2008年11月16日日曜日

ロマンス・コンシェルジュ

 ネコ侍』を買うついでに、『ロマンス・コンシェルジュ』も買ったのでした。作者はご存じ九州男児。カップルでお泊まりのお客様のご希望にお応えして、おふたりの関係をより親密なものとするためのお手伝いをするのが、ロマンス・コンシェルジュの仕事であるのですが、なにしろ作者が松山花子どころか九州男児であるわけですから、一筋縄でいくはずもありません。まず、来る客来る客、男同士のカップルばかりというから問題です。というか、これはジャンルの問題であって、むしろ男同士でないほうがより問題という気もするのですが、まあそれはおいておくとしまして、すご腕のチーフコンシェルジュ遠藤貞矢氏がさばく、カップルの問題。それが面白くてたまらないのです。

やってくるカップルのバリエーションは結構幅広く、力関係を利用するカップルがあらば、自分たちの気持ちを確かめたいと思ってやってくるカップルもある。さらには片方がノンケである、それどころか両方がノンケであるというケースもあって、しかしロマンス・コンシェルジュの手にかかれば皆最高のハッピーエンドを迎えることができるというのですから素晴らしい。

最初は男同士のカップルに引き気味だったスタッフなのに、いつしか嬉々として前向きに取り組む姿勢を身に付けたかと思えば、最後には男同士の縁結びのサーヴィスで知られるまでになって、これはホテルにとってはいいことなのかどうなのかわからないというところも最高だと思います。しかし、こうしたジャンルに限らず恋愛ものというやつは、うまくいくかどうかがわからないという、あやふやな確定前状況における機微こそが面白く、そしてそこに障害となり得る要素が加わればより一層に面白いと、そんな風に思います。『ロマンス・コンシェルジュ』は、恋愛に悩みを持ったカップルが多く扱われるわけですから、私のいう恋愛ものの楽しみにあふれているのは当たり前。しかも、確定していなかった関係はきっと確定するわけであるし、その際には問題となっていた要素はきっちりとクリアされている。そのクリアするというのも、簡単に除去して終わりというわけではないんですね。誤解であった、あるいは後一歩の踏み込みが必要だった、きっかけがないと動けない関係だった、どんなでもいいのですが、引っかかっていたところにコンシェルジュがちょいと後押ししてやれば、後は当人たちで問題を乗り越えてしまうのです。障害を乗り越えて結実する愛というもの、そのプロセスそして達成感こそが恋愛ものの醍醐味よのう。ええ、すごく楽しんで読むことができる一冊でした。

しかしですよ、やっぱり九州男児ですから、ギャグタッチもあるわけで、あからさまに状況を告げる、その告げ方が面白いのはいつもどおりの味わいです。私は笑って笑って、散々笑って、しかしまさかこの人の漫画でほろりと泣いてしまう日がこようとは思ってもいませんでした。ええ、確かにべたな展開でした。どうもこうもなくべたな展開で、しかしそのべたさが私の涙を絞ったのです。それはRoom 10でのこと。だってノンケの染田がほだされたんだ、私だって泣くくらいのことはするだろうと、しかしあそこであそこまで泣けたのは、まさかあんな展開でくるとは思っていなかった、あくまでもギャグの延長だろうと思っていた、その心の油断がためでしょう。心がすっかり開いてしまっていたために、虚を突かれてしまったのでしょうね。それはやはり、組み立て方の勝利であろうと思います。そして私は、いい話だったと、そのように心にとどめて、読み返してまたいい話であったと、噛みしめる次第でありますよ。

引用

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