『月刊アフタヌーン』、もちろん買っております。千ページ超えの分厚い雑誌。これと、他の雑誌の発売日がかぶると、持ち運ぶのが大変なんですよね。今月号を買ったのは、24日のこと、『まんがタイムきららフォワード』と同日だったものだから、もう袋が重くてしかたなくて、大変でした。帰り道、坂を登るのがもう辛くて辛くて、冗談抜きで荷を軽くしないともたないな、そう思うほどでありましたよ。
『久誓院家最大のショウ』、沙村広明の読み切りでありますが、これ、なかなかに面白かったです。勝気な娘、気の弱そうな父、そして一癖ありそうな家政婦、それが実に沙村広明っぽいタッチで描かれて、物語も基本はシリアスなんだけれど、やっぱりどことなく沙村広明っぽい面白みを感じさせるところがあって、そのバランスがすごくいいなと思いました。しかし、娘さんもそうなんですが、佐帆さんは本当に沙村広明的美人で、すごく魅力的。そうした魅力的な人たちが、親父さんの趣味に加担していく。普通ならありえない、そう思えることがありえてしまう。このストーリーの説得力は、娘の性格、娘が父を愛しているということ、その父もまた娘を愛しているということ、そして常軌を逸した、そう思える関係を成立させるだけの状況が用意されたこと、それゆえだったのだろうなと思えて、ほんと、うまいなあ、それが素直な感想です。屈折した愛なのだけれど、愛というものは、誰しもどこかに歪んだなにかを抱えてしまうものなんだろう。そう思わせる漫画。とてもよかったです。
『友達100人できるかな』の、思いもしなかった落ち、仕掛けに、やられたと思って、それこそ反省しながら、真っ直ぐに友人に向き合おうとする主人公がとにかくいいな、そんな感じです。名前が直行。朴訥で柔軟性がなくて、真正面からぶつかることでしか決着させられない。それは、もう最初から決められていたことで、しかしその真正面からがつんといくスタイルが魅力なんですな。考えるんじゃない、とにかくぶつかってみなよ。そういう単純さが、逆に魅力と感じるんです。
『百舌谷さん逆上する』は、なんだか昔の読み切り思い出させる、少年期のエロに対する興味みたいなものがビリビリと全面に押し出された展開に、いや、だって、俺らワルなんです、って感じの中学生どもが、えーっ、お前らのいってるブツってそれかよ! しかも拾ってくるんだ! 一気に可愛らしくなった。いや、もう、このばかばかしいノリは実に篠房六郎的。大好きなんだけど、こうしたノリにちらほらとシリアスが差し挟まれてくるところ、竜田のシリアスも、番太郎のシリアスも、すごくいかしていた。もう本当に馬鹿なんだけれど、馬鹿でもいい、ここぞという時に前に出られるやつは、もうそれだけでかっこいいよ、そんなこと思わせる話で、いや、もう、竜田も番太郎もかっこいいよ。もう、大好きです。
『ZONBIE MEN』、以前読み切りだったのが、評判がよかったのでしょうか、戻ってきまして、これ、ストーリーはわりとありがちで、あまり精緻に練られたというような感じではないのですが、けれど表現したいことっていうのが全面に押し出されている、そんな風に感じられるものだから、結構好きでした。そうした感想は今回も同じなんだけれど、けれどその素直な感じ、誤解しようもないメッセージの直線的に伝わってくるかのようなところ、よかった。このノリで何回も何回も続くと飽きてしまうかも知れない、そんな心配はあるのだけれど、数ヶ月に一度、季節ごとに一回くらいのペースなら、きっと新鮮に楽しめるのではないかなと、そんな風に思っています。
『いもうとデイズ』、まりかちゃん、失恋? けど、まりかちゃんと奈子ちゃんのパパがかわいそう……。娘のデートにはらはらとする父親たちは、危険な年頃と夫婦は疑心暗鬼
、些細な娘の言葉に揺れているんでしょうなあ。でも、気持ちはわからんでもない。娘大事で、だからこそのどたばたで、けれどもさ、バレンタインデーに娘からチョコレートもらって嬉しそうで、だからこそ不憫でならない……。
けれどそうした景色に、主人公、お兄さんが自分を見つめる、そんな場面が挿入されて、ちょっとほろりとして、今回は、お兄さんと奈子ちゃんと、それから気後れして失恋したまりかちゃんと、各人が見せる感情のゆれるところ、その表情、それがとてもよかったです。お兄さん好き、奈子ちゃん大好きってところでしょうか。ほのぼのとした、そんな雰囲気にちょっとの切なさ、とてもいいです。
- 『月刊アフタヌーン』第23巻第13号(2009年9月号)
引用
- さだまさし『親父の一番長い日』
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