2008年11月27日木曜日

えりか

 私は中山かつみの漫画が好きでした。私がそのようにいう時、念頭に置かれているのはなにかというと、『まんがタイムきららキャラット』に連載されていた漫画『くるくるコンチェルト』であります。女の子コミュニティもの、ほのぼのとして、読んでいるとほっとする、そしてくすっと笑える、大好きでした。いや、今も好きだから、これが一冊にまとまるっていうんだったら、喜んで買うよ! って、唐突になにをいいだすんだといったところですが、本日取り上げますものは、中山かつみの新刊、『えりか』であります。小学生の女の子えりかとその友達の日常を描いた、女の子コミュニティものであります。

しかし、私はこうした漫画が連載されているってこと、まったく知らずにいたのですね。だから、出会えたのは、本当に幸運だったと思います。ジャンルは、先ほどもいったように小学生の女の子コミュニティもの。形式は、コマ割り漫画ですね。ただ、吹き出しがありません。基本的に台詞なしで進行する、表情、動きでみせるスタイルが選択されているのですが、それがえりかたちの生活を生き生きと効果的に表現していたと思います。

描かれることは、基本的にオーソドックス。ほとんど台詞らしい台詞がないから、込み入った内容をやられると困る……、という事情もあるのかも知れませんが、こうしたオーソドックスな展開にキャラクターの個性を落とし込むというのが中山かつみのうまさなのではないかと思っています。子供の頃、自分にもそんなことがあった、そうした共感をベースに、えりかならそれをこんな風に楽しむのです、とばかりに彼女のらしさを感じさせてくれて、つくづくオーソドックスは陳腐ということではないのだと確認する思いでありました。

ほほ笑ましさに心をゆったりとくつろげたと思ったら、やっぱりくすりと笑みのこぼれることもあって、実に楽しい漫画でした。絵の上手は折り紙付き。よく整理されてわかりやすい画面。えりかを筆頭に登場人物はかわいらしく、イラストレーションとしての魅力にもあふれています。そして描き出される彼女らの個性がよかった。というか、彼女らこそがこの漫画の見どころであると、まあこんなことはあらためていうまでもない、当然のことでありますけどね。えりかとお母さんの攻防や、友達のまな、三冬との和気あいあいとした掛け合い、そしてやんちゃの暴走してしまうようなところには、やれやれ、仕方のない子らだなあ、そういいながら口元はほころんでしまう、そんな気安さ、ほっとけなさがあって、それはいいかえれば、彼女たちのコミュニティの持つ雰囲気がたまらなく魅力的ということなのだろうと思います。

  • 中山かつみ『えりか』(GUM COMICS) 東京:ワニブックス,2008年。
  • 続刊希望

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