2009年2月23日月曜日

はなまるっ!

 荒木風羽は私の好きな作家です。詳しく知っているわけではないけれど、『まんがタイムきららMAX』に連載されていた『スキっ!キライっ!』で好きになって、そして現在連載中の『そして僕らは家族になる』、ちょっと辛気臭いところもあるんだけど、そうしたニュアンスも含めてやっぱり好みで、だから既作が単行本化されるというのを知ったときは、ちょっと嬉しかったです。そのタイトルは『はなまるっ!』。『コミックフラッパー』で連載されていた漫画なのだそうですが、私はそのころ、この作者の存在すら知らなかったわけで、けれどその知らずにいたころの漫画をこうして読めるチャンスがやってきた。本当にありがたいことです。『そして僕らは家族になる』の効果でしょうか。一定数のファンが付いて、一定の売り上げが見込めるようになったということなのかも知れません。じゃあ、だったら、その期待に見事応えてみせようじゃありませんか。買ってきたのでありました。

内容は、女学生が楽しそうに学生生活を送っている、その様子を描いたものであるのですが、読み始めの当初、少々混乱しました。あのカラーは描き下ろし? ということは、あの文化祭からスタートしたの? 第一回にしてはやたら唐突なんだけど。人物紹介などもないし、それこそ、これ、第2巻ですといって渡されたら信じてしまいそうなスタートに戸惑い隠せず、まさか、まさか、掲載当初の何回かオミットされてる!? そんな、ひどい、ひどいわ。よよよと泣き崩れ — 、たりはしませんが、しかしオミットされてたりしたら、ちょっと残念かもなあ。とはいいますものの、まずはこうして読めることを喜びたいと思います。初出一覧が見当たらないので、オミットされてるかどうかもわからないのですが、でも気にせずに読んで、楽しんだらいいんです。とにかく、今、手にしているものがすべてである、その意気で読み進んでいったのでした。

しかし、登場人物は結構ベタといいますか。関西弁キャラはあえて外すとしても、腹話術人形を通してしか話せない女の子や、着ぐるみキャラが出てきます。個性的でないことに悩む完璧優等生がいるかと思えば、病弱の流血教師などなど、わりと見掛けるタイプのキャラクターで構成されているところに、最初は微妙さを感じないでもなかったけれど、しかしそうした要素はほどなく気にならなくなって、そうなれば後は荒木風羽のらしさが出てくるばかりであります。強烈なオリジナリティを発揮するわけでもないけれど、なぜだかほどほどに個性的、にじみ出るような独自性、ちょっとしたおかしさ、ああ、ファニーだったりストレンジだったりってことね、が働きかけてきましてね、例えば着ぐるみは着ぐるみでいいんだけど、撞木鮫というセンスはかなりきてます。そうした、はしばしに感じられるセンスの独特さが私の心を捉えましてね、ああ、そうか、私のこの人が好きというのは、まさにこの不思議ささえ感じさせるセンスのためだったんだって再確認したのですよ。

思えば、『スキっ!キライっ!』だってそうでした。よる子の奇矯性。その、あまりの変な子ぶりに心奪われて、なんて可愛いのだろう、釘付けでした。それが『はなまるっ!』でも再現するかも知れない。けれど、まだ足りない。まだ残っているという原稿、2/3が足りない。実際、回を進めるごとに、キャラクターの自然な奇矯性が開花していくと感じられるものですから、このまま先へ先へと進むことができれば、きっともっと好きになるに違いない、そんな予感がするのです。そして、この人のもうひとつの持ち味。心の機微を、ささやかにしっとりと描いて、ほのかに暖かみを残すようなところもじわりじわりと効いてくる。これは、いいな。漫画に加えて、この作者の持ち味がよいな。折々にそう思わせるところがあるのですね。

だから、メディアファクトリーは、続々と続刊させるといいと思うよ。そして、もしも可能なら、『スキっ!キライっ!』も出してください。じわじわと、この人の持ち味が浸透していくとどんなにか素敵だろう。そのように思い、願っているのです。

  • 荒木風羽『はなまるっ!』(MFコミックス フラッパーシリーズ) 東京:メディアファクトリー,2009年。
  • 以下続刊

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