2009年1月27日火曜日

キルミーベイベー

 今日という日を心待ちにしていました。『キルミーベイベー』の発売日。これ、英語タイトルは Baby, please kill me. いや、もう、本当にプリーズ・キル・ミーですよ。以前、ゲームを作っている会社の人がいっていたんですが、女の子に殺されたいですって。それ聞いて私はうんうんってうなずきましてね、ええ、本当にそんな感じでキル・ミー・ベイベーであります。しかし、この、四コマ漫画には、それもKRレーベルには一見似つかわしくない物騒なタイトル、一体どうしたことかといいますと、ヒロインのうちのひとりがなんと殺し屋であるというんです。普通に学校に通ってきている女の子、それが実は殺し屋。このナンセンス極まりない設定にたまげますが、その殺し屋であるという女の子、ソーニャちゃん、この娘が最高です。殺し屋やってるというだけあってクールな美少女、さらに金髪、碧眼ときましたよ。そりゃもう、キル・ミー・ベイビー! 我を失ってしまうってなものです。

『キルミーベイベー』の登場人物、メインはふたり、妙に打たれ強いやすなと殺し屋のソーニャちゃんのダブルヒロインであるのですが、この、基本ふたりだけで展開するスラップスティックコメディが強烈に面白くて、一目見てはまりました。それは、もう、恋に落ちたとでもいいましょうか、それくらいに衝撃的な出会いでありまして、これが続けば嬉しいなあ、いつか単行本が出てくれたら嬉しいなあ、そう思っていたら出た。わお、この漫画を面白いと思った人、たくさんいたんですね。きっとみんな、ソーニャちゃんに命を狙われたいなあなんて甘い夢を見てるに違いありませんよ。もう、ソーニャちゃんたら、千客万来商売繁盛です。

しかし、この漫画、殺し屋ソーニャちゃんにやすなが絡んで、痛い目にあわされて、それでも絡んで、また痛い目にあわされて、基本はその繰り返しであるんですが、それが本当に面白いのです。テンションは時に高く、それはそれは密度も高く、畳み掛けるようにネタが繰り出されて、結果笑いとまらず、そうかと思えばちょっとのんびり目に、ことばのやりとりの軽妙さを楽しませてくれることもあって、けどやっぱり一番の魅力はスラップスティックですよ。もう、たまりません。四コマごとに落ちを付けながら、次へ次へと読み進めさせるその推進力は、ちょっと他に類を見ない、そんな輝きを放っていて、昔の、無声映画時代のどたばたコメディに似たテイストが感じられて素晴しい。シンプルでありながら、見せ方はダイナミック。動きの面白さがネタの面白さを際立たせて、これで笑わないって考えられない。割とアクション系、それもバイオレンス系、パンチとジュディみたいなもんですか?

スラップスティックとは大きな音をたてて相方を叩く棒に由来することばだっていいますが、まさしくそんな感じにスラップスティック。関節を極める、拳で殴る、ナイフで脅す、けどこうしたバイオレンスが笑いですむんだから、それはそれはすごいことで、これは受け側の、つまりやすなのキャラクター、無邪気でめげることのない明るさ、そして凝りないしたたかさ、そうした性格のおかげでもありましょう。クールな殺し屋と甘えん坊なのか? そんな女の子がマッチすれば、こんなにも面白い漫画ができあがるのか! 本当に近年まれに見る、そういってもいいすぎとは思わない、そんな漫画であるのです。

私はもともと『まんがタイムきらら』の系列誌では『キャラット』が好きだったのですが、『キルミーベイベー』が始まってから、その輝きはいっそう増した、そんな風に感じています。もう、毎号が楽しみでならない。それほどにか!? といわれると、それほどに! と答えないわけにはいかんでしょう。とにもかくにも面白い。もう最高、大好き、これより他にどういったものか、容易に言葉にならないくらいに気に入っている漫画です。

蛇足

登場人物、やすなとソーニャちゃんと忍者のあぎりさんの三人なんだけれど、その三人ともが、強烈な存在感を持ってるのはすごいことだと思います。中でも私はソーニャちゃんが好きですが、いや、人間誰でも一度は死ぬもんだからさ、天命をまっとうするのが一番だってわかってるけどさ、けどもしつまらない死に方するってんだったら、ソーニャちゃんに命を狙われたいって思うのはごくごく自然なことでしょう。それくらいに好き。

しかし、殺し屋に仕事を依頼するにはどれくらいかかるんでしょうね。けど、ソーニャちゃんに、「君、いくら?」って聞くと、誤解して、その場で始末してもらえそうな気がします。つまりは無料か! やったぜ!

  • カヅホ『キルミーベイベー』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 以下続刊

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