いくら気に入ってくれたとはいっても、一歳そこそこの子供にしろくまちゃんは早かったんじゃないかなあ。反省しまして買ってきたのが、五味太郎の『かくしたのだあれ』でした。いつも立ち寄る書店の絵本の棚にささっているのを見て、あ、こりゃよさそうだと思って買った、典型的な衝動買いであるのですが、実際これはよいですよ。五味太郎らしいといっていいのかわるいのか、ひょうひょうとしたユーモアのセンスが素晴らしい。そして絵がとてもチャーミングだと思います。小ぶりの絵本で、値段もえらく安いし、ストーリーもなにもあったもんじゃないんですけど、それでも繰り返し開いてみたくなる。そんな魅力のある本なんです。
なにが魅力かといわれると、それはもう反復の妙としかいいようがないと思います。
てぶくろ かくしたの だあれ
この要領で、左ページに小物が、右ページにはそれを隠している動物が紹介されるのです。これだけのことなのに、めちゃくちゃ面白いのはなんでなんでしょう。向かい合わせになった鶏、右側の一羽がとさかに赤い手袋を隠している! こんな具合。動物もトリからワニからカマキリ、魚、そして人間の子供とバリエーションに富んでいるから、次は一体なにが出てくるんだろうとわくわくして、いや、もう見て知ってるんです。けど、なぜかめくるのが楽しみになる。これ、子供だったらなおさらだろうなあ。ことやつらときたら、繰り返しが大好きときてますからね!
隠される小物も、歯ブラシや帽子、フォークとスプーンなど日常に見かけるものが中心で、しかも磁石などという子供にしたら宝物みたいなぶつまで出てきて、こちらも子供をわくわくさせるに違いないだろうなあと思えるものばかりです。これらが動物の一部に繰り込まれるかたちで隠される、それはいいんですが、この動物の数、どんどん増えていくんです。最初は二体だったのがしまいには十二体にまで増えて、このエスカレートしていく感じ、見た目にも増えてる! って実感できるところ、これもいいですよ。子供は繰り返しが好きなものですが、加えてエスカレートするっていうのも大好きだから、この本はあらゆる方面から子供に働き掛けそうだ、そんな予感に満ちているのです。
子供をわくわくさせるものっていうのは、大人にも同様に働きかけるところがあるようで、こんなにも単純なものが面白い。あらためて知ったような思いがします。そして、その面白いと思うことがまた面白い。ええ、絵本というのは常々発見です。
- 五味太郎『かくしたのだあれ』(どうぶつあれあれえほん) 東京:文化出版局,1977年。
引用
- 五味太郎『かくしたのだあれ』(東京:文化出版局,1977年),2頁。
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