NHKでやってる歌謡ショーを見ていたら、岩崎宏美がでていまして、私、子供の頃、この人の『聖母たちのララバイ』が好きで好きでたまらなかったんですよ。この人のデビューした頃については、幼すぎてよくわからない、だから『ロマンス』とか『シンデレラ・ハネムーン』とかはほとんど覚えになくて、もう、それこそ、『聖母たちのララバイ』以降一色といった感じでした。もっと有り体にいえば、『火曜サスペンス劇場』の主題歌のラインが好きだったのですね。ほら、『家路』とかもヒットしたと思うのですが、とにかくああした曲調が好きで、しかし子供の頃の私が『火サス』のエンドテーマが流れるような時間まで起きていたとは思えない。再放送とかで見てたのかしら。ともあれ、好きだった。そして、そうした曲を好きだというのは、間違いなく『聖母』があってのことだと思うのですね。
しかし、なんでこんなに『聖母たちのララバイ』、ひいては岩崎宏美が好きだったものか。唐突ですが、私には従姉があって、その名前が博美でした。だからというわけでもあるのですが、幼稚園の頃は郷ひろみが好きで、しかし岩崎宏美の頃には、さすがにその呪縛からは自由になっていました。だから、純粋にその曲調、歌いぶり、そして歌詞、内容にひかれていたのでしょう。あ、そういえば、ピアノの先生の名前も博美だったな。突然思い出してなんだけど、私がピアノを習っていたのは先生が好きでだったのだから、いや、だからといって名前だけで岩崎宏美を好きになったということはないはずです。
高校を卒業してすぐくらいでしょうか、私はこの人のベスト盤を買っていて、それは『全曲集』というタイトルで、さすがにこれが全曲を網羅してるだなんて思いやしなかったけど、でも主要な曲は押さえているのかなあ、そういう思いもあって買ったことを思い出します。あの頃、『ママは小学4年生』が大ブームでしてね、ええと、私の中での話なんですけど、その主題歌を歌っていたのが益田時代の岩崎宏美で、『愛を+ワン』、私はやっぱりこの歌好きでしてね、久しぶりに聞いた岩崎宏美にすっかりやられちゃって、それでベスト盤を買ったというわけです。いや、買わずにはおられなかったといった方がいい。私の当時行き付けのCDショップに岩崎宏美『全曲集』を見付けて、たまらず買ってるのだもの。それくらい、『聖母たちのララバイ』を聴きたかったんですね。
しかし、この歌を聴くたびにいつも思うのですが、二十代半ばの女性が、母となって疲れた男達を抱き留めようという内容を歌っていたという、1980年代の世相を考えるとなんか切ないものがあります。80年代頭は、景気減退期だったらしいですが、そうした状況で疲弊していた男達は、この歌を聴いてほっとするものがあったのかも知れませんね。そうした世相を捉えて作られ、そうした世相が受け入れヒットした、後からいうのは簡単なんですけどね、でももしかしたらそうだったのかもなって思うのです。
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