2009年1月3日土曜日

アメリ

 昨日、少し触れました『バグダッド・カフェ』、停滞していたところにひとりの女が現われて、状況をどんどん塗り替えてしまうという、そんな映画だといっていました。なんというのだろう、見ると元気になるというか、再び潤いをとりもどせる、そんな感じの映画であったのですね。この映画の制作されたのは1987年、西ドイツ作品だそうですが、こうした状況を打破する女性といえばもうひとつ思い出されるものがあって、それはフランス映画、制作年は2001年、『アメリ』であります。この映画、『バグダッド・カフェ』とはタッチも違えば、その受ける印象も違うんだけど、思い出してしまったものはしかたがない。というか、これまで一度もとりあげていなかったというのが意外なくらいで、DVDも買っちゃってるくらい好きな映画であるんですけどね。

しかも映画館にいって見たはずなんです。職場の誰かと連れ立っていったんじゃなかったかな。で、DVDまで買う、しかも缶入りのものを買うという、まあこれは同じ買うならレアなのを選んだ方がいいんじゃないの? という、マニアにはよくある思考からなんですが、まあ、嫌いな映画ならそこまではしませんわね。

この映画は、ちょっと変な女の子、というにはとうがたちすぎているようにも思いますが、アメリのちょっとしたいたずらや楽しみ、興味が、誰かの人生に影響して、自信や優しさを取り戻させたり、生きる希望を沸き起こさせたり、そうした様子をコミカルに、テンポよく描いて見せて、実に面白かったのでした。いたずらというのも、変に手が込んでいたり、変に大掛かりだったり、けれど見る人を嫌な気分にさせるようなものではないんですね、一部は除きますが。こんなことが身近にあったら、私の色褪せた暮しも、素敵なものに変わるかも知れない! ささやかに生活、人生を応援するようないたずらとその顛末が、ユーモラスに、キュートに描かれるのが本当に気持ちを高揚させて、そして時に緩ませてくれる。ほっと、暖かな気持ちになれる、それがヒットの理由だったのだろうと思います。

しかし、さすがフランス映画とでもいいましょうか、ポップで、コケティッシュ、どこかノスタルジーを感じさせるフランスをハイセンスに描いているその端々に、なんともいえない皮肉っぽさというか、意地の悪さみたいなのも感じとれて、とてもフランス的。人生あるいは世界に対して向けられたシニカルな視線というものが感じとれる、そんな気がしましてね、ただ可愛いだけの映画ではないんですね。だいたいにして、ヒロインであるアメリ、彼女からがビザール、変な娘であるわけです。フランスにおいて変なら、日本においてはさらに変だろう、そんな、ある種、社会から外れた人間による偏った世界認識、そうしたものがベースにある映画であると思います。ですが、こうしたベースがあるからこそ、あの各種いたずらや報復劇、あまり一般的とはいえない趣味が生きてくるのだと思うんですね。そして、こうした下地を受けるからこそ、アメリに対して与えられるアドバイス、怖れずに踏み出せという、それが生きるのでしょう。

一歩、世界に対して距離を置いていたアメリが、そうして距離を置いていたからこそ可能だった試みの数々を経て、ついには世界に対し一歩を踏み出す。ひとりの娘が、怖れを越えて変わろうとすることを望むまでの様子。他人の思いを変えるきっかけを与え続けていた彼女が、ついには自分の気持ちを変えるにいたった。そうした、変化を望み、変化に身を投じるまでのプロセスが、なによりも魅力的と感じられる映画であったと思います。

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