2006年9月28日木曜日

GA — 芸術科アートデザインクラス

 動物のお医者さん』の匂いがするっ! 雑誌に載っているのを読んでいたときには気付かなかったのですが、こうして単行本にまとめられたものを読めば、そこにはなんだか『動物のお医者さん』に通じる雰囲気があるのです。いや、佐々木倫子特有の諧謔やテンポが感じられるといいたいわけじゃないんです。私がいおうとしているのは、一種特別な課程に学んでいる学生たちの日常を描いているという、そのスタイルです。一般に広く知られている訳ではない、いわば業界ネタを扱っている漫画だというのに、それらネタが漫画としての面白さに直結しているというそこが似ているのです。『GA』で扱われているネタは美術やデザインといった、漫画に描くのに非常に向いたものときて、そしてそのネタとしての発展のさせかたが非常にうまい。 — 私がこの漫画に『動物のお医者さん』的なものを感じたのだとしたら、それはひとえにそのうまさに由来するのであると思います。

しかしなにがうまいといっても、美術の知識、 — 色彩や技法に関するうんちくめいたものをちりばめながら、それらを漫画の表現にしっかりと馴染ませているところでしょう。色のネタならば、その色によって引き起こされる効果というのを、目で見てはっきりとわかるかたちで示してくれる。けど、これだけだったらただの教科書や参考書の引き写しに過ぎないといったところですが、『GA』はちゃんとネタにするんですよね。ああ、なるほどそういうことかあ、ってのが実感としてつかめて、面白いなあと思えるのはすごいことです。美術やデザインの技法の奥深さを感じさせつつ、その軸をずらしてみせたところに生じるおかしさも表現して、そして個性的な登場人物のどたばたを交えてちっとも破綻というものがないのですから、このきゆづきさとこという人の構成力は素晴らしいなと、心の底から思えてくるのです。

全体に漂う完成感の高さというのも、『動物のお医者さん』の雰囲気に似ていると思わせた理由なのかも知れません。四コマ一本一本のテンポ、リズムを大切にしながら、一回掲載分の大きな流れもかっちりと作り上げられています。その時限りかと思われたネタがうまい具合に後で回収されているということも頻繁で、頭から最後まで、そして細部からおおまかなインプレッションまで、よくもまあこんなにというほどに気が配られていて、けど変に仕組まれたというような硬直なんてものは皆無。キャラクターそれぞれの人柄なんかはまるでそういう友人を自分も持ったかのように温かで近しくて、彼女らの関係の絶妙なバランスもほのぼのとしてまた時には緊張感も持たせて、本当にうまい漫画家であると思うのです。構成の力強さに、どうすればよりよい表現となりうるかを追求した練り上げの妙が、非常にレベルの高い位置で引きあって、決して派手とはいえないこの漫画をきらきらと輝くような一級作に押し上げています。

蛇足

山口如月、この人いっぽん、といいたいところですが、案の定キョージュも大好きです。でも、一番かわいいと思ったのは、83ページ、これ誰か—、のノダちゃんだったりします。

しかし、それにしても、この漫画の登場人物はみんなみんなかわいいよね。してやられてるとは思うんだけど、あらがえないのはしかたないじゃんか。

余談

とらのあなという店がありますが、『とらだよ。』というとらのあな無料情報誌にも『GA』が掲載されています。その名も『GA材置き場』。私、この漫画のためにとらのあなに通ったりしてたのですが、なぜか店頭に置かれなくなって(梅田店だけ?)、そんなわけで読めなくなってしまいました。

『GA材置き場』も非常にしっかりと作り上げられた良作の一ページ漫画なので、いつか一冊にまとまってくれるといいなあ、なんて思うのですが無理なのかなあ。もしこれが消えゆくばかりなら、そんなにもったいないことはないと思います。

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