2008年2月6日水曜日

くるくるコンチェルト

 明日から、明日から通常営業に戻りますので、今少し、懐かしのタイトルを列挙することをお許しください。といっても、今日取り上げようというのはそれほど懐かしいものではありません。だって去年まで連載されていた漫画だもの。掲載誌は『まんがタイムきららキャラット』、最終回が載ったのは2007年8月28日発売の10月号でした。正直、青天の霹靂。だって、そんな予兆まったくといっていいほど感じられず、単行本出て欲しいなあなんて、呑気に思っていたくらいなんですよ。だから、もう衝撃。狼狽して、なんでや、なんでやのん! あまりのことに、ひねくれて星をにらんだ僕なのさ。

(画像は『GREED — 強欲の卵』)

それまでも、薄々気付いてはいたのですが、私の趣味嗜好っていうのは、とかく一般的ではないんですね。いや、ですが私はここで、あえてこのように主張したい。私に同様の趣味嗜好を持つ同士は、多数派を形成するとまではいわないまでも、それなりの数はいるはずだと。けど、私も含めてそうした彼らは自己主張が下手というか、アンケートに答えない、あるいは答えたとしても言い募らない。よくいえば控えめ、悪くいえば口下手、なのかなあ — 。実際のところはわかりませんよ。けど、そうとでも思わなければやっていけないことってあると思います。ええ、ほんにやりきれんのです。

中山かつみは『くるくるコンチェルト』の前に『てんしのたまご。』というコマ割り漫画を描いていて、個性的な猫天使たちの引き起こすどたばた、結構好きだったのですが、割に人を選びそうな雰囲気があったから、苦手に思った人も多かったんじゃないかと思っています。それでより広範な層に働き掛けられそうな舞台、日常にシフトしたのだと思っていました。

主役は女の子四人組、東雲、あんず、琴子、彩。あ、東雲さんだけ苗字だ。後には東雲の弟が出てきたりして、少しずつ世界は広がっていくのですが、基本的にはこの四人を軸にして動いていくという漫画でしたね。描き方は丁寧、絵は可愛いというだけでなく、切れよくきれいにまとまっているという感じ。話の運びもそうでしたね。それほど大げさにはやらない、だから結構地味なんですが、きっちりきっちりと話題を拾ってつなげていく、そういう堅実的な印象がありました。

だから、大化けはしないだろうけど、淡々と、しっかりと、続いていくんじゃないかなんて思っていたんです。それに話は面白かったんですよ。自転車の回は、ああ自転車っていい乗り物だよねえって思ってしまうほどに爽快さが伝わってきたものだし、節分の話も、見た目はこじんまりとして可愛いのに実は鬼よりも怖いあんず、また東雲姉ののどかさなんかも強く打ち出されて、そうさねえ、キャラクターがあって、その個性を絡めた筋回しがあってという、オーソドックスな漫画でありました。そしてそのオーソドックスが安定を感じさせて、気持ち落ち着けて穏やかに読める、そういう漫画であったと思うのです。

けれどオーソドックスゆえに目立たず、目立たないゆえに押されず、そしてそれが終了のフラグを立てたのだとしたら、あまりに悲しいことです。好きだっていう人は多かったと思うんだけどなあ。それこそ、定番商品だと思っている、いつでもそこにあってくれて当然だと思ってしまう。そんな安心さを感じてしまっていたから、あえて言及しなかった、そんな人もあったんじゃないのかなあ。けど、これが事実だとしたら、それはむしろ悪循環に他ならないわけで、ああ、けど結構コメントしてたつもりなんだけどなあ。届かなかったかあ。がっかりです。

『くるくるコンチェルト』が終了した時、まさかと思って、狼狽した。それは『くるくるコンチェルト』だけの問題ではないと思ったからでした。『くるくるコンチェルト』が終わるのなら(むしろでさえと思いました)、こうした位置にある漫画、似た雰囲気を持つ漫画は、おしなべて危ない、それこそいつ最終回を告げられてもおかしくない、そう思ったから余計に慌てたのです。きりがないからいちいち名前はあげないけれど、買っている雑誌、それぞれにそうした漫画はやっぱりあって、おそろしいことに私はそうした漫画が妙に好きときているものだから、怖い、本当に怖い。アンケートに答える際は、素直に面白いと思ったものにコメントすることも大切だけど、戦略的に振る舞うことも必要なんじゃないか。あるいは、アンケートを離れた場においての情報戦略も考えるべきなんではないか、そこまで考えたものでした。

でも、個人にできることってそんなに多くはありません。私に関してはなおさらですね。こうしてBlogに書くくらいが関の山ですが、もうこれが暗闇に向かってしゃべっているかのような手応えで、いやいいんですよ、私は結構この暗闇トークの感触、気に入っているんです(というか、慣れた)。でもね、ここぞという時には、恨みますね、自分の非力さ。好きな漫画ひとつ推すことさえできない。コップの中の嵐にさえならない。そうした現実に打ちひしがれて、今夜もまた星をにらむのですね。

  • 中山かつみ『くるくるコンチェルト』

参考

  • 中山かつみ『GREED — 強欲の卵』(マジキューコミックス) 東京:エンターブレイン,2003年。
  • 中山かつみ『Cynical orange』東京:FOX出版,2001年。

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