが定番であるのでしょう。今日は立冬です。いよいよ冬となって、ああ寒くつらく寂しい季節であります。ですが私は冬生まれ。冬は嫌いではない。冬枯れの木立、吹き抜ける冷たい風。そうした景色は、寒々として凛々しく、空を見上げれば美しいと思う。空虚な胸を慰撫してくれる、そんな昔の思い出が今は少し懐かしいです。

タマさん』はスケートの話。このふるるの父、先生の氷の上に立てなくなっててショック受けるというの、以前私も同じようなこと経験して、いや、本当にショックなもんなんです。スケートというのは、日常使わない筋肉を使うもので、だから普段運動してない人は立てなくなるんですね。いや、あれはショックでした。もうちょっとましに滑れるもんだと思ったから、あれは本当にショックでした。

天子様が来る!』、意外に交渉術に長けた天子様。ってのはいいとして、まりもを丸めるバイトなんて本当にあるんですか。北海道土産の定番、あのまりもっぽいのが入った小瓶。あれはまりもじゃないって聞くけれど……、ということはつまり……。知りません。そんな話は知りません。

『おかんでGO!!』が最終回を迎えました。私はちょっと大阪のおかん的ステレオタイプは苦手なので、この漫画には微妙に踏み込めないところもあったのですが、けれど今号でいえば「勢い」のような話は嫌いじゃない、つまり好きだったりしたものでした。次号には新作もあるそうです。どういうのがくるのか、それはちょっと楽しみに思います。

おはよ♪』、最終回です。こちらは子供たちがメインなんですね。森君が沖縄へ引っ越していって、そして言葉少ななハガキを貰って、そうした光景は確かにあった。けど、大抵は自然消滅してしまうんですけどね。そして美咲が八嶋をちょっと意識して、けれどこれでおしまい。これから先はなくて、このあたりは小学生の微恋愛ものとしてのらしさなのかも知れません。

『わさんぼん』。なかなかに面白いじゃないですか。和菓子だといっても、伝統に胡座かいているわけじゃない。新しいものがあれば取り入れるよ。それは昔からやってきたことだという話から、草太のチャレンジにフォーカスがシフトする。草太、なんのかんのいっても真面目に製菓の学校で勉強してきただけはあるんだな。旦那、大旦那にしても、新しいアイデアに興味を示し、それを受け入れる余地は持っている。みなのこの菓子に向き合っているという感じ。ちょっといいなと思いました。

ところで思うんだけど、牡丹ちゃん、あんまりいてる意味ないなあって。なんか、しっくりこない感じがあります。

みそララ』、えらいこと驚いた。梨絵さん。ショートもいいなあ。けど、こういう時にこういう変化は妙に誤解されて、私も昔あった。たまたまやねん。まさかそんなことになってるなんて思ってなかったっていうのに、またまたー、素直になりなよー、とかいわれて、誤解がとけない。そうしたポジション、この梨絵という人のキャラクターにはばっちりと思います。でもって、ただの遊び、交流に見せて、それだけではなかったりするところ。決して番外編ではないというところ。さすがだなって思いました。

『放課後のアインシュタイン』。いいじゃないですか。連載ですよ。なので、登場人物のおさらいといった雰囲気で、これは概ねちゃんと把握できていたと思う私にもちょっとよかったなと思います。先生のことが好きでたまらない秋山こずえ、おしゃれに興味津々の若苗ミキ、そしてつっこみ役、駒井なつみ。で、先生は松戸梨花。マッドな理科なのか。校長先生の名前ははじめてじゃないかな、城戸譲。はじめて聞いたように思います。エキセントリックな先生と、暴走する生徒たち。今後、どんな風にその活躍が描かれるのか、本当に楽しみです。

すいーとるーむ?』。ゆかりさん、パンフレットに載る。けれどそれだけではなく、永井君のがんばり、そして結果に繋がって、こういう風に広がりを見せるところ、とてもいい感じ、面白く、そしてよかったです。しかし、パンフレットを床に敷き詰めます、から、タイルの写真を!? と流れる、ああしたテンポのよさは素晴しい。今回は特によかった。そんな風に思える回でした。

PEACH!!』はいつもどおりの味、かと思ったら、なんと武田のお嬢、あの人が仕入れしてたんだ。なんだかいつもがんばりがむくわれない、なんだかぱっとしない、なのにお嬢。そんな立ち位置が持ち味と思ってたら、なんと仕入れに才能を発揮してるのか。まさに意外性の人だなあと思わせてくれる、そんな武田が面白かったです。

  • 『まんがタイム』第29巻第12号(2009年12月号)

2009年11月6日金曜日

凛 ― COCORO NAVI Another View

 実は買おうかどうか、直前までずっと迷っていました。『凛 — COCORO NAVI Another View』。『コミックエール!』にて連載されていたのだけれど、雑誌の休刊をうけて連載途上で終了。完結は単行本でという運びになって、実に不遇な漫画であったのですが、しかし、そのラストを読みたい? と問われると、ちょっと足踏みしてしまって、なんでかって、単純に、去る者は日日に疎しっていうやつですよ。連載の終了すなわち『エール!』の休刊は2009年5月のことで、単行本が出たのはつい先日の10月15日。申し訳ないけど、どんな漫画だったかほとんど覚えていない。だから、どうしようかなって思ったのでした。

けれど、店頭にいって、新刊のコーナーに平積みされているのを見て、よし、わかった、買おうじゃないか。その気になったのでありました。理由? よくわかりません。表紙のせいかも。あるいは、書店店頭の雰囲気がそうさせたのかも。わからないけれど、迷うくらいなら、買ったほうがいいという判断が急遽なされて、そして読んで、ああ、いいじゃないか。これはBlogに書こう、そう思ったのだけど、思わぬ悲しいことがあったために書けなくなってしまい、あとはなにやらばたばたと、めずらしく書くことが立て続けに続いたもので、今日まで書けずにきてしまったのでした。

『凛 — COCORO NAVI Another View』、サブタイトルにあるように、ゲーム『こころナビ』をベースとした漫画であります。複数いるヒロインのうち、主人公の妹、凛子シナリオをピックアップして、聞けばかなり忠実にイベントをとりあげて、そして凛子の心情などを掘り下げているのだとか。そうかあ、そういう話を聞くとゲームもプレイしてみたくなるな。ゲームの出たのは2003年6月27日。ずいぶん以前と感じられますが、これもしダウンロード販売とかされてたら、買ってたろうなと思います。ネットワークごしのやりとりは、考えるよりもはやく決済がすんでしまうので、つくづく危険であるという話です。

ゲームの出たのは2003年6月。仮想空間での生活を大々的にアピールしたSecond Lifeの正式公開も2003年6月。『こころナビ』は、ラウンダーと呼ばれるアバターを介してWebの世界を経験しようという、そうした仕組みが物語を動かす大きな要素として存在していて、これは当時の、MMOに慣れ、アバターに慣れたネットワーカーが望んだ世界のありかたを映したものであったのかも知れませんね。あるいは、かつて流行したペルソナウェア。そのエージェントの発展形として夢見られたもの、それがラウンダーであったのかも知れません。

『こころナビ』において、ラウンダーは自律的に思考し行動する人工知能を備えたものとして描かれており、ユーザーの分身としてよりも、アシスタントとしてとらえるべきもののように見えるのですが、突然どこからか送られてきたソフトウェア、こころナビによって、凛子は自分のラウンダー、蘭煌と同化してしまいます。凛子の感覚を伴ったまま、自由に振る舞う蘭煌。その様子に戸惑い、また振り回されながらも、蘭煌の感じたことを受けて、それまで心の奥底に沈めてしまっていた自分の感情、寂しいという感情に気付かされてしまう — 。そのプロセスは、現実において疲弊してしまっている凛子の状況をうけて、どこか切なく、そして寂しさを否定しようとする凛子の姿が、ことさらにその状況を強調していたように思われます。人に疲れ、人を拒絶しているけれど、人を欲してしまっている。そうした内心を、蘭煌の意識により掘り起こされてしまう。そして、兄の変化。なにかが動いている。その動きを生み出したものがこころナビであったのですね。

でも、こころナビはきっかけにすぎなかった。そうしたところがよかったと思っています。こころナビや、ラウンダー蘭煌、ラウンダーリュウヤといったギミックは、凛子や兄勇太郎に影響しながらも、彼らを支配はしないんですね。いずれ気付く。兄は、ネットで出会っている蘭煌の向こうに自分の妹がいると。そしてふたりともに、自分の抱えている感情の正体にいきあたって、凛子はだんだんに昔の感情を取り戻していって、こころナビを失って — 。

これは漫画で、もともとはゲームで、だから願望や夢がそのままに優しく描かれていると思うのだけれど、現実にはありにくいと思えることも自然さをともなってありえてくれる、これはつまらないリアルに対するせめてもの抵抗なのかも知れません。でもこうした理想とも思える甘い世界に触れて、こうした理想に美しさや憧れめいたものを感じてしまう私を発見して、そうか、私も、誰とも触れあうことのできない寂しさを意識の底に埋ずめてしまっているひとりであったのですね。ゆえに、凛子の気持ちに共感を覚えて、だからあの甘いラストに、自分を受け止めてくれる誰かがいてくれるというしあわせに、ほっとあたたかな気持ちを得たというのでしょう。

  • しんやそうきち『凛 — COCORO NAVI Another View』Q-X原作 (まんがタイムKRコミックス エールシリーズ) 東京:芳文社,2009年。

引用

2009年11月5日木曜日

『まんがタウン』2009年12月号

『まんがタウン』12月号、発売です。毎月の頭は、『ホーム』、『ジャンボ』、『タウン』ときて、ちょっと落ち着く。そんな印象があるんですね。もちろんすぐさま『タイム』、『きらら』とくるので落ち着いている暇なんてないのですが、けれど、『タウン』は双葉社から出ている、私にとって唯一の芳文社以外の四コマ誌です。ちょっと毛色の違う、そうした雰囲気に落ち着きと感じるのかも知れません。

『ちっちゃいナース』は、洋子の姉が登場して、この人もまた美人。洋子よりも好みに合致して、そういえば私の好みって若い人妻だったな。いや、人妻が好きなんじゃなくて、この人いいなって思った人がたまたま人妻だったんです、連続で。だから、洋子姉が素晴しいと感じるのも当然なのでしょう。

さて、洋子姉ですが、姉が怖ろしい、横暴だっていうのは、弟に対してだけでなく、妹に対しても同様なんですね。その姉の理不尽に憤る洋子さんのカットは、いつも以上にスレンダーが強調されてこれもまた素晴しい。結局今回は、姉や兄のいるということが描かれて、一人っ子で育った人は兄弟が欲しいって思うってことも触れられて、つまりはないものねだりなんでしょうね。そして、お姉さまの帰還。ちょっとよれよれになったお姉さまは、やっぱり美しくて素敵なのでありました。

『商☆魂』、胡桃ちのの新連載です。勤め先が倒産してしまって実家に帰ったら、あんなに賑やかだった商店街はすっかりシャッター通りになっていました。かわりはてた姿にショック、老け込んだ母にもショック。 — なんだか、経営コンサル時代の人脈やらお客様志向のアイデアとかで、商店街V字回復、みたいな話になりそうな予感がします。で、昔の男が出てきたりする予感がします。

私の予感は当たるわ! 当たるかな? とりあえず乞うご期待ってやつですね。

『70's 愛ライフ』は、家電やら家具やら昔は拾ってたんですって話。いや、私の使ってるスピーカー、拾いものよ? 昔は大ゴミの日にひとまわりすればギターなんていくらでも拾えたっていうけど、最近はそんな感じじゃないみたいですね。残念です。出物があったりするのも大ゴミの醍醐味で、今でも金のないときは大ゴミ探したりする人はあるんじゃないかなあ、学生さんとか。あるいは、リサイクルショップとかで買うもの、案外大ゴミ出身だったりするみたいですね。

光の大社員』。ああ、中華まん、おいしそうです。けどさ、私の期待が大きすぎるのがいけないんだとは思うんですけど、中華まん、買って、手にするまではわくわくするんだけど、一口食べて現実に戻って、昔はもっとおいしかったと思うんだけどなって思う。いや、思い出補正でしょう。けど、思い出がある限り、おいしいと思える夢のような中華まんにはもう出会えないんじゃないかって、そんな気がするからちょっと悲しいです。

CO2の削減目標、25%ってやつですが、真水で25%じゃないってのが味噌だとは思うんですけど、けど、まあ無理だと思うよね。例えば私の場合、夏に冷房使わなくて、冬に極力暖房を使わない。夏扇風機、冬毛布に湯たんぽみたいな生活してるからさ、これ以上減らすとなると、本当に呼吸しないとか、しゃべらないとか、そういうドラスティックな手段に訴えるよりないなって思います。まあ現実的にはコンピュータ使わない、風呂入らない、冷や飯を食らう、一日寝てる、エレキギターはやめてアコースティックにする、あたりでしょうか。しかし、この社長、めずらしくまじめっぽくていいなあ。普段は不真面目っぽいのに、たまに真面目だとこんなになる。顔つきだけでこんなに笑わせるのは反則です。

ほほかベーカリー』は、かつて見たことのない妖艶なホホカさんが扉。いいねえ。本編でも猫耳祭といった様相を見せていますが、そうした催しが性に合わないふわさん。そんな彼女が焚き付けられてうまくいくっていうのは定番展開だと思います。しかし、その焚き付ける際に凛さんのいったこと。大人になったらもうできないから、子供のときに子供っぽさを満喫しておけばよかったってこと、実は私もそう思ってる。子供のころに分別くさかったりすると、後悔すること増えますよね。だから、そうした気持ちを共有できる人がいると、なんだかちょっとほっとします。取り残された、遠巻きに子供時代を見過ごしにしたのは自分だけじゃなかったのかなって、そう思えて、だからこういう話、ベタなんですけどね、しみるんですね。

『子供失格』はまたまた危険な話で、しかし幼稚園や小学校の教諭を目指す人って、子供が好きだからっていう人は多いですが、そうした中には潜在的に新人沖田のような要素を秘めている人が少なからずいたりして、そしてなにかのはずみで解放されたりすると制御できなくなったりする、なんて話は聞きますね。自分は危険な子供好きだと自覚していれば、普段からある程度の自制をしている、危険な暴走状態の監視も自ら意識的にやっている。ところが、無害な子供好きだと思っている人は、自らの欲望に無防備だったりするから、とっさの暴走にブレーキをかけられなかったりする。だから、新人沖田のような先生は、逆説的に安心安全なのかも知れません。ほんとかどうか責任持てませんが。だって自覚的で意識的みたいのもいるだろうからさ。

そして、私は生きているだけで精一杯組みたいです。でも、この先生は恋愛は人生の浪費と思ってそうだ。なんとはなしにそうした雰囲気が感じられて、このシニカルさ、ひねくれた感じ。やっぱり松山花子はいいなって思うのでした。

『みねちゃんぷるー』。前回までの状況をうけて、先生が恋愛的状況に前進したっていう、なかなかによい展開でした。結局先生はまごまごしてただけで、中学生に押されて、負けて、白状したって感じではあるのですが、この人のあかんたれなところ。ちょっといいなって思いました。人間、開き直れる時にしっかり開き直ることが大事なんだなとも思ったりしました。

  • 『まんがタウン』第10巻第12号(2009年12月号)

2009年11月4日水曜日

『まんがタイムジャンボ』2009年12月号

『まんがタイムジャンボ』12月号が発売です。一足はやくクリスマスですね。サンタコスチュームの朝倉さん、『ちょいのり。』のいのりもサンタクロースで、そうかあもう年末かあ。なんだかちょっとあわただしく感じてしまいますが、こうした気持ちも毎年の恒例というものでしょう。クリスマス、年賀状、年末年始のもろもろ。きっと、あっという間に突入して、あっという間に突き抜けていることでしょう。ああ、時間のたつのははやいよね。矢のごとしとはいったものです。

『みちるダイナマイト!』。人気あるのかしら。ずいぶん前の方に出て、けど私も結構嫌いじゃなかったりするんですね。母親がライブハウス経営、インディーズレーベルもやってるの? そのために、ゴスパンクでギターボーカルをやることになったみちる。ステージ上での腹をくくった姿と、大学で講師やってる普段の姿とのギャップ。それはちょっといいように思っています。今回は、ファンの女の子に、それが当の本人とも知らず、自分のバンドのCDもらったりして、それを喜ぶ表情はただただよかった。ファンの娘さんの、自分の好きな人に自分の好きなものを知ってもらいたいという気持ち、ちょっとわかるから、こうした展開もなんかいいなと思ってしまいます。

『じょしもん』、重野なおきの新連載です。高校生の女の子、半分むりやりに生物部に入部させられたら、そこはなんだか不思議というか奇妙な生物がたくさんいて、そうした生物たちと、それから次回以降に増えるのかな? 部員たちとのコメディになるのかな。ともあれ、まだはじまったばかり。先が楽しみです。

『レーカン!』。ゲストです。霊感のある女の子、天海響がヒロイン。霊の姿を見、声を聞くのですが、もう慣れっこという。そんなヒロインの辛気臭い雰囲気は結構好みです。それで、おどろおどろしいと思われた、そんな霊の声に優しさで応えるという、そういったラストはちょっとよかったです。私は、前々からいってるように、霊が存在するならその姿を見たいし、声を聞きたいと思っていて、いいやつがいるようなら、知りあいたいなんて思ってるものだから、この漫画の、この設定はちょっと気にいりました。ちょっと羨ましい。

『天使な小悪魔』。ホストの本音がいかします。我々ホストはお客様のご要望を真摯に受け止め日々業務に取り組んでいるだけです!! いや、実際そうなんでしょうね。大変な客商売なんだろうなって思って、なんかその印象とのギャップに笑ってしまいました。私には無理な職業であります。

『あまぞねす?』、ゲストです。Web系のデザイン会社に就職が決まった女性ふたり。小学生の妹がお手伝いしてるみたいなの、しっかりしてそうなのに、意外と泣き虫だったりするところ、悪くないなと思ったけれど、まだ全貌はよくわかりません。最近の漫画は、四コマでも状況や設定を説明する必要があったりするから、どうしてもスロースタートにならざるを得なくって、けどスタートがスローすぎるのもよくなさそうだから、このへんのバランスをとるの本当に大変そうですね。ところでさ、性格だけを見て選んでくれる会社っていいなあ。いや、それだと私落ちるか。自慢じゃないけど、面接で落ちることたびたびよ?

『ちょいのり。』。ヒロインのいのり、この子のやぼったさがたまりませんね。太い眉。今は手入れされた細い眉が流行りだけど、そうした状況にこうした自然っぽい女の子がくると、印象が違って、いいなって思います。さて、先月知りあったあゆむとの帰り、そのお姉さんの真相があきらかになって、おおう、なんだ、微妙だな、怖ろしいな。そりゃ人には見せたくないだろう、そう思わせるところ大でした。

『パドラーズハイ』。みんな、頭身高くてスタイルいいなあ。部活ものの定番ともいいますか、部員の募集をしようという話。プールにラフト浮かべて写真とか、がんばってる、工夫してる、そういうの伝わって、これはとてもいい、面白いです。で、せっかく部員募集したっていうのに、移動手段の問題から人が増やせないとわかって、これ、がんばりをきちんと描きながら、人いっぱいになってわかりにくくなるという事態も避けるという、うまいなと思いました。新キャラいれる時には先生が車買い替えたらいいわけね。いい雰囲気の漫画、大変に気にいっています。

『しすコン!』。仲のいい姉妹、その妹が結婚することになって、愕然とする姉。私も結婚を、となる。そこに幼馴染みの青年加えて、くっつくのくっつかないの、そもそも恋心に気付いてないのというコメディっぽい展開。悪くはないなって思いました。とりあえず姉妹が可愛い。けど幼馴染みのケンちゃんはだらしないな。こやつが踏み切ったら決着つくんだろうな。そんな感じもしています。

『女の子定食』、『ふかふか』のかわぐちけいの新作ゲストです。極端に男が嫌いな店長に問題がある定食屋。ちょっと勢いがつきすぎて、なんともいいがたいのだけれども、落ち着いたらよくなるのかな。基本はベタなんだと思います。だから、うまくはまればよいのかもなって思いました。

『恋する猫は爪を隠さず』。都古先輩に一心不乱の常葉少年。普段は優等生で紳士そのものといった雰囲気なのに、先輩がからむと異常になる。でも、肝心の先輩はその態度をこそは問題にしたけれど、この人自体は嫌いじゃないってことみたいです。これはやっぱり、常葉少年のちょっと間違った一生懸命さをどう思うか、そこに分かれ目があるように思います。

『笑って!外村さん』。見た目の怖さ、人付き合いの苦手さから誤解されている外村さんだけど、この設定をうまくきっちり維持しているところ。外村さんの実際を知っている春野さん、彼女だけが特別というところ。両方がうまく展開されて、悪くないなあって思って読んでいます。ずっと険のある表情で描かれる外村さんが、最後にちょっといい笑顔を見せてくれる、その雰囲気もいいなと思って、この漫画は読むほどに好きになっていく、そんな感じです。

先生はお兄ちゃん。』、ついに月子先生がムンチャイ関係者と明かされて、けれどそれ以外のこともはっきりとして、そうか兄貴、ついに自覚しましたか。これで、次のステップに向かうのかどうなのか。このふたりはうまくいくといいなと、そう思わせるところがあるから、ちょっと楽しみだなって思います。漫画の展開とは別のところで、ちょっと不安になったりもしてるのですが……。お、終わらんよね?

『甘木出版ニンジャ課』、ゲストです。いや、しかし、またすごいのがきましたね。忍者課なる課がある出版社。すごいエキセントリック。主に雑用で各課をサポートするのが業務。てっきり産業スパイが仕事かと思いました。今回は、忍者課の活躍はほんのちょっとだけ。とりあえず怖れられてることはわかった。こういう突飛な設定でどんな風に展開していくのか。突飛でも面白ければいいと思うので、いっそ存分にやっていただけるとよいんじゃないかな、それがきっと楽しいんじゃないかなと思います。

だって、『ジャンボ』には水没したビルに鯨が泳いだりする漫画がありますから。ああいう常軌を逸したネタというのは好きなので、思いっきりやってくださいと思う次第です。

ひかるファンファーレ』。ああ、寒い日は楽器にとっては最悪だ。メカニズムに問題が出そう。少なくとも、結露しやすく、水たまりやすく、木管ならタンポがびしゃびしゃになって、演奏にも支障が出る。クラリネットやオーボエなど木製の楽器は割れの心配もある。最低よね。でもストーブにあてるのはどうだろう。これはこれで傷めそうな気もします。学校や部活ってのは、つくづく楽器にはやさしくない環境だったなって思い出しました。そして、風邪をひいた結衣。この人の本性のなんのっていうけれど、実際素直にしてればいい子じゃんかって思って、だいたいこの漫画に出てくる人はみんないい子ばかりだ。そうしたところがきっといいんです。

ところで、結衣が風邪だからきっと亮子が出てくると思ったけれど、出ませんでした。このふたりの関係結構好きなんです。

『ぼくらは魔法が使えない』。クリスマスはベツレヘムで救い主がお生まれになった日です。そうだそうだ。ってなわけで、クリスマスは歌いにいきたい。クリスマス向けの曲はいくつか仕込んであるんだ。けど、私、クリスチャンでもなんでもないからなあ。

今回はビンボーダンボーがあって、それが後に生きてくるっていう流れ。実によかった。あの貧乏先生、いいキャラクターしてて好きです。全然思わせ振りみたいなところなくってね、とにかく真っ正直って感じがいいです。そして、最後のモノローグ。ああ、そうだね、我々は永遠の今には暮らせない。だからこそ、今という時は掛け替えないんだろうなあ。そう思わせてくれて、しみじみとしました。いい漫画です。

だまされて巫女』、最終回。まさか、本当に監禁されてるとは思わなかった。結構な駆け足、そんな展開だったけど、こうして晴風を好きになる相手が出たりっていうの、当初の予定にあったんでしょうね。あの、巫女好きの彼がそのポジションにこなかったのは、彼の資質に問題があったからか。面白くて好きな漫画でした。終わったのは残念。ラストの春風、かわいかったです。

Boy’sたいむ』。ちょっと思ったんですが、龍太郎が女ひろむのために編んだセーターが置島の手に渡って、これ、さすがに龍太郎が気付かないってことはないだろう。ここから一波乱もりあげられそうな話なのに、ここで終わってしまうとは。すごく惜しい、そう思わせる回でした。しかし、めずらしく龍太郎が好青年でした。いつもこうならいいのになって思ったりしましたよ。

  • 『まんがタイムジャンボ』第15巻第12号(2009年12月号)

引用

  • 芳原のぞみ「天使な小悪魔」,『まんがタイムジャンボ』第15巻第12号(2009年12月号),35頁。
  • ゴンドウケンジ「ぼくらは魔法が使えない」,同前,180頁。

2009年11月3日火曜日

まん研

 まん研』、好きだったよ! タイトルにしめされるように漫研を舞台にした漫画であるのですが、部活ものというにはなんだかちょっと毛色が違いまして、たしかに部活動はしているっぽいのですが、けどそれ部活じゃないよね。困った先輩ふたりが、後輩にコスプレさせたり、全身タイツ着せるなどして、自身の妄想を具現化しようという、そういうノリが独特でした。そして私はそうしたノリが好きだったのですね。そのノリは、うおなてれぴんという作者独特のものといってもいいのかも知れません。同じ作者に『しすこれ』という漫画があるのですが、この漫画の持つ雰囲気、それは『まん研』に通ずるものがありまして、だから、『しすこれ』が好きだった私は、『まん研』が『きららMAX』ではじまった時には、やった、と思ったものでした。ええ、好きな作者の連載です。そりゃ好きになるのも当然でしょうよ。

登場人物、メインは三人。しいな、レイコ、このふたりが先輩。咲、この子が後輩。当初はこの少人数で進めていたのですが、じきに第1漫研の部長くーちゃんが加わり、その後輩ふたりや顧問も加わって、世界が広がった? いや、あんまりそんな感じがしない、実に相変わらずな感じではあったのですが、けど、基本テンションが異常な第2漫研のノリがあって、そこに穏やか、あるいは普通のテンションである第1漫研の人たち、あるいは第2漫研顧問の友里先生としいなの対話シーンなんてのも挿入されるようになって、なんか味わいが深くなったのでした。コスプレだ、萌えだ、暴走ぎみのテンションで展開していった末に、なんか穏やかな小シーンでしめられる。それが、しみまして、好きでした。

この漫画は、当初は先輩ふたりで咲をいじろう、そうしたものだったと思うのですが、だんだんに登場人物が追加され、咲たちの所属する第2漫研とはまたちょっと印象の違う第1漫研など、ちょっとしたコミュニケーションものになっていって、それぞれコミュニティの雰囲気の違い、温度差というものも含めて、面白かったのですね。第2漫研にいい印象を持っていないくーちゃん、彼女の態度は、第2漫研の特殊性を強調していましたし、また第2漫研では薄い咲、彼女と第1漫研の後輩がクラスで話しているその時の緩さ、普通さは、なんだかすごくリラックスできて、けど咲が随分毒されてるってことも見えて、このだんだんに異端? 異質なるものに染められていくというところもよかったのかも知れません。第2漫研の面々、彼女らの言動がおかしいことは誰しもわかっていることだろうけれど、それが作中においても普通じゃないってきちんと表現されていた。そのおかげで、悪ノリしているという感覚がちゃんと伝わって、楽しいのはこの悪ノリを共有できるからなんだろうなって、そんな風に思うのです。

この漫画が終わってしまって、こうした悪ノリの共有ができる場がなくなってしまいました。いや、悪ノリを売りにしてる漫画は他にもあるけれど、うおなてれぴん的な悪ノリは、やっぱりうおなてれぴんしかっ、ないと思うんですね。だから、とりわけこの人のノリが気にいっていた私には、この漫画が終わったことが残念と思われてならなくて、またどこかで新しく連載とかされないものかな。そんなことを思ってしまいます。

この漫画の最終回については、以前にも書いたから、これ以上重ねようとは思わないけれど、日常、それも第1第2漫研のみなで一緒に遊びにでかけようという、これまであったようでなかった、そんなちょっと特別なシーンを予感させるものとなっていて、その期待感は最終回を彩る実にはなやかなものでありました。そしてちょっぴりしめやかで、ああいい最終回だなって。私の理想の最終回とは、きっぱり決然とした最終回、終わりったら終わりというピリオド感あふれるものであるのですが、けれどこうした日常に融けていくようなラストも悪くないなって思いましたよ。それまで、ぎりぎりまでいつもどおりで、ちょっと特別と思わせる、そんな雰囲気にて終わる。残った余韻に静かにひたれる、そんなところがよかったです。

  • うおなてれぴん『まん研』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • うおなてれぴん『まん研』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • うおなてれぴん『まん研』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。

2009年11月2日月曜日

『まんがホーム』2009年12月号

『まんがホーム』12月号は本日発売です。表紙は『らいかデイズ』、らいか入浴中であります。今月のテーマは温泉なんでしょうね。『メルヘン父さん』のお父さん、『恋愛ラボ』主役のふたりは湯上り浴衣姿。『夫婦な生活』みえこさんは湯あたり浴衣姿であります。これから寒くなります、というか今が既に寒いんですけど、ものすごく寒いんですけど、こんな季節にはやっぱりお風呂がいいですね。でも、基本冷え性の私は、風呂に入ってもマキリコのように火照るというようなことがなくって、これが温泉だったらどうなのかなあ。寒くなると、指が冷たくなって、ギター弾くのに支障が出るので、あったかくしておきたいんですが、そうか、温泉地でギター合宿とかしたらどうだろう。いや、思っただけ。実現はしません。

『おしのびっつ!』。忍者の家系に育って、すっかりくノ一であることが自然になってしまっているくない。そんな彼女が脱忍者を図るのだけどけれど、それがなかなか難しいという基本の線を維持しながら、キャラクターの個性もうまく見せて面白い漫画であると思います。双子の兄しのぶがいいのかも。彼は身も心もすっかり忍者であるのだけれど、くないよりも要領よく振る舞うものだから、むしろ秘密の保持が危ういのはくないだという、そうしたところは王道ながらもとてもいいと思います。しかし、今回はカンペのネタが秀逸で、こういうのが次々くるとなると、きっといいだろうなあ。そんな期待もさせてくれる漫画です。

恋愛ラボ』、扉のマキは雰囲気作って綺麗だけれども、本編はいれば、なんだか非常におかしな感じになっていて、そうか、前回の話が後をひいてるのか。リコとも自然に向き合えなくなってしまうほどにやられてしまったマキ。そんなマキに戸惑うリコ。ふたりともにダメージを受けていて、そんな彼女らを導こうというのがサヨっていうのは実にらしくて、この人、いいポジションにいるなと、改めて思ったエピソードでした。サヨってちょっと引いた位置にいるけど、決して冷たく距離置いてるわけじゃないんですね。

さて、本編はなにやら重かったりするからか、今月は2本立て。なんと、スズの兄貴が、兄貴が。この兄貴、幼いスズを膝に乗せてたりすると、ちょっと犯罪ちっくだな。いや、まだ若いころだから、そこまでじゃない。けど、今の兄貴じゃアウトだろ。で、スズ姉。ふたりの妹大好きといった様子、それはすごく見ていて楽しくて、スズの取り合いで喧嘩してしまうほどだけれど、でもこの兄貴はこの妹のことも好きで可愛くてしかたないんだよなあ。普段ろくでなしっぽく描かれる兄貴ですが、こうして見ると、いい兄貴だなって、そんなこと思ってしまいます。

しかし、エノの兄貴は徹頭徹尾ろくでなしだな。

『東京!』。はじめて見た時よりもずっと面白くなってます。キャラクターに馴染んだからではないと思います。だって、秋葉原正親の印象が強すぎて、他があまり記憶に残らないです。土地の雰囲気に絡めたネタを出しつつも、そうでないネタも展開して、どちらも面白いと思う。バランスがすごくよくなってると思えて、それでキャラクターもいきいきと表現されて、とてもいいと思います。

『お江戸とてシャン』が、思いっきりの佳境っぽさを見せて、纏持ち、命よりも大事な名誉を手放しても女のもとに走ろうという虎吉、やっぱりこいつかっこいいなあ。男惚れったあ、こういうことだな。おヒナを助けに向かう虎吉の背には、艶やかささえ漂って、この漫画、やっぱり面白いと思う。すごくいい漫画だって思います。

『OHでりしゃす!!』、なぬー、これまだゲストなのか。今回は執事喫茶にいくという話。田尾ちゃんの乙女なところが全開になった回なのですが、うわ、なんだ、これ、めちゃくちゃ可愛いな。眼鏡だからじゃないぞ。序盤、割り切ってるように見せて、実はそうじゃないっていうところ。恥じるところ、気をつかうところ、雰囲気を楽しもうというその姿勢、すべてが素晴しい。実は私はそういうの苦手なんですけど、こういうごっこができる人って素敵だと思います。

サンドイッチはまあ普通、デザートは美味しいというところ、女性向けのツボを押さえてるって話だそうですが、男性向けのツボは食べ物にはないのか、以前一度だけいったメイド喫茶は酷かったよ! しかも壁に向いた席に座ったものだから、ただ高くて不味い安普請喫茶でしかなかったっていうね! でも、ああした雰囲気を楽しもうという気持ちはよくわかりました。私が、もっとごっこできる、趣向を楽しめるたちだったら、きっと違ったんだろうなって思いました。

ところで、古い趣きのある建物で、きちんとサービスできる執事っぽいウェイター置いて、ちゃんとした食事、飲み物を提供できたら、ちょっと高くてもいく人はあると思う。流行り廃りを超えて生き残るのは、意外に執事喫茶なのかも知れませんね。執事なら、年配の男性でも働けるでしょう? 色物だけど、色物というには惜しい、そんなところもあるんじゃないかなあ。あるのならいってみたいものだと思います。

『みそらスマイル!』、ゲスト、再登場です。離婚した夫婦が再婚。元の鞘へ収まったわけですが、離婚後オーストラリアで暮らしていたため、日本語が6歳時点でとまってしまった姉という設定が面白いです。言葉が子供っぽいので、なんだか残念な娘みたいに見えてしまうけれど、そうじゃないってところ。意思疎通はしっかりできるし、ちゃんとお姉さんでもあるんだけど、まだそんなに大きくない弟と、対等っぽくつきあえて、いいなって。いいお姉ちゃんだなって思えて、すごくいいです。

ところでカレーですが、日本のカレーは世界にはばたく優秀な日本料理、それもがつがつとスプーンで食べられる! どういうことか知りたい人は、この素晴しい記事を読んでください!

  1. 「日本のカレーライス」を熱愛する米国人記者が語る『ゴーゴーカレーNY店』 | WIRED VISION
  2. 「日本のカレーライス」を熱愛する米国人記者が語る『ゴーゴーカレーNY店』(2) | WIRED VISION

『ときめけ!女塾』、前回も結構面白かったけど、今回もよかったです。今回は、心配性の夫に手を焼く美女さんがメインになって、なにやっても優秀、毅然として、立派で、けれどそんな美女さんが夫にかけた一言、うわ、泣くほどなんだ! けど、この展開は面白く、それでまたなにか心に訴える、ほろりとさせるような、そんなところ、とてもよかったです。この漫画は、途中のうんぬんも面白いけど、最初の振りと、それを回収する大落ちのコンビネーション、そこにこそ味があるように思います。実際、私はおだてられるのは苦手だけど、でも悪い気はしないんだろうなって。そう思った。そして、美女さんの夫、おだてとか作為なしに、素直に妻を褒められるっていうところ、そうしたところはとても素晴しいと思う。いい夫だなあって、ちょっと思ってしまいました。

あ、そうだ。四足歩行する猿は、性的に成熟したことを尻の腫れでアピールするのですが、二足歩行を獲得した人間は尻に目がいきにくので、かわりに胸の盛り上がりでアピールするようになったとかいう話ですね。だから、あの講師の言い分は非常に正しい。それは本能、古い脳にインプットされた行動だから、男が女性の胸に目をやってしまうのは仕方ないんです。と、なぜ私はこんなこと力説してるんだろう。

そして、物より思い出を大事にしたいから、ガラクタを集めてしまう。これは、男によく見られるけれど、女性も同じだってことが巻末に載っている漫画からもわかります。

『物持ちがいいにも程がある』、佐波まおの漫画、最終回を迎えて、これまでを振り返ろうというのですが、いい話でした。この漫画は、ものもち自慢ではあったけど、ただ古いものを持っている、レアもの持ってるぞってだけではなかった。そこがよかったんです。最終回にいう、

人もものも永遠ではないのです

ものには「ものがたり」があります

ひとつにちゃんとひとつずつ
思い出すたびホッとしたり
きゅんとしたり
いつか手放す時がきたとしても
「ものがたり」だけは大切に憶えていたいと思います☆

じんとしました。そのものを大切に思うのは、そのものを通じて思い出、かつて出会ったあの人やできごとと対話できるから、なんですね。ええ、この連載とても好きでした。私と同じような人がいる。他人からしたら、どうしようもない、くだらないものにしか見えないとしても、その所有者にとっては掛け替えのない大切な思い出の品である。そうした様子を、楽しいなと、面白いなと、自分のことのように読んできたんですね。人もものも永遠ではないのです。それがわかっているからこそ、ものに心を置いてしまうのかも知れませんね。

だから、私もずっと憶えていたいと思います。佐波まおというお名前と一緒に、この漫画のあったこと、大切に心の奥にしまっておきたいと思います。

『3×ROOM』、なんか不穏な終わり方をした第1話、その雰囲気にあんまり好きでないと思ったものでしたが、第2話はそうした雰囲気見せず、素直で無邪気とも思えるヒロインの様子や、個性の違う女性三人、それぞれの関わり方など、これだけ見てると悪くないなって思います。けど、なんかやっぱりいやな予感がするんだ。あの野菜のくだりとかね。だから微妙に距離を置きがちになって、あの不穏なほのめかし、どう決着させるんでしょうね。吊り下げられた状況が落ち着かないです。

『ミライカナイ』、連載になりました。未来からきたお嬢さんとの同居もの。これは、あれなのか? ある日突然異世界から美少女が現れボクの家に強引に居候しお風呂や着替えを偶然見ちゃったりの都合の良い生活ってやつなのか!? この漫画、今のところ、お姉さんの未来からきたという設定がいきてないように思えるのだけど、特に異文化ってわけでもなく、普通の綺麗で天真爛漫なお嬢さんとの同居ものって感じ。でも、まあこれはこれでいいんだろうなとも思います。

『イエス・マスター』、ちょっと大きな変化がおこる気配を感じさせて、それはいつぞやの妻の話、それが関わってくるのでしょう。旦那様の思いにひとつの区切りがつくのか、どうなんだろう、なんかすごく気になるんですね。不穏な展開なのか、それとも、ふたたびここに帰ってくるのか。この漫画こそは、時の止まったような、永遠の現在を志向する、そんな雰囲気をたたえていて、それが悪くないなと思っていたのだけれど、その安定が揺らぐ。読者としても、ちょっとした事件であると思います。けれど、あまりに永遠の現在を求める姿勢も不健全で、だからこの動きのあとにどういう結果が描かれるのか、それはちょっと興味深いと思います。

『ちまさんちの小箱』。これ、よくよく考えたら、タイトルの小箱、作者は雪宮。ということは、タイトルロールはちまさんというよりもむしろ雪宮なのか! さて、とり子からプレゼントをもらったゆーちゃん。ちょっとの誤解のあとに、ちゃんと和解があって、いいなあ、ふたりの関係。で、知らないうちに雪宮が傷ついてる。そういう雪宮がすごくいい。小箱の作者がゆーちゃんに知れて、知らぬはとり子ばかりなりという状況になったわけですが、とり子と雪宮の関係、今後どうなっていくんでしょう。ちょっと敵対してたようなこと、すっかり忘れてましたけど、今やなんだかいい感じであるんだから、ばらしちゃってもいいだろうになんて思うんですが、そうなるとどうなるんだろう。

今は、このままでいいのかも知れません。ただ、いつかは知られる日がくるんだろうな。それはこの漫画が終わる時なんじゃないかって思いますけど、純情雪宮の本領が発揮されるのかな、なんて思うとその日もなかなかに面白そうだと思ってしまいます。だから楽しみは、ずっと後にとっておきましょう。

  • 『まんがホーム』第23巻第12号(2009年12月号)

引用

  • 佐波まお「物持ちがいいにも程がある」,『まんがホーム』第23巻第12号(2009年12月号),179頁。
  • 安堂友子「天子様が来る!,同前,53頁。

2009年11月1日日曜日

とらぶるクリック!!

 過ぎ去りし10月は好きな漫画とお別れする、そんな月でありました。最終巻ラッシュとでもいいましょうか、好きだった漫画の完結巻が一度にリリースされて、『アットホーム・ロマンス』が終わりました、『まん研』が終わりました、そして『とらぶるクリック!!』が終わりました。人を捨てるなら九月といいますが、漫画と別れるなら十月、なのでしょうか。けれど、終わることは寂しいことだけれど、こうして終わりにまでたどりついたこと、その終わりの円満であり幸いであったこと、それは大いに喜ぶべきものであると思います。ああ、だから私はここに喜びを高らかに告げたく思います。

『とらぶるクリック!!』オワタ\(^o^)/

 私は当初『とらぶるクリック!!』を見誤っていたのでした。最初の数ヶ月、あるいは一年以上も、この漫画を読もうという時には、心を石のようにして、頑なに対していたものだから、面白さに触れつつも、それを認めることができずにいて、その自分の態度については今思い出しても釈然としないものが残っている、後悔の気持ちを拭えないくらいなのです。そして、これはひとつの教訓になったのでした。私は、新しい漫画、新連載にせよゲストにせよ、そうしたものに触れる際には、なるたけよいように見ようと、敵視するような、軽視するような、そんなことはすまいと決めているのですが、それは『とらぶるクリック!!』の経験があってのことなのではないかって、振り返って思うことがあります。

『とらぶるクリック!!』が終わって、後書き読むと、その時々にテーマのようなものが設定されていたとのことですが、けれどもしその全体について私ならどう思うだろう、自問してみたら、スタートという言葉にいきあたりました。『とらぶるクリック!!』は、スタートするということを描いてきた漫画なんじゃないかって、そんな気がするんですね。

 スタートする。出発する、開始する。『とらぶるクリック!!』の主役たち、一年生4人にとって、PC部はたくさんのはじめてを経験できた、そんな場なんじゃなかったろうかって思うのです。そうした面が一番に押し出されていたのは他ならぬ杏珠で、PC部に入って、はじめてのPC、はじめてのインターネット、彼女の世界は一気に変わりました。さわるだけで機械という機械を破壊してしまう杏珠にとって、それまで望みながらも得られなかったもの、それを手にした時の思いはいかほどだったでしょう。新しい世界に触れ、わくわくするできごとに出会って、そんな杏珠の気持ちのさざめきは読んでいる私にも伝わってくるように思われて、ああ、そうだ、はじめて知ること、経験することっていうのは、もう心が浮き立つようで、楽しい! 面白い! 落ち着いてなんていられないものだよね。そんな気持ちを思い出させてくれた、それが杏珠であったと思います。

 柚もなつメロもPC部に入ったことで、たくさんのはじめてを経験することとなるのですが、人見知りの柚は友達づきあいにおいて、なんだか意固地だったなつメロも、杏珠のペースに巻き込まれることでどんどんその人当たりを違えていって、彼女らにしてもだんだんに世界を広げていったんだろうなって思った。杏珠、茉莉のふたりが持っている空気。その親しみは、柚を、そしてなつメロを加えて広がっていって、いつも部室で遊んでいる、けれどそうした遊びから広がっていくものもあった。また、部活の枠からはずれての活動においても開かれていくものはたくさんあって、そのたびにまごまごしながら、けれどなんとか立ち向かっていく柚、なつメロの姿がまぶしかった。結局柚は、完全に人見知りを克服することはなかったけれど、でもそれでもいいんだと思う。誰だっていつまでたっても苦手ってものはありますもの。けれど、それでも少しずつでも踏み出せる、そんな可能性を持っている。可能性を眠らせながら、折りに少しずつ目覚めていく。それは、柚にも、なつメロにも、そしてもちろん杏珠、茉莉にもいえることだったと思います。皆が、各人各様の可能性を開いていって、その時気がついたものに気持ちを新たにしている。知るということは、いつだってなんてワンダー。そうしたエピソードが連なって、『とらぶるクリック!!』という漫画の雰囲気は編まれていったのだと思っています。

『とらぶるクリック!!』最終巻にはその後が少し描かれて、新たな部員を迎えるエピソード。最初の、ちょっと長かった杏珠たちの一年間、そこで彼女らが出会い、経験してきたようなはじめての体験、可能性が少しずつ開かれていく、そんなできごとを、新入の彼女らもまた辿っていくのでしょう。それはまた一年目とは違う、新しい可能性を見せてくれるに違いない。そう思わせてくれるもので、また杏珠ら新上級生たちも新しい経験をしていくでしょう。ああ、彼女らの新しい一年がはじまる。その様子を私は見ることはできないけど、でも彼女らならきっと大丈夫さ。そんな予感がして、だからベタながらも最後にこういいたい。

最終巻にして、『とらぶるクリック!!』始まったな。ネガティブにではなくポジティブに、文字通り前向きにそういいたいと思います。

引用

  • 中島みゆき『船を出すなら九月