四コマ漫画というカテゴリにおいては重要なジャンルであるOLもの。なかでも王道といえるのが、どじOLものであるのではないかと思います。というわけで、今日発売の『Spring!!』もそうしたどじOLというくくりで語ることのできる漫画であろうかと思うのですが、どじはどじでも一味違うように思います。なにが違うんだろう。朗らか、のんき、前向き、主人公のそうした傾向は、この漫画に限らず他でもみられるものなんですけど、けどなんでか『Spring!!』のヒロイン春日晴日は特別なのです。なんだろう。絵のかわいさかな? シンプルなわりに妙に色っぽかったりもする絵柄のせいかな? でも実際のところ、春日晴日の特別さには作風が関わっていると思うのです。素直さやめげない一途さ、健やかな様がありありと伝わってくる、その作風がこの漫画の第一の楽しさなのであろうと思います。
実は私、この漫画の連載第一回を見たときに、これはいいと思ったんですね。それはまさしく恋に落ちたかのよう! 私のはじめての四コマ誌であった『まんがタイムラブリー』。あんなに好きだった雑誌だったのに、いつしかかすかに倦怠を感じるようになっていて、しかしそこに現れたフレッシュな四コマ漫画。そのひとつが『Spring!!』、新鮮でした。明るさに救われた。健やかさにほっとする思いだった。『Spring!!』は目下ラブリーにおける私の好きな漫画の一二を常に争うものとなっています。
でさ、今日単行本が出て、わーい、嬉しいなあ、まとめて読めるぞ、喜び勇んで読んでみたらですよ、驚きました。わお、初期ってこんなにぎすぎすしてたんだ。先輩は嫌みだし、同僚のふゆきもなんか打ち解けてないしで、うわあ、私、こんな漫画のどこが好きになったんだろう — 。と思えるのは、連載が続くうちにだんだんにキャラクターたちがこなれてきて、それぞれのポジションに落ち着いてきたからだと思うのです。このへん、まるで本当の人間関係みたい。最初はどうにも反りの合わなかったのが、なんとなく時間が経つうちにいいところも見えてきたり、なによりつきあいかたがわかってきたりで、いい関係が保てるようになったりするじゃないですか。この漫画もそうなんだと思います。最初は嫌みばっかりだった先輩も今ではいいお姉さんOLって感じだし、ふゆきもどことなく丸くなってつきあいやすくなった。春日にしても駄目一辺倒でないって感じで、これ、連載の二年間という歳月が醸成した味なんでしょうね。若くて浅くて舌にさすようだったのが、ふくよかな奥深さを持つようになって、これから先がなお楽しみになるような本当にいい漫画なんだと思うのです。
蛇足いってみようか。
元ふゆきでした。でした? だって、最近は先輩もかわいくて素敵だし、なにより主人公がまれに見せる無防備な色っぽさも作者にしてやられてるって感じだし、いやはや、本当にいいキャラクターに育ったと思わないではおられません。
ところで、最近の四コマは恋愛展開というのがトレンドみたいですが、『Spring!!』に関してはそういう方向に向かって欲しくないな。軽くて口当たりがよくて、けど味わいはわりあい深いという今の風合いを失って欲しくないと思います。
- 小池恵子『Spring!!』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2006年。
- 以下続刊
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