うん、頑張ろう。読んでそう思える漫画っていうのがあります。たとえば『GA — 芸術科アートデザインクラス』。私は芸術科は芸術科でも音楽という、また毛色の違う分野の人間なんだけれど、でも目指すなにかがあって、それはそれは手の届かないほど遠大な、それこそ一生かけても完成しないようなそんなのが目標なんですが、でも追い求めずにはいられないんですね。なんでだろう。好きだから? うん、それもあります。けど、きっとそれだけじゃないな。それは、憧れですね。『GA』2巻、一番最後の収録、なんか思い出すものがあったんです。私にも憧れたものがあった。こんなことができればいいなあって思って、がむしゃらだった時期があったなって、そんな風に思って、ああ頑張らないとな。ちょっと反省したのでした。最近私は、なにをするにもさぼり気味です。
憧れというのは、だんだんと欲張りになりますね。最初はごく身近なものだったりするんです。部活の先輩とか。それがCDで聞く演奏家になって、それもいつしかビッグネームになって、どんどん大きなものになっていくんですね。若い頃って無謀だから、いつかこんな風になれるかななんて、そりゃもうど厚かましいこと考えたりしてたけど、無理無理、全然ですよ。ある程度したら、自分のほどが見えてきます。だからまた身近なものを目標にして、あの歌をちゃんと歌えるようになりたい、そんな具合ですね。けど、全然追いつかないの、やっぱり。芸の道は厳しい。もちろん音楽だけじゃないです。文芸の人は言葉に苦悩するでしょうし、漫画の人は漫画、もちろん美術だって、絵、彫刻、書、工芸、すべてにおいて、ちゃんとできるということはそりゃもう難しいものです。
その難しいということが、『GA』では当たり前の前提になっていて、けれどそれでいて楽しむ美術が表現されている。ああ、いいバランスだ。いつも読んでそう思います。目標を持ってひとつことに取り組む青春、憧れに触れる喜び、できるようになる喜び、作ることの喜び、そして苦しみも。友達と一緒に過ごす時間、ともに課題と格闘するなかで深まるものもあれば、時には遊びの中で育むものだってある。いいね、青春だ。もっぺん学生やりたくなるねえ。やり直しなんて死んでもいやだ、普段そんなことをいっている自分にして、そうしたことを思わせるのは、『GA』のあの子らが生き生きとしてまぶしいからだな。ええ、まぶしいですね。あんまりにまぶしいものだから、自分も頑張らないとなって感化されてしまう。単純でしょう? ええ、単純。すごく素直な気持ちになってしまってるんですよ。
『GA』も2巻に入り、さらに世界は広がりました。具体的にいうと、GA一年だけでなく、三年生も登場。硬さもとれ、余裕もできた三年生(横着になったともいえるかも)。それが漫画から、絵からも感じられるというのはさすがの一言といいますか。確かに、大学に入った時、上学年にああした雰囲気感じたなあ。時間と経験の差ですね。いつかあんな風になれるのかなあ。不安感じたものでした。まあ、私は転科したようなもんだから、そういう風にはなれなかったんですが、私のことはともあれ、美校なんかでもおんなじ様にきっと感じることあるんだろうなって思います。あんな風になれるといいな、憧れと、でも自分にできるかな、不安、怖れが交じり合って、けれどそれでも前に進む。人によってはこつこつと、人によってはアグレッシブにがつがつと、場合によっては紆余曲折、寄り道しながら、自分の道を進んでいく。その過程で積み上げられるものが、その人を作るんですね。なら、二年後のGA1の面々、どんな風になるんでしょうね。なんか、想像できそうな気もします。それで後輩から、先輩はすごいなって思われたりするの。まあ、先輩になってみるとまた不安もあって、ほら後輩っていってもすごいのがいたりしますから。絵も音楽もなんでも、実力社会ですよ。
上級生の日常が描かれるようになって、彼らの学校での生活というものが、一層立体的になった。そんな風に感じています。そしてそれは手応え実感として、しっかりと伝わってくる。これ、力を消費するってことなんかな? けど、無駄にってことはないですよ。消費した以上にもらえてるものの方が多いですもん。うん、頑張ろう。そんな気持ちになれるんですから。ええ、大きなものを確かにいただきましたよ。
- きゆづきさとこ『GA — 芸術科アートデザインクラス』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
- きゆづきさとこ『GA — 芸術科アートデザインクラス』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
- 以下続刊
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