2008年6月15日日曜日

はなマルッ!

 先日、『はなマルッ!』というゲームに興味があるといっていました。その続報あるいは中間報告です。まずは続報から。結局買ったのですよ。とはいっても、もうロットアップしているゲームですから、新品購入は断念せざるを得ず、よって中古での入手です。発注は6月3日。到着は6月5日でした。つまり、記事で触れたあと、すぐさまといっていいくらいのタイミングで注文したのです。到着したのは6月5日、プレイ開始は6月8日。このタイムラグはGENERATION XTHが一段落するのを待ったからですね。さて、ここで私には時間の余裕がありました。なぜか。6月9日の月曜日は、体調不良のために事前に休暇を取っていたからです。ゲームのために休んだんじゃないですよ。長く体調不良が続いているっていうのは、嘘偽りのない真実です。

といったわけで、6月8日9日の二日をかけて、『はなマルッ!』を攻略したのでした。目指すゴールは、このゲームを買った理由である、男の子ヒロインであります。ところがですよ。はじめてみて、参っちゃいました。いやね、ずいぶんこの手のものから遠ざかっていたわけですが、その独自の深化が問題です。キャラクターの性格付け、台詞、そして声、しゃべり口、それらにまさしくジャンルの内側で深まっていったもの、洗練により生じる強烈にして独特な趣味、そうしたものを感じてしまったんですね。だから、つらかったですよ。特に桃野桃がきつい。この人、見た目は子供中身は大人、学園の保健医をやっている上に寮母さんもやっていましてね、だから寮に入ることになった主人公拓真はこの人の案内を受けるんです。その時のもろもろ、もうなんともいえない厳しさを感じました。もちろんこの疎外感は、こうしたジャンルにおける外部者である私との温度差に生じるわけで、だから内部の人にはこうでなければならんのでしょう。しかし、そういう趣味があることは理解できるけれど、長く関わりを持たずにいた私にとっては、容易に近寄れるものではありませんでした。

きつい、厳しい、つらいと感じさせたのは、この桃ちゃん先生と、そして桐嶋菫であります。ぶりっ娘のスミレ。その表現、甘ったるいしゃべり方、正直つらい。おお、私はこれからこの娘を攻略せんといかんのか。しかしそれが目的だったわけですからがんばります。すべての選択肢でスミレ有利になるよう心がけて、そして個別ルートに入るバレンタインデー。あれ、なんでだろう。桜坂先輩にチョコレートもらっちゃったよ? あーっ、やっちまったか。スミレに関係ない選択肢で八方美人的に振る舞ってきたのが裏目に出たみたい。かくして初回プレイは椿ルートに入ってしまい、スミレは綺麗にフェードアウト。しかも主人公死亡のバッドエンドにたどり着くという、実に私らしいなにやりたいかわからないプレイになってしまいましたとさ。

でも、先輩は図書委員、三つ編み、眼鏡。私が引き寄せられるようにルート突入したのは、ある種必然だったのかも知れません。

以上が、体調不良の二日間の成果です。そして一週間経って、今度こそ目当てのヒロイン目指してチャレンジしました。再チャレンジですね。現実には難しい再チャレンジも、ゲームなら簡単です。

もう一度最初から開始して、既読部分はすべてスキップ。前回の反省を生かして、完全スミレシフトですよ。みんなにいい顔をしない。スミレ以外にはけんもほろろの対応を徹底して、これでどうだ、はらはらしながら迎えたバレンタインデー。きた、きましたよ。スミレです。よし、これで第一段階の目標は達成です。

もうここまで書いてしまっているのであからさまにいいますが、このスミレが男の子なんですね。そして、この設定、ぎりぎりまで明らかにされないんです。それをうかがわせるような要素は皆無で、知ってみればなるほどそうだったのかと合点がいく、よくいえば巧妙、悪くいえば卑劣、そんなテキストは素晴らしかった。スミレを好きになった拓真に、同じく愛を返すスミレ。最初こそはむしろ無邪気に感情をあらわにしていたスミレが、突然身を引こうとする、その反転にプレイヤーは主人公ともども戸惑いをみせて、いったいなぜなんだ、拓真はスミレが好き、スミレも拓真が好きなら、それでいいじゃないか。じらしてじらしてじらした末に明かされる真実。さあ、君はそんなスミレを受け入れるかい?

受け入れるに決まってるじゃないかー!

もしこれが、スミレの真実を知らないでのプレイなら、いったいどうだったんだろうとは思います。ああ、これはきっとショックを持って受け入れられたろうなあ、特にナイーブなプレイヤー、そしてそうした表現に嫌悪を感じるプレイヤーなら、考慮の余地もなく受け入れ拒否にしてもおかしくない。そんな展開であるのは確かでした。それまで少しずつ高められてきた感情、期待は、高められたボルテージそのままにメーカーへの憎しみに転化されたんだろうなあ。うん、わかる。裏切りだ、詐欺だ。そういう気持ちもわかります。

けど、そうした現実が、自分は愛する誰かに受け入れられないという現実が、過去の体験として切々と訴えられるわけですよ。本当の自分は拒否されても仕方ないんだということを、いわば納得しているんですよ。そして、そうした自分を呪っているんですよ。それらが積み重ねられた上での問い掛けです。そりゃもう、受け入れるに決まってるじゃないですか。ファンブックによれば、このゲームのテーマは究極の選択だったんだそうですね。まさしくそれはスミレルートに凝縮されていたとでもいうのでしょうか。自分を普通であると信じる人にとっては、きっとスミレを受け入れるという選択は、普通というカテゴリーからはじかれているスミレを受け入れるという選択は、究極のものとなったのでしょう。しかし、普通というカテゴリーに属することができない私にとっては、スミレの問題は他人事ではないと思われた。立つ位置こそは違うが同じ悲しみを持つものであると感じたんです。

先日いっていましたね。

私は実は不幸系ヒロインが好きです。なぜこの娘がこんな目に遭わねばならないんだあ、なぜ世の不幸がよりによってこの人に! っていうようなシチュエーションになると、リミッターが外れてしまうんです。

見事に外れましたよ。私が、私がこの娘を愛さないで、誰が愛するというんだーっ! かくして私はスミレルートを驀進し、見事バッドエンドに突っ込みました。

なんでやねん!

でも、実際よかったですよ。スミレルート、ちから入っています。それまで鼻につくと感じていたぶりっ娘スミレが、ルートに入れば様々に違った表情を見せて、その二転三転ぶり、読んでて実によかった。けど私はネタバレの状況からのスタートですから、もしこれがなにも知らない状況でのプレイだったらどうだろうと思われて、もしかしたら七転八倒したかも知れない。苦渋の末、ええいああ、と受け入れを選んだのかも知れない。もしそうなら、うけるショックの大きかった分、その乗り越えるエネルギー、感情の動きも大きくなったはずで、けれど私がその感動を得ることはありえません。私はただただそれが残念というのです。

でも、スミレの秘密を知らなかったらこのゲームをプレイすることもなかったわけで、そう考えると私のifは理不尽そのもの、無い物ねだりというほかない要求でありますね。

以上、中間報告でした。これからヒマワリ他をクリアして、100%達成した頃にもう一度感想お伝えするかと思います。

引用

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