『まんがホーム』、2009年11月号が発売されました。10月にはいって、もう日本においても定番のイベントといってもいいのでしょうか、表紙にはハロウィンを思わせる絵があふれて、そして『ホーム』恒例のアンケートは、「もしも魔法が使えたら…?」というテーマであります。魔法か。そうさなあ、私がもし魔法を使えるなら、ラカニトが欲しい。Wizardryの窒息の呪文。夏になって、虫が飛ぶようになると、殺虫剤なんてもんじゃなく、ラカニトでやつらを一網打尽にしてやりたい、なんて思うのですね。というような物騒な話はさすがに誰もしませんで、ということは、つまり私は荒んじゃってるってことなのかなあ。がっかりです。
『恋愛ラボ』、なんとこれは驚く展開。いや、いつかくるだろうと思ってたんですけど、ここでくるのかー。ここ数ヶ月、じりじりと追い詰められてきたように見えたリコ師匠ですが、ああ、ついに、ああついに。一度は勇気を振り絞ったんだけどなあ。それでまさか、思わぬ伏兵とでもいったらいいか、この時をじっと伏せて待ってたんだろうなとしか思えないどんでん返しに、読んでいる私もやられました。しかし、それで辛い思いするのは誰なのか。自ら追い込まれた彼女なのか、無邪気に追い込んでしまった彼女なのか。おそらくはふたりともに辛い思いをするのでしょうね。
『おきばりやす』。こないだ、『おこしやす』が最終回を迎えましたが、それで今度新しく始まったのが、『おきばりやす』でありますか。京都の舞妓さんの話。なんかえらい気張ったお嬢さんと、えらいおぼこいお嬢さんと、ふたりでがんばる舞妓修行なのでしょうか。ついぞ知らぬ世界の話、ちょっと面白そうだなあという気持ちがします。
『あかるい夫婦計画』は、やっぱり影田くんが他人とは思われなくて、野生動物だったら命がけ!!
って、いや、本当にそう思います。自分もそもそも頑健ではないし、となるとこうして弱ることもしばしば。野生だったら、きっと淘汰されてたろうなあって。ほんと、人間、しかも現代人でよかったと思ってますよ。
『紫乃先生美録』、やっぱりなんかいいなと思って、美人小説家がヒロイン。ちょっと打算がある。で、内と外でキャラクター使い分けるみたいなところもあって、私は内で弟に対し酷いことしてる、そんな紫乃先生が好きです。眼鏡だからじゃないよ? でも、やっぱり頭のまとめ髪、お団子が見えないと男の子っぽくなって、それは素直にキュートだと思います。しかし、今回の、身内にエッセイストがいると、なに書かれるんだかわかりゃしないという話。これは姉と弟ものっぽく、被害者は和泉みたいになってますけど、実際のところはというと、親姉弟から友人知人にいたるまで、こうした目にはあうっていいますね。で、距離を追かれたりする。でも、家族は逃げられないから、最後まで被害にあい続けるのは、やっぱり和泉なんだろうなって、そんな気がします。
『おしのびっつ!』、おっと連載? ゲストの時もよかったけど、今回はそれ以上によい感じでした。忍者であることを隠したい妹ですが、その発想の逐一に忍者が染み付いているっていうネタの連続にはやられました。面白いです。悪くないと思います。
『横浜物語』。恋人? と別れてひとりっきりの新居で、隣人のオッパイを覗いたっていう漫画。申し訳ないのですが、すごくコメントしづらい。とりあえずは、よくわからないです。ちょっと期待しにくいです。こいずみまりが嫌いってことはないんだけどなあ……。
次、いこう。次。
『レンゲリンネ』。あれ? 眼鏡は? って、読み切り連載ってそういうことか。ええい、今回は美少女大好き守護霊の話です。妙に独占欲の強い、そんな守護霊はなんだかわけありに見せて、実はそうじゃない? いや、それははぐらかしただけなのか。憑いた相手は小学生。その子の負担とならないようにしたのだろうか。いろいろ含ませてはっきりとしない。宙ぶらりんにサスペンドされたかのような感情。それがこの作者の面白さだなって思って、さて私ならこれをどう読むのだろう。そうした問い掛けを自分にしたくなる、そんな終わり方を見せて、これは正直、好みです。
『3×ROOM』、女三人の同居もの。ここまではいいのだけど、なんだか不穏な終わり方を見せて、これは正直、好みじゃないです。
『東京!』、東京周辺の土地に関連付けられた登場人物が集う学校もの。『ホーム』8月号でゲストだった漫画ですね。これ、土地勘があるともっと面白かったりするのかな。わりと悪くはない感じ。擬人化土地もの。擬人化等の話ではないって秋葉原正親はいいますが、まあ擬人化ものっぽい感じはどうしてもするわけで、っていうか、彼のこれはつっこみを入れながらつっこみ待ちってやつなんだと思うんですが、どうなんでしょう。この先、土地の雰囲気を感じさせつつ、話が広がっていったらいいなと思っています。巣鴨行きまでの流れとか結構よいと思ったんですね。そんな感じで、キャラクターの個性が根付いていったらすごくよさそうです。
『ちまさんちの小箱』。これはいいウクレレ。いや、たまに指板がブリッジまで貫通してるようなの描かれたりしますんで……。ピクニックでの出来事、意外とロマンチストなとり子さんと、隠れロマンチストの雪宮、ふたりの距離、近そうで、くっつくほどに近いわけでなく、けど決して遠くないっていうの、微笑ましくってすごくいいです。で、みんなで楽器持ち寄って、適当に演奏。すごく楽しそう。雪宮くん、オカリナいいじゃないか。素敵です。でも今回私は、ウクレレお姉さんに釘付けです。
『ふぁみにゅ?』が最終回でした。そうかあ。このところ、話に動きがあったし、大家さんの謎も明かされたしで、終わりが近かったりするのかなと覚悟してたから、そんなにショックではないけれど、けどちょっと急な感じもして、やっぱり残念だ! 好きでした。はじまったころは、なんかよくわからん漫画だなって思いましたけど、実際、なんで家族ごっこなんだろうって思ったものでしたけど、それが読んでいるうちにだんだん好きになってきて、最近では本当、すごく好きで、で、前回、家族ごっこの意味が明らかになって、評価ががつんがつんと上がった。これはよいわ。最終回も、ちょっと切なく、けれど基本には明るさを保って、そのちょっと感動、そしてほのぼのという塩梅、とてもよかったです。後日譚もあって、なんてこった、きいろ君やるじゃないか。これまでのきいろ君の紆余曲折、それがあるから、本当にやったじゃんって気持ちになって、それは若菜、すみれのふたりに関しても同様。がんばりがあって、それが報われたんだなあ。語られなかった一年が、そうした努力を思い起こさせて、とてもいい読後感を残してくれました。
この人は、この漫画がはじめてづくしだったみたいですが、フレッシュで、個性的で、とてもいい漫画を描かれて、もし別の漫画で再開できるなら、それはすごく嬉しいこと。どこかで連載を持たれたりしないものかな。ちょっと切望する思いです。
- 『まんがホーム』第23巻第11号(2009年11月号)
引用
- 井上トモコ「あかるい夫婦計画」,『まんがホーム』第23巻第11号(2009年11月号),67頁。
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