『のののリサイクル』、ぱっと見には可愛いキャラクター前面に押し出した、ほのぼの優位の漫画であります。高性能汎用人型ヒューマノイド、ロボット? アンドロイド? の試験素体として選ばれた草餅のの、見た目幼稚園児の彼女がクラスにやってくるところから物語は始まるのですが、この時点では非常に緩く、穏当そのものといった雰囲気が支配的です。ののが結びつける友情、ののの頑張りが状況を好転させるといった、人によってはぬるすぎるといって敬遠しそうな展開が続くのですが、けれどこうした微温的空気が好きという人にはきっとたまらん漫画だろうなあと思います。私に関していえば、中間くらい。ものすごく好きということはない、けれど嫌いでは決してない。そして時には側にあって欲しいと思う、そんな優しげなふうが妙に心をくすぐるのです。
以上の印象、これがすべてを語っていないことをいっておく必要があるかと思います。第1巻時点でほのめかされている、ののの選定に関する疑惑、あるいは過去に起こったという事故。明確には語られていないこれら謎が、今後の展開に関わってくることは必至であり、そしてここにドラマの生まれる余地が残されている。そのように感じられます。のののデータを収集すべく暗躍(?)するものがあらば、かげに彼女をサポートしようというものもあり、まあ皆、ののの生まれた八千代研究所の人だからあやしくもなんともないし(多分)、不必要にシリアス色を強めることもまたないのですが、でもいずれちょっとシリアス展開にはなるのかな。それに、なんといっても『のののリサイクル』というタイトル、リサイクルの意味するところがなにであるのか、まだよくわかりませんからね。今は伏せられている謎がいずれ解明される、その過程にどういう情景が描かれるのだろう、すごく楽しみに思うのです。
本誌、『まんがタイムきららフォワード』ではもう少し話は進んでいて、のののライバルが登場していたり、またささやかながらいろいろ事件も起こったりもして、そうしたひとつひとつの出来事が積み上げられた果てに見えてくるものがあるのだろう、そういう感じを少しずつ強めています。けど、基本的にはののとその友達たちの温かで緩やかな日常の風景、ほほ笑ましく、心地よい、かりかりとした心の角が丸く和らげられるような、そんな色合いは薄らぐことなくしっとりと息づいています。出会えると、ほっと一息つける、そんな感じ。優しさが嬉しいのですね。
癒しだとか、そういうこというと胡散臭い(私が癒し系という時は、悪口であることが多いです。ご注意を。というか確認したら、7件中6件が悪口でした、おーまい)。だから私は、『のののリサイクル』を癒しであるとはいいません。癒しよりももっと前向きなものがある、差し出される手にほのかに伝わるあたたかさ、やわらかさが感じ取れると思うから。そんな『のののリサイクル』を単純に系という言葉に押し込めるなんて、ちょっと私にはためらわれてしまうのですね。
- 云熊まく,綾見ちは『のののリサイクル』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
- 以下続刊
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