おそらく次は『女郎蜘蛛』でお会いすることになるかと思います。
他のタイトルを差し置いて『女郎蜘蛛』を選んだのは、苦手なジャンルから片づけていこうという意図からであったのですが、プレイしはじめて、ちょっと困りましたね。だんだん楽しくなってきたんですよ……。さて、詳細を語る前に『女郎蜘蛛』について少々。これは、PC-9800シリーズ向けのゲームであるのですが、『遊べる!!美少女ゲームクロニクル《PC98編》』といういかしたムックにプレイ可能なゲームが収録されているものだから、Windowsでも遊べます。メーカーはストーンヘッズ、ブランドはPIL、ジャンルは縛り系SM、といったわけで、これは自分には合わないなと思っていた、思っていたんですね。
けれど、そうはなりませんでした。未亡人とその後見人が支配する北畠屋敷にて夜な夜な繰り返される執拗な責め。仕事を得られると聞いて屋敷を訪れた主人公は、毎夜、責めに加わることを余儀なくされ、しかしなぜこのようなことがおこなわれているのか。責められるのは、ほかならぬ未亡人未砂緒とその娘である蝶子。謎が渦巻く北畠屋敷にて、主人公は秘められた真実を暴くことができるのか!? 大ざっぱにいうと『女郎蜘蛛』はそういうゲームで、日中は屋敷の謎を暴くべく行動するアドベンチャーゲーム、夜は女達を縄で縛り責めるという育成、おっと間違えた、調教シミュレーションゲーム、ひとつのゲームにふたつのテイストが用意されているのですね。
さて、はじめた当初、残念ながらそうした趣味を持ち合わせていない私は、夜間のシミュレーションを、単にパラメータをあげるだけのルーチンワークとして捉えてプレイしていまして、縛るたびに上昇するプレイヤーキャラの疲労度、それが100になる前に縛りを完成させ、効率的に各種パラメータをあげよう。本当にそれだけの、まさしく作業というべきプレイを淡々とこなすだけでありました。
けど、ええと、北畠屋敷にはもう一人娘がありまして、茉莉絵というのですが、この娘だけは責めを知らなくてですね、本当に明るくていい子なんですが、当初庭にいくと茉莉絵にあって話ができる、そうした時間を持つことでだんだんに仲を深めることができまして、いやあ、なんといいましても夜があれでしょう、もう心のオアシスなんですよ、この子が。本来ならば、私の好みは蝶子のような、影のあるちょっと不幸な娘なんですが、というか蝶子はちょっとどころでない不幸を背負っているわけですが、その私が茉莉絵に幻惑されて、この子だけは、この子だけはあの異常な世界に落としては駄目だ、なんとしても守らなくては、みたいなのりになって、そして、一緒に逃げようといっちゃう。かくして訪れたエンドは「茉莉絵は何も知らない」。もうネタバレでいきますが、舞台は大正、浅草十二階で駆け落ちを決行するんですが、ということは震災前ですよね(十二階は関東大震災で倒壊します)。つまり、震災がくるわけですよ。でもって、母親も後見人も死んじゃう。蝶子だって、死んじゃう。生き残ったのは私と茉莉絵と執事北川だけ。そして、茉莉絵はついにあの屋敷でおこなわれていたことを知らぬままでありました、と、そういうエンドであるんですね。
正直、私はこれで満足っちゃあ満足です。茉莉絵は首尾よく守りおおせたわけだし、酷い母さんも、ろくでもない後見人もいなくなっちゃうわけで、まあ蝶ちゃんが死んじゃうのはなんともいえず悲しいのですが、でも蝶子は茉莉絵を守りたかった、私も茉莉絵を助けたかった、ふたりの思惑は一致して、だからこれでよかったんだ、とは思ったものの、ゲームとしてはおさまらんわけです。てなわけで、駆け落ちを持ちかけず、屋敷に帰ってきちゃう。そうしたら、その夜から茉莉絵も責めを受けることとなってしまいまして、なんてこった! いや、そうなんだろうなあとは思ってたんだけど、けどこれはあんまりだ!
でも、ここからゲームの質が変わったように思います。だって、私の縛り対象が茉莉絵にロックオンですよ。これまで蝶子を縛っていた時は、どことなくなおざり感漂う、荒っぽい、適当そのものの仕事ぶりであったというのに、茉莉絵となれば、最初は軽い縛りから徐々に慣らして、だんだん複雑で絢爛なものに移行していこう、だなんて調教戦略を考えるようになって、おかげで茉莉絵のレベルはがんがん上がるし、プレイヤーキャラの技術もがんがん上がるし、プレイヤーの練度もがんがん上がった。しかし、なんでなんだ。気に入っていた娘なんだろう? といわれれば、そうです、気に入っている娘です。だからこそ、縛るんです、脇目も振らず縛るんですよ! 自分のいっている言葉の意味がわかりません。けど、愛しているからこそ縛るんだという、そうした趣味はわかるようになったような気がします。だから、困ったなと。本当の本当に困ったなと思っているのですね。
私は未だ茉莉絵オンリープレイですけれど、夜は縛り、日中は純愛を貫くという二重生活がたまらないといいますか、夜の行為は後見人に強要されているから仕方がないんだ、なんていいわけしながらですね、縛る。この背徳感が、日中の純愛を装う交流をより一層に甘味なものと変えて、お互いが背徳をともに抱えている、だからこそ自由であれる間だけは清く愛し合おう。このアンビバレンス! 困った。私はこんな感情を理解したくはなかったぞ。だって、一度理解してしまえば、後は深まるばかりではないですか。
この後の予測を少々。私は茉莉絵とのハッピーエンドを迎えた後には、きっと蝶子に向かうでしょう。今は感情を殺している蝶子ですが、もしこの娘が主人公に本心を漏らすようなことにでもなれば、無表情の向こうに隠している感情の息衝きが感じられるようになるのだとしたら、きっと私は転がり落ちるように蝶子の支配下に落ちて、命を賭しても君を助けるよプレイになるんだろうな、そのように思います。といったわけで、なおさらまずい。もう、どうしようもなくはまりそうな危険性がぷんぷんしているといったわけで、やはり後は深まるばかりであるのですね。
- 女郎蜘蛛 — 呪縛の牝奴隷達
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