『パティスリーMON』の序盤は、購読していた『You』で読んでいて、けれど購読をやめてからは単行本を待つしかなくなって、まあこれは以前にもいっていた話。実は、その後、再び連載を追うことになります。というのは、二年ほど通った病院の待合に、看護師さんが置いてらっしゃったんでしょうかね、『You』が常備されていたのですよ。おおー、これは嬉しい。かくして連載に復帰して、結果単行本への期待度は少し下がってしまいました。けど、今はもう病院にかかってないから、当然連載も追えないわけで、だからこの9巻には私の未だ知らぬエピソードが! これはすごく楽しみだぞ! 再び単行本への期待度が上がっているのですね。
そして、物語はいよいよ佳境!? いやね、音女の大門への思いが、なにやら暴走気味になっちゃってるものですから。『パティスリーMON』はレディーズコミックで、それはつまり対象読者層である女性の興味や問題が漫画に反映されるということであろうと思うのですが、『パティスリーMON』では主に仕事、結婚を扱って、そしてついに恋が物語の中心を陣取ろうとしています。これはいよいよ動くぞ。そう思うとわくわくします。けれど、それが仕事への悪影響をもたらしたらどうしよう、そう思うとはらはらします。でも、作者はきら、私はこの人の物語の運びに十全の信頼を置いているのですが、だからきっとなにが起ころうとも大丈夫。私はわくわくはらはらしながら、この先に起こることを待てばいいのです。
これまでにも音女の恋心というのはちらほら顔を出して、時に人間関係に影響し、物語を劇的に動かしてきたと思うのですが、しかし物語の中心にそれが陣取ることはなかったと思うのですね。少なくとも、音女の中では大きくとも、MONというケーキ店とそこでの仕事、スタッフたちの関係の中では、中心的ではなかった。私はそのように捉えていて、それがついに物語の中心に位置した。こうなれば、『パティスリーMON』は、ケーキ店とそこでの人間関係を描く物語から、音女の恋に駆動される物語に移行していくのだろう。そう思うからこそ、わくわくもはらはらもするのですね。
しかし、こうして見れば、『パティスリーMON』というのは、音女が仕事を通じ自己を認識し、恋を自覚していく物語であった、そんなふうにいってもいいものかも知れません。私はこれまでこの漫画を、大門と愉快な仲間たちに音女が加わる物語だと思っていたように思います。ただ、仲間がいれば楽しい毎日というのは理想だけど、そうは問屋が卸さない。離別があったし、また新たに加わる人が引き起こすドラマがあって、それはそれははらはらしました。けれど、少しずつ問題はクリアされていった。そのプロセスは妙に納得できるもので、というのは私も似たような経験をしたことがないわけでもなかったから。こうした経験のあったため、私の興味は音女の恋心よりも人間関係のドラマに向いていたのかも知れませんね。ですが、これからは物語も私の興味も、そしてもちろんヒロインである音女自身も、その恋心を軸に動いていくことになろうかと思われて、これは本当に楽しみだ、そう思います。
さて、この段階で書いておかないと、今後きっかけがないかも知れないから、いっときたいと思います。ちいさい大門は本当に可愛いなあ! 思わず抱きしめたくなるくらいだ! じゃなくて、ショコラティエ安藤ですよ。こういうサバサバしたキャラは同性に好かれるんですね
、って、私のタイプって、もろこういう人なんですが。女臭くない、気さく、けれどサバサバしたキャラクターの向こうに、ちょっとしっとりしたものを隠しているでしょう? 多分この人は、自分が可愛くないとか美人じゃないとか、そんな感じの引け目みたいなのを持っていて、そうした自分の弱い部分を防衛するためにサバサバしたキャラクターを演じている、みたいなところもあるんだと思うんですよ。だから、私はこういう人を見るといいたくなる。あなたはすごく魅力的だし、素敵ですよって、そういいたくなる。もっと自信を持って欲しい。だって、こんなにも魅力的なんだから。いや、安藤が眼鏡かけてるからそういってるわけじゃないよ。前髪の切り揃えが凛々しいから、そういってるわけでもないよ。ああいう人好きなんだ。悲しさや切なさを隠している。そうした憂いが、時に表情に差すことがある、それがとびきり美しくって、どきりとさせるではないですか。
といったわけで、私のポジションは新田なんだと思います。だから新田は応援しない!
- きら『パティスリーMON』第1巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社,2006年。
- きら『パティスリーMON』第2巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社,2007年。
- きら『パティスリーMON』第3巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社,2006年。
- きら『パティスリーMON』第4巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社,2007年。
- きら『パティスリーMON』第5巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社,2007年。
- きら『パティスリーMON』第6巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社,2007年。
- きら『パティスリーMON』第7巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社,2008年。
- きら『パティスリーMON』第8巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社,2008年。
- きら『パティスリーMON』第9巻 (クイーンズコミックス) 東京:集英社,2008年。
- 以下続刊
引用
- きら『パティスリーMON』第9巻 (東京:集英社,2008年),183頁。
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