『まんがタイムきららフォワード』12月号は本日発売です。表紙は前号に引き続き『夢喰いメリー』であります。で、やっぱり主人公が表紙に出ないというね。いや、主人公はメリーでしたか。どうも私は夢路が主人公と思いがちでいけません。背景に流星が描かれてるのは、今、ちょっと話題のオリオン座流星群が意識されてるのか、それともただの偶然なのか。どちらかわからないときは、意図的と思っておいた方がいい。なので、この表紙はオリオン座流星群なんだって思うことにします。
さて『夢喰いメリー』本編は、絵を描くサナと、そしてエンギのもとで特訓する夢路。ふたつの場面が描かれて、しかし夢路は当初に思っていた以上に努力型主人公で、なかなかに恐れ入ります。この漫画は敵がどうこうよりも、圧倒的な状況でも立ち向かおうとする、そういう登場人物の心情がいいなと思って、夢路なんかは本当にそんな感じ。前向きな姿勢というのは、それだけでなにかひきつけるものがあるのかも知れません。そして、メリーの描いた絵。そこになにか次への展開の鍵があるようで、動きがあるだろうと予想させる、そんなところがちょっと次回を楽しみにさせるのでありました。
『S線上のテナ』。オスティナートを連れて逃げるデュオンの意図があきらかとなって、そうか、そこになにかはかりごと、裏切りの影などを見てしまっていましたが、それは考え過ぎであったようです。そうしたものよりも、もっと純粋で素朴な思いがあったのだなっていう、こういうところは岬下部せすならしいっていっていいのだと思います。
『トランジスタティーセット — 電気街路図』は、エミ太くん、大暴走。いや、別に暴走したわけじゃないけれど。数ページにわたり、上半身裸で過ごすエミ太くん、けれどちっともいやらしくならないっていうところが、彼女のいいところだと思います。私は、この漫画ではほかならぬエミ太くんがお気に入りなのですが、可愛いものにあこがれて、けれどちょっと縁がないみたいに描かれるけれど、実際、この人は充分以上に可愛いよな、いつも見ていてそう思います。だから、この人がこうしてメインで活躍すると、私はちょっとしあわせ気分です。
『純真ミラクル100%』は、以前からの不穏な動き、その詳細がだんだん見えてきて、しかしそこで二宮さんの恋心もばれてしまうっていうところ、いや、実にいいじゃないか。私はなんでか二宮さんがお気に入りで、不器用そのもの。現実に存在するタイプの、しかも悪いタイプのツンデレ。女性、すなわち末澤の側のドロドロとした感情に比べ、なんとストレートで飾り気がないのだろう、二宮のそれは。やっぱり私は彼が好きだなと思わないではおられませんでした。
ところで、無粋なつっこみするけれど、あのタイプのギターは、たとえエレアコであっても、普通に音出るので、シーンってのはさすがにないです。でもまあ、本編に描かれるもの、彼彼女らの心の動き、絡みあい、そうしたものには関係のない瑣末な部分であります。私は気にしません。
『少女素数』は、すみれの戸惑い、有美との確執、それが深まるのかどうなのか、一触即発の気配がぐっとたわめられたままに進行するものだから、なかなかの緊張感。で、読者である私だけでなく、この漫画の男性陣、兄貴さんもぱっクンもそうだっていうところ。気にして、気になってしかたなくって、それで気もそぞろ、目の前のことに集中できなくなって、ああ男はしょうがねえなあ、と思う。自分もおんなじなんですけどね。
今回は、女子三人の意思の疎通、意識の確認が再度なされたっていうこと、それから思いもかけなかったあんずの狼狽。ああ、これまではすみれのウィークポイントが表立つことが多かったけれど、今回描かれた、こうしたところにあんずのウィークポイントはあるのかな。どちらもこれから、発展途上の彼女らの、言葉にして気持ちを咀嚼して飲み込むだけの段階にいたっていない、そんなところの色合い、そしてそこから変化していく様、といったあたりが魅力となりそうです。けど、きっと変化していったら寂しく思ったりするのかも知れませんね。特に兄貴さんあたりが。
『となりの柏木さん』は、柏木さんの友人が動いて見せて、しかし柏木さん、ああした面を見せている友人があったのですね。趣味においては、もっと孤独なのかと思っていました。そして主人公。カマかけられて、しかし誠実を貫いて、まあいつも真っ正直であるのがいいかといえばむつかしいところだけど、こと今回の件に関しては、桜庭いいじゃんと。おびえながらも、きちんとした対応。いいやつじゃん。そう思わせてくれました。けど私はあのカマかけた友人、清花がなかなかによいじゃないかと。あの手管! なかなかに印象的でありました。
『大江山流護身術道場』、ゲストです。いや、ほんと、これが『まんがタイムきらら』系列誌でよかった。もしこれが成年誌掲載なら、あれですんだとは思われません。睦月も夏も本当に運がよかったです。しかし絵柄がちょっとそれ系に思われて、でもってヒロイン睦月が痴漢やら変質者の類いに狙われやすいときているものですから、当然それっぽいシーンも描かれて、私にはちょっと過剰と思われました。でも、話の流れは結構嫌いじゃなくて、やっぱり悪いのんがばたばたやられるってのはいいなと思う。まあ、ちょっと物騒だけどさ。でも実際、ああいうシチュエーションで身を護るとなれば、なにより多勢に無勢という状況を解消しないことには勝目が出ないわけだから、殺しちゃったらごめんね?
となるのも仕方ないよなあ。仮に殺しちゃったとしても、正当防衛が成立しない? あの状況で過剰防衛とはならんと思うけどどうなんだろう。
ゲスト掲載で、この印象。もしこれが連載になるなら、同様の傾向で続くことになるのかも知れないけれど、『きらら』系列誌でこういうのはちょっとつらいように思います、とりあえず私が。やっつけました、めでたしめでたし、といった楽観がなくて、やっつけました、逆恨みされました、ふたりは付け狙われます、ってなることがしっかり描かれて、まあこういうのは現実味があるんですけど、けれど私は現実的ななにかを見たくてこの雑誌を読んでるわけじゃないからなあ。中学生の女の子が木刀手にして悪いやつらをボコボコだ! っていう、それだけでよかったんじゃないかなんて思うんですね。それで悪いやつらは改心する、そうでないと、なんか爽快さがない。陰湿な暴力性がふたりにつきまとうというのは、やっぱりちょっと読んでいてつらいんです。安全が脅かされた状態が、一時的に緩和されただけに過ぎないっていうのがね、やっぱり不安を解消させず、ゆえにすっきりさせない、そんな風に思います。
キャラクターは結構好みなのになあ。いや、そうだからこそ、すっきりしないのかも知れません。それが証拠に、悪い彼らが大変なことになってるの、どう考えても後遺障害は免れないくらいにやられてるというのに、ちっともなんとも思わない。それこそ、汚物は消毒だー、くらいでちょうどよかったんじゃないのか。そんなこと思ってるくらいです。うん、消毒しちゃえばよかったんですね。とりあえず、最初の三人の段階で消毒しとけばよかったんですよ。というわけで、次回があれば、消毒方向でよろしくお願いします。あ、それから、欄外の解説はないほうがよかったと思います。そのへんのことは、本編、漫画で充分に表現できていたと思います。
『据次タカシの憂鬱』、おおう、『ラブプラス』っぽいものが……。私の知るかぎり、漫画でこれを扱ったのははじめて? いや、ゲーマガですでに出ているのか? わからんけど、一般誌一番のり? どうなんでしょう。
どうでもいいけど、でーえすを前にしたタカシ、めちゃくちゃキュートなのが気になります。そしてこの展開、ええと、つまりは勘違いの連鎖と、そこで取り残されたわかな、そして暴走する周辺。これはなんか急展開する? 私はこのところ、ちょっと急展開を怖れるようになってしまっているのですが、これも今回もちょっとそんな感じで、ちょっとはらはら。なにごともなく普通に続いていってくれたら、それで満足なんだけどな。もちろん、タカシに彼女ができて、それで続いていってくれてもかまいません。安定して面白い漫画です。気に入ってるんですよ。
『銘高祭!』、これまでの準備の期間に描かれた、銘高祭に関わる皆の心情、それが祭の日を迎えて、はたしてどのようなものとなったか。まさに実りの収穫といった様子。もう大きな事件もなさそうで、大団円目前といった感じに、読んでいる私もなんだかほだされて、ええ、よい雰囲気ですよ。以前、私が、この人どうだろうといった灰原先生も、やっぱりこの人どうだろう、プロとして、教育者としてどうだろうとは思ったりもするのだけれど、けれどこうして素直さを見せて、ああ、だからやっぱりこれはこれでいいのかも知れませんね。そして、ちょっと切ない情景も。ああ、桐原。すべてなにごとも丸く収まるわけじゃない。それもまた青春であろうと思われて、ああ、桐原。私はあんたのこと嫌いじゃないよ。いや、別に嫌われたってわけでもないんだろうけれどもさ。
かくして、祭の夜はふけて、高校の学祭で花火なんていうのは夢だけれどもさ、そうした夢を描いたものとして、『銘高祭!』は悪くない。そう思うのですね。
『暴君!日下部ゆう』、前回の続き? ゲストなのか連載なのかはちょっとわからんのだけど、曖昧なのはあんまり好きじゃないから、じゃあいっそ連載でという風にはならんものかな。ともあれ、下僕にされた少年が、解放を目指して奮闘、可愛いもの好きの日下部ゆうに猫の写真で迫ったりと、いろいろがんばるんだけれどむくわれない。いや、下僕として確保されているというその状況が、すでにむくわれてるってことじゃないのんか? という私はだいぶ駄目になってしまっているようです。
とりあえず、猫の写真を入手すべく、殴りとばした上に踏み付けにする、その踏み付け時の表情、おお、なんとかわいらしいのだろう。私も踏み付けにされたいものだ、なんてことはいわないけれど、実際この漫画は、日下部ゆうの可愛さにドライブされているなと思います。
- 『まんがタイムきららフォワード』第3巻第12号(2009年12月号)
引用
- KAKERU「大江山流護身術道場」,『まんがタイムきららフォワード』第3巻第12号(2009年12月号),242頁。
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