このBlogをご覧の方には今更いうまでもないことではあるのですが、私は漫画が結構好きで、いつしか蔵書の大半が漫画に。当初は音楽中心でいくはずだったこのBlogも、すっかり漫画メインになってしまっています。さて、一口に漫画といいましても、多様なジャンルがあって、それはもう一目で見渡すということはもう不可能なんじゃないかというほどの広がりを見せていて、だから漫画好きといわれる人たちも、あれこれと手を出すというよりも、これと決めたジャンルをホームグラウンドとして読む、それが普通であろうかと思います。そして、私の場合においては、軸足は四コマ漫画に置かれているのでしょう。実際買っている雑誌は四コマばかりだし、単行本の割合も四コマが圧倒的に多く、けどひとつのジャンルしか見てないと他の面白い漫画を見付けられなくなるから、時に思い切って知らないジャンルにチャレンジする。私の読み方というのは、実にそんな具合であるのですね。そして、2005年頃の私は、ちょっと過激といわれていた少女コミックに興味を持っていたようです。
新條まゆの『純愛ストリップ』。奥付を見ると2005年7月20日、初版とあります。当時、過激な性描写を売りにした少女向けの漫画が氾濫しているとあちこちでいわれていて、そうかなら一度見てみよう、規制される前に読んでおこう、といった軽い気持ちで何冊か買ってみた、そのうちの一冊です。これを選んだ理由はいろいろありますが、とりあえず新條まゆは外せないだろうというのが大きかった。後は、丁度これが出たところで平積みされてたからとか、単巻もので手ごろだったとか。ヒロインがボブで眼鏡でというのは関係ないと思いたい。とにかく、大した理由はありませんでした。
読んでみて驚いたのは、結局はこれが伝統的少女漫画のプロセスに則っていたっていうところでした。確かに性描写もあって、昔のキス以上は描かないというような漫画(とはいっても、『りぼん』でも平成ともなれば性交渉を絡めるものはあったけどなあ。ただ、行為を描かなかったというだけで)とは違うことはわかります。ですが、それでもヒロインは気になる男の子に見初められるというかたちで承認を与えられるというのは、なんのかんのいって保守的だよなと思ったりもしたのでした。
『純愛ストリップ』は、眼鏡でちびで、ガリ勉といわれる割に成績のよくない、そんなぱっとしない女の子がヒロインです。けどこの娘が、名門校に通うちょいワル天才少年に片思いされていて、しかも強引に迫られて、受験勉強とセックスに明け暮れるという、そんなところが当世風。見た目にもかっこよくて、頭も良くて、とにかく女がほっとかない男に一途に思われるというのは、この漫画が対象とする年代のみならず、あらゆる世代における燃えるシチュエーションではあるでしょうね。願望や興味をかたちにして見せてみましたという点において、まさしくファンタジー。そして漫画は多かれ少なかれそうした要素を持っていますから、読者の見たいものを見せるということにかけては、非常に正しい漫画なのではないかと思います。
昔の少女漫画はキスが限度で、行為にまではいたらなかったというのは、それが男性ないし大人の望む少女像をベースにしたファンタジーだったからではないのか。対して、こうした今の少女コミックは、大人の押し付ける理想の娘像など意に介しない、まさしく自分の願望や欲望に目覚めた少女のためのファンタジーとなっているのではないかと思って、しかしそれを少女の解放と見るか、あるいはチープな夢想にすぎないと見るか — 、私は結局は後者かなあ。
以前レディーズコミックの『You』の購読をやめたって理由を書いていましたけれど、そうそう、これこれ:
なんか平凡な、特にこれといって取り柄もないような女が、イケメン、セレブに見初められてみたいな、はあ? なにその依存心まるだしのプロット、みたいなんを見てはがっかりしてた。正直、そういうのはティーンのうちに卒業していただきたい
確かに『純愛ストリップ』も依存心強めの女の子がヒロインで、昔の少女漫画の核にはヒロインの成長があったなんていいますけど、そういう点ではまったく評価できないタイプのヒロインですけど、だって見た目にかわいいとか、やって気持ちがいいとか、そういう方面で見初められてもなあ。でもさ、私が『You』をいったん見限った原因に比べれば、こちらの方がずっと読めるのですよ。でも、浅い。『You』に載ってたあれより遥かにましだけど、ずっと面白いけれど、心に引っかかるようなものはない。
けれど、これがセックスを見せ場にするものであるなら、引っかからないくらいで丁度いいのでしょう。エロの邪魔にならないよう、ストーリーに重きを置かないという選択は、エロ漫画には往々に見られるものでありますから。しかし、それが少女向けの漫画で見られるというのはどうなのか。あえて明言は避けますが、私は規制は少なくゾーニングは厳しくという立場をとっていることだけはいっておこうと思います。
- 新條まゆ『純愛ストリップ』(フラワーコミックス) 東京:小学館,2005年。
0 件のコメント:
コメントを投稿