2009年1月21日水曜日

Djangology

 昨年末からサックス吹きに復帰して、よしここは見聞を広めよう、これまであまり聴いてこなかったジャズサックスも聴くことにしよう、仕事帰りにCD店に寄ったのでした。しかし、ジャズのコーナーはどこだろう。店内をさまよいながらCD物色していたらですよ、なんかすごいの見付けました。それは10CDのボックス、価格は1680円。安っ! 見ればジャンゴ・ラインハルトやらアストル・ピアソラやらルイ・アームストロングやら、ビッグネームが並んでいて、うわ、ちょっと欲しいぞ。けど今日はサックスのCD買いにきたんであって、ギターもバンドネオンもトランペットもお呼びでない。とかいいながら、安さには抗えませんでした。買っちゃいました、ジャンゴ・ラインハルト、それからピアソラ。いやあラッキーだったなあ。久しぶりの大量購入に、なんだかわくわくしてくるのでした。

というのは昨日の話。帰宅後、次々iTunesに読み込んでいって、この20枚の他にもまだCD買ってたから、そいつから聴きはじめて、そしてついにジャンゴ・ラインハルト。今日で二日目なのに、まだ半分も聴けてないっていうんだからすごい。トータルで200曲、全部聴くには9.6時間かかるんだそうで、本当にものすごい。しかし、これだけの音源が1680円だってんだからありがたいですね。実は、前からこのセットの存在は聞いて知ってたんですが、どこで探したものかわからずにいたのですね。それが偶然にいきあたって、ラッキーでした。

ジャンゴ・ラインハルトというのは、ジャズギターを弾く人です。かなり昔の人。調べてみると、1910年生まれ、1953年に没したとのことです。まだ若いのになあ。ロマの人で、ロマの音楽とスウィング・ジャズを融合させたとありますね。けれど、この人を有名にしているのは、こうした話よりもむしろ事故によって動かなくなった左手指の逸話でしょう。火事で左手の薬指と小指が動かなくなってしまったっていうのですね。けれど、それでもこの人はギターを諦めることをせず、ついにはその不自由な手で、独自の奏法を編み出すまでにいたったのだといいます。

独自の奏法は、ハンデを克服するための必要から生れたのだと思うのですが、結果的にそうした工夫の数々が、彼の開いたジャズのジャンル、マヌーシュ・ジャズの性格を決定付けることになったのだそうです。特にそれはボイシング(和音の音の展開のしかた)に特徴的で、他のジャンルでは見られないコードフォームがあるんだそうですね。それは、例えば『ジャンゴ・ラインハルト奏法』なんて教本が出て、解説されているくらいです。

しかし、ジャンゴ・ラインハルトのすごいところは、そんなハンデがあるなんてまったく感じさせないところでしょう。軽快な伴奏、洒脱なソロ、どちらも素晴らしい。私はギター弾くようになってから、この人のことを知って、ちょこちょこ聴くようになったのだけれども、しかし華麗です。さすがにこのジャンルに手を出そうとは思わなかったけれど、一時期はこのジャンルに特徴的なギター、セルマー・マカフェリの廉価なレプリカを欲しいと思ったりもして(店で見かけたんだ)、もしそれ買ってたら、このジャンルもちょっとはやってたかも知れませんね。けど、多分ただのコレクションにしちゃったろうなあ。人間、あれもこれもってわけにはいきません。

さて、機会があればジャンゴ・ラインハルト、しっかり聴きたいものだというその期待がついにかなって、ジャンゴ漬けになっているわけですが、こうしてまとめて聴いてみれば実に多彩で、基本はギターとバイオリン、そんなところだと思うのですが、フルートやトランペット、サックスなど管楽器が加わった曲があり、歌もあり、そして曲調もさまざまです。アップテンポの、いかにもマヌーシュ・スウィングと思えるようなものがある、そうかと思えば、しっとりとメランコリ感じるようなのもある、多彩です。それらは、アメリカのスウィングとはちょっと違ったニュアンスを感じさせて、それは彼のロマの出自がためであるのか、あるいは広くヨーロッパという土地の持つ感性のためであるのか、そのへんはよくわかりませんが、ジャズのひとつのありかたとして、非常に興味深い。いかにも夜の音楽といったムーディさが素敵です。

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