2009年2月20日金曜日

Hotter Than That

 CDはずいぶん安くなった。などというのは、昨日とりあげましたハルモニア・ムンディの50枚組を受けての感想でもありますが、それ以前に、先月くらいからちょっとブームになっていた、メンブランの10枚組ボックス、これを受けてのものでもあるのですね。ジャンゴ・ラインハルトアストル・ピアソラを買い、そのコストパフォーマンスにはしびれたものでした。私の購入した価格は1680円。輸入盤でも、この価格では1枚くらいしか買えなかった、ちょっと前まではそうだったと思うのですが、今やこの価格で10枚組が実現するというのですから、おそろしいですね。もちろん、これが特殊なケースであることは理解しています。けれど、一度こうした価格での買い物を経験してしまうと、安価になれてしまいそうで、それもちょっと困ったことだと思います。

さて、ジャンゴ、ピアソラに続いて、ルイ・アームストロングも買ったといっておりました。もちろん聴いています。さすがにちょっと昔の人、音質もそれなりといえばそれなりであったのですが、けれど昔の盤だとわかっているから、この音質も特に問題だとは思わない。むしろ、味わいのうちだ、そんな風に思うきらいもあるくらいです。

収録の曲は、有名な曲、聴いたことのあるというようなものもあれば、まったく知らないものもある。というか、私はジャズはそれほど聴いていないから、ほとんどが知らない曲です。しかし、それでも問題なく楽しんで聴いて、それはきっと、ルイ・アームストロングの音楽の、魅力のためであるのでしょう。

ルイ・アームストロングはいわずと知れたトランペット奏者でありますが、この10枚組ではむしろ歌手としての印象が強く、親しみのある声、低音のあたたかいと感じさせる声質に、語りかけてくるような歌い口がひきつけます。かつて全米どころか世界を魅了した歌声。しかしそれは熱狂させるようなものではなく、静かに穏やかに響いて、やさしく心をなぐさめてくれるようであります。それは軽快な曲であっても、スローな曲であっても同様と感じられて、そんなことを思うのは今の私が刺激にとりまかれてしまっているため、なのかも知れせん。ルイ・アームストロングの音楽にことさらの刺激を感じなくなってしまっているのかも。だから、かつて彼に魅せられた人は、穏やかなんてものではなく、まさしく熱狂したのかも知れませんね。伝わってくるエネルギーがあります。それは湧き上がるような力強さを持っていて、私はそれを頼もしさ、安定と感じますが、かつては人々を熱狂させた、そんなエネルギーであったかも知れないな、そのように思わせる強さは確かにあるのです。

ルイ・アームストロングのジャズは、ニューオーリンズスタイルという理解でいいのでしょうか、古典的な、結構端正と感じさせる、そんな佇まいでありますが、けれどうきうきと楽しくさせる、ほっと穏やかな気持ちにさせてくれる、多彩な表現、表情を持っています。ぱっと聴けば素朴と思える古き良きジャズ、けれど骨董品ではない、そのように感じるのは、その音楽が生きて、聴くものの心に触れてくるからでしょう。改めて聴いて、よいなあ、そう感じさせる魅力があったのでした。

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