真田ぽーりんの『ダマされて巫女』が単行本になって、やあ、これは嬉しいことですよ。だいたいにして、私は真田ぽーりんが好きなのです。ヒロインが元気で真っ直ぐなところが気持ちいい。色気がないわけじゃないんだけど、色気よりも元気。間違いなく女の子なんだけれど、不必要に女の子のらしさを担わされているという感じがなくて、さっぱりとして、いい娘さんだなあ、そんな感じが私にはすごくマッチするみたいなんです。そして、その特性は『ダマされて巫女』のヒロイン、安倍晴風においても健在で、元気で真っ直ぐ、いい娘さんだなあ。だもんで、やっぱり好きなのです。ああ、晴風がじゃなくて、いや晴風もなんだけど、漫画が好きなんですよ。
晴風は、歴史の古さを売りとしている神社、平明神社の娘で、巫女をやっている。けれど巫女萌えにならないのは、やっぱり真田ぽーりんの持ち味 — 、元気なヒロイン、気心の知れたお友達、そしてちょっと変な人達のためなんだろうなと思います。変な人、それは他ならぬ晴風の父と祖父。神社の歴史を笠に着ず、新しいものでも積極的に受け入れる。そういったらなんだか美徳みたいですが、そのやることがどうにもこうにもミーハーというか、俗っぽいというか、で、晴風はそうした祖父、父の行状に怒っている。なんのかんのいって、神社のことを思っているいい娘さんじゃないか。なんていって、結局のところそんな晴風が可愛い、そういっていいのかも知れません。
けれど、私は晴風の兄、清明が好きです。ああ、あんた女装美少年好きだもんね、って、いや、そういうわけじゃないんです。清さんは、女装美青年です。ときめくね! じゃなくて、女装して巫女をやっている。その姿に、晴風の友人松島が惚れてしまった。いいぞ、もっとやれ! もりあがるわけです。しかし、本来の姿、男性としての清ちゃん、眼鏡の似合う好青年、その彼に晴風の友人由美ちゃんが参っちゃったわけだ。この微妙に意味不明な恋愛状況。こういうの私は大好きで、しかしそれ以上にいいのが、基本クールな清ちゃん(男の方)が妹晴風のこととなるとちょっとクールじゃなくなってしまう。もう、この家の男どもは、って話になるんだけど、基本困り者のおじいちゃん、お父さんにしても、皆晴風の仕合せを願っている。清さんにしたってそうですよ。そうした気持ちが折に見えるから、なんのかんのいって仲のよいことがわかるから、見ていてほっとする。
ええ、元気で真っ直ぐで気持ちのいい漫画だっていう所以でありますよ。
真田ぽーりんの漫画は、『ウチら陽気なシンデレラ』や『ドボガン天国』なんかがそうなのですが、結構ダイナミックに、ドラマティックに、紆余曲折を演出して、大ゴマでの見せ場で決着させるという、そういうスタイルのものもあるのですが、『ダマされて巫女』は割と淡々と進めていく、そんな印象があって、けれどその淡々の中に、おじいちゃん、お父さんの奇行、兄の女装、晴風の感情のアップダウンが差し挟まれる。じわじわと効いてきますね。そのじわじわとくる面白さ、それもまたよいのであります。
といったようなわけで、バレンタイン兄貴、バーベキュー兄貴、クリスマス晴風あたりは最高でした。由美ちゃんのためにサービスしてみせた清ちゃんには萌えでした。喫茶店の娘、可愛いです。そして、なんのかんのいって晴風も変わり者だと思います。
- 真田ぽーりん『ダマされて巫女』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2009年。
- 以下続刊
0 件のコメント:
コメントを投稿