2009年1月26日月曜日

日本列島プチ改造論

 パオロ・マッツァリーノが、新刊出てるよ、っていうものですから、こないだ買いにいったら、どこに置かれているか全然わからなくって、しかたないから蔵書検索を使ってみたんですが、そうしたら入荷はしたけどまだ整理してないっていうんです。カウンターで調べてもらったところ、まだ棚に並べていないようでして、ええーっ、出直しですか。でもまあ、仕事の帰りについでに寄れる場所だから、いいか。かくして本日、再びいってまいりました。狙いは『日本列島プチ改造論』。以前、大和書房のサイトで連載されていたコラムでありまして、小振りながらも面白い、だから楽しみにして読んでいたのでした。それがついに単行本になって、けれど一度読んだものだからなあ。どうしようかなあ、見てから決めるか、そう思って、実際に手にして、買っとくか。買ったのでした。なんのかんのいっても、マッツァリーノの文章が好きなのですよ。

この人の文章っていうのは、なんかあやしい外国人気取って、すっとぼけたこと書くっていう、そういうところがあるのですが、私が好きというのもまさしくそこで、だってイタリア人だっていってるのに、やけに古い日本の文化、それもサブカル方面に詳しいな! なんてつっこみ入れながら読むのが楽しいのですね。けれど、そうした芸風だけが好きというんじゃないんです。その内容も結構好きでありまして、思いおこせばかつて『反社会学講座』にて、社会学的手法というやつの欺瞞を軽やかに切って捨ててみせた、その鮮やかさ。当時テレビやなんかでコメンテーターとやらがまことしやかにいってたことごとを、実はそうじゃないんだといってくれた。統計や資料をふんだんに用いて、自分のいいたいことのために現実を歪曲して伝えているやつがいるんだぜ、ってやってくれた。痛快でしたね。

けど、そうした反抗だけの人だったら、私はそれほど入れ込まなかっただろうと思います。私がこの人に入れ込むのは、この人の真っ当と思える感性に対してでしょう。皮肉もある、もちろん私の思うところと違う、そんなことを書いたりもします。けれど、そうした意見の底に見え隠れする、この人のらしさ。不当に蔑まれているものあらば、さっとその視線をそらさせて、蔑まれるいわれなんてないんだ。無闇に強弁されるものあらば、ちょいとその前提をひっくり返して、あんなのただのナンセンスだ。そうしたメッセージを送ってくる。そうしたところに、私は一種の健全を感じてしまって、しかもそれを説教口調なんて微塵もなしに、軽口たたくように、軽妙にやるというところが粋ってやつなんでしょう。まあ、私はてんで野暮天なので、粋だどうだとなると、ちょっとよくわからないのですが。

さてさて、マッツァリーノといえば、感想文なんて大嫌いだった子供が大人になるとこぞってBlogで感想文を書きたがる、だなんていってましたっけね。そうした話はこの本にも出てきまして、「一億総批評家時代のための批評入門」とか「辛口気取りはヤボなこと」、それから「感想より情報を」あたりですかね。でもって、これが耳に痛かったりしましてね、いや、私はこのBlogで評論やレビューをやっているつもりなんてないんです。だって、評論やレビューってなんだろう。どう書こうとも、私はこれをこう読みました、それでこう思いました、ってくらいにしかならない。だから、私はここに書いてるもろもろ、評論だなんて思ってやしない。印象批評でさえない、なんて思っていて、じゃあなにかというと、かこつけて書いてるだけなんです。漫画でも音楽でもなんでもいいけど、それにかこつけて、自分の趣味や好みを書く、そういったことをやっていて、例えば身も蓋もない女性が好きだとか、サバサバとして女臭くない人が素敵だとか、背の低い女性が好きだとか、金髪が好きだとか、眼鏡が好きだとか、ロリコンとののしられてもかまわないとか、そうしたことをいきなり告白されても、はあ、あんた、なにいってんのって思われて終わりでしょう? ですが、こうして漫画について書いたという体裁を整えると、間違って読んでくれる人も出るって塩梅ですよ。そう、私はそういう馬鹿なこと書きたくてBlogを続けてきたんです。だから、こと一億総批評家だなんていわれると、心苦しくてしかたがなくて、いやもう本当に。このサイトを漫画レビューサイトだと思ってくださる方もいらっしゃるようですが、それに関してはもう心から申し訳なく思っていて、というか、うちは音楽系Blogだと思ってやってるんですが(説得力は皆無だと思いますが)、それだけになおさらすまない気持ちでいっぱいです。

といった具合に、本でもなんでもを引き合いに出すことで、自分のいいたいことをいうのが、このBlogの目的です。うん、テリーさんのいうには、みんな自由に書けばよろしいということですから、これからも頑張って、いかにくだらないこと書くか、そのあたりを追求していきたいと思います。

引用

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