2009年7月11日土曜日

美女、ときどき野獣

 最近、男の娘ってのがはやりなんだそうですね。でもって、ネタばれになっちゃ悪いから具体的になにかはいわないけれど、人気のゲームに出てくるキャラクターが男の娘だと判明したそうで、その筋の人の間では大盛り上がりなんだとかいうことを聞きおよびました。そうかあ、男の娘かあ。以前、そういうキャラクターがいると聞いて、買ってプレイしたゲームがありましたっけ。といったわけで、実はちょっと件のゲームにも興味が……。いや、買いませんけどね。で、かわりといってはなんだけど、漫画をひとつ。これ、書店で表紙を見て、おおっ、と思って買ったんです。『美女、ときどき野獣』。男の娘か? っていわれたら、いや、そりゃさすがに違うんだけどもさ。

女性アレルギーの主人公が、学祭で出会った美女。しかし、彼女は実は男でした、っていう話なんですが、いやいや、どう見てもでかすぎますから。がたいよすぎますから。しかしですね、凛々しすぎる、どうみても男、こういうやつが女装していますっていうシチュエーションもなかなかいいなって、それで学祭終了後、普通の格好で出てきても、またそれがいい感じ。さばさばして、人懐っこくて、ちょっと押しの強い、そんなやつなんだけど、なんか可愛げが感じられて、お、いいじゃんって感じであるのですね。で、彼が主人公に迫るんだけど、ナイーブな主人公、男なんてありえるかっ、みたいなことを思いながらも、だんだんひかれていく。その描写はわりと薄めだけど、自分の身が危ないっていう状況でさりげなくサポートしてくれる、助けとなってくれる、そんな男に心が揺れるのは仕方ないと思う。そして、女が大丈夫になっても、考えるのはあいつのことばかり。うん、実にいいと思う。

特によかったのは、主人公雪路がとにかくナイーブすぎるところ。こういうのをヘタレって呼ぶの? ケツに入れるのが怖くて嫌なんだ…!!は名言だと思う。いや、知らないことっていうのはやっぱり怖いことだと思うんだ。で、その知らないことを怖がりすぎて、それでぎくしゃくしてって、いやもう、いくらなんでも避けすぎだろ、雪路。でも、クラスでホモ扱いされるのを怖れて、いや、怖れるだろうけどさ、それでなんか酷いこといっちゃったりしてさ、それでハルを傷つけたんじゃないかって悩んじゃったりしてさ、けどそれでもハルを馬鹿にするやつに思っていることをぶちまけた、そのシーンはちょっとかっこよかったよ。でも、次の次のシーンではやっぱりなんだか弱々しくって、目に涙なんてためちゃって、それがなんかすごくいい。ああ、もう、可愛いやつよ。

あまり突っ込んだ描写はないのだけれども、ささやかな気持ちの揺れのようなものはよく表現されていて、なんだか微笑ましい、それでちょっと気恥かしい、そんな感触がよかったです。もう一本の収録作、「迷える子羊に大吉を」も、先輩がなんかすごく優しくてですね、で、主人公もなんか繊細でね、そのなかなか接近しないところ、相手の思っていることがわからなくて、不安になっていく、そんな描写がなんかよかった。あくまでもライトなBLなんだけれど、ライトな分、その気持ちの揺れ動きの描写が多くなって、切ないなあ、なんて思えるところも多かったな、なんて思うんですね。

面白かったです。これが初単行本なんだそうですが、ちょっと作者覚えておこう、そんな風に思える漫画でした。

引用

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