2009年7月2日木曜日

『まんがホーム』2009年8月号

慌しく7月。なんか、気づけば今年も半分過ぎてしまってましたよ。もう、まったくまいったなあ。なんて思いながら、月が改まれば『まんがホーム』が出ます。買ってみれば、漫画家のみなさんに聞いてみました、定額給付金の使い道、なんていうアンケートがあって、ああ、給付金、そんなのもありましたね、ってもうずいぶん過去の話に思えます。テレビにつなげるハードディスクを買ったんですよね。いや、ほんと、これ便利、って話それはじめてますね。給付金の使い方についてのコメントは、その人なりの考え方がよく現れていて、面白かったです。中でも好きなのは、佐波まおさんのテレビの話で、本当に物持ちがいんだなって驚きです。うちの買い替え前のテレビは、1995年のものでした。いやあ、まだまだ修養が足りない、そう思いましたよ。

恋愛ラボ』は、前回に解決した事案、それがちょっと重圧持ってのしかかっていた反動か、とんでもなく馬鹿なのりになってしまって、けどそれでこそ『恋愛ラボ』の真骨頂という感じもするから、素晴しい。サヨをみんなで可愛くしよう! って、うわ、これは可愛い。あの変眼鏡じゃなくて、普通の眼鏡かけたら、屈指の美少女なんじゃないのか。他の四人ぶっちぎりで引き離す可憐さなんでないのか、などと思わず取り乱してしまうくらいに馬鹿馬鹿しくも楽しい話でした。ところでさ、眼鏡が本体って馬鹿なこといってるよ、って思って、けどちょっと気になって検索してみたら、過去に私がいってました。おおう、なんという馬鹿発言。

今回の『恋愛ラボ』は2本立て。後半は巻末にあるのですが、今ついでに書いておきます。エノとサヨの子供時分のエピソード。サヨを気にしながら、けれど気にしすぎるあまりに誤ってしまったエノ。そのエノの心情を表現する数ページ、もうなんだろうなあ。泣きそうになる。こういうことは、実際にもありそうな話。けれど、それだけに、訴えかけるのかもなあって。大きなできごとではないけれど、でもことエノに関しては、小さな問題ではありえなかった。その素直さ、自分だけが思ってるんじゃないかって不安にかられて、けれど間違ってたって気付いて後悔して、その真っ直ぐな気持ちがいじらしくて、微笑ましくって、涙を絞るなあ。ささやかなエピソードに浮かびあがるものであるからこそ、そっと心に染み入るのかも知れません。ああ、エノはいい子だ。けど、サヨはもうちょっと素直でもいいかも知れない。いや、その一見ひねたところが彼女のよさであるのかも知れないけれど。

しまった、のっけから長すぎた。

『さくらんぼ。』は、そうか鰍おばさんはお父ちゃんのことが好きなのか。って、当たり前を当たり前と思い込んで、それを当たり前にするためのアクションを起こさずくよくよしてるっていうのはやっぱり不健全だよなと思った。こういう問題は簡単じゃないけれど、けれどややこしくしてるのは大抵人の思惑のような気がするんですね。でも、少女漫画でもなんでも、恋愛の紆余曲折を理性的に話し合いで解決するとかいう展開になったら、そこにドラマのようなものは生じないわけで、まあ、難しいなあと。ところで、おばさんはわりと若く見えるのに、父ちゃんはものすご老けてみえるよ? 苦労したから?

天子様が来る!』の「理想」は、なんか深いな。現実にこういうこという人、いわなくとも思ってそうな人っているけれど、それが偽善的に見えるのは、実際裏まですっきりきれい、ってことはありえないと思うからで、けれど天子様のいうとおり、本当にすっきりきれいな人だったらどうなんだろう。私がこういう人を警戒するのは、自分のきれいさを盾に、私の汚ないところを浄化されようとなったらたまらんなと思ってるからかも。考えてみれば、結構難しい問題です。

『お江戸とてシャン』、妖怪怪異の類について。なんか普通に怪異と共存しているみたいな生活。それは迷信かも知れないし、そうでないかも知れない。なんかおもしろいさじ加減。含みもあっていい話でありました。

『てんたま。』の、るーの出自の明らかになる、そんな回。それは、私らの世界にはありえないことで、けれどそれゆえにか、あって欲しいと願うこと、であるように思います。もう会うこともかなわない誰かに会いたい。そういう思いを抱いたことのある人なら、これをどう思うだろう。少なくと、ことさらに失うことを怖れている私には、ありえないこととは知りつつも、ありえて欲しい、そんな話。だからこそ、切ないなあって思います。

ヨメけん』、最終回! 好きな漫画だったよ! 駄目な人が、駄目なりに、その自分の駄目さを克服したいと、モチベーション上ったり下ったりうろうろふらふらしながら進んでいく、そうしたところの描かれるのがなんだか切実に感じられて、だからこそ好きでした。先生の問題は結局解決しなかったけれど、けれどそれでも時にうおーって克己心ふりだして、頑張ろうって決意して、ほどなくしてへこたれて、けれどまた頑張る気になったりして、うろうろするんでしょうね。その先に、少しでも理想に近づいた自分があるなら、それはとてもいいことだと思います。問題の完全解決なんて望めないけれど、それでも理想に近づこうと歩み続ける、そうした営為こそが人の生きるっていうことなんだと思うから、私は同じく駄目の仲間として、ひなた先生のように、うろうろふらふらしながら歩き続けようと思います。

楽しかったよ! さよならはいわないよ! これから先も、どこかで同じく歩みを進める同志として、折りに思い出すだろうと思うから!

『OHでりしゃす!!』、微妙に食べもののねたが減ったな。いや、ちゃんとあるんだけど、これまで以上に小ネタ感が強まって、けどそれでも面白かった。食べ物なら食べ物と、しばりにしばられすぎることで不自由になるくらいなら、こうして自由に話のふくらむにまかせるほうがきっといいな。そんな感じでした。

『イエス・マスター!』、とわはマスターが本当に好きなのだな、すべてなのだなって話。そうした思いの揺れ動く狭間で、自分をたしなめようとするとわさんが人間くさくて、うん、ロボットとかアンドロイドとかを描こうとする時って、やっぱりテーマは人ってなんだろう、人の思いってなんだろうってところに向かうんだろうな。そんなことを改めて思いました。

『コンビに天使』、ゲスト、実家がコンビニの双子の話。似てない双子、けれど時に同じような行動をとって — 。そういう話がコンビニを舞台に描かれて、悪くなかったと思います。ありがちといえばありがちかもは知れないけれど、そこに深夜のあいさつとか、おでんでテト●スとか、そういうのが加わって、ちょっと一押しって感じになっているのかと思います。

『東京!』、ちょっとギミックが強すぎると感じないでもなかったけれど、制服超ムシだねのようなつっこみや、言っておくがこの話は擬人化等の話ではないといった断り、そういうのは面白かったです。仕掛けの強さが生かされてるっていう感じなのかと多います。ところで、東京の地理に明るくない地方もんには、八王子といわれてもちょっとぴんとこない。とりあえず新宿からちょっと遠いことは理解しました。

『ぷちたみ』、こちらも最終回。順当に落ち着いて、子供たち大好きで、その一心でわりきっちゃってる先生はなんか見ていてすがすがしいな。大掛りなドラマ仕立てにしないのは、多分紙数の問題もあったのだろうけれど、ばたばたしすぎることなく、素直に結論にこぎつけさせるところは、持ってまわったやりかたよりも共感しやすくて、ああ、この人ほんとに子供たちのこと好きなんだなって感じさせてくれたように思います。好きの嫌いのって、こんな風に素直に表明できる場っていうのは、よいなって思ったりもしたのでした。

『ひなばと』は、おおおう、予想が外れました。きっと記憶喪失だと思ってたんだけどなあ。けど、物語は急展開して、そうだね、やっぱり相手の思ってることを、決め付けてしまうんじゃなくて、ヒアリングすることが大事だねって。思っていることは、ちゃんと伝えようとすることが大事だねって、そんな話でした。けどさ、あの梨々子さんは、ベーカリーで苦労してなかったらこんな境地には達してなかったと思うから、やっぱり紆余曲折も必要なのかななどとも思ったり。

『ふぁみにゅ?』、家族設定のしばりをはずれたかのような後半、ああいう自然さというか、その年頃なりの雰囲気というのはいいなと思ったり。けど、この人たちは、あの役割りを演じることで、すっかり型にはめられちまってるんだなあ。特にお父さん。でもそれが悪くないって思う私のようなのもいます。『えきすとら以蔵』の、劇団研究生のエピソードが目を引くのは、ある種、変化しないことを前提としている以蔵たちの関係の中で、この人だけが変化していく物語に乗っているからなのかも知れないななどと思いました。変化しない、その時々の今にとどまり続ける表現の面白さと、その対極ともいえる、成長していく人の物語、それが併存しているのが面白いと思います。

『物持ちがいいにも程がある』、昔のドラマのうんぬんですけど、ああいうの確かにぎょっとさせられますよね。今の細眉はさすがにちょっとと思うこともあるけれど、昔の眉もなんだろうって思う。そして肩パッドの盛り、あれはなあって。きっと今の風物も、あと十年二十年して振り返ったら、こんな風にぎょっとさせるようなものになっているんでしょうね。うわー、眉細すぎ! とか、思うようになるんでしょうか。時代を超えられなかったもの、それを振り返ろうという視線は、常に残酷であると思います。

  • 『まんがホーム』第23巻第8号(2009年8月号)

引用

  • カワハラ恋「東京!」,『まんがホーム』第23巻第8号(2009年8月号),129頁。
  • 同前,130頁。

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