2009年2月22日日曜日

オリジナル・リガチャー Tシリーズ

Saxophone mouthpiece with T Series rigature昨日に引き続き、Tシリーズのリガチャーについて。ただし、今回はアルトサックス編であります。これまで使ってきたリガチャーは、定評のあるハリソンのゴールドプレート。リードをH型のプレートで支えることで、その振動を妨げない。固定的なファンのあるリガチャーでありまして、さらにいうと、私の持ってるのはオリジナル。このリガチャーには復刻とオリジナルがあって、オリジナルじゃないといやだという人もいるんです。ハリソンは華奢なことでも知られ、ネジを絞めすぎると金属が切れる、そうした事故もあるリガチャーですが、しかしオリジナルを愛する人は、切れても修理して修理して使い続けるのだそうです。その人にとっては代え難い、大切な道具であるのでしょうね。そしてそれは私にとっても同様で、もし壊れたらたまらないと、細心の注意を払って扱ってきました。ネジはそっと、リードを軽く押さえる程度にしか絞めない。キャップはしない。チューニングもしない(嘘です)。マウスピースの抜き差しは、リガチャーに負担のかからないよう、場合によってはリガチャーとリードをはずして行うなど、もう大切に大切にしてきたのです。それは、それだけ気に入ったリガチャーであったからなんです。

というわけで、ハリソンとTシリーズの対決と相成りました。おそらくは、それほどの差異は出ないはず。そのような予想を立てて吹いてみて、はたしてその結果はどのようなものであったのでしょうか。

実際、劇的な違いは出ませんでした。しかし、違いは確かにあるのです。Tシリーズの方が充実して吹けるという印象があります。低音はよく出ます。けど、ハリソンも同じくらい出るからなあ。高音も出ます。でも、ハリソンでも出るんですよ。しかし、その出方がちょっと違います。ハリソンの方が軽い吹奏感です。そして、ちょっと神経質な感じ。よくいえば繊細です。対してTシリーズはというと、結構な抵抗感がありまして、わりと豪快に鳴ってくれます。ただ、息の消費が増えた? なんてったらいいんだろう。マウスピースの開きが大きくなった感じがするっていったらいいか、昔大学で吹いてたバリトンサックス、あの頃の吹奏感を思い出した。特に低音の響きにその感覚は顕著で、大学の備品たって音大なので、そりゃちゃんとしたものが置いてあるんですが、セルマーのSerie IIにS80 Dが付いてたんだっけかなあ、あれいい音したんですよね。低音の魅力、Low Aなんて出した日には、うっとりする。そんな気持ちよさがあったのですが、Tシリーズを使ってみて、そんなこと思い出しました。

ハリソンが神経質なら、Tシリーズは無神経? いや、そんなことはありません。リガチャー側でしっかり音をホールドしてくれているという感触があって、それを私は抵抗感があると表現したのですが、押し返してくるといったような感じはなくてですね、あくまでも抜けのいい音がするんです。私の実感では、ハリソンよりもいいかも。高音をはじめとして、全体に音は太ったと感じます。うまく受け止めてくれる感触があるから、思い切ってどんと渡せるといった感じがいい。ちょっとくらい不用意に吹いても大丈夫。でも、手を抜いた吹き方すると、手を抜いたような鳴りがするぞ。こうした風に感じるのは、奏者の意図によく反応するからなのかも知れません。一生懸命吹いたらそのとおりに応えてくれる。フォルテシモもピアニシモも、ニュアンスを違えて吹こうとした時も、うまく反応してくれて、コントロールがしやすいと感じられます。

ただ、こうした感覚には直に慣れます。ハリソンにはハリソンの長所があって、今は私はハリソンでは得られなかった部分に反応しているのかも知れません。なにしろ、私にとってハリソンの感触は、自然でニュートラルと感じるようにまで慣れていたのですから。けれど、私はTシリーズの鳴り、安定性、ぽんと投げてまかせられる安心感に魅力を感じて、これからはこちらを継続的に使っていこうと思っています(ネジが壊れたりする心配もなさそうだし)。そしてTシリーズが自然に、当たり前になった時にハリソンを使うと、両方の長所短所がよくわかるんだろうなと思います。

あ、そうだ。私の購入したのはピンクゴールドのモデルでした。上記の感想にあった、音の太ったという印象、これはピンクゴールドの輝きもありつつ柔らかくしっとりしていて深みや色気があるという特性によるものなのかも知れません。太ったというとなんか変な表現ですが、ふくよかといいかえるとそれらしいかも知れません。私の実感としては、あくまでも太ったなんですが。

もし、またハリソンの音質が欲しいと思うことがあったら、Tシリーズの金メッキあるいはロジウムを試してみるといいかも知れないなと思っています。説明を読むと、おそらく安定性はそのままに、素直な伸びや発音の明瞭さを得られるのではないか。アーティキュレーションをしっかり表現したい時にはロジウムが有利?

いつか、全種類そろえそうな予感がして危険です。

引用

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