『コミックエール』と『まんがタイムきららフォワード』のコミックス、発売日が変更されまして、毎月の12日になりました。なんだか忘れてしまいそうですね。もういっぺん書いておきましょう。12日。毎月12日に発売されることとなりました。その第一弾、エールからは『すいーとりぼん!』がリリースされまして、これは買わなくてはならない。単行本発売を知った瞬間にそう思いました。いや、私はもとよりかたぎりあつこという人の漫画が好きで、それは『まんがタイムジャンボ』にて連載されている『ハッピーカムカム』。これがですね、非常によいのですよ。女の子のコミュニティものとでもいったらいいのでしょうか、女友達で集まってわいわいやっている様が楽しい。私はそういうタイプの漫画が好きなんですね。華やかで、けどたまに苦味をしのばせてくる、けれどそうした味も甘さの中に消えてくのさ。さて、『すいーとりぼん!』。こちらはというと、魔法少女がヒロイン、けれど……、やたら苦味が強いのですが。なんつうか非常にシビアな話が出てきて、なのに彼女は魔法少女!? そのギャップは最高です。
とはいっても、私は魔法少女はよくわからないのですよ。そうしたジャンルがあることは知っています。一時期などは、スタジオぴえろの魔法少女ものが一世を風靡しましたよね。けど、一度も見たことがないのですよ。数年前だったかなあ、たぶん『クリィミーマミ』をKBS京都かなあ? でちょこっと見ただけ。ええと、クレープ屋のワゴンが出てくるのはマミ? だとしたら多分それで正解。しかし、それで私の知識は打ち止めです。ええと、『ミンキーモモ』は結構見てたんですけどね。新モモは関西では半分くらいしか放送されなかったので、よく知らないのですが。ピピルマピピルマプリリンパ、でしたっけね、変身の呪文。あと呪文で知ってるといえば、華麗なるせーちょー、が『ファンシーララ』? ピリカピリララのびやかに、が『どれみ』? ホロレチュチュパレロが『グランゾート』で、エトカフェナンが『魔法使いTai!』、ナイタイクスプッチトテポが『ときめきトゥナイト』。後は……、も、もう出ないか……。とまあこんな私ですから、かたぎりあつこ的魔法少女ものである『すいーとりぼん!』を、はたしてどれだけ正しく受け止められているか、正直なところ自信がありませんな。
『すいーとりぼん!』、その構造はドラえもん的とでもいいましょうか、ある日魔法少女のすいーと♡りぼんが友美の家にやってきた! 出会いはネットの掲示板、ケータイ代の支払いでお母さんとけんかしたりぼんは、なんと家出、友美の家に転がり込んできたのです! ……。微妙に塩辛い設定です。魔法少女とは、夢と希望にあふれ、出会う人たちにしあわせを運んでくる、ものではないんですか? ないんですね……。少なくとも、りぼんは違う。口調がぶっきらぼうだったり、割と辛辣だったり、実はひきこもりだったり — 。ひきこもり!? やけに現代的なテーマだな。いや、小さな挫折が次の一歩を踏み出させなくすることってあります。彼女だって — 、いや、これ以上は私の口からは話せません。
といったわけで、別の切り口から見ていきましょう。
魔法少女、それは本来は、女の子の憧れなんだと思うのですね。魔法という不思議な力がもたらす神秘とは、大人になる、違う自分になる、私の知っている誰かになる、そうした変身の力であったりすることが多いですが、戦わない魔法少女とは、少女の発達過程における変身願望を満足させるものであったと思うのです。憧れの職業、憧れの大人、憧れのアイドルになる。それはなりたい自分を模索することであり、いわばごっこ遊びの延長です。ところが、『すいーとりぼん!』はそうではありません。彼女は挫折をすでに経験してしまっている。見た目こそは少女でありながら、少女の頃をとうに過ごしてしまっている。ゆえにその立ち位置は、少女の憧れる変身ヒロインであるというよりも、むしろ自分を克服しようともがく悩めるヒロインにシフトして……。
これはやっぱり、『エール』の購読層を見越しての設定なのでしょうか。だとしたら、いい線いっていると思います。少なくとも私に関してはドンピシャ。挫折以降向かう方向さえ定めることができず、いまだ迷走を続ける日々から抜け出せない私にとって、りぼんは同じ悩みを持つ同志であったとさえいえるのかも知れません。彼女のいらだちは私のいらだちに似ている。プライドばかり高いから、また失敗することが怖くて踏み出せない。そんな魔法少女というのもまた面白いものがあるなあと。普通なら、少女の夢、希望、憧れを一身に背負う、そうした存在であるはずの — 、そうなるはずだったりぼんが、私のような人生に疲れた人の共感を一身に集めている。なんだか、侘びしく思えるかも知れないそうした設定が、逆に、ああがんばれと、怖れを乗り越えて、一歩を踏み出せと、そうした応援したくなる気持ちを沸き立たせたと思うのですね。
見た目は可愛く、ストーリーにしても、定番どころをしっかり押さえて、しかしそこに潜むシビアでシニカルな視線は、ただ可愛いだけでないりぼんの魅力を強く押し出していたと思います。同居人、というかりぼんが押し掛けたのですが、友美のやわらかでしなやかな健やかさが、すさんだりぼんの心をあたたかく手当てするかのような物語は、読んでいてとても和らぐものでありました。甘く、甘く、苦く、やわらかに触れる物語は、ちくっとした痛みを残し、そしてとける。面白かったです。
- かたぎりあつこ『すいーとりぼん!』(まんがタイムKRコミックス エールシリーズ) 東京:芳文社,2008年。
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