『先生はお兄ちゃん。』の第2巻が発売されて、およそ一年での単行本化、人気があるのだなあ、わがことのように喜んでいます。そういったこと思うのは、私がこの漫画のファンであるからなのですが、それこそゲスト掲載のころからなんかいいなあと思ってきて、それが人気があるようだときたら、嬉しく思うのも人情であろうかと思います。しかし、なにがそんなに面白いと思ったのか。主人公は背の低いことを悩んでいる妹。彼女には、妹大好きの兄貴がひとりあって、それがクラス担任をやっている。常軌を逸した妹偏愛ぶりに、皆はあきれ、当の妹はおかんむり、それがパターンとなっています。ありがちといえばありがちな設定です。けれど、これが面白くていいなあと思ったんですね。
なにがよかったのか。自問自答してみれば、やはり妹の可愛さがあるのではないかと思われます。ああ、あんた背の低い娘、好きだものね、っていわれればそうなんですが、けれど妹に関してはそれだけではなくて、その話し口ですよ。見た目、花のような美少女であるというのに、口調はきっぱりはっきりとして、むしろ凛々しさ感じるくらいで、だからもしこの妹が女おんなした口調性格してたとしたら、ここまで好きになってなかったと思う。ええ、私はこういったさばさばした人が好きなんです。男でも、女ならなおさら。だもんだから、この妹、桜木まゆはよかった。そして、もう一点、好きなものを前にしたときの妹のハイテンションぶり。それは、妹を前にした兄を彷彿とさせて、なんという似たもの兄妹! そう思わせるためのギミックであるのは重々承知しながら、そのギャップにやられてしまって — 、というのは以前にも話しましたとおりです。
第2巻では、不動不変と思われたこの漫画の設定にちょっとずつ動きが見えはじめて、兄が同僚の養護教諭神奈月子を少し意識しているような描写が出てきたり、登場人物、準レギュラーですかね、も増えて、妹をめぐる男性の影もちらほら、なんだかそれはこれまでになかった傾向を期待できそうで、いい感じです。そして、進級。私はこれに驚いて、この漫画は永遠の現在を高校1年設定で突き進むのかと思っていたのに、あっさりと進級。その際のアナウンスも気がきいていて、面白かった。ええ、随所に見られる漫画的表現や約束ごと、過去に蓄積されてきたものがうまく利用され、そしてうまく機能している、そういうところも私のこの漫画がいいなと思うところであります。
そうしたギミック的な面白さというのは、漫画としての面白さを工夫しようとしたその結果生じたものであると思います。楽しみまた楽しませようという思いは、毎回の面白さとして現われて、そして単行本ではおまけとしての描き下ろし、たくさん描きすぎて、収録本数削られたとのことですが、そのサービス精神には本当に頭が下がる思いです。それに、その描き下ろしがですね、実に気のきいたもので、本編漫画に+αされる面白さがとてもよかった。ああ、この雰囲気、やっぱり好きだと再確認するような気持ちで読めました。連載を追っていた人間も、新鮮な印象を得ることができる — 、それはひとえに漫画をよりよいものにしたいという意識のたまものでしょう。そうしたところからも、この漫画に対する作者の愛情といったようなものを感じられる、そんな風に思うんです。
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