2009年1月25日日曜日

クロてん

 『クロてん』の作者豊田アキヒロは、『まんがホーム』にて『てんたま。』を連載している作家です。私は、この人が他で描いているというのに全然気付かずにいて、もし教えてもらわなければ、見過ごしにしてしまったかも知れません。あぶないところでした。感謝しています。といったわけで、買ってきました、『クロてん』。内容はまったく知らないまま、背表紙の作者の名前を頼りに探していたところ、なんと帯で作者名が隠されていて、ふー、またまたあぶなかった。漫画を、タイトルではなく作者で探すことも多い私にとっては、非常に見逃がしやすい仕様でありました。購入は公式の発売日である23日。この点、大阪はまだ恵まれています。雑誌も単行本もたいてい発売日には入手できる。単なる地理的優位かも知れませんけどね。でも入手可能性の高さ — 、限定ものでも足で探せば新品入手ができるという、微妙に都会で微妙に地方都市という、この曖昧性が素晴らしい土地であります。

さて、『クロてん』の作者でありますが、私は『てんたま。』読んでいた当初のこと、この人を女性だと思っていまして、いや、作者名そして自画像見たら、男性なんだろうなってわかるんですが、私は漫画読む時はそれほど作者を意識しないものですから、その作風、ふわふわとした絵、あまくやわらかな雰囲気から勘違いをしたってわけです。ですが、回を重ねるごとに、微妙に際どいネタも増えてきて、多分今の時点から読みはじめたら、女性と思うことはないかも知れない。そんな風に思うわけですが、いやしかし読み始めが『クロてん』だったら、きっと女性だなんて思いやしなかったろうな。それくらい、『クロてん』は『てんたま。』とは雰囲気を異にしています。

なにが違うのか。ふわふわとした可愛らしい絵は同じですが、そこからが違います。ブラックコメディとでもいったらいいんでしょうか。セクハラ院長とカニバル女医がメインの位置にある、そんな漫画であります。だから、人によってはこれを受け入れられないと思うかも知れません。実際私も、病変部位を食っちゃってるネタは微妙かも、って、健康な組織だったら平気といわんばかりですが、うん、それなら平気。まあ、食というのは人間の根源的な部分、育ってきた環境が違うから好き嫌いもイナメナイ、ですよね。私にはその女医の好きというタイプもどうも駄目なようでありまして……、いや、ごめんなさい、ちょっと気持ちわるくなってきました……。そもそも全般に駄目なようです……。

とまあ、セクハラとカニバル方面への傾きを持った漫画であります。形式は四コマ、ナンセンスなギャグコメディであるのかな、けれど絵柄がさっきもいったようにふわふわとしたものだから、特段にエロい、また特段にグロいということはなく、安心して読めるという印象でした。実際、私がさっき苦手かもといったネタにしても、漫画のなかで出てくれば、面白く、思わず笑ってしまうことも頻繁で、不快に感じるようなことは基本的にありません。不快に感じることがあるとしても、それは生理的な好き嫌いというものであって、作者の姿勢やネタのどうこうに腹がたつというものではないのです。気持ちわるさを感じながら面白い。うえー、と思いながら笑う。この微妙な間隙を突くところ、うまいなと思うこともあり、そして気付けばそうした部分がないともの足りなくなってしまっている。癖になるのだと思います。

こうした不謹慎系の漫画というのは、倫理方面の意識の高い人のなかには、どうしても受け入れられない、そう思う人もあるかと思います。けれど、こうした不謹慎を扱う人というのは、それが不謹慎とわかってやっている、つまり倫理的な枠組みが常に意識されているということなのだと思うのです。不謹慎がナンセンス性によって無毒化、とまではいわなくとも、弱められるよう工夫されています。ゆえに、不謹慎を不謹慎として笑うことができるのでしょう。だから私はこの漫画は平気、楽しんで読むことができるのです。

  • 豊田アキヒロ『クロてん』(MFコミックス フラッパーシリーズ) 東京:メディアファクトリー,2009年。
  • 以下続刊?

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